みつ、ロドリゲス、-

@mouseion_

本文

はじめにみつがあった。でもどのみつかはわからなかった。蜜かなあと思った。そしたらそれは蜜だった。どの蜜かな。蜂蜜か壇蜜か、そのどちらでもあってどちらでもなかった。いやあ、密じゃなくて三つなんだと考えた。そしたらそれは三つだった。何が三つなのかはわからなかったが、とにかく三つが確かな具象性とともにそこにあった。でもそれは常識的に考えておかしいし、密じゃないかなと思った。密といえばあのコロナの三密だろうと思った。でも高校が仏教系だったので密教のことでは、とも思った。そしたらハスの葉の上に黄金に輝く小池都知事が座っていた。正座でこちらを見ていた、この顔には見覚えがあった。小学校のときに一緒の2-3組だったロドリゲスだ。そうか、みつはロドリゲスだったのだ。当時は仲が良かったが、卒業以降全然会えていなかった。感動のあまり久しぶり〜ロドリゲスと抱きつくと、彼は焦ったそうに色とりどりのビーズでまとめられた口髭とドレッドヘアをふさふさと左右に揺らした。合わせて彼の後ろで回っている光輪も揺れていた。灯りが足りなかったので少しいただくことにした。今まで連絡もなしに何してたのと問うとずっとただ在たと笑う。僕は過去、現在、未来に遍在しているんだよというので、それは私や全人類が、いや万物がそうだし、それは有限だと抗議したらそれもそうだとまた笑った。なあこの後久しぶりに飲み行かんて誘うたら、俺飲まれへんわあて言いよった。それでは何が飲めるのかと問いただすと、それが禁句だったのか彼は彼女になったあと霧散した。


当時のロード=リーゲスには7歳上の高校生の彼女がいた。2年前にあの子はどうなったのかと聞くと、口角をあげてそんなものはいないと返した。あるのは私のみで私が私なので、その女のように見えるものも私に違いないと。じゃあ樹里もロドリゲスだったのかあと気づきを得た。しかし、それが異端だった。それぞれがそれぞれの様態だと考えたが、それはそれぞれのそれぞれらしさを軽視することになるという反論により禁止されていたのを忘れていた。ちなみに樹里も幸子みたいに賢かったがあるとき悪さをしてお手伝いロボットに名前を奪われた。それ以来それ-器-高貴なる-と-海の、と名乗っていた。彼女のいとこの名前に込められた意味を分解したそうだ。彼女はハイフンに神秘が宿ると語っていた。でも“-“は私だった。だから常に概念に挟まれて生きている。苦しかった。息苦しかった。何度も無に行きかけたり、血で境界を囲おうとしたりもした。でも生きるしかなかった。それが人生だから。だから縦線を足した。¬になって否定になった。否定が否定とぶつかって成に成った。私は成った。

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