タワラ村① リぺルソルジャー

 その日は天気のいい朝だった。俺は窓から差し込んでくる光で目が覚める。カーテンを開け、日光を浴びてからの湯沸器でコーヒーを沸かす。


 どうだい。なかなかに小洒落てるだろ?それにしても…こんな晴天で、天気のいい日にと言う奴は……


「お〜〜き〜〜ろ〜〜!!!!」


「ふひぇあ!!ハァハァ…なんだお前か。朝っぱらなんだから、さんのことも考えてやれよ」

 そいつは間抜けな声を発した後、コーヒーをすすった。


「バカ言ってんじゃねぇ!!もう昼だぞ昼!この村で昼まで寝てるようなは村中探してもお前だけだ。!!」


 ここは、このギデサルム王国中の村でも特に人口が少ない。にも関わらず、現在ではギデサルムの中でも食糧の面で経済の中枢を担っている村である。

 

 お陰で毎日みんなあまりの忙しさでノロイーゼになりかけてる人もいるってのに。

 この村のがこの有様。の姿はどこへ行ったのやら…


「それよりもよぉ〜…そんなにギャーギャーうるせぇから、16歳になっても彼女の一人もできねぇんじゃねぇか?ソロンさんよぉ〜」

 ソイツは俺のコーヒーを飲みながら、生意気な面でそう言った。


 プチン


「…………オイ」


「フェ?」


「このまま俺のファイヤーボールで火だるまになるか、着替えてさっさと働きに行くかどっちか選べ…」

 俺は杖を持ちながらソイツに対し、強烈な圧をかける。


「分かった、分かったよ。働きに行ってくるから、だかその物騒な杖を下ろしてな?な!?」

 ソイツは焦った声で俺にそう返した。


「チッ…さっさとしろ!!」

 俺がそう怒鳴ると、アイツはさっそうと部屋から出ていった。


 全く、俺の朝のルーティーンが台無しだ…………




「カノジョ欲しいな…」



 ********


 俺はこの村でと呼ばれている男だ。

 元はという魔術師の友達と旅をしていたが、ひょっこり魔物の大群に支配されていた村を救い、今ではこの村で英雄扱い…(今では、この町に家をもらいソロンと一緒に生活している)リペルソルジャーという二つ名もその時につけてもらっただ。


 なぜ、そう呼ばれてるかって?

 それはとして。それにしても…ったく、今日もソロンの奴はいっつもうるさい。でも、早く出ないとまたブチギレられるしなぁ。


 俺は急いで身支度をし、装備を整え、玄関でお気に入りの靴を履いた。

「おっと、これは忘れちゃだめだね」

 俺はそう言って、玄関近くに立ててある剣ほどの大きさのを手に取った。


「今日もよろしく頼むぜ …





 ————————


 今日はいい天気だ。雲ひとつない青空!!俺は町行く人に挨拶をしながら、自分のへと向かった。


 仕事場に着くと、何やら騒がしい。いつもは静かなこの場所も、今日は人がてんやわんやと動き回って慌ただしい。


寄生蔦パラサイトヴァインだって?!」


「森に出たらしいぞ!」「やばいよ、やばいよ!」


「すみません、寄生蔦パラサイトヴァイン討伐してくれませんか?お願いします!!お願いします!!」


寄生蔦パラサイトヴァインこれで3匹目よ!?もうどうしたらいいの?!だれか〜!!!」

 その時はこんなふうな会話劇が繰り広げられていた。…気がする


「あっ、俺 寄生蔦植物パラサイトヴァイン 討伐クエスト受けましょうか?」

 どっかの本の主人公のような決め声で、甘いボイスで俺は高らかに言った。


 その瞬間、受付嬢や他の奴らが一斉にこっちをぎょっと見てきた。それはまるで、鯉が餌を見るかの如く…


「リペルソルジャーさんだ〜〜!!!」


「うぉぉぉー我らが英雄!我らが英雄!!」


「今日は勝ち申したぁ〜でぇ〜」


「今夜はパーティーね!」


 俺の仕事は(討伐隊)である。村の脅威となるモンスターを片っ端からぶちのめす職業だ。

 …っていってもこの町はろくな討伐依頼が来ない。まぁ、最果ての町だしな…せいぜい獲物はちっこい熊か、イノシシぐらいか。

 報酬がいいのでやっているが、それでもここが騒がしくなるのは、せいぜい酒臭いおっさんたちが酒を常に飲んでいる時くらいか、今みたいな異常自体が起こった時くらいだ。



「討伐依頼は最低4人で行わないといけないので、誰か3人いける人いませんかー!?」


 通常、討伐依頼は4人以上で行う。これは主に2人以上を前衛に立たせて残りの

後衛二人で回復、蘇生、撤退の指示をするためである。

 理由は、戦っていると周りが見えなくなる奴が中々多いから…らしい。


 これは国全体のルール。にて定められているらしいってソロンが前に教えてくれたっけ。

 

 急にシーンと静まったギルドの中で、俺が叫び続けていると

「フッ…俺達の力が必要なようだな」

 おっ、こいつらは確か……


「僕は末っ子のスー」

「私は長女のフー」

「そして俺が長男シー様だ。

 やい、リペルソルジャー!!どうやらオレ様達シーフースー の力が必要なようだな!」


「ガキどもは帰ってシーフードスープでも飲んでろ…なんか…役に立たなそうだから」俺はギルドの売店で売っていたシーフードヌードルを食べながら俺はその三人組に淡々と返す。


「うぇぇぇん〜(泣)兄貴〜リペソルが僕らのこと役立たずって言ってくるよぉ〜」

 泣き虫ながらも兄思いで、防御系統魔法の天才。スー


「おい、リペソル!!!俺の可愛い弟を泣かすんじゃねえ!大体、お前も14歳で俺より2つ年下じゃないか!!!」ブラコンのシー


「そうだそーだ!」

 地味ながらもこの中じゃ一番弓の腕前がすごく、一番フー。


 3人合わせてシーフースー3兄弟だ。


「…ってかお前ら、あんまりペソル言うな!!呼ぶならか、正式名称リペルソルジャーで呼んでくれ!!

 あとシー、お前は14歳の俺に勝てるように努力しな、年下に124戦123敗は冒険者としての名が泣くぜ…」

 俺は笑いながらシーを侮辱する。



「うるせぇ!年下のくせに!!」

 と、その時だった…


「おい」

 その声を聴いた瞬間、俺達全員に悪寒が走る。

 ギルドの中に突如として入って来たソイツは、金色の鎧に兜、足枷を履いていて全身だ。まるで金商人かってくらいに。

 しかし、奴の持っている剣や、鎧についているを見たらただの金商人ではないことが一目瞭然だ。


 俺達もそいつのにただならぬ雰囲気を感じ取り、警戒態勢に入る。金ピカは俺たちの方へ一直線にズシンズシンと歩み寄ってくる。

 …しかし、そいつの口から出たのは意外な言葉だった。


「私もその討伐…参加させてくれないか?」



















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