第17話 野宿2



「ここらへんって…どんな肉あるんだ?」


フルールはそうつぶやいて、あたりを見回した。

ゴブリン…は、あんまりおいしくないし。

というか、ゴブリンの肉が好きではない。

(とりあえず歩いてみよう)

そういう結論に至ったフルールは、てくてくと歩き出した。


「せめて、ワイルドボアくらいは…って、いないか。ここ、一応キャンプ場だもんな」


いたら困るよ。

本当になんもなかったら食パンだな。

…でも、肉が食べたい。


空から肉が降ってくれば、ラクなのに―。


フルールはそんなことを思いながら、天を仰いだ。

すると。


「…あ、いた」


結構上のほうで、ワイバーンがくるくると飛んでいた。



「ラールベ」

呪文を唱えると、杖の先端から、イキオイよく無数の光の帯が飛び出し、ワイバーン狙ってふっとんでいく。

それに気づいたワイバーンは、必死で逃げ回った。

だが、光の帯も、ついていく。


「ラールベ」は、「リーズべ」と違って、狙った獲物を追いかける。


全く、ラクな魔法である。

今までキレイに避けていたワイバーンだが、油断したのか、光の帯がワイバーンに命中した。


ワイバーンは悲鳴をあげたあと、地面に落っこちた。


♢♢♢


「…皮、はぐか」


さすがに、ワイバーンの肉を、このままかぶりつくわけにはいかない。

魔法で、ゆっくりとワイバーンの体の皮と骨、そして頭の部分もはぎとった。


目の前には、ピンクのお肉が。


うまそうだ。

「焼いて食べよう。…そういえば、水助は…?」

キョロキョロとあたりを見回していると。

奥のほうから、枝と落ち葉を持ったスライムが、げっそりしながら駆け寄って来た。


「フ、フルール…持ってきた…」

「お疲れ。もう寝ていいよ」

「やったー!」


水助は枝と落ち葉を置いたあと、ぴょんぴょんとはねながらテントの中にもぐった。

それは無視をして、フルールは枝を並べ、魔法で火をつけた。

ぼうっと、ランプの火よりも明るくともる。

あたりは暗くなってきたので、ちょうどよかった。

「あったけぇ…」

寒い季節に、焚火は最高だ。

(消えないうちに…っと)

水助が持ってきてくれた落ち葉も投げる。

さらに火の勢いを増した。あったかい。


その上に、持参していた三角形の形をした…なにかと、アミをのせる。


たぶん、アミにのせて肉をやくんだろうな。

アミの上に肉を置き、コロコロとトングで転がしてみる。

ちなみに、トングも家から持ってきた。

調味料は…ないからベツにいいや。


しばらくすると、いいにおいが鼻をくすぐった。


「あ…うまそう」

肉の中にまで火が通るように、もう少しだけアミの上に置いておいた。

すると、水助がテントの中から飛び出してきた。


「肉!肉のにおいがする!」

「うるさいなぁ。肉は逃げないから」

「分かってる!」


フルールは持参していた紙皿を用意し、その上にお肉を置いた。

ナイフで切ってみる。


肉汁があふれ出し、さらにいいにおいがした。


やべ。焼いただけなのにこんなにおいしそう。

思わず、ヨダレが垂れそうになる。


「…いただきます」

「いただきまーぁす!」


フルールと水助は手を合わせた。

そして、ワイバーンの肉のあまりのうまさに、感激したんだとか。



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