第三章 幼馴染のリーリエ=アリエンスは、クールな美貌の物理(ゴリラ)エルフ♡

第24話 セーフティールームに、謎の侵入者――!

「ぐー、すやすや。ぐー、すやすや………」


 時間の経過が分かりにくいダンジョン内だが、朝方――

 唯一のセーフティールームにて〝安眠のナイトキャップ(睡眠耐性低下・睡眠時回復力UP)〟をかぶって眠るのは、実家の長男ハーク=A=スラスト。


 だが、そんな安全圏であるはずの場所に――この部屋の住人ではない、何者かの影が。


「ぐー、すやすや……う~ん、もう食べられないよ……〝アイオライトのパンケーキ〟……この料理を作ったのは誰だァ……むにゃむにゃ」


『……………………』


「ぐー、すやすや……おお、このツヤ、ハリ……これは間違いなく一級品の……〝神造の鼻メガネ〟……やってられっかァ……むにゃむにゃ」


『……………………』


 奇特な寝言を漏らすハークの寝顔を、暫し見つめて――


『――――――ッ!』


「ぐー、すやすや……突然ですが臨時ニュース、貞操注意報のお知らせです……ここが天下分け目の合戦場じゃアい……むにゃむにゃ」


 物言わぬ侵入者は、安らかに(?)眠るハークへ、躍りかかっていった――!



 ◆        ◆        ◆



 セーフティールームのダイニングにて、今しがた自室から出てきたラム=ソルディアが、ハークの寝室として使われているリビング前の扉に立っていた。


「ふー、さてさて……ハーク師匠の健気な弟子たるアタシ、ラム=ソルディアは、お寝坊さんなお師匠さまを起こすべく、今まさに寝室へ踏み込まんとしているのですー……んもう、ハーク師匠ったら仕方ないんですからっ♡ いえいえ決してそんな、ハーク師匠の寝顔を悶々モンモン♡と眺めた結果クセになったとか、そういうんじゃなく……弟子として、そう弟子としての責務ですからねぇ。弟子ならおししょーさまに尽くすのは当然の摂理、これはもー仕方ないですねぇ?」


 言い訳が長い。


 まあとにかく、ラムの中では納得できたのか、〝よし〟と一つ頷いてから、少女剣士にして乙女剣士が頬を赤らめ――師の起床きしょううながすべく、起こさぬよう静かに扉を開いた(状態異常:したたかな矛盾)


 そうして、忍び足で部屋に入り込んだラムが、ハークの眠るベッドへ向かおうとする、と。


「……ハーク師匠、はぁ~くししょぉ~……? よし(よくない)、すごく呼んだのに起きませんねぇ、仕方ないですねぇ……ではお傍に寄って、優し~く起こしちゃいま――ウオッ」


 ちょっぴり乙女にあるまじき声を漏らしてしまったラムが、目にしたのは。


「……………………?」


 ベッドの上で眠るハークの、その上に乗っかる――透き通るような美貌と色白の肌を持つ、見知らぬ女性。薄緑ライトグリーンの長髪は薄暗い室内にあってもきらびやかで、新緑を思わせる瑞々みずみずしさ。


 何より特徴的なのは、耳――横長の尖った耳は、間違いなく〝〟の特徴。


 それにしても、へそ出し・ミニスカートの軽装で、年頃の青年ハークの寝込みに乗っかっていく、その大胆さ。

 そもそも何者なのか、と〝状態異常:混乱〟気味なラムが震える口を開く。


「あ、ああ、貴女は一体……まさか……セーフティールームなのに、ランダム生成モンスターが侵入してきた感じですか?」


「……………………」


「あ、あの……っ、とりあえずハーク師匠から、降りてください! さもないと、この念のため持ってきた〝伝説のナイフ〟が火を噴きますよ――!」


「……………………」


 謎の侵入者に対し、少女剣士の精一杯の脅し――に、ぷいっ、とそっぽを向いて。


「……ハーク、ね、起きて。あなたの大好きな幼馴染が、起こしに来たわよ」


「いえあの聞いてます!? 完全に目が合ったのにガン無視ってそんな話ありますかね!? って、えっ……お、幼馴染?」


「ぐー、すやすや……う~ん、ムニャムニャ……? あれ、リーリエ……ん、ラムも? なんだ、起こしに来てくれたのか? ふわぁ……」


 呼びかける謎の侵入者――リーリエと呼ばれたエルフと、目を白黒させる少女剣士ラム、そしてマイペースに目を覚ました長男ハーク。


 三者三様の反応、そんな中でかろうじて、ラムが口を開き。


「あのあの。……とりあえず、少し落ち着いてからでいいので……説明していただいても、よろしいでしょーか?」


 まあまあ当然にして、必須の要求をするのだった――話がスムーズで助かります(余談)

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