Day24「朝凪」

 今の心持ちを表す言葉を探せど、上手いこと見つけられない。


 あるべきものがないような違和感。

 動くべきものが動かないようなもどかしさ。

 煩わしさが減って解放された気分なのに、それを申し訳なく思ってしまう罪悪感にも似た心持ちを何と言えば。


「海辺から中継でお届けします。朝凪でしょうか。今日は風がなく、朝から熱気が籠って、こちらの元気もなくなりそうです」


 テレビから聞こえてきた女性キャスターの声に、ふと天啓を得た。


 朝凪。朝の爽やかさに不似合いな無風の状態。


 そうだ、朝凪だ。


 闇夜になる前の夕方の寂しい凪ではなく、これから明るくなるときの唐突な無風。


 明るすぎる彼女との邂逅が数日ぱったりとない違和感は、きっとそれだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る