第9話 バレットダンス


剣地:シムケン山の山頂


 プテラノドンもどきは一匹じゃないようだ。スナイパーアイのおかげで、遠くにいるこいつの仲間がよく見える。どうやら、一匹が俺と戦い、弱らせた時に一輝に襲い掛かるつもりだ。鳥にしちゃあ考える。消毒草を大量に採取して終わりって思っていたけど、こいつらを全滅させないとまずいなこりゃ。成瀬とルハラはまだ来なそうだし、俺一人でやるしかないか。


 お? いきなり、プテラノドンもどきが奇声を上げた。そして、飛び上がって俺に襲い掛かった。くちばしの攻撃をかわし、俺は剣で刺そうとしたが、攻撃をかわした時にプテラノドンもどきは再び飛び上がっていた。剣でこいつの相手をするのは分が悪い。だったら銃で相手してやる。俺は剣をしまい、二丁のハンドガンを手に取った。二丁拳銃のスタイルなら、もし大群で襲ってきても対処できる。ガンマスターのスキルのおかげで、銃を完璧に扱うことができる。アサルトライフルだろうが、スナイパーライフルだろうが扱えるし、銃器扱いなのかバズーカやミサイルランチャーに関しての知識もある。というか、この魔法がある世界でバズーカとかミサイルがあることに驚いたが。もちろん、ハンドガンに関する技術や戦術の知識もある。二丁で扱うなんて、朝飯前だ。


「さぁ来い! プテラノドンもどき!」


そう言って俺は銃を構え、空から襲ってくるプテラノドンもどきに向けて狙いを定めた。向こうは俺が銃に変えたことを知らずに、突進してきている。俺は一呼吸した後、右手の銃の引き金を引いた。弾は勢いよく発射され、プテラノドンもどきの額を貫いた。

相手を確実に仕留めたことを確かめるべく、俺は再び一呼吸してプテラノドンもどきに近付いた。白目をむいているし、羽を突いても動かないから、倒したのだろう。その後、俺はこいつに関しての情報を得るため、端末を使って情報を調べた。




名前:プテラモドキ


種族:鳥獣


伸長:一メートルから三メートル位(つま先から頭まで。羽や角は含まない)


体重:三百キロ~六百キロ


 特徴としては大きく、鋭い爪で獲物を狙う。奇声を上げ、獲物をひるませて襲うこともあるので、鼓膜が破れないように注意。


 よく群れで動くので、一匹を見かけたら二十匹はいると思え。


 群れの中にはリーダー格のプテラモドキが確実にいる。そいつを倒せば群れは、何をすればいいか分からない混乱状態になる。倒すのであれば、先に群れを統一するリーダーを倒すことがおすすめ。プテラモドキのリーダーの決め方は大きさで決まる。群れの中で大きいプテラモドキがいたらリーダーと思え。そして、銃が魔魔力で攻撃せよ。




 本当にプテラモドキって名前なのか……何この偶然。


 おっと、そんなことより、プテラモドキの相手をしないと。いつの間にか、俺の周りにプテラモドキが集まってきている。ちょっと気を引き締めて行かねーとやべーなこれ。成瀬とルハラは……あと少しで合流できそうだな。だけど、あいつらの活躍の場はなさそうだな。俺が全部倒すから!


「プテラモドキ。俺がまとめて相手してやるぜ!」


 俺の声を聞いてか、プテラモドキは一斉に奇声を上げた。耳がキーンってなったけど、すぐに治った。俺の隙を作ったつもりなのか、右手の方から五匹のプテラモドキが襲い掛かった。俺はすぐに右手の銃で狙いを定め、弾を放った。弾丸は前にいた三匹を仕留めたが、後ろの方を飛んでいた二匹は左右別々の方を飛んでいき、別のグループと合流した。次に、左の方から群れが襲い掛かった。数はさっきより多い八匹。こりゃ左手だけじゃあ対処できない。俺は右手も使い、両手で弾を放って攻撃した。その結果、前にいた五匹は頭を貫かれて落ちて行った。後ろの三匹も死にはしなかったが、ダメージを追ったようだ。羽の動きが遅くなった。


 今の反撃で俺は八匹のプテラモドキを仕留めた。一部のプテラモドキが俺の強さを察し、逃げようとしていた。逃げるならそうしてくれ。俺はそう思っていた。だが、一匹のプテラモドキが咆哮を上げた。その咆哮を聞き、逃げようとしたプテラモドキは動きを止め、戻って行った。どうやら、今さっき叫んだ奴がリーダーってわけか。そいつを倒せば、後の連中は混乱する。なら、リーダーをやるしかないな。俺はスカイウィングで飛び上がり、リーダーに向かって飛んで行った。一気にリーダーを仕留めるつもりだ。俺の動きを察知したプテラモドキが俺に向かって飛んできた。俺は空を飛びながら、銃でプテラモドキに攻撃を仕掛けた。すると、後ろから二匹のプテラモドキが襲い掛かった。俺は後ろを振り向き、その二匹を仕留めた。その後、再びリーダーに向かって飛んで行った。


 そろそろこの戦いにも決着がつくだろう。俺はそう思っていたのだが、途中で動きが止まった。バカなことをした。スカイウィングを使う時は、魔力を使う。そのことを忘れていた。




成瀬:シムケン山の山道


 上の方で銃声が聞こえた。剣地が何かと戦っている。確かに依頼書には変なモンスターが住み着いたとか書いてあった記憶がある。もし、剣地がそいつと遭遇し、戦っているなら、早く合流しないと!


「ナルセ、一旦落ち着こう」


 ルハラが私にこう言った。私は焦っているのだろう。早く剣地を助けたいという気持ちが、焦りを作っていた。


 深呼吸し、早く剣地と合流するため、山頂へ向かおうとした。その時だった。


「………………ァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


 上から剣地が降って来た。え、どういうことなの?


 冷静になろう。私は冷静になり、風の魔力で剣地の落下速度を下げようとしたが、そのまま剣地は地面に激突した。


「い……痛い……」


 剣地を小さく悲鳴を上げていた。何やっていたのか知りたいところだが、その前に剣地を治療しないと。私は急いで剣地に近付き、優しく抱きしめた。


「イデッ! お前、抱き着くなよ。骨が何本か折れたからあまり触らないでくれ」


「静かにして」


 悲鳴を上げる剣地にこう言い、私はもう少し強く抱きしめた。


「痛いって、いた……痛くない。あれ? 傷が治っている。骨が元に戻っているのか?」


「忘れたの? ラブハートのスキル」


「ん? そうだ、お前そんなスキル持っていたな」


 ラブハート。抱きしめた相手を癒すことができるスキル。相手への好意が強いほど、癒す力は増す。これで、私の気持ちがあいつに伝わるといいけど。


「すげーな。もう傷が治ったよ。サンキュな、成瀬」


「う……うん」


 どうやら、これだけじゃあ私の気持ちは分からないみたい。私がため息を吐いた直後、変な奇声がとどろいた。


「何なのこの声!」


「プテラモドキって奴だ。あいつらと戦っていた。結構面倒なモンスターだぞ」


 私たちの目の前に、プテラノドンみたいなモンスターが迫って来ていた。どうやら、剣地はこいつらと戦っていたみたい。


「プテラモドキかー。リーダーはまだいる?」


「ああ。後ろにいるでかいのがそうだ」


「ちょっと、どういうこと? 説明して」


「プテラモドキってモンスターと戦っているんだ。あいつらは群れで襲う少し頭のいい奴らだ。リーダーを倒せば楽になる」


 その直後、プテラモドキとかいうモンスターの一部が、剣地に襲い掛かった。ケンジはそれに対抗するため、銃を放っていた。


 私はモンスターブックであいつらの詳細を調べた。剣地の言う通り、リーダーを倒せば何とかなるか。


「剣地、あんたスナイパーライフルはある?」


「ああ」


「私の魔力で雑魚は一掃するから、あんたはリーダーをやって」


「分かった。無理するなよ」


 剣地はハンドガンをしまい、スナイパーライフルを取り出した。私はできるだけ強い魔力を解放し、周囲にいるプテラモドキ達に狙いを定め、攻撃を始めた。


「爆ぜろ!」


 私の声に合わせて、プテラモドキの周囲は大爆発を起こした。目に見えない火の粉をあいつらの周囲に飛ばし、強い魔力で火の粉が爆発するように仕掛けたのだ。私の狙い通り、大爆発が起きた。爆発に巻き込まれたプテラモドキは黒焦げになって落ちた。


 部下が全滅したことを知ったのか、リーダーは慌て始めた。そこで、剣地のスナイパーライフルの弾丸が、リーダーの額を貫いた。


「やったぜ」


 弾丸を受けたリーダーは、部下の後を追うかのように下へ落ちた。


「終わったな。これで安心して消毒草を取りに行けるな」


 剣地がスナイパーライフルをしまってこう言った。その後、私たちは山頂に向けて、歩いて行った。

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