~無力の主観(あるじ)~(『夢時代』より)
天川裕司
~無力の主観(あるじ)~(『夢時代』より)
~無力の主観(あるじ)~
甘い記憶を辿って入(い)って、俺の〝旧郷(ふるす)〟は古い寝間からぽんと飛び出し外界(そと)へ訪れ、着の身着の儘、文句(ことば)を利(き)かさず斬新(あらた)な感覚(いしき)を解(ほど)いて行った。緩く漂う死相の許容(うち)から自己(おのれ)の合鏡(かがみ)を両膝(ひざ)へ認(したた)め、外界(そと)の誰にも気取れぬようにと旧い寝巻に文字を認(したた)め、温(ぬく)い躰でふらふら這う儘、自室を忘れた斬新(あらた)な記憶が俺の精神(こころ)を緩く掴んだ。母性(はは)の芳香(かおり)が寝間を飛び交い、次第に膨(ふく)れる私情の主観(あるじ)は俺の身元を薄ら蹴散らし、現行(いま)を流行(なが)れる古い吐息に終止(はどめ)を付すあと伸び上がりを得た。気楼(きろう)の芳香(かおり)が眼前(まえ)に飛び込む決定され得る瞬間から観て、俺の体裁(かたち)は誰に問うてもその実(み)が解らず、寄生して往く経過(とき)の目下(ふもと)で自訓(おしえ)を呟く俺の生気は母性(はは)を見出し、俗世(このよ)の独気(オーラ)を自ず凌げる幻想(みわく)の縁園(その)へと這入って行った(言った)。
*
誰かの娘の事を思い出し、自分も海外へ行った時を想定し、思い出し、どんな風にしたら英語を上手く喋れるように成るだろう、など考えながら取り敢えず職場まで歩いて居た。
行くと、施設の一階で、俺が元属していた部署のミーティングのような事をして居り、しかしもう直ぐに仕事が始まるようだった。俺もその疎らながらの人数に紛れて仕事をしようとして居た。そして実際、やって居た。
元(もと)俺を肉欲の渦中(うず)に引き摺り込んで発狂(くる)わせたあの異常に下半身の肉付きが好い娘が居り、その娘(こ)の存在が矢張りとても気になり俺は近付こうとしたが、そうする前に向こうから近付いて来てくれた。Oという右麻痺の男性利用者が二人の目の前に現れ、
「前みたいに英語で寝るまで会話してみようか?」
と敢えて俺がOに問い、娘に聞かせ、娘は、
「えー凄い!…やって見て下さいよ」
と矢張り彼女らしく乗り気で怖いくらい艶めかしく、可愛らしい所を見せてくれた。上手く出来もしないが、ちょこっとだけ俺は〝じゃあしよか〟と言う気勢でぽろっと大概誰でも言える英語を言うとOは上手いこと合せてくれて、またぽろっと英語かどうかも怪しい言葉(単語)を言い返して来て、それでも職場での利用者との会話であった為、二人は下半身の膨(おお)きな娘の前で助かって居た。
*
言葉巧みの密庵(みつあん)から漏れ、女性(おんな)の眼(まなこ)に目掛けた悪事は瞬く間に萎え草臥れ始めて、俺の茎部(けいぶ)は見事に曲がって彼女の新芽に自ら漏れ行く無数の精子に、淫靡を着せた。〝処女〟の空間(すきま)にあたふた始めるふやけた茎部は仁義を採って、彼女の顎から鼠径部までもを自己(おのれ)の不出来に対峙させ活き、自分の置かれた無理な立場は俺の前方(まえ)に枝分かれをして、尻の大きな女性(おんな)の文句(ことば)は興味を示さぬ悲鳴を上げた。苦し紛れの俺の努力(ちから)は女性(おんな)の覚悟を尻目へ遣りつつ見果てぬ〝淫靡〟の稀有な努めに義務さえ感じ、純白(しろ)い空気(もぬけ)の多忙さから観て、現代人(ひと)の生気が如何(いか)に汚く無謀に在るかを幼稚に見せ付け億尾を鳴らさず、定期に失踪(はし)れる潔白(しろ)い上手は〝大海(うみ)〟を渡れる渡鳥(からす)と成り活き、どちら付かずの左右の両眼(まなこ)は彼女の生気をぐっしり仕留めて、現行(ここ)から挙がれる強靭(つよ)い嘴(くち)にて一つ処へ運んで往った。苦労を識(し)れない現代人(ひと)の両眼(まなこ)は女性(おんな)を追い駆け、慌てふためく左右の輪舞曲(ロンド)は俺の太腿(あし)から順に食べ生く滑稽(おかし)な律儀を気取って在った。男性(おとこ)と女性(おんな)の孤独の縁(ふち)には真白(しろ)い周囲(まわり)が散々どよめき、人間(ひと)の呼笛(あいず)が遠くで轟く神秘(ふしぎ)の幾多を経験して居り、自分が居座る一室内から無用を長じて外界(そと)へ浮き出る「昨日」の延命(いのち)に散々語らせ、通り損ねる苦労の呼笛(あいず)の小さな音色(いろ)には、初めから無い男性(おとこ)と女性(おんな)の余程に乱れた元気が瞬く間にして一織(ひとお)りにも成る。尻の大きな重度の女性(おんな)が俺の目前(まえ)にて衣服を脱ぎ取り、自分の肌身を膨(おお)きく肥やせる自棄(やけ)の太差(ふとさ)を男性(おとこ)へ観せ付け、女性(おんな)ながらの濡れた柔味(やわみ)に自己(おのれ)を落ち着け、臭い牟味(むるみ)を堂々拡げる女性(おんな)の上気を暗(やみ)から引いた。処女の身辺(あたり)は宙(そら)に舞い散る欠片を集めて、生歴(きおく)に名高い〝固陋の広場〟を自分の万葉(ことば)にそっくり摩り替え、金銭(かね)の代わりに柔身(やわみ)を突き出す女性(おんな)の軍手を起用に捌き、俺の背後に揺ら揺ら発(た)ち得る非常の夢魔(むま)へと生気を研いだ。真広(まびろ)い膣には人の手足が自由に這入れる奥行深さがずんと成り行き〝処女〟の憂慮を如何(どう)にも仕留めぬ旧い掟が山積みにも在り、通り縋りの女性(おんな)の体(てい)から〝上気〟を逸した暴露の体(てい)まで、端正(きれい)に仕留める生締(なまじ)め上手が温床(とこ)から這い出し、純赤(あか)い生理の不順な羅列が暗(やみ)の許容(うち)では充満している。女性(おんな)の表情(かお)には〝処女(こども)〟の貌(かお)から自由に上がれる気高い需要(ニーズ)が脚色(いろ)めき発(た)ち往くoddを従え、古い「軍手」は昨日の幼児(こども)の成りの済ましに小首を上げ生く生気の〝通り〟が随分愉しく、他(ひと)の男性(おとこ)の幻想(ゆめ)の窪味(おち)など払拭せずまま未開を透し、笑顔の四隅(すみ)では俺に対して無間(むかん)を通せる強靭(つよ)い濡衣(ころも)を奇妙に通し、裸足のまんまで外界(そと)へ駆け出る稚拙(つたな)い悪戯(あそび)を想定している。細小(ちいさ)い列(なら)びに列(れつ)を乱さぬ亀裂の入らぬ規律の秩序に、千匹(みみず)が這い出す丸味(まるみ)の壁から微温味(ぬるみ)を掛け浮く微妙な軽身(かるみ)の気配が蹴上がり、俺と男性(おとこ)の未完(みじゅく)な坊主は頭髪(かみ)の頭数(かず)ほど刺激を携え血色豊かな器用な独気(オーラ)を的場に据え置き、〝処女(おんな)〟の在り処を払拭出来得る細小(ちいさ)な臨みに女性(おんな)の灯(あか)りを小さく点し、未完(みじゅく)を削げない無為の残骸(むくろ)を女性(おんな)の保(も)てない屍(かばね)に変え行く緻密な言動(うごき)の幸(こう)を観て居た。通り縋りの女性(おんな)の態(てい)では空気(しとね)の読めない稀有な言動(うごき)に脆々(もろもろ)壊れる無機の欠伸を対(つい)と観て居り、俺の背に発(た)つ紅(あか)い湯気(ムード)の余命(よめい)の理白(りはく)は晴天決裂、未完(みじゅく)に灯れる紅(あか)い孤独の女性(おんな)を引き裂き、暗(やみ)に滴る純赤(あか)い一滴(しずく)の一体一体(ひとつひとつ)が、小漏(こも)れに揺らせる幼女(おんな)の未完(みじゅく)を鉄砲へと遣り、男性(おとこ)に波(わた)れる旧い魅惑の煩悩(なやみ)の種子(たね)など、微温(ぬる)い暗(やみ)へと転々(ころころ)暗転(ころ)げる不間(ふま)の身辺(あたり)に静かに逝った。
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それから俺は以前のアメリカナイズが妙な油に乗り出したようで、とても人間(ひと)に調子良く成り、人を食って掛かれる強さを連続して持っていたあの頃(働いていた当時)を思い出していた。主に肥満のうざい男を相手にしていた事だ。すると、出て来たのか、はた又、始めから居たからこう言う展開に成ったんだろうか、肥満男が一階の職員に紛れて、又、俺と下半身が太い娘の間へ入って来て、俺は表情(かお)はしっかり笑っているが、内心競争心と、今まで離れていてこの職場・職員の内容の殆どを思い出したり忘れたりする、ということを知った。
*
文句(ことば)限りの稚拙な動作で女性(おんな)の暦を掴み損ねた俺の動機は、寒い厳冬(ふゆ)から諸手(もろて)を上げつつ、未完(みじゅく)の想起に訪れていた。女性(おんな)の不様は時代の流行(ながれ)に暗(ふくみ)を利かせて空気(もぬけ)に滴る珍妙(けう)な交響(ひびき)を男性(おとこ)の懐(うち)にて延々拡げ、男性(おとこ)の方では〝男性(おとこ)〟をしながら老衰して行く未完(みじゅく)の感覚(いしき)を愛してあった。男性(おとこ)の暴力(ちから)を唯一恐れる女性(おんな)の体裁(すがた)は軟い姿勢(すがた)を膨張させ活き、丸い輪郭(かたち)を手玉に挙げ生く子供の〝上手(じょうず)〟を巧く採り寄せ、独り上手に拍車を掛け得る芝居の深味(ふかみ)を相当死太く延長していた。男性(おとこ)の体裁(かたち)は内実(なかみ)を説(と)えない稚拙の幼稚に精神(こころ)を合せる術(すべ)を見付け、女性(おんな)の臭香(かおり)を決して逃せぬ檻の内での犬獣(けもの)と成った。男性(おとこ)の容姿(すがた)は逆立ちする儘、こうした暴挙で事を終らせ、女性(おんな)の愛滴(しずく)が天から降るのを億尾に掲げる衰退業者へその都度その都度熱望して活き、決して解(と)けない奈落の〝暗(やみ)〟へと小柄を震わせ粘着して居る。執着して生く〝生きる事〟への煩悩(なやみ)の脚色(いろ)には堂々巡りの欠伸が続き、楽天から成る私闘の運起(はこび)に定めて、白紙から成る不良の文句(ことば)に乱歩を這わせて失墜して行く。こうした生歴(きおく)の断片断片(とぎれとぎれ)に、男性(おとこ)と女性(おんな)の檻(かこい)は仕上がり、決定して行く〝男女〟と俺との見事の乖離は〝無駄〟を失くして憔悴していた。気楽が束ねる俗世(このよ)に産れた人間(ひと)の生気は、独気(オーラ)を放てず内々(うちうち)敗れ、小高い丘へとその身を遣る内、堂々巡りの私闘に関わり、黄泉(あちら)と現世(こちら)で我欲(よく)を仕留める無限の情意(じょうい)をその実(み)を遣った。拙い人脚(くき)から段々遠退く潤いばかりは、人間(ひと)の瞳(め)を見て傍観して居り、旧い木の葉を拾い集める未完(みじゅく)の独断(ドグマ)を器用に咲かせ、過去の涼風(かぜ)から滑稽(おかし)な緩風(かぜ)まで、忍び足にて巡行させた。無益に散らばる速い経過を頭内(あたま)にしながら、心算(けいさん)して生く脆(よわ)い丈夫は暴力(ちから)にその身を隠され、囃(はや)し損ねた未亡の残骸(むくろ)は歯軋りする内その掌(て)を噛んだ。
*
そして肥めの男の目を掻い潜り、掃除をしている時、人の両脚(あし)の在り方を妙に気を衒って意識している〝途中の空間(すきま)〟が俺へと目立ち、空白から来た旧い〝欠伸〟は危険を承知で女性(おんな)を待った。…下半身が異常に肥い娘は直ぐ来て寂しい事を聞き、子供染みた格好をした儘サンドイッチを持参して廊下を歩き、俺の目前を何度も何度も〝ぴゅうぴゅう〟と素通りしていた。そしてその娘は、又俺に質問をして来た。
「(誰かが)こうやって来たらどう返しますか?」
という下半身の丈夫な女性(おんな)の問いは、俺に自分の顔を近付けたらどうしますか?と言うものであり、俺は一気喰いしたい彼女の顔に注目したまま質問を脇へ遣って、娘の唇を指で押さえ込んだまま顔を近付け、娘にあと少しでキス出来そうなところで娘はとても子供のような人物に成り代わって居たような、妙な美しさを自分に見せ付けて来て、すっかり自分の目前に落された魅力に気付いて在った。
そうして俺に、
「いやぁん、付き合ってくれって言われたらもう駄目なんですよ」
と斑々(むらむら)甘えた。しかし未(ま)だ、傍(はた)からの目を気にして、何処(どこ)かガードに固い面(めん)が在る。出太(でぶ)の男が見ている分、他の女職員が見ている分、嬉しくもお固く成っていたのかも知れない。娘は嬉しそうだった。
*
〝甲斐無き徒労(どりょく)の美しさ〟と言う鈍い空気(しとね)に気分が巡り、相対して生く無益の動理(どうり)は至順に波(わた)れる言動にも在り、軒並み発(た)ち得る密かな発情(じょう)への運起(うんき)の定めは、暗い〝黄泉〟から丈夫に流動(なが)れる紺(あお)い愛液(しずく)に抜刀しながら、切っても斬れない〝粘りの呼笛(あいず)〟に無常を報せる滑稽(おかし)な足場を丈夫に溜めた。女性(おんな)の躰に粘々(ねばねば)流行(なが)れる無用の形成(かたち)に定型(かたち)を観ながら、辛(つら)くも哀しい不動の隔離を機敏に認(したた)め、旧い温味(ぬくみ)は奇怪を識(し)るほど血色(いろ)が失(き)え行く素人(あらた)な結界(むすび)を量産していた。娘の顔から〝処女(おんな)〟の火照りが順に消え行く宙(そら)の〝呼笛(あいず)〟に無性に従い、俺の身辺(あたり)に死太く付け入る女性(おんな)の労力(ちから)が無残に裂かれて血色(ちいろ)を魅せ生く稀有の脚力(ちから)を掌玉(てだま)に奪(と)って、有(あ)り様(よう)豊かに自体を沿わせる宙(そら)の冷風(かぜ)へと没念(ねん)を遣る内、酷い臭味(しゅうみ)にその実(み)が片付く女性(おんな)の初歩(いろは)を分散していた。俺の表情(かお)から娘の性器が量産され得て、払拭され行く無数の幻(ゆめ)には失念顔(あきらめがお)した古い延命(いのち)が堂々独歩(ある)きで分行(ぶんこう)して居り、作文から観る無為の景観(けしき)は余程透れる感覚(いしき)を従え、分散され行く没我の脚(くき)には湿り気の無い情景(けしき)が整い、活き生く上での要所要所に彼女が居るのは、自然(しぜん)の許容(うち)にて悠々蔓延る一羽の旅烏(とり)にも変わらなかった。時計回りの電撃戦から幾多の運命(さだめ)を端(すそ)へ遣る時、娘に対する俺の文句(ことば)が如何にも斯うにも空回りをして、真白(しろ)く煌(かが)やく黄泉の郷(くに)から幾重に跨る器量の星まで俺と娘の温(ぬく)い関係(かたち)は世久(よわ)に拡がり構築(きずな)を繁(むす)び、活きる最中(さなか)の所々で結託して行く自然(しぜん)の遊戯へ没落した儘、俺と彼女の親(ちか)しい間延びは至純(しじゅん)を極めて開花を観て居た。俺の立場に努々(つとつと)流行(こぼ)れる幾多の自然(あるじ)の文言(もんごん)等には、誰にも如何(どう)する事の出来ない見知らぬ既定(さだめ)が膨(おお)きくのさばり、俺と彼女を細小(ちい)さく揺らせる得意の空手を浮き掘らせる儘、黄泉(あのよ)と現世(このよ)の遠い進化の行く末迄もを堂々巡りの人間(ひと)の流動(ながれ)にきちんと置く内、還りを知らない人間(ひと)の遊戯に一新して行く孤高を見付けて、俺と娘の純(うぶ)の温味(ぬくみ)は何者にも増し憂慮を識(し)った。訳の分らぬ人間(ひと)と俺との関係から観て、俺が懐ける好い人達とは現代人(ひと)の欲芽(よくめ)にその実(み)を刈り出し、何処(どこ)へ行っても有頂を見果てぬ斬新(あら)た斬新(あら)たを気取って逝くから、俺の周囲(まわり)の〝好い人達〟には俗世(このよ)で見送る生気を気取れず、形成(かたち)を成さない旧い経歴(きおく)がのさばるばかりで、一向経っても人間(ひと)に成れない現代人(ひと)の正義が充満して居た。孤高の旧巣(ふるす)に膨(おお)きく寝付(ねづ)ける俺の神秘は現代人(ひと)を排して、保守(ガード)を固める短い生気に自己(おのれ)の正義を鬱積する儘、現代人(ひと)の生体(からだ)に横行して行く虚しい正義を膨(おお)きく捉えて嘲笑する儘、現代人(にんげん)嫌いを提唱して行く無為の独義(ドグマ)を点滅させた。点滅している俺の高貴は現代人(ひと)から観得ずに夜毎に絡まる孤高の夢瞳(むめ)には誰も沿(そぐ)えぬ古来伝(むかしがたり)が横行しており現代人(ひと)の誰にも認識されない粘り強さの〝活き〟が目立って、「明日(あした)」から成る不埒の問いには現代人(ひと)の努力(ちから)の脚色(いろ)と言うより、現代人(ひと)の努力(ちから)に一切沿(そぐ)わぬ俺の躍美(やくび)が目立って映えた。
*
下半身肥(ぶと)りの娘の周りに蜂が一杯群がっている。雀蜂の様(よう)である。俺が調子に乗って娘に、
「直ぐ助けるから俺の言う事を聞けよ!」
と言ったのを従順な子供ながらに真面に聞いた娘はこくりと頷いた儘で、本当にぴくりとも動かないで、ぶんぶん雀蜂が飛び回る中にじっと椅子に座って居る。夢ながらに、娘が俺の心の中に話し掛ける。
(娘)〝絶対、助けて下さいよ〟
(俺)〝ああ任しとけ!〟
何の自信も無かった。その証拠に、一匹蜂が自分の足にへばり付いて居たのを見た途端に俺は、ばたばたばたばた足を振り回し、手でぱっぱっぱっぱっ!と滅茶苦茶恐怖に慄きながら払ってる。雀蜂が自分の足の裏を刺そうとしていたのが(これも夢ながらに)しっかり見えると、気が気でなくなり、
「きゃああああ!」
とか発声しながら振り乱してしまうのだ。たった一匹の蜂にである。娘の周りには何十、何百匹という雀蜂がぶんぶん飛び回っているというのに、俺は情けないにも程がある位に、たった一匹にひぃひぃ言いながら四苦八苦だ。娘には正体の見えぬ根性が在った。
*
矛盾を識(し)らせぬ男と女の性(せい)の成就が俺の目前(まえ)にて大手を翳し、素早い恐怖を巧く運べる多数の蜂には恐怖した儘、俺の姿勢(すがた)を空虚に固める未覚(みかく)の吟味(あじ)には、何者にも無い滑稽(おかし)な残骸(むくろ)が散在して居た。突拍子の無い娘の温味(ぬくみ)に遭遇するまま俺の片手は自分の配下を充分馴らし、娘の気取れる恐怖の量には遠く及ばぬ未覚の進化が没落している。緩い恐怖に盲目ながらに、娘の体躯は女性(おんな)を着流し、俺の傍(よこ)には何者にも観ぬ斬新(あらた)の孤独が先行して活き、〝堂々巡り〟の蜂の恐怖に俺の歯止めは従い切れずに、「明日(あした)から成る無数の経歴(きおく)」を編纂した儘、気長(きなが)に流行(なが)れる孤独の生気を無音の内にて会得していた。幻(ゆめ)の迷いに〝云々(うんうん)〟魘され、血反吐に塗れた男性(おとこ)のmorgue(モルグ)が逆さに発(た)ち生く延命(いのち)を観ながら、遠くの遠くで自分に傾く〝身分〟の相違に手招きした儘、付かぬ存ぜぬ、母性(はは)の血面(みなも)を紅(あか)い人陰(かげ)にて遊転(ゆうてん)している人間(ひと)の晴嵐(あらし)に矛盾を着せた。俺の背後に真白(ましろ)く塗られた〝奇妙〟が先立ち、自分の両掌(りょうて)に逆巻く血波間(なみま)を〝堂々巡り〟の死灰(しばい)が生くのを暗(やみ)の間際に大きく覗ける固陋の〝孤独〟に相対(あいたい)した儘、感覚(いみ)を問えない女性(おんな)の主観(あるじ)を横目に置いた。自分の肢体(からだ)を解体して行く徒労の器量(うつわ)に身分を乗せつつ、母性(はは)の目下(ふもと)で恐怖を握らす淡い温度に身悶えして生き、人の歴史が解体され行く自然の軌跡を傍観した後(のち)、旧い宮(みやこ)に追随してしていた〝電子の光〟は個人(ひと)の目前(まえ)にて脆(よわ)り始める無機の根城を見付けて在った。苦労に絶えない幼稚化して行く現代人(ひと)の晴嵐(あらし)は、現代人(ひと)の黒目(ひとみ)に浮遊する内、自然(あるじ)が溶け込む無想の銀河に奈落を観て取り、幼稚化して生く幼児(こども)の飛沫(しぶき)を余命(いのち)の端まで運行した儘、通り過ぎ行く無色の空気(かぜ)にて自分の人見(ひとみ)を払拭していた。現代人(ひと)の断片(かけら)を両手に集めて、俗世(このよ)の温度を計った際(きわ)では現代人(ひと)の文句(ことば)も俺の文句(ことば)も万寿(まんじゅ)を越え活き私闘に燃え尽き、併せ損ねた協調から観て、不毛の巷を喝采して居た。当然顔(とうぜんがお)する自然(あるじ)の言動(うごき)は空気(しとね)に揺られる個人(ひと)の動静(うごき)を碁石の布石に揚々引き留(と)め、主観(あるじ)の無為には躰に酔わせる無理が色めき、草臥れ設けで金(かね)を仕留める優雅な流動(うごき)に散在した儘、〝子供(がき)の震え〟に合算(がっさん)され行く現代人(ひと)の欲心(こころ)が宙から降(ふ)り落ち泥濘(どろ)を吐き出す〝夢遊病者〟を赤裸々に留(と)め、〝合せ上手〟の寝間の様子を、人間(ひと)に隠れて大きく闊歩(ある)ける〝夢遊病者〟の隙を狙った。開眼間も無い幼児の這(ある)きに成人(おとな)の感覚(いしき)は美識(びしき)を保(も)てずに、端麗(きれい)に闊歩(ある)ける人間(ひと)の歴史は〝宙〟に問いつつ、大緑(みどり)に根深い個人(ひと)の一歩(あゆみ)は生歴(きろく)の一定(さだめ)に飽き飽きしていた。〝拘り上手〟の旧着(ふるぎ)の〝寝間〟には人間(ひと)に通らぬ腕力(ちから)を蓄え、個人(ひと)に訝る苦心の為には怒調(どちょう)の奥義(おうぎ)が一端(いっぱし)に発(た)ち、現代人(ひと)に採られる無駄な労徒(ろうと)の沃土は形成(かげ)さえ潜めず、俺の目前(まえ)にて不様を晒せる鈍気(どんき)を掲げて猪突に連歩(ある)き、漆黒(やみ)に隠れて贖う者から純白(しろ)い壁にて貼り付く者まで、指を咥えて幼気(ようき)を晒(さら)ける無用の才(たち)さえ無様に割いた。色気付き生く〝無駄〟の一女(おんな)は気色を晦まし、複数(かず)を増やせる妖しい美骨(びこつ)を己に宿して俺の前方(まえ)から宙(そら)へと消え失せ、生きる屍(かばね)は残骸(むくろ)を装い男性(おとこ)を騙し、蛇の眼力(ちから)に吐息(いき)を呑む内、次第に集まる髭犬男(はいえなおとこ)の精子に感嘆した儘、男性(おとこ)の機能を淫らに荒せる雌雄の舌へと勝利を這わせる。安い〝勝利〟に呑気を呑むうち男性(おとこ)の一山(やま)には生味(なまみ)が群がり、髭犬男(はいえなおとこ)の夢遊の自糧(かて)には〝勝利〟を宿せる〝女神〟が従い、髭犬男(はいえなおとこ)の幼稚な美目(びめ)には腐った大樹が両翼(うで)を拡げる馬鹿な既成(かたち)が初出(しょしゅつ)を引いた。〝引き分け〟にも無い無益の争起(そうき)は空気(しとね)に包(くる)まり、女性(おんな)の柔らに尻の窪みはその身を塗し、朝に咲かない無有(むゆう)の一踊(ロンド)は絶対感まで払触(ふっしょく)している。紺(あお)い垣には女性(おんな)の息吹が登頂して居て、男性(おとこ)の幻(ゆめ)から生体までもをその実(み)に揺さぶり涼風(かぜ)へと晒し、幻想(ゆめ)の微睡(ねむり)に追随して行く無憶(むおく)の滑車の始動を見渡し、瞬間(とき)の定めぬ孤高の脚(あし)から〝過去〟へ出向ける〝夢遊〟の主観(あるじ)を想定していた。俺の前から現代人(ひと)が消え尽き男女が消えた。
*
結局俺は娘の密室(へや)の周りを調子に乗って走り回って居ただけで、誰かが呼んでくれたレスキュー隊員の蜂退治の煙で事は収まった。俺は何一つ出来ず、調子だけ良く、無駄な事ばかりしていたのだ。情けないが、娘の前だ、格好付けなきゃ、と又打算が奔走(はし)る。
*
その後、また昼過ぎ(一三時二五分)まで寝ていた間に見た夢。以下。
*
AVの撮影現場に来て居たようだった。女、それも主婦達のような少し年の行った年増の小母さん達が群れを成して、四つん這いや横になって居り、鬼畜と化した男の良い餌食に成っていた。年増とは言えども、AVに出る女なので中々の美形揃いである。俺もその鬼畜の内に入って居た。或る男優と女優は風呂桶に漬かりながらセックスをして居り、その二人の周りには更に二人の美形の女が寄り添って笑って居た。
*
腐り続けて退化して生く男性(おとこ)と女性(おんな)の生(い)で立ちから観て、白紙に過ぎ足る夢遊の果(さ)きには女性(おんな)の自尊(とりで)が屹立しており、男性(おとこ)に見られる小さな能力(ちから)は歴史(きろく)に容易い脚色(きゃくしょく)に在り、女性(おんな)の夢から挙がる飛沫(しぶき)は男性(おとこ)の温度に揚々馴染まず、旧い歴史(きろく)と陽(よう)の棲家に、平々(ひらひら)舞い生く孤独の焚火に呆(ぼう)っと萌えた。真白(しろ)い叫(たけ)びは鬱と識(し)らずに歪曲して行き、俺が活き得る膨(おお)きな孤島(しま)には漆黒(くろ)い宙(そら)から気球が拡がり、初めて共鳴(さけ)べる〝門前払い〟に女性(おんな)の〝棲家〟を会得した儘、遠いお宙(そら)に還(もど)って行くのが幻(ゆめ)の原理と〝叶え〟を識(し)った。
幾数日からして、余程の連雅(れんが)に追悼するのか、俺の〝共鳴(さけ)べる〟矮小(ちいさ)な旧巣(ふるす)は絶感(ぜっかん)から観てすいすい泳ぎ、潔白(しろ)い細手(まのて)は深紅の脚色(いろ)した血潮を見せ付け、合せ損ねた調子の悪差(わるさ)に俺と男性(おとこ)の余命(いのち)を投げた。投(棄)げた果(さ)きから女性(おんな)の身に寄る烈風(かぜ)が吹き付け、俺と男性(おとこ)の漆黒(くろ)い宙(そら)には自由に止まない咽びが遠退き、身悶えして居る男性(おとこ)の孤独の飛沫(ひまつ)の懐疑(レトロ)は、宙(ちゅう)を跳び抜き世渡りさえ止(や)め、合せ損ねた人間(ひと)と個人(ひと)との矛盾の傀儡(とも)から、食うや食わずの茶色の用紙が涼風(かぜ)に逆らい順行(じゅんこう)する内、女性(おんな)の脚(あし)から徐々に消え生く絆の固さは余命(いのち)を見忘れ、初めから無い気色の火種を〝文句(ことば)〟に変え活き消滅していた。温(ぬる)い温度の男性(おとこ)と女性(おんな)が表情(かお)を隠して仄かに咳込み、未完(みじゅく)の笑顔が陽(よう)へ駆け出し、遅ればせつつ書物を読んだ。編んだ事無い鵤入(いかるがい)りの刺繍文字から男性(おとこ)に馴れない深い根言(ねごと)が宙(そら)から溢れて、女性(おんな)の肖像(かたち)を微大(マクロ)に描(えが)ける夢想(ゆめ)の祭典(まつり)を片手に保(も)ちつつ、男性(おとこ)の独歩(ある)ける幾様(きよう)の土手には、暗(やみ)の両腕(かいな)が俄かに小走り、継ぎの利かない寒い夜目(よめ)には、小波(なみ)の鳴りから陽(よう)へ薄れる男児の姿勢(すがた)がちらほら浮いた。こうした〝土手〟には新参者(しんざんもの)から古参が集まり、遠くに訝る人間(ひと)の感覚(いしき)に集う下人(やつら)を自分の下僕(てした)と見下しながらに、追々囃せる宙(そら)の音頭は虚空の継ぎから来参(らいさん)して居り、「明日(あす)」の見得ない俺の背後の浮世の人民(たみ)には、明日(あす)の気色が一瞬微睡む強力(つよ)い秩序(じゅんじょ)が廃頽していた。廃衰(はいすい)して生く無機の現代人(ひと)から私闘が途切れて、現代人(ひと)と俺との終の棲家を傍観するのは孤踊(ことう)の流動(うごき)が芯から凍て付く無駄の列(ならび)の垂直である。人間(ひと)の列(ならび)が現代人(ひと)の目前(まえ)から通り過ぎ浮く〝無駄の気色〟の順行等にはぴたりとくっ付き離れない儘、俺の背後(うしろ)に揚々息衝く文句(ことば)の多さに匹敵している。活きる屍(かばね)がどんどん外(ず)れ行く地殻(ちがい)を掌(て)にして、合(なお)し損ねた現代人(ひと)と俺との競合等には「値札」の付かない女性(おんな)の悪鬼がどろどろして生く血反吐に現れ、矛盾を並べぬ弱い快感(オルガ)は俺と女性(おんな)を乖離させ生き、死闘を組まない自然(あるじ)の背後(せなか)に無重の重味(おもみ)を吟味する内、暗い身寒(さむ)さが背筋を凍らせ芯を凍らせ、自然に操(と)られた〝合せ文句〟は俺を呑めずに「現代人(かたち)」を呑んだ。化わり損ねた俺の躰の生気の人渦(うず)から、〝土手〟に蔓延る「現代人(かたち)」の悪鬼を打尽に纏める苦労を訴え幻(ゆめ)の郷(くに)へとほろほろ倒れる無機の主観(あるじ)を変装させ生き、「現代人(かたち)」に成れない「現代人(ひと)」の価値には、無憶の経験(かて)から十分(じゅうぶん)積まれる怒号(どごう)の脆躯(もろく)が集散(しゅうさん)して居る。現代人(ひと)の純心(こころ)に真綿を見たまま現代人(ひと)を信じて歩いて見れば、堂々巡りの多忙に出会(でくわ)し、何にも変らぬ無謀な〝愛〟まで辿れて仕舞える。空虚な思惑(こころ)が俺の周囲(まわり)に散在する儘、現代人(ひと)から産れた男性(おとこ)と女性(おんな)は、俺の目前(まえ)から姿を晦まし、柔い白雲(くも)から地上に降り立つ未完(みじゅく)の肢体(からだ)を無為に着た儘、着の身着の儘、俺の識(し)らない開(あ)かずの塔まで肩を組み出し豪々(轟々)駆け出し、飽(あ)かずの空地(あきち)へ暴力(ちから)を観る儘、ひゅんと唸って消失していた。俺の前方(まえ)にて俺の気配を円らに識(し)るまま現代人(ひと)の知識は背丈を伸ばして遊覧して居り、俺の誠心(こころ)に彩(と)られた〝絆〟は終(つい)の棲家へ敗走させられ、気取る男女で「明日(あす)」の経過(ながれ)は進行して生く。現代人(ひと)の歩ける滑稽(おかし)な〝土手〟には仄(ぼ)んやり灯れる〝儚い破滅〟が野平(のっぺ)り立ち活き、白壁(かべ)を呈して昨日を見せない漆黒(くろ)い夜風が俗世(このよ)を泳がせ、女性(おんな)の柔(やわら)にしがみ付き生く惚けた男性(おとこ)は自滅に追われて、拙い幼稚に古びた女性(おんな)は、俗世(このよ)の盲者を起こした儘にて自分の自滅を延命させ行く小言の連呼を宙(そら)に列(なら)べた。男性(おとこ)に彩(と)られた「自由の孤独」は幻(ゆめ)の許容(うち)へと浸透して活き、以前(むかし)に遊べた親友(とも)の容姿(すがた)も朽ちる大樹にその実(み)を変えられ、現行(いま)に成っては死んだ四肢(てあし)を四隅へ拡げ、寒い檻(うち)にて俺を放れる死人の実体(からだ)を預ける無機の表情(かお)から現代人(ひと)が顕れ、俺を離れる俗世(このよ)の流行(ながれ)に暴力(ちから)を取り添え放漫に在り、奔放ながらに本能(ちから)が適わぬ自然(あるじ)に蹴られて私欲を訴え、自分の煩悩(なやみ)を延々募れる哀れな従者に彫刻された。五時の芽の出ぬ、幻(ゆめ)の息衝(ありか)の〝X day〟にて……。
*
その二人は、男優にも女優にも寄り添うようであった。ピストンは、早くすると上手く行かないので、ぐぐ~と何度も膣奥までしっかり突けるようにと、チキン野郎が奮起して居た。そのチキン野郎とは俺の様(よう)でもあった。それでは女は、あんまり気持ち良さそうではなかった。俺は羨ましがりながらも、世間でこんな事すりゃ犯罪なのに、ここじゃ合法的になって、ひたすら楽しめるんだなぁ、全く可笑しく成りそう、等と奮起にも憤慨にも憤怒にも似た感情が精一杯に心中を突き上げて来て、早くそこから脱出したかった。
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孤高の牙城(とりで)を俗世(このよ)で保(も)ちつつ、俺の躰は男女の集った〝土手〟の上から浮遊して活き、陽(よう)の在り処も仔細に問えない未完(みかん)の自然(あるじ)に偏在していた。真白(しろ)い吐息が根白(ねじろ)く凍て付く破恒(はこう)の道標(しるべ)を片掌(かてて)に保(も)ちつつ、人間(ひと)の端切れで恒調(こうちょう)していた孤高の〝呼笛(あいず)〟をその掌(て)に持ち寄り、人間(ひと)と無理して交情して行く哀れの定めを脱却した儘、個人(ひと)に解(ほぐ)れる哀れな〝絆〟は硬い白扉(とびら)を開いて逝った。俺の心身(からだ)を幾度も無いほど無数の行業(ノルマ)が過ぎて逝ったが、男女の欠片は宙(そら)に紛れて肢体(からだ)を成さずに、俺の前方(まえ)から歴史(きおく)の目前(まえ)からその実(み)を掲げて衰弱して活き、微かに匂わす現代人(ひと)の体臭(におい)も生歴(きおく)に呑まれて、「明日(あす)」の咲かない無理の要(かなめ)に集って逝った。それに従い、俺に気取れる人間(ひと)の許容(うち)には何事にも無く端正(きれい)に束ねた現代人(ひと)の生気は残らなかった。そこに在るのは俺を抱き付け歴史の許容(うち)にて〝生(せい)〟を象る夢遊の正気に生産され活き、俺の心身(からだ)を包容して生く豊穣(ゆたか)な寿命(いのち)の間延びが在った。
俗世(このよ)に居座る男女の群れから豊穣(ゆたか)な余命(いのち)の流行(ながれ)が突き出て、人間(ひと)の独気(オーラ)の楽(らく)を識(し)らない地獄の網羅がとたんに顕れ、男女の余命(いのち)が命乞いする〝地獄の主観(あるじ)〟を崇拝していた個人(ひと)の生歴(きおく)がその実(み)を翻(かえ)し、しっちゃかめっちゃか、機微を要する文句(ことば)の斬新(あらた)は現代人(ひと)の生き血を翻弄した儘、遠い「明日(あす)」へと一足飛びする化学の実力(ちから)を確認している。漆黒(くろ)い宙(そら)から生命(いのち)が翻(かえ)れる地球(あおいばしょ)への未完(みじゅく)の連想(ドラマ)は隣人(ひと)の隣で欠伸している悪魔の叫(たけ)びを白紙へ貫き、未完(みじゅく)を貫き、未完(みじゅく)に終れる古い途切(とぎり)を類纂した儘、人間(ひと)の余命(いのち)が何処(どこ)に在るのか、その実(み)の姿勢(すがた)に値して行く旧文句(ことば)を〝検索〟して居た。現代人(ひと)の経歴(きおく)は歴史の許容(うち)にて塗装され活き、個人(ひと)の主観(あるじ)が自然に対して追悼して行く未完(みじゅく)の冥利を片目に確かめ、古い習性(おきて)を間広(まびろ)に観たまま衰退して生く無機の墓標(しるべ)へ相対して活き、個人(ひと)が束ねてその実(み)を飾れる〝硝子箱(ガラスケース)〟の片鱗細工(へんりんざいく)を無残に遺せる手法(すべ)を身に付け、男は女の、女は女の、斬新(あらた)な魅力に精神(こころ)を踏み付け、「昨日」から観る精神(こころ)の温床(ねどこ)を俗世(このよ)に賭した。
「昨日」の晩から食事が通らず、旧い躰を露わに晒した紳士の態度(すがた)がpattern(もよう)を睨(ね)め付け、女性(おんな)の艶体(からだ)に女肉(にょにく)を認めた哀れの周知をご馳走している。自分の躰に肉付けして行く豊穣(ゆたか)な糧さえ女性(おんな)に遣って、自分の心身(からだ)は盲目(やみ)を貫く神秘(ふしぎ)の孤独を蹂躙する内、明日(あす)への正気が闊歩(ある)く最中(さなか)に〝孤高〟を発せる純白(しろ)の極致に無益を透せる形成(かたち)の付かない〝共鳴(なげき)〟の呼笛(あいず)は俺と人間(ひと)とを識別して行き、人間(ひと)と現代人(ひと)とを俗世(このよ)に葬る悪事の根として決定していた。土の中へとどんどん透れる現代人(ひと)と個人(ひと)との境の無機とは、俺の身元を指定付け行く高価な言動(うごき)を寝耳に鎮(しず)ませ、古い宮(みやこ)へその実(み)を翻(かえ)せる夢遊の調和を認(したた)め始めて、俗世(このよ)の悪へと変らず対せる硬い律儀を葬らずにいた。
俺の文句(こごと)は他人(ひと)の無機からその身を離せる無為の旋律(しらべ)を両立する儘、日本と他国の境界など無い純(もと)の古巣へその実(み)を翻(かえ)され、漆黒(くろ)い宙(そら)には何も問わない無理の調場(ちょうば)が凡庸(ふつう)を切り出し、現代人(ひと)の温床(ねどこ)はその実(み)を保(も)てない宙(そら)の〝調場(ちょうば)〟へ還され始めた。純白(しろ)い俗世(このよ)と漆黒(くろ)い宙(そら)とが遊離を介して偏在して生く現代人(ひと)の進化を馬鹿にした儘、宙(そら)に浮べる漆黒(くろ)い墓穴(あな)には未完(みかん)の這入れる空間(スペース)が在り、現代人(ひと)の進歩は進化を透してその身を挙げられ、二度と返れぬ自己(おのれ)の延命(いのち)に歯止め付けずに発狂を観た。戯(じゃ)れた態度(すがた)に人間(ひと)の姿勢(すがた)は協調した儘、緩く流行(なが)れる瞬間(とき)の経過に落調(らくちょう)して活き、ほろほろほろほろ、自分の身分が宙(そら)に撒かれて分離して生く〝一寸法師〟を目の当たりにして、瞬間(とき)の鳴らない神秘(ふしぎ)の身元(あたり)に〝通り相場〟の現代人(ひと)の感覚(いしき)を確認する儘、現代人(ひと)の愚かな言動(うごき)の緩みは宙(そら)の漆黒差(くろさ)に呑まれて行った。権力(ちから)に弱まり自活を問えない日本の雄姿は現代人(ひと)の目に依りその実(み)を固め、「明日(あす)」と俗世(このよ)の見境さえ無い虚無の支度を端正(きれい)に整え、人間(ひと)の主観(あるじ)が主情(こころ)を拡げて活きる呼笛(あいず)を、無駄を識(し)つつ構築して行き、かなり清閑(しずか)な俗世(このよ)の場末(すえ)には生きる歴史(きおく)が曖昧になり、現代人(ひと)の存在(かたち)は俺の前方(まえ)から端正(きれい)に仕舞われその身を消した。合法的にも違法的にも現代人(ひと)の感覚(いしき)は愚直化したまま女性(おんな)の主観(あるじ)が男性(おとこ)を溶かせる実力を付け、自然放棄にその実(み)を宿せる稀有の旋律(しらべ)は無機を観る儘、現代人(ひと)が死に生く檻の許容(うち)には「明日(あす)」が光らず余命(いのち)を失(け)した。幻(ゆめ)の許容(うち)での〝桃源郷〟から俺の生歴(きおく)は散乱して活き、果(さ)きの見得ない端正(きれい)な杜(やかた)へ美味を憶えて侵入して活き、闊歩(ある)き疲れた延命(いのち)を目にして、小人の逆行(もどり)を確認した儘、現代人(ひと)の旧巣(ふるす)が遠く華咲く未信の寝言に成就して居た。漆黒(くろ)い杜(やかた)は宙(そら)と俗世(このよ)と二手(ふたて)に分れる幻(ゆめ)の岐路へと案内した儘、俺を連れ添う微妙の共鳴(なげき)は〝土手〟を観るまで独立して居り、宙(そら)の目下(ふもと)でその身を揺るがす緩い縛りに悶えた陽(ひ)を見て、俺と現代人(ひと)との許容の在り処を土中(どちゅう)に崩して賛嘆している。純白(しろ)い人渦(うず)には俺の感性(センス)が腕力(ちから)を失くされ、脆(よわ)い暴力(ちから)で〝目下(ふもと)〟を独歩(ある)ける〝忍べる強靭差(つよさ)〟を口にした儘、人間(ひと)の人渦(うず)から波の立たない狭い許容(うち)へとその実(み)を引き寄せ、余計に漂う俺の感性(センス)を皆殺しにして現代人(ひと)を憎んだ。俗世(このよ)の延命(いのち)は俺の背後に大きく寝そべり、純白(しろ)い仕手から生気を貰える幻(ゆめ)の実力(ちから)を遊ばせ始め、寿命を否めて〝宙(そら)〟へ対せる膨(おお)きな雄姿(すがた)に縋って泣いた。
*
●「自分に与(くま)れた〝生(せい)〟の自然(あるじ)は暦(こよみ)を気にして、何処(いずこ)へ向かえる労(ろう)の棲家をその掌(て)に保(も)った。」
*
●初めから見た神の容(すがた)は人間(ひと)の億尾にふらりと顕れ、初めから無い虚無の酒宴(うたげ)を人肉(にく)に認(したた)め俗世(このよ)を退(ひ)いた。
*
●「無為」の極致を彷徨する内、見事に散らばる夜の星から人間(ひと)の〝生(せい)〟へと〝箒〟が表れ、俺の行く手を上手に観た儘、他(ひと)の足元(ふもと)で寝風邪を引いた。
*
●グラス色した人間(ひと)を束ねる自然(あるじ)の吐息は、空気(しとね)と空気(しとね)にその実(み)を掲げて生(せい)と生(せい)とを人間(ひと)の人数(かず)だけ雄々しく跨ぎ、旧来(むかしから)見た人間(ひと)の感覚(いしき)は人間(ひと)の定めをその目で取り寄せ、主観(あるじ)を失くせる拙い計りに文句(ことば)を置いた。
*
●無駄に解(と)け生く人間(ひと)と自然(あるじ)の〝生(せい)〟の動機(うごき)は文句(ことば)の身を借り雄々しく在って、現行(いま)の目下(ふもと)で悶絶している〝俺〟の情緒を廃絶した儘、現代人(ひと)と現行(いま)との脆(よわ)い番(つがい)を器用に受け止め、呼吸の鳴らない自然(あるじ)の孤独を夢想(ゆめ)に準え尊く死んだ。
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●不敵に微笑む未知の道標(しるべ)は魅惑を遺して自然(あるじ)を目覚まし、人間(ひと)と宙(そら)との歪(まが)れる波調(しらべ)に相対(あいたい)して置き、俺に連なる現代人(ひと)の残像(のこり)は端正(きれい)に片付き、現行(いま)へ延び行く旧来(むかし)の懐疑(レトロ)の襖の内(なか)から、〝禿鷲顔(はげわし)〟した得意の少年(こども)が知識を労(いたわ)り、俺の目前(まえ)では何も取らない清閑(しずか)な表情(かお)して胡坐を搔いた。
*
●〝一寸法師〟は俺の目前(まえ)から真横に失(き)えた。
*
●…………………。
*
幻(ゆめ)の切れ目が宙(そら)へ飛び込み俺の背中が思案を呈して雌を見る頃、女性(おんな)の瞳(め)をした旧い小人が双頭(あたま)を持ち上げ女性(おんな)を観(み)せた。幻想(ゆめ)の吐色(といろ)は文字に従い着色され活き、俺の目前(まえ)から見事な〝字〟を建て想成(そうせい)され生き、永く生残(いのこ)る神秘(ふしぎ)の芽を見て瞬間(とき)の流静(うごき)にひっそり身を寄せ、文句(ことば)少なの控え目を成し、白紙に空転(ころ)がる無数の陽(ひ)の粉(こ)は、俺と現代人(ひと)とに丁度跨る脆(よわ)い火蓋の目下(ふもと)へ降(お)り立ち、〝身の上話〟を傍(はた)から観た後、俺の奇跡にすっと宿れる延命(いのち)を乞い得る細(ちい)さな若輩(やから)は「創世記」を見て無体を招く。現代人(ひと)の〝生き血〟を自然(あるじ)の両眼(まなこ)に開眼した儘、漆黒(くろ)い蝙蝠(とり)から無憶(むおく)を委(まか)されぽんと突き出た月の夜から女性(おんな)の理屈がその実(み)を養い、旧い幻夢(ゆめ)から語る現夢(ゆめ)まで、独気(オーラ)を発して俺を連れ添い、他(ひと)の〝絆〟を無駄に揺さ振(ぶ)る概(おお)きな対岸(きし)まで鳥の寝息を真横に聴く内、滔々逆行(もど)れる朝陽(あさひ)の順進(すすみ)を「男女(だんじょ)」の目下(もと)から奪(と)り去り出した。無用の〝寡〟が女性(おんな)の空洞(から)から零れ出し活き、人間(ひと)の文句(もんく)に自然(あるじ)の独創(こごと)が幾様(きよう)に生きるを、どの「芽」から観て到底列(なら)ばぬ〝斬新(あらた)〟を欲して俗世(このよ)を棄て生く。辛うじて成る不気味の優選択(チョイス)を撰抜人(エリート)から観て躍動にも採る。「不気味の選抜(チョイス)」は人間(ひと)の歴史(きおく)に到底名高く、錚々たるうち人手(ひとで)に飾れる破目の〝遊戯〟を閲覧した儘、手早く離せる〝絆の吟味(ふかみ)〟を行方知らずの〝革命〟へと化(か)え、紺(あお)い宙(ほし)には膨張など無い無適(むてき)の既定(チョイス)が馴染んで在った。人間(ひと)の欠伸は現代人(ひと)へ交響(とどろ)き、無数の生歴(きおく)が宙(そら)へ逝くのを折れと現代人(ひと)との相異(ちがい)は見抜き、「明日(あした)」から無い魅惑の問診(カルテ)は土の内(なか)へと深味(ふかみ)に刻(しる)され、昨日から今日、今日から現行(いま)へと、その実(み)を共鳴(なげ)いて問診(もんしん)した儘、理(いみ)を通せぬ欲の小波(つぶて)が堂々巡りの波紋を遣った。日々の晴嵐(あらし)に培う陽(ひ)の掌(て)は晴嵐(あらし)に向かえる猟奇を従え、厚く束ねる〝自然(あるじ)〟の神経(みち)から黄土に煌(かがや)く表面(おもて)を認める。俺の真横を流行(なが)れる〝最中(さなか)〟は現代人(ひと)に気取れる最中(さなか)であって、旧来(むかしから)観た真白(しろ)い夜には人影(ひとかげ)が無く、俺と人間(ひと)との〝与太与太噺(よたよたばなし)〟は遠(とお)に優れて夕陽を介され、「明日(あす)」の〝陽(ひ)の掌(て)〟にその実(み)を委ねる轆轤の永さを形成していた。
現代人(ひと)の脳裏は〝真理(しんり)〟を伴い〝理系〟に奔走(はし)り、作品紛いの作(さく)を期しては模範を脱せぬ徒労をする儘、自尊に透せる〝何回巡り〟の暦(こよみ)の〝問う〟まで弄図(チャート)に描(か)き付け憤慨する内、自分の居場所が何処(どこ)に立つのか一向解らぬ不問に訴え、密かにひそひそ、孤踊(あしぶみ)して居る見栄の境地を天国(パラダイス)に観た。創作出来ずに独創さえせぬ感性(いしき)の豊かな現代人(ひと)の不様は他人(ひと)の黒目を異様に気にする滑稽(おかし)な教習(ドグマ)をその掌(て)にした儘、〝作(さく)〟が解らぬ日本の傀儡(どうぐ)に馴らされ始めて、稚拙仮想(アニメ)を気にして黒目(ひと)を気にする多忙の幼児に変容され活き、俗世(このよ)を離れぬ煩悩(よく)の集成(シグマ)に自己(おのれ)の叫びを延々聴かせ、説明文から説明文へと、間延びの絶えない〝アルキメデス〟を追悼しながら帳尻を観た。向かい合わせの隣人(ひと)の楽から無謀を沿わせる叫(たけ)びが上がり、人間(ひと)の〝狼煙〟を故意に辿れる素描の手法(すべ)さえ習得しながら、現代人(ひと)の主観(あるじ)は人為を囃せる無憶(むおく)の空転(まわり)を傍観していた。無機の正味が人間(ひと)へ流入(なが)れて、現代人(ひと)の伝手から生命(いのち)が失くなり、凍え死に出す調子っ外れが実に永くて個人(ひと)を発狂(くる)わし、俗世(このよ)の私事(しごと)を諦め始める〝無縁長者〟が生き始めていた。俗世(このよ)の没する淡く空転(ころ)がる大緑(みどり)の洞(ふち)にて、精一杯活き再生して居た。
~無力の主観(あるじ)~(『夢時代』より) 天川裕司 @tenkawayuji
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