第16話 KUZU file 狛田 琴音 嫌悪と拒絶


前置き : この作品は暴力や性的な描写を伴いますが、暴力行為を助長する物では御座いません。


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〇狛田 琴音 嫌悪と拒絶編




私には、小学校の頃に母が再婚したので義父と義兄が居る、最初は新しい家族に馴染めずしゃべれなかった私、

義父は営業職でしょっちゅう地方に長期出張で家にあんまり帰って来ない

しかし、義兄の剣兄はとても明るく、活発で中々馴染めなかった私に根気強く話しかけたり、一緒に友達に混せて遊んだりしてくれて、私自身も徐々に近所の子供達と仲良くなり一緒に遊ぶ様になった。


そんな義兄は勉強はいつも一番で、運動も得意、スポーツすれば大活躍で、まさに絵にかいたヒーローだった、私の憧れでそして初恋だった・・・


そんな想いを自覚したのは、ある日近所の公園で友達と砂遊びしているとこに、大きな中学生の男の子数名現れて邪魔して意地悪してきた、友達も私も怖くて砂場隅で泣いていると、剣兄が何処からか飛んできて中学生数人を叩きのめしていった


私も友達も、剣兄に抱き着き泣いていると


「琴音達は俺が絶対守るからな!」とはにかんだ笑顔に子供ながらトキメイタ


そんな大好きで憧れだった剣兄は中学に上がると徐々に雰囲気が暗くなり、勉強もせずにパソコンばかりで成績もドンドンと落ち込みスポーツも全く成績が残せなくなって、いわゆる陰キャデビューをしてしまった。


「剣兄、もっと明るくしてよ!」「剣兄ゲームばっかりしないで外で運動しないと!」なんとか元のカッコいい剣兄に戻って貰おうと必死に呼びかけたがあの頃の大好きだった剣兄に戻る事は無かった


私も中学に上が頃になると、自分の義兄が学校でキモいネクラと陰で言われているのを知る、剣兄が自分が身内だと周りに知られるのが怖くなり、剣兄を家で「あんた」「おまえ」「キモオタ」と蔑むようになり

「学校で絶対に私の義兄だって言うなよ!言ったら殺すからな!」と外での関係も拒否した、それでも何も言い返さない義兄をゴミの様に扱い家でも口を聞かない、関わらないそんな状態になった


自分が高校に進学する時も出来れば義兄と同じ学校には行きたくなかったが、第一志望が落ちたので仕方なく義兄と同じ高校に通う事にしたが、新学期が始まって暫くすると私と同じ苗字の男子上級生が同じクラスの男子にイジメられててダサイと1年の中でも笑い話となっていた

私は直ぐに義兄の事だと気付いたが、クラスメイトには兄弟は居ないと伝え同姓の他人だと説明して、そして極力この話題に触れない様に心掛けた


偶に昼休憩の廊下で、大量の缶ジュースを抱え足早にクラスに戻ってく義兄をみて苦々しく舌打ちをする事が有ったが、幸い周りには家族だと気付かれて無さそうだった


私は仲良くなったクラスメートを家にも呼べず、まして彼氏など義兄の事がバレると思うと怖くて作れない


あの男は本当に疫病神だ、私の貴重な青春があのクズのせいで台無しになっているようで日々恨みだけが募る


学校から帰る道もわざわざ遠回りして帰る家がゴミと同じとバレない様にしている事にイライラがつのる、何故私がこんな目に・・・・




家でもあのゴミは陰キャその物で、部屋にこもるとPCと見つめ合う日々、どうせゲームの中の2次元で女の子と仲良くなるようなゲームをしているに決まってる


そんなPCの横には、私と、ゴミ、そして幼馴染の雫ちゃんが写った写真が飾られていた、あの頃の義兄は頼りになったのにどうしてこうなったのか・・


今日も部屋の前で鉢合わせすると、いつに無く辛気臭い顔をしていたので無視して下に降りる


「ちっ!何も言い返さなのかよ、だっさ!」


軽く呟くが、相変わらず反応は無い


お風呂から上がると、母さんに義兄を呼びに行くように言われたが、絶対に嫌だと断って自分の部屋にこもった


その後で中々降りてこない義兄の様子を見にお母さんが部屋を覗いたようだったが、どうやら寝てる様子で母が直ぐに階段を戻る足音が聞こえた


「はぁ~なんの役にも立たないのに折角お母さんが作ったご飯を食べないとか、どんだけごく潰しなの?もういっそ居なくなればいいのに・・」



それからベッドに入り、ウトウトしてると隣の部屋でゴソゴソする物音と共に部屋から出ていく足音が聞こえる

おおかた、夜中にお腹が空いたので夜食を漁りにでも行ったのだろう、本当にクズで迷惑な奴だと布団の中で罵り、イライラしながらまま眠りに付いた



次の日、朝見たら義兄は既に部屋にもリビングにも居なかった、珍しく早く起きて朝食も食べずに登校した様だ


私がお母さんの作った朝ごはんを食べてると


「ねぇ、ケンちゃんて朝ご飯食べずに学校行ったようだけど何か用事でもあったのかな?」


洗い物をしながら聞いてくる母親に


「はぁ~?知るわけないでしょ!ごちそうさま!」


あんなクズの事なんか知った事じゃない!私はイライラが抑えられず乱暴に箸を置くと何か言ってる母親を無視して学校に向かった


その日の昼休み・・・クラスメートの男子が何やらコソコソと噂をしていた


「なぁ聞いたか?2年の陰キャ先輩の話し」

「おお!部活の先輩から聞いた!なんかスゲー暴れて、イジメていた数人をボコボコにして1日でクラスでの立場ひっくり返したって聞いた!」


「そうそう、なんかめっちゃ喧嘩強くてイジメていた連中と入ったトイレに見に行ったけどトイレの汚い床に正座させられてその上殴られていたらしいぞw」


「なにそれ!?本当の下剋上じゃないか!俺も見たかった!!」



(え?何どういう事?あのクズが?うそでしょ・・)


それからも、ヤンチャを気取る男子がその様子を見に行くたびにクズの武勇伝のような話をして話題にしていた

放課後、クラスの掃除をしていると校庭から逃げる様に走り去る3人の男子生徒を目撃した


私は、その日は遠回りせずに義兄に事の真相を聞こうと家の前に着くと、門の前に俯きながら立っている雫ちゃんが居た


雫ちゃんの様子がおかしいので今日学校であったことと何か関係があるのか聞こうとしたが義兄と話がしたい、謝りたいの一点張りで答えてはくれない

私は上がって待ってるように促したが、どうしても家の前で待つと言って聞かなかった


「あのクズが、雫ちゃんをこんなに困らせて!ふざけるなっての!私絶対許さない!」


私はクズに一言文句を言わないと気が済まないのでイライラしながら乱暴に冷蔵庫を開け麦茶で喉を潤してリビングでクズの帰りをまっていると


玄関先でなにやら、雫ちゃんの声が聞こえていたと思ったら、クズが一人で玄関先から家に上がって来た


「ねぇ、ちょっと話あんだけど、あんた雫ちゃんに何したわけ?許せないんだけど・・」


そう言いクズを睨みつけるとクズは今まで見せたことの無いような冷たい目で私を睨み返して


「俺お前と話す事無いから」


「ちょ!ちょっと!待ちなさいよ!」


リビングから飛び出して、階段を上がるクズを呼び止めたが私を無視してそのまま部屋へ入って行った


「クズのくせに無視しやがって!何様!?」


私は雫ちゃんに真相を聞こうとメッセージを送ったが、一向に既読になる様子が無いのでクラスの情報通の女の子にクラスチャットで聞いてみた

当然自分が身内である事は、伏せて遠回しに聞くと


【ああ、あれねなんか、陰キャ先輩、幼馴染が自分をイジメていた男と付き合ってたみたいで、その事をクラスで暴露したあと自分をイジメていた連中を仕返しにボコボコにしたみたい】

【しかも、いままで殴られたり蹴られた回数と奢らされた金額まで覚えていて、これから毎日のように仕返しするってイジメてた子に宣言したらしいよ】

【そのうえ、掌返しのクラスメートにも、お前らも同罪だ!だってwもう陰キャ先輩のクラスはお葬式みたいだって】

【仕返し?無理無理w裏拳一発で男の子を数メートルも吹き飛ばすようなバイオレンスな陰キャ先輩に手を出せるような奴いないってw今時ではないけど無敵番長?w】



噂好きの子の話しなので半分くらいに聞いてみても、雫ちゃんと義兄をイジメていた男の子が付き合っていたって言うのは今日の雫ちゃんの様子に納得できる話だ

やはり義兄本人から話を聞くべきか・・・


「琴音~けんちゃんにご飯って言ってきて~」


「わかった・・・」


「あら?今日は素直なのね?えらい!w」


義兄の部屋をノックし「ねぇご飯だって・・」と伝えると暫くして部屋のドアが開く


【ガチャ】


「ああ、今行くよ」


返事をしたが私を一瞥もせずに横を通り下に降りようとする義兄の部屋をチラッとみると、ポスターもカレンダーも学校の教科書も服も無くなっていた

何より机の上においてあるはずのアレも見当たらない


「机のしゃ、写真・・どうしたの、どこにやったの?」


「ああ、もう要らないから処分した、それが何?」


振り向きもせずにそう答える義兄からは昨日まで感じていた、人間らしい感情が無くなっているようだった

私は何か大事な物を失った気がして、体の中から底冷えするような悪寒を感じ暫くその場から動けなかった。



追記です;本日20時頃に次の話を投稿出来る様に時間見つけて編集頑張ります!

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