第14話
翌朝、二人は言葉なく朝食を取る。
「レリア」
食事を終えてからセイがレリアに話しかけてくる。
「何だ、謝罪の言葉なら受け付けんぞ」
昨日の夜の遣り取りでの怒りが抜けないのか、刺々しい感じで返事をするレリア。
「違う、そうじゃない……。尋ねたいことがあるんだ」
セイは、レリアの怒りを気にせずに切り出した。怒っていることは解っているが、それは一旦置いて聞きたいことがあると言われてレリアは面食らう。
「なんだ……」
その態度に毒気を抜かれて、怒りを納めてセイの言葉を待った。
昨日から考えていたことなんだが、と彼が切り出してきた。
指を鳴らす行為での火付けの火力がわずかだが高くなっているということは話したが、そういった変化がレリアにも起こっていないか、ということが主な話だった。
少し剣を振ってみて欲しいと言われて、レリアは一通り剣を振ってみせる。
ここに飛ばされてきて、緊張が続いていた分疲労で少し鈍い気もするし、それほどでもない気もする。
「どんな感じだ? 剣が軽く感じるとかそういうのはないか?」
「……言われればそんな気がするかもしれないが、気のせいと言われれば、そうかもしれないと思える程度で違和感は特にない」
ぶれもなく、思ったところに思った速度で普通に剣は振れている……気がする、とレリアは感じいてる。
「そうか……。そうなると影響は限定的なのか……もしくは君の鎧の効果で阻害されている可能性もあるし、もしかすると個人差があるかもしれない」
セイが考えていたことを口にする。彼もあまり憶測だけで物を言いたくなかったがパートナーを傷つけるだけの沈黙を止めたようだ。
「今から話すことはかならずしも正解とはいえないが、都合が悪くて隠しているわけじゃないから……話すよ」
「ふむ、解った」
「ここに来てずっと魔素が濃いという話をしていたと思うが、考えるにその魔素が原因じゃないかということが起こっている。濃密な魔素によって人の魔力か何かが強化されているかもしれないんだ」
やたら火付けの火力がどうとか言っていたことと話が結びつく。なるほどここに来てからの違和感をずっと彼は考えていたのかとレリアは納得する。
「ということでレリア脱いでくれ」
納得したところに爆弾が投げ込まれる。
セイはいたって真面目な顔だった。
「はっ……お、お前いきなり何を言い出すんだっ。わ、私にいきなり脱げなどと……その……」
脈絡なく脱衣を迫られて戸惑うレリア。失礼な物言いながらそこは咎めず戸惑う辺り彼女は押しに弱いのかもしれない。
が、それで次期女王が務まるのかとも思うところである。
「…………あ、いやその……そういうことじゃなくて」
「ほほう、そういうこととはどういうことだ。隠さずにしっかりと説明してもらえるんだろうな」
自分の言葉の受け取られ方に気付いたセイが動揺すると、急にレリアが切り返して迫ってきた。
「何もかも脱いで裸になって欲しいとかではなくて……その鎧を……色々な効果が付与されている鎧を外して、この大深林の魔素を感じて欲しい……そういうことなんだ」
「ほほう……なるほどなるほど。全部は脱がなくていい。鎧を脱がせておいて、無防備になった私に襲い掛かって残りは自分で脱がそうというのだな」
セイが慌てているのに楽しくなったのか、とんでもないことを口にするレリア。
「違うから」
即、否定するセイ。
「違うのか!」
あまりに早い否定にレリアが怒鳴る。
「……襲って欲しいのか? レリア」
あまりの勢いに思わずそう尋ねてしまうセイ。その言葉にレリアは自分の言葉を省みて顔を赤くする。
「そ、そそんなことはないぞ。ただ、やはりこの鎧を外すとなると少し恥ずかしいな……」
「駄目か? 駄目なら別に構わないが……」
別に構わないといいつつセイはレリアに試みに付き合って欲しいという雰囲気を醸し出している。そんなセイの様子にレリアは思いきって彼に付き合うことにした。やはり押しに弱い次期女王候補。
もし武官派の将軍が居たなら、流されてはいけませんぞ、と諌めてくるだろう。
「解った……お前の提案を受け入れてやるから、さっさと済ませるとしよう」
二人きりという異常事態に何かがおかしくなっているのかもしれない、とどこかで思いながらもレリアはセイの提案に乗って彼に付き合うことにした。
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