散々告白しても相手にしてくれない美人教師、僕が他の女子生徒と何かしてると明らかに様子が変です
山犬
第1話 相手にされてない……はずだよな?
「――
「だから無理だって言ってるでしょう? まったく……」
放課後の生徒会室に呆れ声が木霊する。
それはこの私立市ヶ岳高等学校で副生徒会長を務めている僕・
「同世代の女子が身近にいっぱい居るんだから、カノジョが欲しいなら若い子の中から見繕いなさい。いいわね兼定くん?」
2人きりの室内に続けて響いた柔らかな説法。
それは生徒会顧問の明日葉羽月先生のお言葉だ。
生徒会顧問にして僕のクラス(2年5組)の担任でもある明日葉先生は、率直に言って超絶美人だ。
黒髪をミディアムボブカットにしている御年25歳の若手教師。
パンツスーツが似合うスタイルの良さで、身長は多分170センチに近くて僕と同じくらい。
僕はそんな明日葉先生に入学当初から惚れている。
完全な一目惚れだ。
でも思いの丈は誰にも負けているつもりはなくて、去年から優に100回以上は告白している。
そして今みたいに優しくフラれ続けている。
顧問の明日葉先生とお近付きになりたい一心で副生徒会長にまでなったものの、未だに報われていない。
でもいいんだ。
同じ空気を吸えているだけで僕は幸せ者だ。
でも諦めが悪いから、今後も告白し続けると思う。
「先生、僕を受け入れられない理由は年の差ですか?」
「……年の差というか、教師と生徒なのがね」
「じゃあ僕が卒業したら告白を受け入れてもらえたりしますか?」
「し、しないわよ。卒業生とくっつくとか破廉恥な教師のすることだわ」
ぷいっ、とそっぽを向く明日葉先生。
可愛い。
明日葉先生の一挙手一投足に僕の心は打ち震えてしまう。
「――おっくれましたー」
そんな折、引き戸が開く。
1人の女子生徒が足を踏み入れてきたんだ。
書記の
1年の後輩だ。
栗色の髪をふたつのおさげに結っている小動物系の小柄女子。
可愛いビジュアルだけで入学まもない春先の選挙で票を集め、当選してしまった凄いヤツでもある。
新生徒会が始動して今日で2週間。
飯沼のことはまだよく分かっていないが、ひとつだけハッキリしているのは明るい、ってことだ。
「あれ? 集まってるの基継パイセンと羽月ちゃんだけ?」
「ちゃん付けはやめなさいね」
「えー、いいじゃないですか別に! 羽月ちゃんは羽月ちゃんですよー!」
そんなことを言いながら、飯沼は僕の隣の席に腰を下ろした。
そこが飯沼の定位置だ。
「それより会長たちは居ないんですか?」
「用事があって休みなんだと」
僕がそう告げると、飯沼は「おっす了解でーす」と言いながら僕に椅子を寄せてきた。
「時に基継パイセン」
「……なんだよ?」
「めちゃんこ成績優秀って聞きましたけどホントですか?」
「一応期末はずっと1位だがそれがどうかしたか?」
「どうかしたかじゃないですよ! あずさ的にそれチョーポイント高いので唾付けとこうかと思いまして!」
狙われてる……!?
「自分で言うのもなんですけど、あずさって結構可愛いと思うんですっ。だから選挙にもソッコーで受かっちゃいましたしね! 今日も告白されたりしましたけど、あずさ的には基継パイセンが良いのでお断りしました!」
――ガタッ、と急に物音。
何事かと思ったら、書類作業中の明日葉先生がなぜか動揺したように立ち上がっていた。
な、なんだ……?
「先生……?」
「あ、いえ……なんでもないわ……」
そそくさと椅子に座り直す明日葉先生。
一方で飯沼が僕を上目遣いに見つめてくる。
「基継パイセン的にはあずさってナシですか?」
「え、あぁ、えっと……」
僕の本命は先生だから、色恋的にはナシだ。
でもそれをズバリと伝えて飯沼との関係がこれから微妙になり続けたら生徒会業務に支障が出てしまう……。
八方美人は好かんが、円滑な体制維持のために必要なウソもあるだろう。
というわけで、
「……ナシではないな」
――ガゴンッ!!
また物音が鳴ったと思いきや、明日葉先生が盛大に椅子から滑り落ちていた。
「せ、先生っ……!?」
「だ、大丈夫よ……それより飯沼さんがナシではないっていうのは、健全で良いことね……ええそうよ、あなたはそうやって若い同性代の女子に意識を向けるべきなのよ……ぐぎぎ……」
歯を食いしばるような言い方……。
全然良さそうに思ってなさそう。
どういう感情なんだ一体……。
「あ! 羽月ちゃんはあずさと基継パイセンがお似合いだって思うんですか!?」
「思うわ……ぐぎぎ……」
なんですかさっきからその歯ぎしり……。
「でも、生徒会の業務中にその手の無駄話はやめなさいね飯沼さん……?」
ゴゴゴゴ……、と鬼神の如きオーラを感じさせる威圧感と共に、瞳孔をかっぴらいたような眼差しで飯沼を見つめている明日葉先生。
怖い……。
でも飯沼は恐れをなした様子もなく、
「はーいっ、以後気を付けまーす」
と椅子を定位置に戻して、自分がやるべき作業を始めていた。
……明日葉先生は僕が女子生徒と一緒に何かをしていると、様子がおかしくなることがあるんだよな。
僕の告白を断り続けているんだから嫉妬ってことはないだろうし……うーん、謎である。
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