絡繰世界で小さな魔法を

八咫

序章 転生

第1話 転生



 舌打ちを吐きながら少年はゴミを漁っていた。


 鼻を突き刺すような異臭を纏い、鉄屑の中に飛び込んでいく。

 前世のスラム街よりも劣悪な環境に顔を顰めながら、今日もいつも通りゴミを漁っていた。


 この体が生まれたのは12年前、明確に俺としての自我が出てきたのがちょうど2週間ほど前だった。


 転生にも驚いたが、そこまでは知識として聞いたこともあったのでかろうじて踏みとどまった。

 それよりも生まれた境遇の方が問題である。誰が好き好んで身元不明のゴミ漁りの少年に生まれ変わりたいというのだ。


 前の世界では仮にも最大規模の王国の騎士団長を務めていたのだ、目に入ってくるゴミや汚らわしい虫に対して嫌悪感や不快感が抜けないのもしょうがないだろう。

 前世であれば即座に焼き払っていたゴミもこの世界では全く魔法が発動しない。


 少々、イラつきながらもゴミを搔きわけるこの手はとも会っていなかった。




 第18低住地区


 このゴミ捨て場、もといスラム街についている名前であり、この周辺の中住地区のゴミを一手に引き受けている大きなドームに囲われた巨大な町である。

 はるか上に見える空はホログラムであり、あそこにはこちらを監視しているシステムが存在している。

 が、この町は規模に応じて人口が少ないためおそらく機能していないだろう。

 人が少ない理由はしばらく前に大きな騒動があり、その際に死人が出すぎたためである。


 昼頃になると少年は日課のゴミ漁りを終える。一日分のゴミを台車に入れ、適当に体を水で荒い流す。

 ゴミを買い取り、ほかに回す役割を持つのは仲介屋だ。


 台車を引っ張りながら捨てられた金属で作られたぼろい店に入っていった。店自体は街の外れにあるため汚いゴミ漁りが行ったところで何か文句を言われることもない。


 スラムの仲介屋と聞くと、ぼったくる悪徳業者のように思えるが買取価格は比較的まともである。

 あくまで比較的であり、これよりも上に属している中住地区などではもっと高値で買い取ってくれるのだろう。

 だが、中住地区の敷居を踏むには一回のゴミ漁りではいささか高すぎる。


「レヴ、今日の収穫は?」

「電子部品10、カスタリテ5、電気銃の弾が20、電子アームの右手が1、壊れた電子機器が一、あとは貴金属だ。」


 カスタリテとは電子機器を動かすコアの一部分である。

 興味深げに仲介屋はそれを見る。


「へぇ……、毎度のことながらいいもの取ってくるな。よし、何と取引する?」

「電子部品とカスタリテはタルパに換金してくれ。貴金属は価値の半分を使って弾を入れる袋を頼む。」

「それだけか?」


 タルパはこの世界での通貨であり、不変の価値を持っている。


 仲介屋が残念そうに端に置かれた電気アームと壊れた電子機器を見る。

 だが、こちらとしてもこれらは売る気がない。


「この二つに匹敵する対価は銃だけだ。どうせ売ってはくれないだろ?」

「まぁな。……あれは子供の遊び道具じゃない。」

「俺が玩具に使うように見えるか?護身用だよ、護身用。」


 不貞腐れたように言う俺に、店主は苦笑いで返してくる。


「しかし、俺も電気アームは欲しいな。小型の携帯銃なら、いやこっちの方がいいか?」


 そういって店主が取り出してきたのは一つのチケットであった。

 怪訝な顔をして覗き込む俺だったが、その中身を見た瞬間反射的に店主の顔を見上げた。


「第7中住地区へ行くためのチケットだ。明日取引のついでに連れてってやる。」

「……いいのか?」

「GPS付きという条件はあるがいいだろう。太陽が昇ったらすぐにくるんだな。」


 ここでいう太陽とは天井に映し出された偽物のことである。

 太陽のある場所は光が強いなんて言うこともないため、ただの時計となっているがな。


「代金は電気アームだけでいい。壊れた電子機器はそこまで大きな値段で買い取れないからな。」

「ハハッ、修理して持ってくるよ。」

 

 笑いながら俺は電気アームを渡し、チケットやその他もろもろの品物を受け取った。

 収穫品を持ってきた袋に品物を詰め込み、店を出る。


 まだ日は沈んでいないためこのまま修理屋にもいくことにした。


 金属ゴミをかき集めてできた町に入っていく。

 すると先ほどからは考えられるような喧騒に包まれた。


 確かに人口は減ったため街が消えたりはしたが、その規模は変わっていない。

 居住地区のほかにも、食べ物を売って生活している八百屋や電子部品を組み合わせて生活必需品を作る修理屋は街にはなくてはならない存在だろう。


 人々の集団をかき分けて俺は進んでいく。俺の行きつけの修理屋は表通りにはないため気を付けていかなければならない。

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