人間になれなかった

みち道

第1話 大学生になり、ケツが白くなる

 私が通い始めた大学は、あまり大学という雰囲気ではなかった。建物は外から見ればキレイだけど、裏はコンクリートむき出しで、何やら得体の知れない配管が無数に張り巡らされていた。

 大学には女子は少ししかおらず、ほとんど男子校のような雰囲気でした。それは私にとっては有り難いことだった。

 大学は電車で行くと1時間くらい、しかし自転車で行くと20~30分の所にあった。(電車だとかなり遠回りになってしまうため)

 私は迷わず自転車で通うことに決めた。時間のことよりも、電車に乗ると知り合いに会ってしまいそうなのが嫌だったのです。


 大学でも私は一人で行動するつもりだった。しかし学校が始まって数日たった頃、一人のクラスメートに声を掛けられた。おっさんみたいな19歳、タケちゃんは一浪してこの学校に入学していた。私に声をかけた理由は、「コイツも浪人に違いない」と思ったからだそうです。

 私は人に好かれるという感覚はあまり持ち合わせていないので、戸惑った。最初はさり気なく離れるようにして逃げようかと思ったけど、結局なかば強制的にツレにされた。

 その後もう一人、のちに組長というあだ名になる、やはりおっさん顔の19歳の男(一浪)も加わり、主に3人で行動するようになった。私も当時は相当老けて見られたので、周りから見ればおっさん3人組だったのかもしれない。


 大学ではその他の友達とも結構仲良くやってたので、大学生活は割と楽しかった。ただしそれは学校内だけのことで、タケちゃんとも組長とも、外で遊ぶようなことは一切なかった。私の生活はやはり家と学校の往復ばかりでした。

 毎日20インチのママチャリを必死にこいで通った。片道の時間は全力でこいで、なおかつ追い風であれば20分ぐらい、向かい風なら30分くらいかかった。


 雨の日も風の日も自転車で通った。カゴの中に教科書を入れてたので、雨のたびに濡れて揺らされてボロボロになっていった。袋に包んでも、隙間から水が入ってしまい、ダメだった。カゴの上から丸ごと袋をかぶせればいいと気付いたのは、だいぶ経ってからだった。


 私は大学が始まる直前に勇気を振り絞って買ったGパンを毎日履いていた。自転車で汗をかくので、けっこう臭ってたのかもしれない。もしそうだったとしたら、すまん。みんな。

 私のズボンは日に日にケツの部分が傷んでいった。ケツだけ真っ白になり、だんだん薄くなっていった。そしてしまいには穴が空いてしまった。

 だけど私はもう二度と絶対に服なんか買いに行きたくなかった。


 私は穴の部分をボンドで固めた。見た目はともかく、それでしばらくはしのげた。あとはアニキの古いのを貰ったりして、何とかやり過ごしていた。

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