ハートの惑星。☆星の魔法使い☆

第4話：やっぱり私帰ります。

陸はイケメンに成長していた。

陸の家は彼が幼い時、両親が離婚したため父親がいなくて ルフィアと同じ

母子家庭だった。

その肝心の陸がルフィアのことをすっかり忘れていた。

子供の頃、将来を誓い合った仲のに、なにも覚えてないって・・・。

「さあルフィア、そこに掛けて」

母親はキッチンの椅子をルフィアに進めた。

ルフィアは母親の勧めのままに椅子に座った。

「ねえ陸、何も覚えてないの？」

そう言いながら陸の母親は暖かい紅茶を出してくれた。

「覚えてない・・・」

「俺って子供の頃の記憶あんま、ないんだ」

「君・・・ごめんね・・・君のことも、子供の時いたのかな〜くらい・・・

それも漠然とだけど」

陸のあいまいな態度・・・子供の頃あんなに遊んだのに・・・。

ルフィアは、ときめきを抱えてこの地球に来たことを思うとなんだか、

恥ずかしくて情けなくて悲しくなってきた。

(本当に私のことなにも覚えていないんだね？)

「私、帰ります・・・来るんじゃなかった・・・」

ルフィアはてっきり陸が自分のことを、暖かく迎えてくれると思っていた・・・。

陸が自分のことを覚えていなかったことがルフィアにはショックだった。

「そんなに急がなくても・・・」

「せっかく遠いところから来たんだから、しばらくこの家でゆっくりすれば？」

「来たばかりで疲れてるでしょ、少し落ち着いてから帰りなさい」

「もしかしたら陸も何か思い出すかもしれないし・・・ね」

「俺、夢みたいで、あやふやなんだ・・・」

陸がぼそっと言った。

「子供の頃のことなんて・・・すぐには思い出せないよ」

「なにかさ、きっかけでもあれば思い出すかもしれないけど・・・」

そう言いながら陸は自分には関係ない話だと言いたげに、二階の自分の部屋に

さっさと上がって行ってしまった。

「やっぱり私帰ります・・・」

お茶を飲み干したルフィアはそう言って立ち上がっ た。

「お騒がせしました・・・お茶美味しかったです、 ごちそうさまでした」

陸の母親が止める間もなくルフィアはお辞儀をして急いで玄関を出た。

すぐに陸の母親が後を追ってきた。

「本当に帰っちゃうの?」

「はい・・・ありがとうございました」

「ねえ、そんなに急がなくてもいいんじゃない?・・・」

「今晩うちに泊まって帰るのは明日にしたら?」

「いえ、いたら辛くなるだけですから・・・」

「すごく期待してこの星に来たのに・・・そう思ってた自分がバカみたいで・・・」

そう言ったルフィアは今にも泣き出しそうだった。

「明日になったら陸の記憶が戻るかもしれないわよ」

「慌てて帰らなくても・・・」

ルフィアはこれ以上話すと本当に涙がこぼれ落ちそうだった。

「さよなら、陸のお母さん・・・お世話になりました」

「あ、私、真由美（まゆみ）って言うの・・・まゆみよ」

「さよなら真由美さん」

ルフィアはもう一度お礼を言って少しだけ宙に浮 いた。

「あなたも・・・あなたも、あなたのお母さんみたいに空を飛べるのね」

「はい、私の星まで一週間も飛べば帰れます」

外でルフィアと母親の声が聞こえたので、陸はなにげなしに窓の外を

ガラス越しにのぞいた。

つづく。