常識知らずの悪魔神、転生したので学園で二週目人生を謳歌する〜一切の容赦をせずに無双していたら、何故か周りの剣聖の娘や大魔導師、その娘に溺愛される。やれやれ、これって普通じゃないのか?〜

雪鈴らぴな@第2回グラスト大賞プロット部

第1話 悪魔神、田舎の最弱クラスの少年に転生する


「悪魔神ヘラントゥス・タミネントぉぉ!! これで終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!! 」


「チィッ!! 勇者めぇ!! 俺を倒せるとでも思っているのかぁぁ」


「倒せるさ、俺様は勇者だからな」


その言葉とともに聖剣が振り下ろされる。


「《ダークウォール》ッッッ!! 」


対象の攻撃を吸収する障壁を展開する。


しかしーーー


ざしゅっっっっ!!!


「グハッ! ……」


障壁すらをも、身体と共に斬り裂かれる。


「はぁ、悪魔神といえどこんなもんか、弱いな……」


「くそが……」


なんだよそのチートアイテム……。


「ああ、これか?女神に貰った。自分に敵対する者のステータスを究極ダウンする力があるんだってさ」


どうだ、羨ましいだろう、と言わんばかりにひらひらと聖剣を見せつけてくる。


「ふざけやがって……」


女神の力を借りて、強大な敵を倒す……。

それは魔王とか邪神に対してする最終奥義ってもんだろ。最初っから借り物チート使ってイキんなよ……。


「こんな一瞬で終わるものなのだなーー」


勇者はステータスをダウンする力と言っていたが、それだけではないだろう。もっと沢山のチートがモリモリなはずだ。


なぜって?

この俺が自己再生ができないほどの傷を追わされたからだ。普段であれば剣なんぞで斬られた腕の一本や二本、数秒後には再生できている。もっとも、俺にそこまでのダメージを追わせれる者など二人しかいなかった訳だが。


一人は俺の親友、そしてもう一人はこいつだ。


力を振り絞って、立とうとするが立てない。


「ぎゃはは! 無様だなぁ? 」


こいつ絶対殺す。

インチキ借り物チートを使わないと俺にかすり傷すら追わせれない癖に。


ただひたむきに最強を目指し、鍛錬をしてきた。

来る日も来る日も鍛錬をし続けてきた。


俺の師匠の口癖は「努力は必ず報われる。そして強いヤツはモテるのじゃ」。


はぁ……。

結局報われなかったし、モテたりなんて一切しなかった。

しかし、師匠の言葉は嘘ではないと信じている。


あの人が嘘をつく訳がないのだから。


走馬灯が流れてくる。

だがろくな思い出がない俺には、修行と鍛錬の様子しか流れてこない。


どんどん記憶が薄れていく。

最後に師匠と【念写魔法】で念写した写真が見えた。


その写真には俺と師匠が笑いながら笑顔でピースしてる写真だった。



師匠……今どこで何をしてんのか分かんねぇけど、師匠は、師匠だけはあんなヤツに負けないでくれ。


本音を言うなら、俺の死を知ることなく、今もあの時の笑顔のまま過ごしてくれ。


もし俺に来世があるのならばーーまた最強を目指そう。


こんなインチキ勇者なんかに負けないためにも。


そう願い、悪魔神ヘラントゥス・タミネントこと俺は命を落とした。



これが今朝思い出した記憶。


「そうだーーー僕、いや俺は転生したのだな」


今の俺は田舎の領地に生まれた15歳の少年ヘルク。


そして明日この領地を出て、魔法学園に通うことになる。


魔法学園とは15歳になると通うことが出来る、文字通り魔法を学ぶ学園だ。


まさか本当に来世があるとはな……。

悪魔神を転生させるなど、俺を担当した女神は余程頭が悪いのか、お気楽なのだろう。


今までのヘルクとしては魔法は至って平凡だったが。


「ふんっ」


ごおおおおおおおう!!!!!


風が吹き荒れ、目の前にあった一本の木が根元から真っ二つに崩れ落ちる。


そう、記憶を思い出した瞬間、悪魔神の力をも全て取り戻せたのだ。


一気に今までの記憶が頭に押し寄せてきたからか、頭痛がする。


【僕】であれば耐えきれずに気絶していただろう。

対して強くもない領地の人々の中でも最弱クラスだったのだから。


両親、いや領民全員が、魔法学園に行くのを心配していた。

だがそれはもう過去の話となるだろう。


悪魔神の俺であれば魔法学園なんぞ余裕だ。

それに、だ。


「魔法学園とやらで学び、あの忌々しきインチキ勇者よりも強くなり名を轟かせ、今度こそは俺が世界最強の名を欲しいままにしようではないか」


前世の俺は修行、鍛錬ばかりで学園なんぞ通っていなかった。もちろん魔界にも魔法学園なるものはあったのだが、両親が居なく、スラム街でぽつんと座っていたところを師匠に拾われたような奴なわけで。


同年代の者と学びを深め、青春を謳歌する。

そんな人生に憧れがなかったといえば嘘でない。


決してインチキクソ勇者に言われたあの言葉にムカついた訳じゃあない。


「あぁ! 孤独な雑魚悪魔は学校で女といちゃついたり、はたまたハーレムなんて作れるわけないかぁ。この俺だからこそ、最強の勇者と崇められる俺だから、世界中の美女も、一緒に転移してきた学校の女も思うがままなんだもんなぁ。こんな夢見心地を味わえないなんて、可哀想だなぁ」


決して……イラ、イラついてなんてない。


ただ、数少なかった俺の夢が叶うのだ。行かない手はない。


そろそろ家に帰って、明日の準備をしないとな。

しばらくは見納めになるであろう、丘から見えるこの綺麗な夕日を目に焼き付けた後、家へと帰った。

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