Day8「雷雨」

 こんなに慌てたのは久々かもしれない。


「どうしたんですか、今里さん」

「ふおお、不意打ちの村雨さんボイスは沁みますなあ」


 いつも通りの彼女だが、その笑顔も作業着もびしょ濡れである。

 ちらりと廊下に設置された窓の外を見ると、タイミングよく雷の音も聞こえてきた。


「この中、何故外へ?」

「実験ごみを捨てに行ったら、めっちゃ降ってきまして。いやあ、お見苦しいものを」


 確かに産廃置き場はこの建屋から少し遠いところにあるけれども。


「一応貴女は女性なのですから、いくら濡れても透けない作業着とは言え気を付けてください。早く着替えて」

「たまらん!」


 彼女は顔を覆ってしまった。


「村雨さんお優しすぎ。好き! 死ぬ!」


 大丈夫そうだ。

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