第18話 大成の提案

 ビーチャムとバーバラが不思議な顔をして大成を見る。


「魔導具に魔力を注入するためだけの魔導具ということか?作ろうと思えば作れるとは思うが......」


「これまた変なことを言い出すのう」


「だってさ」と大成は説明する。


「もしそれが作れたなら、バーバラさんの手間も減って楽になるんじゃないかと思ってさ」


「具体的に説明してみろ」


「現状だと、完成している魔導具にしか魔力を込められないよな?」


「当然だ。形になっていない物に魔力を込めるなど不可能だ」


「じゃあ、火の魔導具の数を十個増やしたいとなった場合、どうする?」


「作るだけだ」


「だけどビーチャムにも俺にも魔力を込めることはできない」


「バーさんを呼べばいいだけだろう」


「じゃあ、あと一個だけ増やしたい、みたいな場合は?そのためだけにバーバラさんを呼ぶのか?」


 大成の言いたいことをビーチャムは理解した。


「魔力注入用の魔導具があれば、あらかじめ必要な魔力を溜めておくことができるようになる、ということか」


「水や食料と一緒だ。喉が渇いたり腹が減るたびに調達しに行ってたら、あまりに非合理的すぎる。ある程度は手元に保管しておけないと不便で仕方ないだろ?」


「魔導具における魔力もそれと同様と言いたいのか」


「そうだ。しかも、だ」


 大成はニヤリとする。

 あることを確信して。

 ただ......と大成は考える。

 あまり商売の部分を前面に押し出すとビーチャムは拒否反応を示すだろう。

 だから切り出し方として、こういくべきだ。

 

「ビーチャムの理念にも適うものになるはずだ」


「それはどういう意味だ」


 ビーチャムは真剣な眼差しを大成にぶつけた。

 大成は、以前ビーチャムが言っていた言葉を思い出す。


「あまねく人々が魔法による利益を享受できるようになる」


 ビーチャムはあっとなる。

 畳み掛けるように大成は続ける。


「例えば、火の魔法の石。これって一個で何回使えるんだっけ?」


「三回だ」


「そう。つまり便利だが、たった三回火を起こすだけで終わってしまうんだ。でもこれが、別の魔導具で魔力を充電して繰り返し使えるとしたらどうだろう。当然それでも限度はあるだろうが、ある意味では火の魔法を取得したのと同じようになる」


 大成の説明に、ビーチャムとバーバラは目から鱗が落ちる。

 特に老魔導師はひどく感心したようだ。


「なるほど。面白いことを考えるのお」


 ここで大成の目がきらんと光る。


「それで今、このアイディアを現実に形にしてみたいと思ったんですけど、どう思いますか?」


 大成は敢えてバーバラに向かって投げかけた。

 このようなやり方は、実際に過去の営業経験でもあった。

 敢えて決済者に行かず、決済者に影響力のある人間を攻める方法だ。

「外堀を埋める」という言葉があるが、誰でもいいわけではない。

 あくまでも決済者の判断に影響を与えうる人物(時に複数)でなければならない。

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