少女は機運を読解く(ニチカはきうんをよみほどく)

月見

第1話予兆

のちに言論戦争と呼ばれた暗黒時代の物語。


【外国】の王に、ある日、男が訪ねて行った。

この国を豊かにしたくないと。


資源が豊かなすぐそばにある隣国からもらってしまえば良いのではあの国はこの国にはないものがあるのだぞとささやく男に。

付き合ってられないと突っぱねるのだが、男は何枚かの新聞を取り出し、折り目を丁寧に広げると勝手に読み上げ始める。

何が言いたいのだと尋ねる王に、男は。


3日後決着がつく。それを見てまた話をしようと言って。来た時と同じように、どこかへ消えていった。新聞を残して。


読み上げていた新聞は最近世界を賑わわせている渓国と論国、両国は今、戦争の真っ最中、もう数年近く戦っているのだが男は3日後だと言った。


そして3日後。

男が言う通り、戦いは終わり、どちらの国も甚大な被害を出し結局どちらが勝ったと言うわけでもなく、仲介に入った南国によって、両国は和平条約を結ぶこととなった。


そしてまた男は現れ言う。

何もこの国が戦を仕掛けろとは言っていないのだ。仲介役を買って出て、その分うまいところをもらう役をするのはどうだ。

また、すぐに別の場所での争いが始まり、やがて戦争になる。戦い、疲れた国と国の間に入って恩を売るのも良いしどちらかの国を支援し、この国のものを買ってもらうのもいい。


しゃべる男に、そして3日と日にちまでぴったりと当てたこと。

なぜそれがわかったのかと男に尋ねると満面の笑みで。

雇われていたからさぁ。だけど、戦が終われば用無しだろ、秘密を知りすぎているし、今は追われている身だ。だが、王様、あなたが雇って身の安全を保障してくれたら存分に、あなたを優位に導いてみせよう。



話しながら話しながら、少しずつ歩みよりそして手を伸ばせば、触れ合える場所まで近づき、男が何かをささやくと。

途端に、玉座で気を失う王。

すぐさま、男は、人呼び王が急に倒れたと、伝えると、自らは新しく雇われた用心棒であると言い周囲を確認してくるとその場を離れた。そして、陰から王を守っていた兵たちを順番に軽く見つけて、一人一人ささやきかけて気絶させ、揺り起こす。

起きた兵たちは皆揃って王様は大丈夫かと言うのに、王様は大丈夫です、でも敵の姿が見当たりませんので、探しています言って、また彼らにも、密かに頼まれた用心棒であると名乗り、彼らの懐にするりとするりと、次々と入り込んでいった。


もちろん襲撃者はどこにもいない。


事件は、犯人が見つからぬまま。

王様が無事であったことを鑑みて、また他国から狙われては困るが、故に、内々に警備の再検討をすることと、わずかに数名襲撃者を探すことを命じて、これ以上の騒ぎにならないように、事件は幕下ろしとなった。


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