第35話 ミチビキの糸

 俺とアエリアは2時間ほどかけて前にも来た教会へやってきた。


 「入るぞ」


 「ええ」

 

 入った瞬間、鉄臭い血の匂いが鼻をくすぐった。


 「うわっ、なにこれ…」


 いまだに血の匂いには慣れないが俺が驚いたのは匂いだけじゃない、それは—————


 「私もこれを見た時は驚いたわ。このは長らくお姉ちゃんと一緒にいても見たことなかったもの」


 そう、元々アエリアがいた場所に乾いた金色の血溜まりらしきものがあったからだ。


 「あれ?前縛られてた血管に流れる血は赤に見えたけど…」


 「私が前に来た時はもうちょっと液体で金と赤が混じった色だったわ。多分お姉ちゃんのちには何か特別な力があって、血だけが蒸発してその力が結晶化したのがこれなんじゃないかしら」


 確かにこれは血の匂いはするが血とは思えない見た目をしている。

 近い見た目のものでいったら金箔あたりだろうか。


 「これだけ見てもよくわからんな」

 

 「確かに私の呪眼亡者化した眼で見ても何もわからなかったわ。でもあなたの死眼なら何か見えるんじゃないかと思ったの。前にお姉ちゃんと会った時には暴走しかけてたし」


 「ああ、そういう…また暴走したら止めてくれよ?」


 「ふふ、その時は全力で殺してあげるわ。それともまた殺し合いダンスでもする?」


 「………」


 怖いって。

 いやまあ殺すのはいいけど殺し合いはやだよ。


 「はあ、まあじゃあやるぞ。

————『死眼』!っうお!」


 やばっ力加減ミスった。


 なに…これ。


 血の跡からさっきまでは見えなかったおそらくメリメアのものであろう光の足跡が見えた。 

 

 しかし、俺もそれだけならあまり驚かないだろう。

 俺が驚いたのは、アエリアの内側に無数の光の糸が絡み合いアエリアの体にピッタリ収まるようになっているナニカが見えたからである。

  

 「どうしたの?何かわかった?」


 「え?あっいや、血の跡から伸びる足跡に驚いただけだ」


 なぜだろう俺はこの光の糸のナニカについて話すことができなかった。

 

 とても怖かったのだ。


 

———————————————

あとがき


 前回のタイトルを変更して最後の一文を消しました。

 

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