Day1「夕涼み」

 予想より装置の降温に時間がかかっているため帰れなくなってしまった。

 このサンプルを終夜で測定かけたかったのに!


 やさぐれながら、少し気分転換でもと夕風吹く屋外に足を踏み出したところで。



「おや、今里さん」



 村雨さんの声で腰が抜けた。

 いつものことである。


 目の前には、これから帰るぞーというお姿の村雨さん。


 ふおお、何たる僥倖。いつもの作業着ではない、ポロシャツにジーンズというラフスタイルが既に眩しい。



「あ、ありがたやー」

「今里さん、毎度のことながら奇怪な行動はやめていただけますか」

「お声聞けただけで残業頑張れる!」

「はあ」

「溜め息すらたまらん最高!」



 涼しい夕風の中、わたしのテンションだけが過昇温されていた。

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