失意の沼地④ 贖罪と罪滅ぼし
「クソッ…!!キリがない」
私は、辺りから迫ってくる泥の塊に思わず息を切らしながらそう呟いた。
「オイデェェェェェ…アソボウヨォォォォォォ……」
そう言って迫ってくる姿は吐き気を催すほど気持ちが悪い。
それに…
「この声、私…何処かで…」
その瞬間、私の頭が割れるほどの痛みが襲う。
私はその痛みに思わずその場に倒れ込み、嗚咽する。
カラダ…動…かない
その刹那、私は泥の塊に押しつぶされる。
どんどんとその重みは積み重なり、まるで罪のように私の心をえぐる。
「オイデヨ…アソボウヨォ、ニファァァァァ」
「ボクハニファノコトダァァァァイスキ」
「コレデズゥゥゥゥゥゥットイッショダネェェェェェ……」
「ウレシィィィィィィナァァァァァァァァァァァァァァァ」
「ボクカラァニゲラレェェェェルトォォォォォオモォォォッタァァァァァァ!!?」
「ボクハァァァァキミトツニナリタィヨォォォォニファァァァァァァァァ」
「コォォッチモウテェェェェヨォォォォニファァァァァァァ」
「もう、いや…!!助けて…」
私の口から出たのは、無様にもそんな…助けを求める言葉だった。
「お前ら…誰の仲間に触ってんだ」
私の上に被さっていた泥の塊は吹き飛んで行き、私は自身の体を持ち上げられ、体の後ろに担がれた。
「もう大丈夫だ。ニファ…」
あぁ…そうなのかもしれない、全てが繋がった。あの時…私が誰かに助けを求めたあの時、私を助けてくれたあの人は。今、すぐそばにいる人かもしれない。
********
俺、レントは今、怒髪天をついていた。
それはそうだ…自分の仲間をこんなにも痛ぶってくれたのだから。
「それに、お前ら顔を見ていると昔を思い出す様で、無性に腹が立つ…」
「シネェェェェェ、ガイラァァァァァァァ!!!」
その有象無象どもは、俺にめがけて一目散に向かってくる。
「マジでいい加減しろ…このウジ虫どもがァァァァァァ!!!」
俺はそう叫び、回転しながら全方位に空気の衝撃を与える。
「
空気の塊に押しつぶされた泥の塊は、一瞬にしてただの泥と化した。
しかし、妙にも…ソイツらは一瞬の内に泥から復活してしまうのだ。
変だな…コイツらからはまるで獣の気迫も、吐く息すらも見えない。つまり…生物じゃないってこと…か。
俺は四方八方を囲まれた中、必死に考えを巡らす。
「ニファ…!すまん、ちょっと動くぞ!!」
俺はニファを担いだまま、スコップを使い、泥を掘り進めながら元来た方向へと逃げていった。
********
「ふ〜ん。成る程…あの剣はいわばニファの試練ってことなのか」
俺はワットの説明を聞き、半分納得した様に言う。
「結論から言うと、あの勇者さんは勇者どころか、それを超越したのに成りかねない…
…いわば、化け物になるってことだよ。それに、レントさんは下手するともっとやばいのになるかも…」
…何となく想像はしてた。正直レントには…理を超えた、ナニカがあると思っている。そんでもって…やたらとレントと相性抜群な勇者さんもそうだとすれば、かなり合点がいく。
「正直、予想通りだな…んで、あの二人はやっぱり…その、そうなるのか??」
「さぁね…それは未来になってからのお楽しみよ」
そう言ってワットは、俺達のそばに寄ってきた俺のしもべを撫でる。
「ワン!ワン!!」
こりゃすっかり犬だな、おい…。それにしても、レントは上手くやってるだろうか。まぁ、アイツのことだから、何とかなるんだろうけどな。
空は曇り、先程から雨が降り始めた。
********
「しつけぇな…あっち行けよ!!!」
俺はニファを担いだまま、相棒でソイツらを思いっきり弾く。
リボルティングを使うのもいいが、それだと倒し切った後に反動で、ソロンの元まで帰れないかもしれない…それじゃあダメだ。考えろ考えろ。
何かこう、めっちゃでっかい雷でも呼べれば…
「雷…呼ぶ。吹かせ…?」
そうだ。アレがあるじゃないか!!
俺はニファを近くの沼木に寝そべらせ、後ろから追ってくる奴らに向かう。
俺は荷物の中からある物を取り出した。
「雷吹のブーメラン…!言って来い!!!!」
俺は空に向かってブーメランを思いっきり投げる。
ワットさんの使い方通りなら…行けるはず!!
そして、少し
ゴロゴロゴロ…ゴロゴロゴロゴロ!!!!!!
それは紛れもなく、雷の音だった。
「しゃあぁ!これでいける!!」
俺は相棒の持ち手を一回引き、天に先を掲げた。
「避雷針となった相棒に…降れ!天雷よ!!!」
俺がそう言葉を発した、その時だった。
ピシャァァァァ…!!!!!
天雷が俺たちに降り注ぐ。
正直かなり痛いが、これなら…耐えられる!!!!
「これでお前らとのお遊びも終わりだ。先にやられたニファさんの恨み、返させてもらう!!さぁ…痺れるな…よ」
俺はビカビカと光る相棒を、失意の沼地全体にあたる様に振り撒く。
「
相棒から放たれた光は空を切り、地を切り、全てを吹き飛ばす。
無様にも、泥の怪物共は光に当たるとボロボロに砕けて無くなってしまった。
********
「綺麗だね…」
ワットが沼地の方を指差し、俺に言う。
沼地の方を見ると、ビカビカと光り輝いていて、とても直視できないくらい眩しい。
「あぁ…最高だな。リペソル」
俺は、沼地のレントに向かってそう呟いた。
********
「ど、どうだい。俺の力は!!」
俺は沼地の跡形も無くなった方を見て、ただ叫ぶ。
そして後ろを振り返り、木に倒れかかってるニファを見て…
…ただ安心したのだった。
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