第19話 悪魔神、同級生を弟子にする?

やべー奴が仲間に加わり、無事(?)校内見学が終了した。


ツムギまでハーレムに加わるわ、行く先々で問題は起こるわ、とんでもないヤツは仲間になるわ……なんとも濃い一日となった。


これが入学2日目だとは信じられないくらいだ。

今、俺の周りには全員揃っている。


一旦解散して、休憩を取ったあと夕食を皆で食べているのだ。


朝の時点で6人がけのテーブルで事足りていたのに、今では8人がけである。


因みに最大12人がけまでなのだが、もしそれ以上の大所帯になったらどうしよう……と、一人頭を悩ませたが、流石にそこまで増えることはないだろう。


「お、ヘルク! ……って、この数時間で何があったんだ。同じクラスのネルシーさんまで……。その手前の人は見たことないけど、他のクラスの子かな? 他のクラスからも引き抜くなんて流石だね」


こいつらに「あ〜ん♡ 」されながら夕食を食べていると、ウルマがやってきた。


唇は切れているし、頬がパンパンに腫れていて痛々しい。


「ネルシーはただ昼からの流れで一緒してるだけだ。あと、そいつはシルフィーつって2年生の失禁女」


「はい♡♡ 」


「に、2年生って……もう先輩とまでそんな関係になったのか。同じクラスだとは思えないほど、上を行くねヘルクは。失禁……? 」


「……こっちの話だ。こんな話よりウルマ、お前も全部の教室回れたか? なんかお前も人の事言えなくないか? 」


ウルマの両隣に見知らぬ女が二人、ぴったりとくっついていた。


「回れたよ。ああ、この二人はFランク教室のこたちなんだけど、Cランク教室の奴らが、この子たちに因縁をつけて、困っていた様子だったからね。君に倣って、勇気を出して助けたんだ。……恥ずかしいことに殴り返されたし、ボコボコにされたけどね。それでもこの子たちに危害が加わらなかったから良かったよ」


ウルマがそう言うと、両隣の女たちが強く抱き締めていた。

しかし、だからこんなにも顔が腫れているのか。


「災難だったな。だが、お前の行動は良いと思うぞ」


「ヘルクなら迷わず助けただろう? だけど僕は一瞬でも踏みとどまってしまった。怖いと思ってしまったんだ。二人は僕の傷を心配してくれて、自分たちのせいだと謝られたけど、この傷は僕の弱さから生まれたものだ。……だから」


「うむ、この俺ならウルマみたいに返り討ちになんて合わないな。だがウルマ、お前は一つ勘違いをしている」


「勘違い……? 」


「それはだな、そこの女たちはお前に惚れてるのだ。身を呈して助けてくれたお前に、だ。そこを勘違いするんじゃあない。そこに強い弱いは関係のない話だ」


「ヘルク……」


感銘を受けたかのように俺を見つめるウルマ。


「そうだよ、私を助けてくれたウルマ君が誰よりも大好き」


「あたしの方が好きですよっ!! 」


「二人とも……ありがとう。だけど、今度は君らをちゃんと守れるようになりたい。だからヘルク、僕を弟子にしてくれないか? 」


ほう、悪魔神であるこの俺の弟子になりたいと言ってくるとは予想外だ。


俺としては全然構わないのだが、こいつに時間を取られて皆と過ごす時間が減るのは本望では無い。


「もちろんヘルクの好きな時間でいい。全て合わせるよ」


「いや、お前もそこの女たちと過ごす時間が居るだろう。お前を鍛えてやらんこともないが、一先ずはそいつらと過ごせ」


「ヘルク……いや、師匠……! 」


こうして弟子が出来たのだった。


「ではまたおいおい……! 今日は失礼します! 」


敬語キャラになってしまったウルマは二人を連れて、自分たちのテーブルへと戻って行った。


「ヘルク様はお凄いのですね♡ 同級生すらも弟子にしてしまうなんて♡♡ まぁ、もっともこのわたくしめはヘルク様のーーーむごっ」


いちいち語尾に♡がつくこの銀髪残念美少女シルフィーの口を手で抑えて黙らす。


「そうは言うが、シルフィーは2年生だろ。シルフィーを奴隷にしたなどの噂が広まってみろ。先輩を奴隷にする鬼畜だとか言われて俺が白い目で見られるだろう。お前がどうしてもそうなりたいとか言うからそうしてやってるだけなんだから、あまりこういう場所で言うな」


「えぇ……」


なんで悲しそうな顔をするんだこいつは……。


「だって、ヘルク様の所有物になりました♡ って言っておかないとあれじゃないですか」


「うん、意味が分からんから辞めてくれ。あとお前は物じゃない」


こうも自然にそんな言葉が出てしまうくらいに、こいつは……シルフィーは、虐げられてきたのだろうか。


たまたまこいつが今日体育館に居たから、たまたまこいつが失禁したから、こいつが勇気を出して助けを求めてくれたから、コイツのことを知ったわけだ。


もし、どれがひとつでも違ったら、シルフィーのことなんて何も知らずに過ごしていただろう。


「じゃあ、わたくしめはなんなんですか……? 」


「決まっているだろう。お前は俺たちの大切な仲間であり、そのなんだ。……ニヤニヤすんなお前ら」


多分、言うことが分かったのだろう。

きょとんとしてるシルフィー以外の全員が、ニヤついていた。


まったく……。

こほん、と咳払いをして言う。


「俺のハーレムの一員なんだからな」


「ヘルク……様……」


少しずつ言葉をかみしめていし、やがてようやく理解したのか、満面の笑みで俺を見あげると、抱きついてきたのだった。


「大好きですヘルク様! 」


「だからお前は奴隷じゃないからな」


「ハーレムの中の奴隷枠です。奴隷ハーレムという単語もありますし、これはわたくしめの願望です」


「はぁ……なら、もうそれでいいよ。だけど、頼むから食堂でそんな大声で奴隷とか言わないでくれ……」


「当たり前のように蚊帳の外……。今回はシルフィーさんが主役ですし、このテーブルで唯一友達枠なわたしは当然と言えば当然ですかね。にしても……(こうしてまた一人増えたわけですか。ほんと、女たらしですね。嫌なはずなのに、何故でしょう。この人だけは許せてしまう。……何でしょうこの気持ち。わたしも入りたいのかな……? )」


「じゃあ正式なシルフィーちゃんの加入を祝って、乾杯〜!! 」


「「「「「「「乾杯〜」」」」」」」


ナイスフォローなエニナの一言によって、場は大盛り上がりした。


……俺に対する痛い視線もそれに連れて少しずつ無くなっていった。


エニナに感謝だな……。



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【あとがき】 「続きが気になる!」「面白い!」「ハーレム要因だヨシ!」「絶対に奴隷になりたい強い意志を感じる……」と少しでも思って頂けましたら、 広告下からフォローと星を入れていただけますと、幸いです。皆様の応援が、執筆の原動力となります!よろしくお願い致します! ――――――――――――――――――

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