第4話 両手両足を拘束される

抵抗しようにも両腕を誰かに抑えられている。


両足首も誰かが固めていた。


 そして、知らない男がわたしに覆い被さってくる。


 これって、やっぱりやばい。


 だけどもう抵抗のしようがない。


両手両足に自由が効かない。


「ちゃんと回せよ」


 そんな声が聞こえてくる。


「わかってるよ」


 若い男の声だ。暗くてよくわからないけど、多分3人はいる。


 覆い被さってきた男に、シャツを強引に開かれた。


働き始める時に奮発して買った高いシャツだったのに。


 どうしよう。誰か助けて。闘護部長、助けてーー。


『助けて!』


 わたしは心の中で叫んだ。すると思いがけないことが起こった。


『如月、どこにいる』


 部長の声がどこからともなく聞こえてきたのだ。


 その場で直接話しているようで、でもその場に相手がいないのは電話のようで。


でももっとこう、頭の中に直接声が響くような感じだ。


『わからないです。トイレ出たら襲われて、なんか薮みたいなところ』


『わかった。すぐ行く』


 そこで通信が切れたような気がした。


 部長が来てくれる。


その言葉でわたしは少し安心した。


でも事態は何も変わってはいない。


 興奮した男の荒い鼻息が顔にかかってくる。

 乳房が乱暴に揉まれて痛い。


スカートの中に手が入り込んでくる。 


 いよいよやばい。


 と思ったその時、ガッという音と共にわたしに覆い被さっていた男がどこかへ吹っ飛んだ。


「遅くなってすまん」


 部長の声をその耳で聞いた途端、一気に安堵した。


 目が慣れてきて薄闇に浮かぶ白シャツ姿の部長が、わたしには白馬の王子様に見えた。


「んだ、こいつ。っざけんなよ、じじい!」


 男たちが部長に殴りかかった。


 けれど部長はそれをかわして、逆にヒョイッと相手を簡単に投げ飛ばしてしまった。


 喧嘩というより、武道みたいな動き。


「やばいこいつ。逃げるぞ」


 男たちが一目散に駆け出して行く。


そこに向かって部長が手近の枝のようなものを拾って投げる。


「うわっ」


 その枝が男たちの足に絡まって、3人とももん取りうって転げた。


「警察に届けるか、どうする?」


 わたしが嫌でなければ。


 と部長は訊いてくる。


正直面倒ごとは嫌だったけれど、新たな被害者を出さないためにもあの3人は放っておくべきじゃない。


「被害届出します」


「わかった。じゃあ、捕まえる」


 再び起き上がって走り出す3人に、部長が近づいていく。


 その近づきかたが異常だった。


 普通に歩いているように見えるのに、いつの間にか男たちの前に回り込んでいて、向かってくる男たちをまとめて地面に叩きつけたのだ。


 痛がる男たちを見下ろして部長が言う。


「逃げようとしても無駄だ。あと俺はじじいなんて言われる年じゃない」


 そこ、気にしてたんだ……。


 そんな部長がちょっと可愛かった。

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