第8話
さて、そんな訳で早速帰って来た私は倒したイノシシとその他いろいろなモノを持ってその足で『研究ラボ』へと向かうのだった。
そこは簡易的に空いていた区画をそのまま丸っと改造して作った場所であり、今のところ権限的に私と私の同類と、まあ、多分ないだろうけどオリジンだけが立ち入る事を許されている。
そこで何をするのかって言うと、例によってまずは経過観察。
外の世界にいった私はこの後どのような事になるのか、身をもって知ろうって事である。
これに関しては多分大丈夫だろうなーとも思いつつ、それの根拠を得る為に持ち帰って来たいろいろなものをサンプルとしてデータを集めるのだ。
この世界において、生の生き物というのは貴重な存在だ。
基本的に動物は生活区画には存在しないし、いるとしても小さな小鳥が精々である。
植物は一応生えているけどそれらはすべて決められて都度管理されているし、雑草もほぼ生える余地はない。
生える余地はない、がしかし生えてはいるのである。
これが意味する事はつまり、雑草がどこからか持ち込まれているという事であるし、そして雑草の種はどうやって持ち込まれているのかと言うと風に吹かれてか、あるいは生き物を媒体としてであろう。
つまり、食べ物として生き物が食べ、そして糞として排泄されたものがそこから生えてくるって奴だ。
さて、話を少しだけ変えよう。
このカントーエリア第七支部を含めたこの世界の話について。
SFにありがちな巨大な壁と屋根によって覆われている。
それは透明であったりあるいは金属光沢を放っている部位もあったりと規則性はあまりない。
外側の遠くから壁と屋根を屋根は凸凹としているだろう。
建物を建てるたびに必要な分拡張するため、特に屋根のところは凸凹している。
まあ、基本的に建物の高さには上限が決められているので、屋根を拡張するというのは滅多な事がない限り行わないのだが、それはさておき。
そんな環境に置かれているこの「内側の世界」の植物と「外側の世界」の植物。
一体どのような差があるのか?
動物の肉体に関しては、ちょっと調べようがない。
例によってあんな巨大化した生物は「内側の世界」には存在しないからで、そしてその巨大化の理由が何なのかっていうのもちょっと調べようがない。
汚染によるものだったとしても肉からその汚染物質が出てきたとして、それが異常な巨大化の原因とは確定出来ない。
もしかしたら何らかの栄養を獲得する事によって巨大化しているのかもしれないし、するかもしれない。
つまり、何も分からないって事である。
そんな訳で、早速調べものを開始。
植物達をまずカメラで撮ってそれからそのデータをAIに通してこれがどのようなモノなのか、該当するものがデータベースにはないかを調べてみる。
流石に厳しいかと思ったが、案外あっさりすべての植物が「内側の世界」にあるものとほぼ同じである事が分かってしまう。
マジかよ。
ただ間違いなく植物の葉の大きさは私の知っているそれらとは違う。
これに関しては、そもそも植物の成長を管理された「内側の世界」のそれしか見た事がないってだけかもだけど。
……植物の細胞、汚染がないかを確認。
細胞に関してはそれこそ化け物みたいになっている事はなかったし、そして葉っぱなどの気孔、表皮などに目立った汚染もない。
ありていに言ってしまえば、綺麗そのままである。
つまり何が言いたいのかっていうと、これやっぱり「外側の世界」に汚染はないんじゃねって事である。
「……」
これは、真っ先に情報を伝える事は出来ないかもしれない。
もしかしたらそうしたら開拓合戦が行われるかもしれないし、そしてそれには間違いなく住人達という人的資源が用いられる可能性が高い。
ひ弱で文字通りの温室育ちな人々がそんな重大労働に耐えられるかって言うと間違いなく耐えられないだろうし、ていうかあくまで「汚染が今のところ見つかってない」ってだけで危険度に関してはまだ完全には分かっていないのである。
とはいえ、オリジンには伝えるしかない。
義務と言うか役割的に彼女には私が「外側の世界」に出る事を伝えるしかなかったし、だからその結果もまた彼女に伝えるしかない。
そしてそうしたらどうなるか――オリジンについては私もちょっとどのような存在なのか図り切れてない為、すぐに伝える事は出来ない。
とりあえずは、そう。
まずは、時間稼ぎ、か。
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