イケボがわたしの恋を信じるまで~夏の日常~【文披31題2024】

伊古野わらび

【プロローグ】今里さん視点

 同期入社の事務職、志保しほさんは言う。



「やっぱり顔! 恋人にするならイケメンがいい!」



 対して、機器分析専門のわたしは言う。



「顔はどうでもいいです。声! 声のいい人が好みです!」



 だって顔は最悪見なくても会話できる。


 でも声は聞かなきゃ会話が成り立たない。

 ならイケボがいいじゃないか!


 という訳で、わたしの歴代の彼氏は顔や体型はさておき、とにかく声がよかった。

 ただもれなく「きみは結局声しか好きじゃないんだね」と去ってしまった。


 ああ、わたしのためのイケボは今いずこ。思わず腰が抜けるような最高の声は、どこに行けば会えるのか。


 と思っていたところに!



 わたしは、運命と出会ってしまった。職場の廊下で、村雨むらさめさんという運命に。

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