第15話 魔法オタク
「ええと、ビーチャムさん......」
「朝からなんだ」
「これが朝飯、ですか」
「そうだが」
大成は
しなしなのパンの耳が数キレ盛られた皿と、ヒビの入ったコップが置かれた、実に控え目な食卓に!
「俺の学生時代の一人暮らしの頃の方がよっぽどちゃんとしてたんだが!?」
「朝からどうした。それを食ってさっさと研究に取り掛かるぞ」
「キッチンに行く!」
「何をする気だ?」
「調理だよ!」
「買ってある食材はこれしかないぞ。調味料は多少あるが」
「充分だ!ビーチャムのも持っていくぞ!」
大成はビーチャムの分も取り上げて、二人分のパンの耳を持ってキッチンに移動した。
「そんなものをどうするんだ」
ついてきたビーチャムが台所に立つ大成に言った。
「砂糖とバターだけでいい。あるか?」
「砂糖とバターか。ちょっと待ってろ」
ビーチャムは、がさごそと台所の棚を漁り出し、三つの物を手に取った。
「ん?それは?」
大成が気になったのは砂糖でもバターでもなく、もうひとつの小石のような物。
「食材ではないよな」
「これは、改良型の簡易魔導具だ」
ビーチャムは大成にその物体を手渡した。
「これも魔導具なのか」
「一見ただの小石だがな。それを炉に投げ入れて〔イグニア〕と唱えてみろ」
大成は言われるがままやってみた。
すると小石がピカッと光り、炉にパチパチと火が起こった。
「おお!火の魔法の石か!これ、ビーチャムが発明したのか?」
「発明というより、より利便性を高めるために僕が独自の改良を
「なぜ従来の魔導具を使わないんだ?」
「手に入りづらい上に高いからだ。逆に
「だから自分で作っちゃったってことか」
「魔導具の概念と構造と理論を完璧に理解していれば
ビーチャムはあっさりと言い切った。
大成はふと思い出す。
秋葉原辺りで部品を買ってきて自分でパソコンを組み立てていたオタクの友達のことを。
「魔法オタク......か」
「なんだ?」
「いや、なんでもない」
大成はフライパンにバターを落とし、手際よく調理を始めた。
そうして料理の手を動かしながら思う。
火の魔法の石。
売れんじゃね?
でも、それをするには何か足りない気がする。
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