最終話:君は奇跡の魔法使い。

「え?、なにが本格的になるって?」


「だから婿として向こうの親に挨拶だろ・・・娘さんをくださいって・・・」

「それに式場も決めないといけないし・・・新婚旅行だってあるし・・・」

「たとえば海外とか?・・・」


「まじで言ってる?・・・おまえ、まだ学生の分際だぞ」

「学業をおろそかにして結婚だと・・・・俺が許さん」


「別におまえの承諾なんていらんわ」

「さっき、離婚したのかって言っといて・・・なんだよ」


「でも、おまえは本当にいいやつだなメガネ・・・」

「おまえが親友でよかったよ」


「だから寒イボが出るって・・・それに俺がいいやつって今頃気づいたか?」


「今さっき言った結婚だとか新婚旅行だとかって言ったことは全部冗談だよ

・・・結婚なんてずっと先の話だ」


「いやいや、おまえなら、やりかねないからな」

「今度遊びにきた時にはルフィアのお腹がでかくなってるかもしれないしな・・・」


「ははは、おまえも未来が予知できるのか?」


「めでたいことなら現実になったっていいだろ?」


「たしかにな・・・」


「俺、思うんだけどさ・・・」

「きっとルフィアは俺の命を救うために俺のところにやってきたんだと思うんだ」

「あの子供の時、将来を誓い合った時、あの時から彼女は全部予感してたんだ」

「きっとそうだ・・・」


陸はそう言ってルフィアを探すように青く広がる空を見あげた。


「そうだな、そうかもな・・・」


それを見たメガネも空を見上げて言った。


その頃ルフィアは母親への報告と用事をすませて再び陸の元に向かっていた。

これからは本気で陸と暮らす・・・もう、故郷には当分帰らない。

ルフィアはそう自分に誓った。


メガネはルフィアが帰って来たら、また来るからって言って暗くなる前に原付

で山を降りて行った。


その日の夜遅く、陸はルフィアが帰ってくるだろう方角を窓から見ていた。


すると、星空に混じって、ひとつだけ輝く光がふっと見えた。

ルフィアのペンダントは夜になると光り輝くのだ、懐中電灯みたいに。

その光はどんどん近づいて大きくなって、やがて陸の家の上空で一旦止まると

ゆっくり家の前に降り立った。


「ルフィアのペンダントの光?」


陸は大急ぎで飛ぶように階段を駆け下りた。

その勢いにディナーの用意をしていた真由美さんがびっくりした顔で陸を見た。


「なに・・・え?、陸?、どうしたの?」


「ルフィアが帰ってきたんだよ」


陸は急いでドアを開けて外に飛び出した。


「ルフィア!!」


「ただいま、陸」


「お帰りルフィア・・・疲れたろ?」

「さあ、早く家に入って・・・」


「うん、でもその前に・・・」


そう言うとルフィアは陸に抱きついた。


真由美さんは陸のあとに外に出てきたが、すぐに家の中に引っ込んだ・・・

ふたりの邪魔しちゃいけないと思ったみたいだ。


「お母さんに全部報告して来たよ・・・」


「うん・・・で?どうだった?賛成してくれた?お母さん」


「お母さんは最初っから賛成だよ・・・陸のところに行きなさいって私の背中を

押してくれたの、お母さんだもん」


「素敵なお母さんだね」

「なんてたって奇跡の娘を育てたお母さんだもんな・・・」


「奇跡?」


「そうだよ・・・君は奇跡の魔法使いだよ・・・僕にとって君は命そのもの」

「君と僕は一心同体・・・だから一生離れることはないんだ・・・」

  

「あのさルフィア・・・俺、学校卒業したらバイク買って旅に出ようと思うんだ」

「もちろん後ろのシートにルフィアを乗せてね」


「うん、楽しみにしてる」


ルフィアはもう一度、陸に抱きついた。


「ねえ陸、キスしていいって聞かないの?」


「聞くのはファーストキスの時だけだよ・・・でも・・・キスしていい?」


ルフィアはクスって笑った。


彼女が「いいよ」って言う前に陸はルフィアの唇を奪っていた。


END.お幸せに、💝


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