第4話 交際開始!
「「ごちそうさまでした。」」
2人して手を合わせて食器を洗い場に持っていく。
「食器は私が洗います。」
「いいんですか?」
「はい。こんなにおいしい朝食を作ってもらいましたから。このくらいは。」
「ならお願いします。」
藤音さんは家事ができないといっていたが食器を洗うことはできるようだ。
少し安心した。
にしても、この一日にも満たない時間で藤音さんがどういう人間か少しわかった気がする。
最初は僕も高嶺の花とか住む次元が違う人だと思ってたけど実際はそんなことないと思う。
苦手なこともあるし普通に笑ってもいる。
壁を作っているのはむしろ僕たちのほうなのかもしれない。
「天乃君?どうしたんですか?そんなに考えこんで。」
「いや、少し藤音さんのことを考えてました。」
「、、、どういうことですか?」
少し身を引きながら聞き返されて僕は自分の失言に気が付いた。
「いや、ちょっと違くて。藤音さんって学校の人が言ってるみたいに近寄りがたい人ではないのかなと思いまして。」
「なんだ。そんなことですか。まあそうですね。学校のうわさはさすがに誇張表現だと思いますけどそのおかげで言い寄ってくる男性が減って逆に助かったりもしています。」
「ああ、なるほど。」
確かに藤音さんほどの美人なら男子はお近づきになりたいと思うのだろう。
そういった面では噂に助けられているのかもしれない。
「それを言ったら天乃君も不思議ですよね。私に下心が一切ないんですもん。」
「それはまあ、失恋したばっかりなので。それに家に泊めてもらっているのにそんな目で見るなんて失礼じゃないですか。」
「紳士なんですね。」
「別にそんなことは無いですけど。」
実際、藤音さんは可愛いと思うけどこんなに良くしてもらっているのに下心を向けるなんて失礼にも程がある。僕はそんな人間にはなりたくない。
「じゃあ、そういう事にしておきます。それと今日のお昼はどうしますか?食材が足りないなら買いに行きますか?」
「そうですね。今の冷蔵庫の中身だと少し心もとないので買いに行きますか。」
「わかりました。準備してから行きましょう。」
「わかりました。」
準備といっても僕は制服しか持っていないためそれに着替える。
少し待つと藤音さんが部屋から出てきた。
淡い青色のワンピースを着ていてとても似合っている。
こうしてみると改めて高嶺の花といわれている理由がわかる。
「すいません。お待たせしました。」
「いいえ。全然待っていませんし。とても似合っていますね。」
「、、、ありがとうございます。」
なんだか、ほんの少し頬が赤い気がするけどきっと気のせいだろう。
「じゃあ、行きましょうか。」
「はい。」
僕たち二人はこの後スーパーに食品を買いに行った。
同じ学校の人に見つかるかもと思ったが全然そんなことは無く無事買い物を終えて帰ってくることができた。
「じゃあ、お昼ご飯作りますね。何かリクエストはありますか?」
藤音さんは買いだめするタイプみたいでかなりの食材を買っていた。
使わないのにこんなに買って腐ったりしないのだろうか?
「じゃあ、ハンバーグがいいです。」
「わかりました。すぐに作りますんでくつろいでおいてください。」
「あの、作ってるところを見てはダメでしょうか?」
藤音さんは僕の隣に来てそんなことを言い出した。
別にみられるのは構わない。
でも、なんでいきなり?
「全然大丈夫ですよ?。」
「ありがとうございます。」
ぱあと花が咲くみたいに満面の笑みを浮かべる藤音さんに少し見とれてしまう。
失恋したばかりというのに。
自分に少し呆れてしまう。
「どうかしましたか?」
「いえ、なんでありません。それじゃあちゃちゃっと作りますね。」
袖をまくって黙々とハンバーグを作る。
その様子を隣で見ている藤音さんはなんだか子供のようで可愛らしい。
時々わぁとかそんな声を出しているので面白かった。
「はいできましたよ。」
「本当においしそうですね。天乃君がこんなに料理ができるなんて驚きです!」
「そうでもないですって。早く食べちゃいましょう。」
「「いただきます。」」
手を合わせて昼食を食べ始める。
今回の出来は自分でもなかなかいい感じだと思う。
「おいしい!」
藤音さんは目を輝かせながらハンバーグを食べ進めている。
ここまでおいしそうにされると僕も嬉しい。
「よかったです。」
「天乃君!」
「はいっ。何でしょうか?」
いきなり名前を呼ばれてびくっとしてしまう。
「私と付き合いませんか?」
「は?」
今、藤音さんはなんていった?
私と付き合いませんか?って言ったか?
いや、聞き違いだろう。
学校でも高嶺の花といわれている藤音さんが僕みたいなやつにそんなことを言うはずがない!よって今のは幻聴!
「だから、私と付き合ってくれませんかと聞いたんです!」
どうやら、幻聴じゃなかったらしい。
でも、なんで?
知り合って一日しか経っていないのに藤音さんみたいな美人なら選び放題のはずなのになんで僕なんかを?
「えと、なんでいきなり?」
「理由は様々ですけどまず家事スキルが高いこと。見ての通り私は家事が全くダメなので家事ができる男性は好印象です。」
「他には?」
「私に邪な視線を向けてこないからでしょうか?今まであった男性は絶対に私に邪な視線を向けてきたので。天乃君みたいに純粋に私という人間を見てくれる人は何気に初めてだったりします。」
「えっと、藤音さんは僕が失恋したばかりって知ってますよね?」
「もちろん。でも、酷い振られ方をして心が折れてしまっているからこそ新しい恋を始めるべきだと思います!そこに私が立候補したまでのことです。」
それは確かに藤音さんの言う通りかもしれない。
未練は全くと言っていいほどないし、このままいけば僕は女性不信待ったなしだろう。
藤音さんは茜みたいなことをしないだろうし、なにより僕の作るご飯をあんなに嬉しそうに食べてくれるのだ。
なら、良いのかもしれない。
「じゃあ、そのお願いします。」
「やった~!彼氏ゲット!」
「なんかキャラ変わってません?」
飛び跳ねながら喜んでいる藤音さんは学校にいるときのようなクールな感じではなく無邪気な子供のように見えた。
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