第10話

「見えてるから歩いてるんだろ。大丈夫だよ。」

「あ、ほら、前のやつにぶつかった。見えてないんじゃないかな。やっぱり寝てる間に前髪切っちゃおうかな。」

「ばか。またら怒られるよ。」

すみれが可愛いのは知られなくていいんだから、余計なことするなよ。


小さい頃から俺と奏の後ろをついてきてた、かわいいすみれ。

王子様に憧れてた5歳のすみれが、王子様は俺なんて言わないってが泣いたから、すみれの前ではいまだに僕を徹底してる。


そんなかわいいすみれが、中学の途中から前髪で顔を隠すようになって、変なメガネをかけだして、スカートはめちゃくちゃ長くなった。学校では気配を消してるみたいで、大丈夫かなって心配になったけど、正直、かわいいすみれが人に見られなくて安心もしてる。


でも何かあったのはきっと間違いないから、同じ高校に入ってくれて本当良かった。

学年が違うのがもどかしい。

「留年しちゃおうかな…」

「いや、航が言うと冗談に聞こえないからそれ。」

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