ゴロラ山?② 闇に飲まれる
今は夜。松明の明かりを頼りに、俺達は崖の上にいる狼と向かい合っていた。
「さてと、後は俺に全部やらせてもらいますかね」
そう言い、ソロンは円状に囲まれたシールドに人が通れるくらいの穴を開け、その中を通っていく。
「ソロンくん!!」
ニファが呼び止めようとしたが、俺がそれを止めた。
「いーや、アイツはいい…」
「何で!?いくら強くたって、一人で戦うのは無謀だよ!!」
俺はその言葉を聞き、アイツを思い出していた。
あぁ…やっぱり影響されてんじゃねぇか。それにしてもアイツ、今何やってんだろうな?
俺はシールドの外に出ようとするニファに、こう言った。
「アイツは俺らに心配されるほど弱くねぇよ。それに、アイツには
————————
レントがニファを止めてくれていたようだ。
…感謝するぜ、リペソル。
血の気が強い魑魅魍魎共は、俺がシールドの外に出てきたことを察知すると、途端に俺に対し襲いかかってきた。
俺はシールドの穴を塞ぎ、崖の上から降ってくる、奴らを迎え撃つ。
やっぱり近距離っていったらこれだよな…
俺は
「
俺は槍に変化した杖を使い、距離を取りながら狼どもを相手していく。
しかし、近接戦闘に慣れていない俺は、徐々に数の不利で押されていった。
「まずいな、やっぱり俺は、ニファ達みたいに切ったり殴ったりするのは向いてない…ギデサルム礼法に則って、ここは前衛を増やすべきか…!」
俺は奴らの内の二匹が飛びかかってくるのを見ると、素早く杖を入れ替える。
「
二匹が飛びかかってくるのを俺は華麗に避け、奴らの鼻の近くにこの杖から出る匂いを嗅がせる。すると…
「キャンキャン!!」
惚れ、すっかり俺の虜。これで人間も洗脳できたらいいんだけどね…
…残念ながら動物までしか対応していない。
「ほれ!奴らを蹴散らした方には、レントのパスタを分けてやる!!」
そう俺が言うと、二匹のしもべ共は、混乱する仲間に向かって飛びかかった。
「犬の分。残してやらねーとな…」
レントが後ろでそう呟いた。
それにしても。あぁ…仲間割れをするこの家畜どもは、何とも哀れなことかぁ。
俺はニヤつきながら奴らを見る。
いっけねぇ…さて、俺の相棒を出すか。
そう言い、俺は杖を闇から取り出す。
「こい、
…コイツは俺の最初の発明にして、実に1987回の改良を重ねた杖だ!!
これなしでは俺は語れないと言ってもいいほどだ。
「
俺がそう言い、杖を上にいる狼どもに向けると、杖からは波状に広がった熱が、崖の上にいた狼どもを焼き尽くした。狼どもは燃え、黒焦げとなった。
この杖の真骨頂は、魔法を飛ばす速度にある。
普通、魔法攻撃はファーヤーボールのような自然系統魔法の部類だと、どうしても着弾までに時間がかかる。そこで俺は、音波に魔法を乗せればいいのではないかと考えたのだ。
何せ…音の速さは秒速340m。おまけに水中だとその速度は5倍近くにまで、速くなるからなぁ…
若かりし日の俺は、これを作ったってわけさ。気がつけばこれが、一番のお気に入りになってた。
そうこうしている内に、俺のしもべ共が下に降りてきた仲間の狼らを一掃してくれたらしい。
と、その時だった。
「ワオォーーーン!!」
崖の上からそれまでの狼よりも一回り大きく、口が血に染まった狼が姿を見せた。
そして一気に降りてきたかと思うと、俺の僕のうちの一匹を噛み殺してみせたのだ!!そして、こちらを向き、ノソノソと距離を詰めてくる。
「ったく…俺のしもべを殺しやがって。せっかくお前らを倒したら、二匹とも飼おうと思ってたのに…」
ブラッディウルフの特徴は、口周りが赤く染まっているほど生物的に強いということにある。つまり、一番口が赤いアイツが、ボスということだ。
俺のしもべ共は、口周りがまだ白かったから可愛かったってのに…
「まぁいいや、一匹は生きてるし。そゆわけでトドメと行きますか…!!」
俺は音波杖を構え、血に染まった狼に超音波の一撃を放つ。
「
音波の波は一直線に狼の耳を砕いた。狼の耳からは血が溢れ出て、倒れた。
そして…周りには一切の被害は…ない。
「すまんな。ちょいとやりすぎちまった」
********
「うっそお…」
ニファはいつものように驚いている。
「お前、いっつも同じ驚き方しか出来んの?」
まぁでも初見だとそうなる。ソロンは魔法の技術も高いくせに、魔道具研究もやってるときたから、あんな強くて、よく分からん杖をいっぱい持っているのだ。
…そりゃあ驚くだろうな。
「まぁ…ともかく一件落着だな」
「うん、そうね」
俺達がそう安堵した。その時だった。
「え、何!?ちょっと…助け…」
ニファが崖の下。闇の中へと吸い寄せられる様に落ちていってしまったのだ!!
「マジかよ…あのおてんば勇者が…わりぃ、俺行ってくるわ!カルボナーラ先食べといて!!」
俺は相棒を持ち、崖の下へと降りようとする。
「あぁ…先食べとくぞ。レント!!」
ソロンの声がした頃には、俺は崖の下へと落下していたのだった。
********
「おい…いるんだろ?出てこいよ。今ならあの二人はいないぞ」
俺は陰に潜む、そいつに向かって言った。
「やっぱりバレてたか。ソロンの旦那」
闇から出てきたソイツは、俺の予想通りの人物だった
「俺も、お前と話したいことがたくさんあるからな。ワット」
そこにいたのは紛れもない。旅商人のワットだった。
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