第7話 この世界に来ての初めての夜を迎えた。

「え?何で楽しみなんだ?」


「だってずっと一人だったんだよ?ユウヤと一緒に暮らせると思うと嬉しいじゃんっ♪」


「あぁ……そういう事か。俺もアリーナと暮らせると思うと楽しみだな」


「でしょ~♪」


 

アリーナの事を色々と聞いて過ごして、暗くなる前に夕食を用意した。


 

「さ。夜は、いっぱい食べても良いぞ。寝るだけだしな」


「わぁ~い♪いっぱい食べるぞぉ~」


「と言っても食べ過ぎると太るぞー」


「余計な事を言わないでよねぇ……」


 

夕食が終わるとテントの中に移動して、このゲーム?の中に来て初めての夜を迎えた。

 

ホントに、これは夢なのか?ゲームの中?それにしては……長くないか?それに味も痛みもあるしな……アニメで言う転生ってヤツなのか?見た目も若返ってるし……顔も別人だし。それで俺のゲームキャラの設定なんだよな……レベルや持ち物、資金、課金ポイントってゲームそのままじゃん。


 

「ユウヤ~なにボーッとしてるの?大丈夫ぅ?」


「考え事してただけだって」


「あ~彼女の事でも考えてたの?可愛い彼女が居るんでしょ?」


「え?居ないけど……?」


「え?ホント!?居ないの?モテそうなのに?うわぁ~ウソっぽい……ウソつきぃ~」


 

ジト目で見られてる……なんで?


 

「モテた事無いけど……?」


「はぁ?そんなに格好良くてお金持ちで強くてSSS級の冒険者だよ?モテないわけがないよぉ……」


「そうなんだ?ってか……その言い方だとお金目的っぽいな……それ」


「うんうん……だから変な女の子に気をつけてよ」


「あ、うん。アリーナみたいな奴に?」


「ばかぁ……っ!」


「あはは……」


「もぉ!ヒドイ・・・わたし変?お金目的に見える?」


「変じゃないし、見えないって冗談だって」


「良かった……ドキッってしたよ……」


 

そうだ。夜は魔物が活発になるんだよな……結界を張っておくか……どうせ出てもザコだと思うけど、いちいち起こされるのも嫌だし面倒だしな。……って夢の中で寝るってどうなのよ?実際に眠いんだけど……意味が分からない。


 

「アリーナは、可愛くて明るい良い子じゃないか?」


「うぅ~ん……嬉しいけどさぁ〜最後の良い子ってなによ?完全に子供扱いじゃない?多分……同じくらいの歳だよね?」


 

あぁ〜俺の歳って?設定は何歳なんだ?見た目は15歳くらいか・・・?ステータスで確認しても年齢の設定は無いんだよな。


 

「アリーナは何歳なんだ?」


「13歳だよ」


「俺は……15歳だな」


「そんな変わらないじゃん!」


「って、両親を亡くしたの最近じゃない?」


「あ、うん……半年前かな~」


「随分と冷静というか落ち着いてるんだな」


「まぁ〜悲しいけど、周りに同じ様な子がいっぱいいるしね」


「そうか……」


 

アリーナが、あくびをし始めた。


 

「そろそろ寝るか?」


「何だか寝る時間が勿体無いよ~久し振りに楽しくお話が出来たのに~♪」


「これからずっと一緒なんだろ?」


「あ!そうだね。でも体がベトベトで気持ち悪い~」


 

そう言えば何かのアニメで冒険者が遠征で使う魔法で洗浄魔法とかウォッシュって魔法を使ってたよな……このゲームで使えるのか分からないけど、泥で攻撃してきたりする魔物も居るんだよな。遭遇した時用に今のうちに試しておくか……

 

まずは当然、自分で試すか。アリーナに使ってケガをさせたりしたらヤバいしな。


 

「ちょっと外で魔法の実験してくるわ」


「ちょ、ちょっと〜待ってよぉ……一人にしないでよ~わたしも行く~っ!」


 

手を自分に翳して……体をお湯で包んで汚れを分解、洗浄して洗い流して乾燥させて、ほのかに良い匂いを付けるイメージ……洗浄魔法。

 

体と服が温かさに包まれてるとサッパリして、ほのかに良い匂いに覆われた。

 

おおぉ!成功じゃない?服にも効果が出て便利じゃん。


 

「え?なに?あ~ユウヤだけ良い匂いになってる!ねぇ。ズルい!ねぇ~わたしも!わたしにもぉ〜っ!」


「アリーナは、元々良い匂いじゃん」


「え?ほんと?」


 

自分の服の匂いを嗅いで顔をしかめた。


 

「嘘つきっ!汗臭いしっ。イジワル!」


「あはは……」


 

頬を可愛く膨らませて怒っているアリーナに洗浄魔法を使った。


 

「わぁ♪ 凄い!温かくなって良い匂いになった!ベトベトも無くなってるし……なにこれ~絶対、家に居る時より良い生活だよ。美味しい料理に……体と服がキレイになるし良い匂いだし。ユウヤもいて幸せ♪」


「役に立てて良かったよ」


「それなら、わたし一緒に歩いて食べて話をしてるだけなんですけど……しかも戦闘で役に立つ自信ないしぃ〜むぅ……一緒に居づらいんですけどぉ〜」


「えっと、それだけで十分なんだけどな。元々アリーナと仲良くなって話をして過ごせればって思って声を掛けたわけだしな」


「えぇ〜もう少しユウヤの役に立ちたい!」


「戦闘で役に立ちたいって言うのはやめてね?無理をして死んじゃったら困るし。さっきも自分で言ってたよねバカみたいって」


「あぁ……うん」


「アリーナは、一緒に居てくれるだけで幸せだから無理しないでな」


 

アリーナが頬を赤くして恥ずかしそうに返事をした。


 

「……はぁい♡」


 

あれ?何を言ってるんだ俺は……プロポーズぽい事を言ってないか?「俺と結婚してくれ……お前は俺と一緒に居てくれるだけで良いから」とか……同じ様なフレーズじゃないか?恥ずかしいんですけど……しかもモブ相手に。いや……もうモブとか思ってないし……完全に人間だよな行動も仕草も感情もあるし。何より俺の役に立ちたいって思ってくれてるし……完全にモブじゃないだろ。

 

 

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