第1話 真夜中の訪問者
「今って何時だろう?」
暗い部屋を見渡す。
まだ夜のようだ。
外の空気が吸いたくなって立ち上がろうとした時、頭と右脚に激痛がはしる。
「いたた、、なんで怪我したんだっけ?」
包帯の巻かれた脚を見て思い出そうとするが頭がズキズキして考えられない。
一旦、安静にするか とベットに寝転び直す。
なぜか昨日のことや明日の予定など普段の記憶が飛んでいる。
この怪我もなんでしたのか全く覚えていない、、もしかしたら怪我の影響で記憶が軽く飛んだのかもしれない。
起き上がったり使用人を呼ぶことも出来ないためただ天井を見つめてぼーっとすることしか出来ない。
目も覚めてしまい再び眠れる気配もしない。
月明かりが差し込み自然と視界をバルコニーへ向ける。
するとそこにはひとつの人影があった。
誰かいる。もしかして刺客かもしれないな。
普段であればすぐに声を出して助けを呼ぶはずが頭も体も重く、声を出す元気がない。
おまけに記憶が曖昧としているからなのか今このときが現実として感じられなく、ただ見つめている。
するとその人影はバルコニーから部屋へと入ってくる。
まだ夜なので相手の顔ははっきりとは見えない。相手も同じなのかこちらが見ていることには気づいていなさそうだ。
足音を立てないようにゆっくりと近づいてくる。
ベットまであと数歩というところでその人の顔が月の光に照らされる。
バチッと目が合う。その人の目は月夜に照らされてアメジストのようにキラキラしている。
目以外が布で覆われ、全身が黒色のローブで包まれていてよく顔が見えない。
ただ目を見開いて驚いていることだけはわかった。
刺客の方がそんなに驚くことある?
と思いながらも頭が重くて声は出ない。
「ミ、ミシェル?」
黒ずくめの人は僕の名前を知っているようだ。
刺客という感じでもない。
--誰だっけ?
思考を始めた途端ズキっと痛みが走った。
あーダメだ、今は考えられない。
部屋に沈黙が広がると
「す、すまない。帰るよ。」
と言ってバルコニーから飛ぶように消えてしまった。
何もせずに帰っちゃった、なぜ僕の部屋に来たのだろう?
綺麗な瞳だったな、、
そんなことを考えていると頭に記憶が流れ込んでくる。
あれ誰だろう?
こっちを見て微笑んでいる。
この綺麗な瞳はさっきの黒ずくめの人だ!
ただ目から下はモヤがかかったようにぼやけていてよく見えない。
思い出したと同時に全身から冷や汗が吹き出した。心音も早まった気がする。
なぜか得体の知れない本能から来る恐怖を感じる。
もしかして本当に悪い人だったのかな?こんなに体が拒否するなんて、、
やっぱり記憶が抜けている部分がある。
そこまで考えて僕は疲れてしまった。
ゆっくりと目を閉じる。
気づくと朝日が差し込んでいた。
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