第26話 デジャヴ

統括室を出た俺とシャスはそのまま冒険者ギルドから出て行く。依頼を見る必要がなくなったし。


ギルドから出て少し歩くと、ギルドのほうから野太くでっかい声が聞こえてきた。なんの騒ぎ・・・・・・あぁ、統括が言ってたな。すぐに発表されるって。

フードとかで顔隠せば面倒事避けれるか?そうしたらシャスも被ってるから黒フード2人組という不審者コンビが誕生してしまう。顔知られてないはずだからそのままでいっか。王都とアルレルのギルドはまあ仕方がない。アルレルのギルドはほぼ毎日行ってた上に恐れられてるし、王都ギルドは統括のせいで注目されてる。いくら冒険者といってもあの場面を見ていれば、新しいSランクが俺だってすぐ分かるだろう。


考えるのが嫌になったから頭の隅に追いやっておく。王都には早くめに着いたおかげでまだ時間には余裕がある。このまま宿とって今後の予定をたててもいいが、どうせだしちょっとぶらついて行こう。


「このまま歩いてミニ観光するつもりだが、どこか行きたいところとかあるか?」


「いいえ。特には。」


なら適当に歩いて、途中で良さげな宿に入るか。

と思って歩いていたが、俺は面道事に呪われているのか?


「おい、止まれよ。」


男数人が俺達の前に立ちはだかった!(笑・・・・・・えねぇよ)


「お前ら、何様つもりだ?統括に呼ばれたってだけで、何も思って無いみたいに道の真ん中通りやがって。しかも聞けば冒険者だぁ?ふざけんなよ!」


んー?なんか今までと違うような・・・・・・。


「おまえ等に教えてやるが、冒険者ににも礼儀やマナーってもんがあんだよ!お前らみたいなガキがでしゃばっていい世界じゃないんだよ!」


いや違って無かった。俺に統括みたいな鋭すぎる勘は無いか。冒険者がキレてかかる理由はどこもいっしょ。暇なのか?


「なぁお前ら、俺達がでて行った後に掲示板か何か見てないのか?」


「あ?そんなもん今は関係ねぇだろ!」


あぁ。これ俺がSランクにあがったことを知る前に来ちゃったのか。それにしても何回絡まれるんだろうな俺。外見が弱そうに見えるのか何なのか知らないが。恒例行事になりつつある。今後新しい街に行ったりすると強制で絡まれるのか?そう考えると憂鬱だ。パターンをコンプしないかこれ。今はギルドの外、道のド真ん中。外はサネル以来2回目だな。前は裏路地だったが。


まぁ、俺今Sランクだし?こういう街のなかで潰しても問題ないだろ。Sランク=天災って見られてるから、こいつらは天災、地球で言うと自ら津波に突っ込んで行くようなものだ。そう考えてみると先に手を出されなくてもサクッとヤっちゃっていいんじゃないか?

俺が結論を出してじゃあヤりまーす、となったところで俺に前に猫耳が見えた。


「さっきから黙って聞いていれば・・・・・・。まったく下らない。あなた方の言うことは筋が通っていませんし、そもそもあなた方にとやかく言われる筋合いはありません。そんなくだらないことで主様の邪魔をしないでいただけますか?」


「はぁ!?お前も礼儀がなってねえなフード女!お前に冒険者の礼儀ってもんを叩き込んでやる!ついて来い!」


「いいでしょう。受けて立ちます。」


カン!(ゴングの音)


は?












はいと言うわけで戻ってきました冒険者ギルド!どこかのネコが勝手に喧嘩買った、売った?せいで!

今いるのはギルド地下にある闘技場らしき場所。アルレルにあるんだからそりゃ王都にもあるよな。いや最悪だった。何がってここに来るまでが。冒険者ギルドから正式に発表されて、俺達が出て行ってすぐに戻ってきたから、最初にいた冒険者がほとんど残っていた。後の反応は過去一だったとだけ思い返すとしよう。

内心ちょっとキレつつ、今回の元凶に近づく。


「おい、シャス。」


「ああ、主様。申し訳ありません。お楽しみを横取りしてしまい。ですが主様の忠実な奴隷である私が不届きものを成敗して参りますので。」


「いやそうじゃねぇよ。若干当たってるけど。」


キョトンと首を傾げるシャスに俺はあることを言う。こいつが絶対忘れているであろう事を。


「俺はアルレルで言ったよな?俺が言うまで手出し禁止って。」


「あ」


ほらな。


「そ、それはほら。アレです。無礼を働くものを主様の前から排除するための行動でして。」


シャスは最近隙がなくなって行ってるけど、たまに元に戻るんだよな。


「ってアレ?私は命令で縛られてますよね?何故動けたのでしょうか?」


「それは俺が契約を用いていないからだ。通常の奴隷契約は俺の契約より下位だから、俺が術式を通して命令しない限り拘束力が発動することはない。ったく。今回はいいからお前の言う不届きものを蹴散らしてこい。」


「はい!」


シャスがルンルンで歩いていった。尻尾揺れてるから機嫌がいいのが丸分かりだな。

俺は上の観客席のひとつに座る。周りの観客席はほとんど埋まってる。冒険者がほとんどだが、中にはギルド職員もいる。まぁ、勤務時間が自分の自由なのは冒険者のいいところだ。観客同士で経緯や予想をしている。俺が座ったところの周りは誰も座ってこないから静かでいいな。

というか何か既視感あるなとは思ったが、ギルド内と外という違いこそあれど、俺とラスカの時とまんま一緒だ。と言うことは戦った後、シャスはあの男たちと仲良く・・・・・・ならないな。さっきまで機嫌良かったのに今は目の前のやつに殺気を振りまいている。


「お隣、失礼します。」


そう言って俺の隣に座ったのは統括だった。


「先程、青い顔をした職員が駆け込んで来まして。あなたとシャスさんが冒険者数人とともに戻ってきて、ここを借りるって聞いてびっくりしましたよ。急いでここに来たのですが、間に合ったようですね。」


「文句ならシャスに言え。俺じゃない。」


「おや。そうなのですか?」


俺はざっくり事の経緯を説明する。


「なるほど・・・・・・。申し訳ありません。うちの支部所属の冒険者が短時間で2回もご迷惑をおかけして。」


「お前が謝ることじゃない。冒険者がああいった人種なのは嫌ってほど分かってる。もう何回絡まれたか。」


やはり体格か?身長なのか?


「しかし何故彼らはSランクに喧嘩を売るようなマネをしたのでしょうか?Sランクのことは理解しているはずですが。」


「奴らは俺達のランクを知らないようだったぞ。恐らく、というかほぼ確実だが、Sランクの告知を見ずにでてきたんじゃないか?そんなことより統括。奴らのランクは?」


「私に対して畏まる必要はありませんよ。呼び方も友人に接するように名前で構いません。たしか、彼らの最も高い者でCランクだったはずです。」


「ならちょうどいいな。Sランクの俺はともかく、これでシャスがAランクの実力があるって分かるだろう。」


「それだけシャスさんはお強いということですか。レイさんがAランクにしようとするぐらいですから。私の見立てが間違っていなければ、あなたは間違った評価を嫌う。自分に利があるとき以外は。違いますか?」


「合ってるよ。ほんとに長い付き合いのある友人みたいに当ててくるな。ま、見てれば分かる。シャスのあの様子だと、今から行われるのは、少なくとも戦いではない。」


俺とフルーガルは終始そんな雑談をしていた。





ちなみにこの様子を遠目にみていた冒険者達は、Sランクと統括が話をしている。何か重要な話をしているに違いない。と勘違いしたとか。その話は誇張され広まっていったとかなんとか。










——————————————————————

【あとがき】


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どうでもいいですが猫とか犬とかって可愛いですよね。








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