プロローグファイナル(下) 予知夢
俺は夜の村を歩いていた。
昨日会った事を思い出しながら……
シーフースーと久しぶりに討伐に行って、俺の命を狙う勇者様と戦って、その勇者様と旅をすることになるとはなぁ。
人生何があるかわからんもんだねぇ…これも何かの因果か……
そんな事を思いながら夜の村を歩いていると、村の入り口に人影見える。怪しく思って近づいてみると、それは紛れもなく、シーだった。
「よぉ!こんなとこで何してんだ??」
「うぉ!!びっくりさせんじゃねぇよ。星を見てたんだ」
シーは驚きながらもそう答えた。
「確かに今日は綺麗だな。星」
天候は雲一つない晴れ。夜になると電気も消え、無数の星屑群がキラキラと輝いていた。
俺はシーのように、寝そべってその景色を堪能する。
「お前、明日行くんだってな…」
しばらく経った後、シーがそうポツリと呟いた。
「えっ!?どこで聞いたんだ。ソレ??」
「ソロンから聞いたんだよ。お前の口から俺にも言ってくればいいじゃねぇか。友達だろ?」
「すまん…」
俺は小さな声で正直な謝罪の言葉を口にする。
「あっ、そういや勇者いや、金ピカ剣士がお前に迷惑かけたこと謝りたいって言ってたぞ…!『巻き込んでしまいすまなかった』とか伝えてくれって」
「そうか…でもこっちも色々足引っ張っちゃったし、お互い様だよ」
シーは優しい声のまま続ける。
「それにしても、勇者さんとはうまく旅できそうか?聞いた話によると勇者さんにも悪気はなかったらしいけど、一応殺し合った中じゃないか…」
「あぁ、それ…殺し合っちゃいないよ。一種のじゃれあいみたいなものさ。あっちも殺す気はサラサラなかったらしいし、ニファと本物の殺し合いになったら、もっと手強かっただろうね」
俺は当然のように答える。
「そこは、『タダですまない』とか、『生きて帰れるかどうか』って答えた方がいいのじゃないか??」
「自分から手負になりますって言う馬鹿が、この世のどこにいるんだよ」
俺達は互いの顔を見て笑い合った。
そこから少しの間、俺達は星を見るのに専念した。
あぁ…もしかしたらあの星々に俺らと同じような人が住んでて、こことはまた違った生活を送ってるのだとしたら……行ってみたいなぁ。なんて空想を膨らませたりもした。
「なぁ…もし、俺が急に、どうしようもない悪者になったらどうする?」
シーがいきなり俺に問いかけてきた。
「えっ…いきなりどうした?……そりゃ絶対止めるさ。友達だからな!!」
俺はシーの問いに対して当然のように答える。
「そっか、そうだよな。良かった」
シーがそう言う言うか言わないかのうちに
俺は急に泥のようなものに飲み込まれる。
「おい、なんだこれ!!助け…」
泥に溺れて声がうまく出せない。
「もしそうなったら止めてくれよ。俺の親友 レント」
シー!!!!
俺は泥の濁流に飲み込まれ、深くまで沈んでいった。
————————
「シー!!!!!」
俺はそう言って自分のベッドの上で目覚めた。
————————
「なぁ…」
俺はソロンに問いかける。
「予知夢ってあると思うか??」
俺は夢のことを思い出し、ソロンにそう言った。
「さぁな。魔法があるんだし、予知夢ぐらいあってもいいんじゃないか?」
とソロンには一蹴された。
…もし昨日のことが本当になるとしたら。
「絶対止めてやるからな。シー!」
********
「さて、早速持ち物を収納しますかな」
全ての荷物を外に運んだ後、ソロンはそう言った。
「
とソロンが言うと、彼の手の中から黒いモヤが出現し、そのモヤが大きくなったかと思うと私たちの身長大のサイズになった。
「ちょっと待て…私、王都の剣士なのにそんな魔法一切知らないんだけど!!」
「そりゃそうだろうな。ただでさえ使用者が少ない魔神聖魔法の中でも最上位に位置する魔法だもん。王都の魔術師如きが俺に勝てるわけ無いっての。ほれ、さっさと自分の大きな荷物入れて。この中に入れれば旅の途中で逃げたりすることができなくなるから」
ソロンはそう言って笑ってまでみせた。
「うそーん…」
…レントはさっきから何もいわずにせっせこ荷物入れてるし、これが普通なのかしら。
早く慣れなければと思う私だった。
————————
私は2人と親しい冒険者だと思われているらしい。村の出発式では盛大に歓迎された。
「行ってらっしゃい!ソロンさ〜んいつもお薬や魔道具をくれてありがとーーー」
「リペソルさ〜〜ん今までどうもありがとうございました!!」
「冒険者さん。レントさんとソロンさんをよろしく頼みますー!!」
「みんな〜〜!!行ってくるぜ〜〜!!!」
レントはみんなの問いかけに対して大きな声で返す。
見ず知らず私に対しても声をかけてくれたし、ここは本当にいい村ね。だからこそ、王様を何としても説得させなくては!!
私は改めてそう決意した。
********
そんなこんなで俺たちは村の入り口についた。やはり、少し気は進まないが、ここから王都への旅が始まるんだと思うと、感慨深いものがある。
「あれ?シーと話さなくて良いのか?」
「アイツとは昨日話したから大丈夫」
ソロンの心配に対し、俺はそう返す。
「それじゃ、行きましょ。先は長いわ」
ニファがそう言う。
「おう!」
俺たちがそう言って村を出て行こうとすると……
「ちょっと待ったあ!!」
そう声がする方を見ると、アイツらが息を切らせて立っていた。
「これ…持っていけ」
とシーは言い、自分が使っていた剣を俺に渡した。
「お前なぁ…俺が剣使わないって知ってるだろー…」
俺は呆れたように言う。
「使わなくていい。俺の形見だと思って持っていればそれでいいさ」
とシーは返した。
そして俺達は腕を組む。
「124戦123敗のシー君。次会う時は、強くなってろよ」
「よ、余計な言葉だ。分かったよ!」
俺達は男の約束をした。
「ニファさん。二人をよろしくお願いします」
とフーは言い、自分が持っている首飾りのネックレスを渡す。
「それは私が狩りに行く時にいつもつけていたもので、心身の疲労を和らげてくれる効果があります」
「ありがとう。大事にするわね!!」
ニファはそう言い、ペンダントを首につける。
「どう。似合ってるかしら?」
「とってもよくお似合いです」
ソロンとスーも何やら会話をしていた。
「ソロンさん。この前頼まれたの今渡しちゃいますね!」
そう言ってスーはソロンに何かを渡す。
「帰還のお守り…うほぉ、やっと届いたか!これさえあればダンジョンに潜る時に、指定された場所まで戻ってくることができるぞぉ〜!!」
それぞれが話したいことを話し、渡したいものを渡し終えたところで、お別れとなった。
「じゃあ…元気でな……」
そう言って俺達は再び村の外を向き、王都の方角へと足を運んで行った……
「行ってらっしゃーい!!」
こうして、慈愛の勇者ニファと共にリペルソルジャーのレントと魔術師ソロンは王都への旅路を進んでいくこととなった。
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