世界生死のかがみ

ナミダ

0からの1

「また同じ景色、まだ、ここか…」


ベットの上で、一人の老人が白い壁の天井を見上げている。


これは私が始めた物語。


しかし、まだ始祖には会えていない。

いつ会えるんだろうか、母さん、父さん。そしてあの人よ。



―――――――


〇県にある古民家カフェに話し声が聞こえる。男性の声だ。


「あ、如月きさらぎくんか、よく来たね。私は長く生きているだけが、とりえの老人だ」

「そんな事はないですよー、そういえば、あなたの名前聞いてなかったですね?」


「私の名前か、もう忘れてしまったよ、君にはまだ名前があっていいな。私の名前か、、そうだな。鈴木でも佐藤でも、なんでも呼んでくれないか」


なぜか老人は名前を明かさない。


「じゃぁ、僕は砂糖は好きで甘党だから佐藤さとうさんって呼ぶよ」


青年は気さくに老人と話す。


「如月くん、ここに将棋があるんだ、一緒にやらないか?」

「僕は駒を動き方はわかりますが、うまくないですよ」

「いいんだ、それで今は、、ね」


そーいって、老人・佐藤は、将棋盤に王を置いた。

残った玉を手に持つと如月は、玉を定位置に置く。


何回、やっただろうか

佐藤は、手を抜くことなく、如月の手を打ち破っていく。

如月も、うまくないっというが実は小学生の頃は、大人にも勝つことあった。


しかし、佐藤は強い。

小声でなにか、呟きながら一手、一手。鋭い攻撃をしてくる。




ついに、この日が訪れる。


何日か経過し、如月は佐藤から一勝を勝ち取ったのだ。


「そっか、この手があったのか、、、これを君へ。」

佐藤は如月の手を取り、ぎゅっと握った。


暖かい物が流れ、如月は体に熱を帯びる感覚があった。



―――――――


将棋をする前のことである。


カフェで、はじめは軽く挨拶をするくらいだったが

如月は、老人が読んでいた本が気になっていた。


ある日、何を読んでるか尋ねると佐藤は苦笑いしながら

「これは私が書いた小説だよ、見直してるんだ。」

「小説?なんか面白いですね!見せてくださいよ!」

「あぁ、恥ずかしいが…どうせいつかは、誰かに見てほしいからな、ほれ、これだ」


タイトルは【0からの1】と書いてある。


「借りてもいいですか?」

「あぁ。まだ途中だがそれでもよければ」

如月は、佐藤から小説を受け取ると、自分の席へと戻る。


温度の冷めたコーヒーを飲み干し、静かにカップをコースターの上に置いた。


小説を開く


【この地球に人間は1人しかいない。もう生きてるのは私だけなんだ。】

【座標は私が持っている。】

【孤独だ。誰かに会いたい、そう願って生きているが結局、真実を語れる友・恋人に会えな…】


「コーヒーのおかわりは、いかがですか?」

おしゃれなカフェには美人いる。営業スマイルで話しかけてきた。


急いで本を閉じると


「あ、も、もう帰るので大丈夫です」


如月は席を立つと、佐藤の座っているソファーに行き、小説を返した。

「まだ数ページしか読めてませんが、展開が気になります!また貸してください!」

「あぁ、また持ってきてたら貸そう」



―――――――



如月きさらぎは続きが気になっていた。

老人が書いた【0からの1】はなんだか他人事ではなく

実際に起きてる事なんじゃないかと…


実際、如月は大学生のころ一人で孤独を感じていたことがある。

それまで、小学校、中学校、高校と、友達はいた。

なので、一人で過ごすことは少なかった。


しかし、地元とは違う場所・遠くの大学へ行ったときに

誰一人知り合いがいない、声もかけずらく、そんな日々を送っていたら引きこもりになった。


親からの仕送りで大学近くの一人暮らしをしていたが病んでしまい

一度、実家に帰ることになる。


実家から通える心療内科を探してカウンセリングを受ける事にした。

おじいちゃん先生が主治医になり、話を聞いてくれたが

うなずくだけであとは、手書きでなにか高速でメモをしていた。


退出時にメモを見たら読めた字ではない。

この主治医は、話を聞いてるふりで聞いていない。そう思えた。


何度か通ったが、おじいちゃん先生は話を聞くだけで

自分の中にあるモヤモヤは晴れることはなかった。

むしろ、モヤモヤは加速していく。孤独、だと。


このモヤモヤは時が解決してくて気がつけば大学へ通い、気がつけば卒業していた。



それから社会人になり、お金を稼げるようになるとカフェめぐりが趣味となった。


古民家カフェ 〖カフェ ド リュンヌ〗がお気に入りで今は通っている。

決して、美人店員がいるからではない…多分。


―――――――


老人・佐藤さとうは水曜日と金曜日に来るみたいだ。

そう知ったのは、通い始めて3か月たつ頃である。


「あの人って水・金って来てます?」

如月きさらぎは美人店員に話しかけてみた。


「そうね、あのおじいちゃんなら金曜日は見かけるかしらね」


今日は金曜日だった。


如月は思った。この日を逃すと、来週の水曜日まで会えないのか。

小説の続きが気になる。

今日は勇気を出して話しかけよう。


「こんばんは、あの、以前に見せてもらった小説また貸してくれませんか?」

「おぉ、びっくりした。こんばんは。君か、あの小説だが今は持ってないんだ」


「あら、そうなんですね、それは残念。とても気になる描写があって…」

「どこが気になった?」


「この地球に人間は1人しかいない。ってところなんですが…」

「あぁ、アレかそうだ、私はね。思うんだ、この世界はね・・・今生きてるのは私だけなんだ」


「え?」

呆然とする如月。

なんだって生きてるのはこのおじいちゃんだけだと、なにを言うんだ

今、たしかにこの老人は細めた目で、真っすぐ私を見て、言葉にした。


今生きてるのは私だけなんだ。と。


じゃぁ、私、如月は死んでいるのか・・・いや、私はここにいる。生きている。


なぜこの人はそんな事を言ったんだろうか

クエッションマーク【?】が頭の上に現れる。


いや…なんだこのざわめきは、生きてるってなんだ。

佐藤に言われるまで、如月は当たり前すぎて、考えたともなかった。

いや、考える必要もない…だって生きているんだから。


そう、私は生きている。大丈夫だ。

一息入れると如月は、佐藤に質問をする。


「それって皆、死んでるって事ですか?」

「いや、死んでるもなにも、そこに実はいないんだ、我々はもう一人で孤立した世界にいる」


ますます意味がわからない。


「この世界、私が構成した世界で、私だけが今を生きている。たまに別の次元から意識が遊びに来るが今は私が座標を持っているから、私が時を刻んでいいる」


「座標…なんの話ですか?」

「生きている人の事を座標と呼んでいる、つまり私だ」




そして、佐藤はこの世界・人間時代の話を始めた。




――――――――

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