Day3「飛ぶ」

「飛んじゃったんだよ」

「何が」

「測定データ」


 昼休憩、志保さんと一緒にお弁当をもぐもぐ。

 向かい合った二人の顔は真逆だ。コンビニおにぎりを頬張るわたしは暗く、デザートのカップケーキをちまちま食べる志保さんは明るい。


 いや、彼女の表情は無関心って感じなので真逆ほど明るくもない?


「で、それの何が大変なの」


 事務職の志保さんは文系なので、こちらの苦労がぴんと来ないらしい。羨ましい!


「昨夜十六時間かけて取ったデータが飛びました。消えました。一から測定し直し。昨日の繰り返し。いやだー!」

「はあ、よく分からんけど頑張れ」

「再検ほどむなしいもんはないのです。癒しをおくれー!」

「村雨さーん、早く来て。こいつがうざい」

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