第9話 正しい道の選択?俺の心を救うのは無理だよ

前置き : この作品は暴力や性的な描写を伴いますが、暴力行為を助長する物では御座いません。


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その夜・・



俺は、小説家として収入を得る様になった時に知り合った司法書士の知人を通じ県の教育委員会の理事に連絡を入れそこから、色々手回しをして今日ようやく文科省の大臣とのテレビ電話会談をする機会を用意してもらえた。


表向きは、今話題の超人気高校生作家との今の学校について語ると言う触れ込みだ


「なるほど、不動先生は実はまだ高校生で中学の頃から執筆活動をされており、今現在でも10年分に相当する執筆した書籍ストックをお持ちと、まさに現代の文豪ともいうべき天才ですな」

大臣は自分の孫と変わらない年齢の俺に、敬意をもって応対してくれていた


「そうですね、しかし僕の私生活は小説の中の話しの様にハッピーではありませんでした」


俺は学校で受けた過酷なイジメやクラスでの扱い、教員達もイジメ加害者の名前と権威を恐れて助けてもくれなかった事を大臣に事細かく事実として伝えた、また私的感情で池月からその身を守ってると思っていた幼馴染が実は池月と体の関係を持ち教室で性行為に及び、自分の無き母親からの唯一残された思い出の手帳を無残に汚された事も話した。


最後の俺の手帳の話しになると、画面外で大臣の後ろに何人か居るであろう官僚のザワつく声も聞こえて来た


「不動先生・・いや未だ狛田君と言った方がいいでしょう、この度は本当に申し訳ありませんでした」

そういうとスーツの擦れる音がスマホから聞こえる、画面から大臣が見えなくなったので恐らく電話口で頭を下げてるのだろう


「いえ、大臣が謝罪する事ではありません、僕は今の学校での現状と親の社会的立場を利用して弱い者を踏みつけても気にもしないクズ、そのクズに僕がイジメられてる事を知ってて隠れてそのクズと関係を持ち一緒になって僕をコケにするクズな幼馴染に誰かが鉄槌を下す必要がある事を知って頂きたいだけです」


暫くの重い沈黙の後で、深い深呼吸と共に大臣は口を開く


「私の立場は、日本の教育現場が未来を創る若者にとってより有意義で成長出来る場にする事だと考えてる、君の受けた屈辱や暴力は到底許されるべき事ではないが君自身が彼らに対し同じ行為を行う事を私は良しとは出来ない」


「そうですか・・大臣あなたは将来この日本のトップになって頂きたい程の人格者です、僕の実の母親そして叔母さん以外で初めて尊敬に値する大人に出会いました、大臣の仰る事はまともで当然の回答だと思います」


「「しかし」」


俺と大臣の否定の言葉が被る


「狛田君、私は君の行動を容認は出来ないが・・君の様子から謝罪の言葉ではもはやどうにもならないのだろう」


「大臣、僕は自分の行動には責任を持ちます、ただこの世には法を傘に人の尊厳を平気で踏みにじる人種が存在するのだという事をご理解頂きたいです」


暫く無言の状態が続き・・


「君との話は私にとって、驚きと反省を覚える内容だった、願わくば君の様な優秀な若者が正しく評価され正しい道を選択してくれて、その神から与えられた素晴らしい才能を世の為に存分に発揮してくれる事を祈るよ」


俺は深々電話口で頭を下げて

「大臣には貴重なお時間を頂き誠に申し訳ございませんでした、いち高校生である自分には過分なお時間でした本当に有難う御座いました」



そういうと、静かに通話を終了した。









もう俺の心を救うのは無理だよ大臣(笑)

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