第16話 悪魔神、【空間停止】でネルシーを助ける。そして悪魔神改め慰めハーレム男

「ここが図書館ですか……広いですね」


黒髪ロングな美少女ネルシーが辺りを見渡し感嘆する。

確かに、めちゃくちゃ広い。


何百冊、いや何千冊あるんだってレベル。

全部読み切ろうとするならば何年かかることやら。


「少しここで休憩していくか」


俺がそう言うと、各自読みたい本を探しに行く。


俺としてはただ疲れただろうから休憩しようって意味だったのだが、まぁいい。勉強熱心なのはいい事だ。


せっかくだし何か読むか。

色んな棚を見てみる。


勉強系から、物語系、魔導書など様々で多種多様な本がある。適当に一冊取って、開いてみたが全て知っているようなことだった。この魔導書に至っては改良した方が威力も、そして発動コストも抑えれる。他にも見てみると、同じように欠点が存在する。


ふむ、俺が図書室を……いや、すくなくとも魔導書のコーナーに立ち寄ることはないな。


隣の棚に目を落とすと、【勇者の成し遂げた偉業100選】とかいうふざけた本があったので、そっと目線を戻し、椅子へと戻って行った。


ちっ、……不愉快な名前を見てしまった。


大人しく皆が休憩し終えるのを待とう。

エニナたちは気になった本を開いて、読んでいた。


ネルシーはまだ選んでる最中のようで、本棚とにらめっこしている。

そしてかなり上にある本に目がいき、それが気になったのか背伸びをして取ろうとしている。


ようやく手が届き、本を引っ張ったが、それと同時に他の本も引き抜いてしまい、ドサドサッと本がネルシーの頭上に落下する。


それに気づいたエニナがダッシュでその場に駆け寄ろうとするが、それでは当然間に合わない。


して、この俺が何もせずに傍観する訳もない。


「【空間停止】」


ネルシーの頭上にある、落下しだした本。これらを指定して、【落下】しているその空間そのものを【停止】させた。


これにより、降り掛かってきていた本が空中で止まっているという不思議な空間が出来上がった。


ネルシーは目をつぶって、頭を手で抱えていた。

エニナや座っていた皆もぽかんとしている。


俺は【時間停止】をしたわけではないのだが、何故かこの空間そのものが停止しているような感覚に陥る。


他に来ていた生徒も目を丸くしている。


「お前はいつまで目をつぶってんだ。もう本は落下してこないぞ」


「へ……? 」


そうして、恐る恐る目を開けるネルシー。


「え、本は何処に行ったんですか。間違いなく大量の本が私に向かって落ちてくるのは見えたんですが」


「上見てみ」


「は……上? 上がどうしたんですか……ってええええええええええ!?!? ほ、本が空中に浮いてる!?!? 」


見かけによらずオーバーリアクションだなこいつ。

あんなに大人しくて地味なやつなのに。


「オーバーリアクションて……ほら、皆さんだって驚いてるじゃないですか」


「こんな魔法、誰でも見たことあるだろ? 」


「「「「「「ない」」」」」」


即答されてしまった。

【空間停止】なんてさほど珍しい魔法でもないし、人間であっても誰でも使える魔法だと思ってたんだが。


「宮廷魔法師でもこんな芸当、ひと握りしか出来ないと思いますよ。あ、ですけど」


ふと思い出したかのように言う。


「朝のランニングの時に貴方が規格外なことは知っていたので、今このとんでもない状況で少し冷静になれている自分に驚いてます」


「規格外ってのはもっと凄い奴を指すだろ」


「ヘルク君より規格外な人、学園に、いや、この世界に居ないと思うなっ!? 」


「エニナ……世界は言い過ぎだ。俺よりも強い奴はいっぱい存在するだろう。お前らにとって俺は強いのかもしれないが、俺にだって一切歯が立たなかった奴は居るんだし。もし、そいつがこの世界にも居るなら、お前らを守れる自身は……」


悔しいが現時点では無い。

あの時に足りなかった【何か】を手に入れないと、対等にすら闘えないだろう。


もし、今あのインチキクソ勇者がこの学園に乗り込んできて、こいつらに危害を加えようとしたら……?


考えると震えが止まらなくなってきた。


「ヘルク君でも勝てない相手なんて存在するんだ、ちょっと意外だよ。けどね、ヘルク君。そんな悲しい顔しないで」


「……悲しい顔なんてしてねぇよ」


「ううん、してる。ヘルク君にどんな過去があったのかは知らないけど、そのヘルク君でも勝てない相手に何かされたってことは今のでも伝わったよ。……皆もそうだよね? 」


エニナは後ろに振り返る。皆は頷く。


「……だって……あんなに、かっこよくて、……余裕な表情をしてる。へるくが、不安そうな顔になってる」


そう言ってルナは椅子から立ち上がり、俺の目の前に来ると、ちょんと背伸びをして、お屁の頭を撫でてきた。


「ちょ、る、るな……? 」


ルナの突然の行動に戸惑う俺。

そんな俺をルナは、優しく抱きしめる。


「こうやって……助けてくれた。……だから、次はるながへるくを助ける番。……だよ」


そうして数分の時が経ち、ルナはようやく身体を離した。


「次は3番の人……名残惜しいけど譲る……」


どうやら順番で慰めようの会みたいなのが始まったようで?

こいつらなりに俺を元気づけようとしてくれているのは分かるし、その気持ちは物凄く嬉しい。……だけど、一ついっていいだろうか。


「お前はいいからな!? メリアに譲れ!! 」


「そりゃルナちゃんみたいに抱きしめたりはしないよ!? 」


「お前ならやりかねないだろ」


疑いの目をかけると、ずっとそらされた。

こいつめ……。


「友人として、いや、ヘルクグループ唯一の……同性として、相談出来る事があればなんでもしてくれたまえ。いつでも相談に乗るよ。あ、同性と同棲はかけてないからね? 」


「男のくせに妙に女っぽいこと言うな! ……けど、ありがとな」


こいつなりの気遣いだろう、多分。


「ぶっちゃけダーリンって負けナシって思ってた。だけど、勝てないの居るんだね。それもそいつ、ダーリンにとって嫌いな奴っしょ? 」


なっ、そこまで見破られていたのか。


「それにさ、あーし達を見て表情が曇ったってことは、そいつにあーし達が狙われることを危惧したっしょ? けどね、あーし達もこの学園に入学出来たくらいには強いんだよ? ……ダーリンから見たらヘナチョコだろうけど。あーしは姉御たちと違って、ダーリンに守られて恋するキューピットの矢を心臓に撃ち抜かれたんじゃないから、【守られる】ってのはわかんないけど、ダーリンを守ってみせるよ♡ あーしもダーリンからの初めての一つ奪って見せるからねっ♡♡ 」


超ミニスカなギャル美少女に勇者から守られる悪魔神……想像するとヒモにしか見えない。

だけど、メリアがあんなにも自信満々に言うもんだから、頷くしかなかった。


「あ、ちょっと〜!? 私もヘルク守るよー!? 守るからね? 」


「るなも……」


「ボクもね。腰の剣はその為にあるといっても過言じゃないね」


「戦闘はこれっきしですが……自分もあなたを守ります♡♡ 」


そして、何故か知らんが全員に抱きつかれた。


「こんなにもヘルク君の事を思ってるお嫁さんがいるんだよっ♡ 嫌な人のことよりも、私たちを見てぇー! ♡♡ 」


「嫁は色々と吹っ飛びすぎだろー!? 」


俺の絶叫が図書室に響き渡った。


「わたしはやっぱり蚊帳の外……しかも今日2回目……(にしても皆から愛されてるんですねあの人は。……なんでしょうか、この気持ちは)」


「図書室では静かに過ごしてくださいね、慰めハーレム男くん? 」


鬼の形相をした図書室の司書さん? っぽい人が静かに注意してきて、ようやく俺は解放されたのだった。


そさくさと離れていく皆。


もう1回司書さん? に睨まれたあと、司書さん? は他の場所へと行った。


慰めハーレム男て……。

いや、その通りか。



――――――――――――――――――

【あとがき】

「続きが気になる!」「面白い!」「ハーレム要因だヨシ!」「悪魔神の威厳どこいった? 」「……っ、君のような勘のいいガキは嫌いだよ」と少しでも思って頂けましたら、 広告下からフォローと星を入れていただけますと、幸いです。皆様の応援が、執筆の原動力となります!よろしくお願い致します! ――――――――――――――――――

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