第14話 ダメ男
「この新型魔導装置。色々と興味深いんだが......なぜ、文字を送る魔法になったんだ?」
これは純粋に疑問に思ったことだ。
「魔法で文字を送る」というのは、画期的ではあるが、地味だとも思う。
技術的な理由でそうなったのか。
何か必要が生じてそうなったのか。
思いつきや
「なぜ魔導具を使って文字を送るのか。その理由か」
ビーチャムは物思いに耽るような顔をする。
やはり何か理由がありそうだ。
「何か、特別な想いがあるのか?」
「......」
「差し支えなければでいい。教えて欲しい」
「......研究の進展の中で、自然とそう帰結しただけだ」
「そうか......」
間違いなくはぐらかされた。
どうやらビーチャムに話す気はないようだ。
研究について包み隠さず話すと言ったのに。
大成は考える。
どうもその辺りの話に、ビーチャムを口説く鍵がありそうだと。
しかし、本人に話す気がないのならどうしようもない。
無理矢理に聞き出そうとすれば信頼関係の構築に支障をきたすので、それは絶対に出来ないし。
歯痒いな。
「あともうひとつ。これは研究以外のことになるが、訊いておきたいことがあるんだが」
大成は話題を切り替えた。
「なんだ。言ってみろ」
「単刀直入に訊くけど、ビーチャムは、研究で食ってるのか?」
収入源のことだ。
共に生活する以上、知っておきたい。
いくら衣食住が整っていても収入がないのなら話にならない。
「言っている意味がわからないな。僕は魔導博士だ。商売で研究しているわけではない」
「じゃあ、日々の生活費はどうやって稼いでいるんだ?別に仕事をしてるのか?」
「僕は研究者だ。他の仕事などしない」
話の雲行きが怪しくなってきた。
まさかとは思うが、ここはハッキリさせておかないといけない。
「じゃああれかな。ビーチャムは莫大な資産を持っていて、働く必要などないとか?」
「大きい資産はもうなくなった。貴様を連れてくるために替えた金貨が最後だ」
「は??」
この魔導博士は、いったい何を言っているんだ?
「じゃあ、明日からの日々の生活はどうするんだ?」
「そんなものはどうにでもなる。
ビーチャムはしれっと真顔で言い放った。
その声と言葉には、何の他意も感じられない。
つまり......この男は本気でそう思っているんだ。
この時、大成は知った。
ろくに現実を見ないでひたすら夢ばかり追いかけ続けるダメ男と付き合う女の気持ちを!
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