第9話:陸の友達。

河の手前にたくさんの石ころと少し離れたところに岩場があって、その岩場の

上に陸の後ろ姿があった。


子供の頃の記憶の中の陸と今の陸の後ろ姿がカブって見えた。


そしてもう一人・・・遠くからだけど陸から少し離れた岩場にも人物がいた。

ルフィアは石ころだらけの手前から陸を叫んだ。


「り〜く〜〜〜」


聞こえなかったのか陸は釣りに夢中になっていた。


「り〜〜〜〜く〜〜〜〜〜」


ルフィアはさっきより大きな声で陸を呼んだ。


自分の名前を呼ばれた陸は後ろを振り返った。

声がしたほう・・・自分の視線の先に、おさげの赤い服を着た少女が立っていた。


ルフィアの声を聞いて、もうひとりの人物もこちらを振り返った。


「ルフィア・・・来たのか」

「誘おうかと思ったけど、よく寝てたみたいだから・・・」

「足場が悪いから、そこにいて・・・」


「陸が釣りに行ったって真由美さんから聞いたから来ちゃった」

「どうせ暇だったし・・・」


すると陸と少し離れた場所で釣り糸を垂れていた人物が興味津々でルフィアを見た。

離れた場所からでも見えるくらい、その人は牛乳瓶の底みたいなメガネを

かけていて、ヒョロ〜とした感じの人だった。


そのメガネ男が言った。


「​陸・・・誰?、あの子・・・」


「そ〜か・・・説明するのも面倒くさい・・・」


「おい、最近までお前のこと「り〜く〜」って呼ぶ女の子なんていなかっただろ?」


「昨日、突然俺んちに来たんだよ」


「突然って・・・」

「どこの子だよ・・おまえと、どう言う関係?」


「将来を約束した仲だって」


「うそっ!!」


「って、彼女が言ってる・・・」


「聞き捨てならんな・・・」


メガネ男は一旦釣竿を置いて岩場から降りてきた。

じっくりルフィアを見てやろうって魂胆だろう。


メガネ男はゴロ石を器用に飛び越えてルフィアに近づいて来るなり言った、


「こんな可愛い子が?・・・おまえの?・・・うそだ〜」


「こんにちは・・・はじめまして・・・あなたは?・・・」


「俺、東高円寺 公仁ひがしこうえんじ きみひと・・・です」

「よろしくっ」


メガネ男はルフィアを見たままコメツキバッタみたいにコクンとお辞儀をした。


「私、ル・フィア・デ・アンブローズです、よろしく」

「ルフィアって呼んでください・・・ひがし・・・」


「ひがしこうえんじ きみひと」


メガネ男はまた同じことを言った。


「ひがしこうえんじ・・・だよ・・・ひ・が・し・こ・う・え・ん・じ」


「はい、ひがしこうえんじさん」


「ルフィアさん?・・・君、外人?」


「ん〜ちょっと違うけど、外人といえば外人みたいなものでしょうか・・・」


つづく。


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