~無憶(むおく)の歯止め~(『夢時代』より)
天川裕司
~無憶(むおく)の歯止め~(『夢時代』より)
~無憶(むおく)の歯止め~
〝意味〟を問わずに感覚(いしき)を問うた。人間(ひと)の自習(まなび)は斬新欲しさに自己(おのれ)を失い、自然(あるじ)の目下(もと)からふっと失(き)え出し、世間の流行(ながれ)に気忙(きぜわ)を憶えて蹂躙され得た。
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母親が、もう一度、頭の手術をした幻(ゆめ)を見た。俺はその翌日の朝に聞かされ、階下の(今は父親が母親の容態を見るのに都合が良いからと、一度目の手術の直後からずっと寝ている、母親のベッドが置かれた居間の隣の畳部屋)には父親と、確か従兄弟のNのような若い男が居り、俺は起きたばかりで二階からそこにゆったりと下りて来て、二人の中央辺りに居座る形となり、その俺の隣に母親が布団に寝て居て、母親にまるで付き添う形で、俺は父親ともう一人の若い男の話を聞く事になった。
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夢遊の主観(あるじ)が病魔を報せる企図へ就き出し、俺の背後にぽつんと見果てる〝母〟の生歴(きおく)を散漫にした。父とNとの若い会話は有頂を知りつつ、俺の立場(もと)から崩して活き得る斬新(あらた)な術(すべ)さえ揚々試み、失くした生歴(きおく)は母の寝間からぽつんと浮き発(た)ち」、俺の生歴(きおく)へ転々(ころころ)懐ける幼夢(ようむ)の関(せき)から解放され生く。
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二人の、いや殆ど父親が話す、昨夜の母親の容態の話を聴かされ、俺は仰天してし、
「そうか…俺は昨日の昼頃から、ずうっと今まで寝通していたもんな…。その間に起きてたんか…」
等と昨日の自分の行動から洗い直し、父親と、時折り、父親の話に合いの手や補足をする形で話す男の話を聴きながら、何故起こしてくれなかったのか、いや俺を起こす暇も無かったんだろうな…、あの昨夜から母親がそんな悲劇に見舞われていたなんて…。まぁ確かに歳ではあるし、一度は脳の手術をしているから…、等と纏まらない回想のような追想を瞬時にして現実へ追い付かせながら、横たわる母親の力無く可哀そうな表情(かお)を見た。母親の左目には、成る程、脳内出血をやったと連想させるような小さな血種のような、一点をやや四方(しほう)へ延ばし塗したような模様が見られ、昨夜の大変を物語りながらも俺に一連の在り方をきちんと伝えたようだった。
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母を取り巻く寝間のふもとに暗(やみ)から産れた淡い生歴(きおく)が重々跳び交い、父の精神(こころ)と男の精神(こころ)と、俺の身許(もと)までするりと抜け行く神秘(ふしぎ)の樞(ひみつ)がぽかんと成り立ち、誰を射止める不思議の気力を見定めない内、母の生歴(きおく)は矛盾を見定め窮境に遭う。父の身許を懐手をしたおかめな女性(おんな)は、未知を捜せる永い四肢(てあし)を両肢(りょうし)に定め、初めから無い人間(ひと)の孤独を俺へと魅せ突け、母に彩(と)られた個人(ひと)の旧差(ふるさ)を堂々挙げ活き、苦し紛れに〝生(せい)〟を愛せる「行き場限り」の音頭を採った。哀しい瞳(め)をした俺の母から上がれる余命(いのち)は旧い軒端に終ぞ見果てぬ柔らの自然(あるじ)を堂々見定め、俺に伴う父と男と両者を取り巻く稀有の見出しの空回りに見た、欲を束ねた死相を葬り、孤独表情(がお)した母の容姿(すがた)は、純白(しろ)い行李に畳まれ始める無知の言葉に圧倒された。漆黒(くろ)い寝室(へや)から自活に這い行く母が吠え出し、大きく剥かれた四肢(からだ)の上気は他(ひと)に彩(と)られた散漫を観て、狭い寝室(へや)から怜悧(つめ)たい居間(へや)まで自己(おのれ)を騙せる幻(ゆめ)を観ていた。母の病躯を拾い集めて、俺の記憶は充満しており、これまで確(かく)した自分の牙城(とりで)を文句(ことば)の水面(みなも)へ追悼しながら、慌てふためく銀河の輝(ひかり)を一掃していた。俺の生歴(きおく)に母の生命(いのち)が投げ込まれた後、どんどん続ける瞬間(とき)の膨大(おお)さにこの実(み)が焼かれる憤怒を従え、旧来(むかし)の生歴(きおく)に縋り続ける俄かの勇気を永らえさせた。純白(しろ)い叫(たけ)びは昨日の白紙(ページ)に描(か)き込まれて在り、国を違(たが)える異国の人々(ひと)にも、如何(どう)にも斯うにも躍動させ得る秘訣の空慮が目立って在って、真白(しろ)い轆轤は俺の文句(ことば)を鵜呑みにする儘、人間(ひと)の膨張(なが)さに還って入(い)った。漆黒(くろ)い白紙に宙(そら)の生命(いのち)が真横に横切り、果てしない許容(うち)堂々独歩(ある)ける虚無の酒宴(うたげ)を満喫して居り、何処(どこ)にも生きるが何処(どこ)にも行けない俺の延命(いのち)の喝采を見た。個人(ひと)の余命(いのち)は死に往(ゆ)く者から遺った者への透明色した生気を従え、未だ不明の沈殿物から〝人間(ひと)〟を創れる上気を仕上げて自然(しぜん)の猛威は〝横殴り〟に吹く「意味」の〝牙城(とりで)〟を過ごして行った。
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(父)「昨夜(ゆうべ)の八時頃から、『頭が痛い…!頭が痛む…』言い出して、で、心配やったから、病院連れて行ったんよ。」
(俺)「そうなん?」
(男)「大変やったよな」
(俺)「…で、どこの病院行ったん?」
(父)「横浜にある脳外科で有名な大きい病院までよ…高速乗って行って来たよ」
(男)「ようすっ飛ばした…!」
等と、昨夜の事の顛末を聞かされながらも、矢張り、この京都から横浜までを母親の為に夜の八時から出て、きちんと今また此処(ここ)へ帰って布団にたわらせ寝かせ、大変な急変を落ち着かせた父は凄い、と感心し、それでも矢張り母親の容態が心配で、俺は母親の傍(そば)から離れる事をしなかった。母親が急に、とても哀しく見え始めていた。母親は寝て居ながらに、一度目に脳内の出血を受けた直後に被(かぶ)っていた青と灰の混ざったニットの帽子を被っていたかも知れない。母親の服は、黒色(くろいろ)だったのを覚えている。ズボンは何時(いつ)も履いてる、子供が履くようなストッキングを履いて居り、下だけは軽装に近かった。しかしまさか、横浜まで行ったとは…、俺は又もう一回、此処(ここ)に集(つど)った俺以外の皆に感心していた。その間(あいだ)、ずっと寝通すことの出来た自分がまるで何か、不思議の様(よう)だった。よく眠れたもんだ、なんて逆に感心していた様(よう)である。
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無駄の少ない瞬間(とき)の隙間に俺の発声(こえ)から孤独の触手(て)が出て、初めから無い人間(ひと)の孤独に〝多忙〟に紛れる暗い肢体(からだ)が上手(じょうず)を追い越し悶絶して生く。母の表情(かお)には昨夜(ゆうべ)の〝孤独〟がわんさか溢れながらに、純白(しろ)と漆黒(くろ)との対照観(コントラスト)が時分を隠して小躍りして居り、父と男の二人の共力(ちから)を緩々靡かせ昨日へ追い遣り、自分の躰は〝晴れ間〟に覗ける桃色(ぴんく)の両手を柔らに隠し、過去の付かない瞬間(とき)の経過(ながれ)を俺と男と父へと魅せた。漆黒(くら)い暗(やみ)から一線(ひとつ)に挙がれる微妙(きみょう)の導標(しるべ)を、俺の精神(こころ)は母の吐息(いき)から奪って在った。僅かな灯(あかり)が経過(ながれ)の空間(すきま)にぽつんと見得出し、世渡り上手の男女の体(たい)から円らな微温(ぬるみ)が解け始めていた。暗い光明(あかり)は奇妙に概(おお)きく膨張して行き、明日(あす)の〝梯子〟は段を成さずに屯するまま人間(ひと)の大口(くち)から微妙に仕上がる稀有の〝空気(もぬけ)〟を切羽詰まらせ、挙句の果てには純白(しろ)い白夜が噴水して生く自生の有無へと直面して行く。〝初め〟と〝終り〟が俺の身許(もと)まで誘われながら、母と息子の哀れな生起(せいき)が如何(どう)にも懐かぬ雲母(どだい)を従え、漆黒(くろ)い暗空(ふるす)へ暫く還れる未覚(みかく)の憤怒を噴散(ふんさん)していた。俺に彩(と)られた幻(ゆめ)の間拾(まびろ)は宙(そら)へ這い活き、反声(こだま)の反逆(かえ)らぬ人間(ひと)の映りに丸く認める延命(いのち)を見て取り、明日(あす)と今日との横並びに在る個人(ひと)の経過(ながれ)が、昨日の孤独へ早くも返れる無駄の躊躇を牽引していた。灯(あか)るく生やせる有情の精神(こころ)は人間(ひと)を跳び立ち、暗(やみ)の目下(ふもと)へ激しく逆行(もど)らぬ寿命(いのち)の叫(たけ)びを背後(あと)にする儘、潔白(しろ)い〝畝(うねり)〟は瞬く間にして膨(おお)きく成り活き、小さく吃(ども)れる個人(ひと)の美声(こえ)には〝斬新(あらた)〟に寒がる「吐息」の寝音(ねおと)が実根(さね)を廻して廻転(かいてん)していた。真広(まびろ)の暗空(そら)へと逆戻りに在る俺の幻(ゆめ)から、稀有に遣られる孤独の唄声(こえ)等、美声(こえ)に見紛う神秘(ふしぎ)の言動(うごき)が俺の温床(ねどこ)へ逆さに吊られて遊興して居り、初めから無い〝卑屈〟の火蓋は人間(ひと)の知識に埋れて行った。現代人(ひと)の知識へどんどん呑まれる旧い出世魚(さかな)は堕落の肴(あて)へと矛先(むき)を変えられ、貌(かお)を見合わせ示し始める無機の〝音頭〟を続行していた。俺に蔓延る煩悩(なやみ)の独気(オーラ)は悶絶しながら、瞬間(とき)を化(か)え得ぬ不屈の精神(あるじ)へ邁進して活き、独創(こごと)を愛せる黄泉の余韻(しらべ)を不和に逆行(もど)せる姿態を識(し)った。一向経っても進歩を魅せない現代人(ひと)の文句(もんく)は反声(こだま)に返り、俺の温床(ねどこ)は血赤(ちあか)に濡れ行く呼気(こき)の行方を巡行した儘、明くる朝から心身(からだ)を射止める無為の景観(けしき)を引用していた。旧い幻想(ゆめ)には〝斬新(あらた)〟の身許が具わり切れずに、明朗(あかり)を掲げた人間(ひと)の正味に現代人(ひと)の安易が仄かに固まり、〝行方知れずの愛の幻(ゆめ)〟には、初めから無い無為の極致を何度も観て居た。純白(しろ)い〝小躍(おど)り〟は何時(いつ)まで経っても黄泉へ還らず、母の足元(ふもと)と未完(みじゅく)の目下(もっか)に岩の固さの環境(まわり)が仕上がり、孤独な眼(め)をした旧い形態(かたち)の矮小(ちいさ)な髑髏が矛盾を濾過して大きく成った。母の吐息は無数の孤独を他(ひと)に観ながら、自分に彩(と)られた派手な窮境(さかい)を片掌(かたて)に観る内、自分を見詰める小さな赤身を真中(なか)に仕留めた白目の景観(けしき)を追々見定め、生歴(きおく)と経歴(きおく)の稀有の空気(しとね)に軟身(からだ)を寝かせる労苦を識(し)った。寒い広瀬が人間(ひと)の生気(オーラ)に細く浮き立ち、微妙な懐古(レトロ)に運散(うんさん)して行く多勢の集成(シグマ)を死太く仕上げ、俺に操(と)られる拙い独気(オーラ)は白紙に廻転(まわ)され幻(ゆめ)まで生きた。人間(ひと)の形成(かたち)が人見(ひとみ)に見得ない軟い像(すがた)へ変革され行き、孤独を啄む秘密(ひそか)な行事は宙(そら)へ羽ばたき〝労苦〟を識(し)りつつ、発狂(くる)い続ける徒歩の独姿(すがた)は〝意味〟を棄(な)げ付け失踪していた。所構わず不純に踊れる無為の人姿(すがた)は私空(しくう)に留めて、明日(あす)の文句(ことば)の不意の生気は孤独顔して孤独に纏まり、端(はな)から四肢(てあし)を丸めて独歩(ある)ける旧い雅をその瞳(め)に携え、活きる覚悟を粉砕したまま生気(せいき)を得るのに失敗して居た。独(ひと)つしか無い自己(おのれ)の体が他(ひと)の活気に絆され続け、会いたい人への純(すなお)な気持ちは蹂躙され行く定めを吟味(あじ)わい、他(ひと)の活気は勝気(かちき)と成り活き、自己(じこ)を煩う神秘(ふしぎ)な樞(しかけ)を俺へ寄越した。俗世(このよ)の神秘(ふしぎ)を吟味(あじ)わえずに居た俺の足元(ふもと)は孤独を識(し)らされ、中身の無いまま過ぎ去り続ける他(ひと)の肢体(からだ)を見送り続けて、他(ひと)の主観(あるじ)が概(おお)きく膨れて〝土台〟を突っ立て、暗い表情(かお)した俺の背姿(すがた)は俗世(このよ)を棄て生く覚悟を欲しがる。どんな男性(おとこ)も柔い女性(おんな)も俺の目前(まえ)ではやがて過ぎ生き、俗世(このよ)に芽吹ける男女(かれら)の生気は暗(やみ)へ零れて俺から確(かく)され、何処(どこ)へ向くのか脆(よわ)い生気が、男女(かれら)を飛び交い雲母を抱いた。俺の生歴(きおく)は古びた〝活気〟を失いながらも、自室と夢中(ゆめ)にて自由に廻れる独自の調子をその掌(て)にした儘、他(ひと)の余命(いのち)を全て棄て切る強靭(つよ)い姿勢(すがた)を採らされ始めた。俺の周囲(まわり)は自然が寝就(ねつ)ける飼い葉が在りつつ、他(ひと)の様子を何処(どこ)にも挙げずに、俗世(このよ)の煩悩(なやみ)に活気を絞れる現代人(ひと)の造作だけ挙げ、〝愛〟に似て行く良人(ひと)の様子も瞬時に留(と)まらぬ緻密な温味(ぬくみ)を持たせて消した。「この世は孤独、それだけだ」。
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母親が力無い声で「トイレに行きたい」と言い出して、俺は母親の麻痺した側(現実には右側だが、その夢の内では左側だった事が、俺が母親の左側に付き添っていた事から分る)に付き添って、摺(す)り硝子窓の入った重い襖一つを隔てたトイレへまで母親を行かせた。父親はその俺と母親との光景・情景を見守るように、「じゃあお前、連れて行ってみるか?」と言い、何時(いつ)もは自分がそうした母親の介護をしていた父親が身を引いたのを見て、俺は、父親の年齢(とし)の事をも考えさせられ、俺に母親の容態に付き添う事を一任して来た事に大事を思わされ、自ず厳粛な気持ちと成った。男も父親と対極の位置から、俺と母親がゆっくりした歩調でトイレへまで行くのを見守って居たようである。トイレへ入ると母親は、ズボンを下げ、パンツも下げて、俺に、新しい物を持って来るよう要求した様子で、その時の俺には、母親の為なら母親が望む何でもを出来る限りしてやろう、と躍起になった愛情のようなものが芽生えて在り、一度目の脳内出血からこれ迄の、母親を取り巻いた回復へ向けた日々が走馬(そうま)のように甦らせながら、とにかく、今は母親の言う事を大切な一つ一つと信じ、母親の言う事を何でも聞く姿勢で在った。
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閻魔の畔に矮小(ちいさ)な燈(あかり)がぽつんと浮き出て、他(ひと)の脚力(ちから)が浮力を講じて協力をせず、俗世の黄泉(いずみ)に沸々沸き生く幼児(こども)の抗体(からだ)を脇へと置いた。「この先生きても人間(ひと)の影響力(ちから)を見張るだけだ」と俺の覚悟は〝生(せい)〟を透して矢庭に気が付き、馬鹿付きしている俗世(このよ)の悪魔に他(ひと)を見立てて身震いして活き、俗世(このよ)を離れる悲愴の覚悟は永久(とわ)に生き得る孤独の覚悟と対峙して生く。「始まり」さえ無い人間(ひと)に彩(と)られた俗世(このよ)の交響(さけび)は、人間(ひと)に象(と)られた俺の生歴(きおく)を無稽に帰せ得る混沌を立て、俗世(このよ)に活き得る全ての純(すなお)に人間(ひと)の暴力(ちから)が影響して生く永久(とわ)の事実を普遍に建てて、せっかく象(と)られた俺の心身(からだ)は〝母〟に射られた暗(やみ)の空間(おり)にて自殺をして居た。〝意味〟に纏わる多動の在り処が俺の目先へ推行(すいこう)して活き、遅ればせつつ光る動作は母の足元(ふもと)に小溜(こだま)りと成り、俺の背後に隠せる物語(はなし)は、怒涛の活気に吸い込まれて行く。母の表情(かお)から無意味の残骸(むくろ)が多くのさばり、俺の隠れた不敵の笑みには美力(びりょく)が逃げ行く精神(こころ)が蹴躍り、初めから観る母の印象(かたち)は暗(やみ)に紛れて酸化して行き、生きる躰は端正(きれい)に咲かない月下美人(はな)の態(てい)して落ち着き始める。純白(しろ)い〝絹〟には母の映りが程好く冴え活き、幼児(こども)の瞳(め)をした小さな肢体(からだ)が俺の覚悟を粉砕して行き、とても小さな〝苦労〟の末には、母の身許は明るみには無い強靭(つよ)い芳香(におい)を漂わせて居た。
文句(ことば)の陰から小さな吐息がひょいと漏れ出し、俺の精神(こころ)に根強く捕まる母の生歴(きろく)は脆(よわ)い人身(からだ)を印象(いんしょう)へと遣り、何も無いのが〝空気〟である等、小さく呟き朗笑している。俺の弾みは母の表情(かお)から何気に漏れて、宙(そら)を漂う旧来(むかし)の家屋に小さな探究(ひかり)を堂々観た儘、意識の混濁(よごれ)を片手に据え置き端正(きれい)な姿態(すがた)の母性(はは)を観て居た。神秘(ふしぎ)の気持ちを横目に観ながら暗(やみ)に隠れた「小さな空間(すきま)」に母の印象(かたち)を気丈に仕留めて、俺と「母」との人間(ひと)の距離など、〝宙(そら)〟に読み取り誘惑していた。遊撃され行く俺の〝旧巣(ふるす)〟の奇問の様子は母の遊郭(くるわ)に相当名高い「苦心」の空間(すきま)を散徊(さんかい)して居り、白紙に仕上がる〝物見遊山〟に跨げる〝同士〟は、俺の精神(こころ)に粉砕され生く潔白(しろ)い騎馬へと上手に跳び乗り、母の躰が衰弱するのを、自然(あるじ)の目下(ふもと)に仄(ぼ)んやり観て居る。母の生気が俺を飛び越え暗宙(そら)へ返ると、俺の背後は煙(けむ)に巻かれて弱退(じゃくたい)して行く人間(ひと)の謳歌が独気(オーラ)に塗れて永く嫌われ、逆行(あともどり)の無い旧い形式(かたち)へ余程に呑まれて悶絶している。俺と母との古い空気(しとね)に巻かれた雄姿は俺の背後にきちんと仕上がり、母性(はは)の寝間から次第に枯れ行く五色(ごしき)の初歩(いろは)が物見に立てられ、俺が居着ける暗い色した密室(へや)の四隅(すみ)には、父と男の少ない生気が外界(そと)へ向けられ身軽(かる)く小躍(おど)った。
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その日は日曜だったので、教会がある日であり、母親は俺に、教会に今日行くのかどうかをトイレの内から俺に訊いて来たようだった。俺はとにかく、母親が気に入る様(よう)にしたかった事もある為、母親なら俺に如何(どう)して欲しがるだろうか考え、行くよ、と応えた。それを聞いてから母親は又自分のトイレに夢中になった様子で、早く換えのパンツとズボン下とを持って来るように、と俺に言い付けてくれたようだった。一度母親が以前にトイレで失敗をして、パンツとズボン下とを尿便で汚した事があるのを俺は知っていた。
俺は、母親の衣類を聞いてから、洗面所へ駆け込み、不安と哀しさで一杯だった体を顔を洗うタンクの様(よう)にある洗濯機に沿って敷かれた短い絨毯の上に跪きながら、〝神様…!お願いします!母を…!母親を助けて下さい!お願いします!!〟と何度も黙祷していたが、跪きながら自分の下半身を見た俺は、俺の下半身が素っ裸だった事を知っていた。その辺りで、今日、二度目の夢から目が覚めた。
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諄(くど)く話せる母との会話に話題を忘れ、俺の心身(からだ)は生気に拙い〝生きる活気〟を概(おお)きく見定め、自然(あるじ)に寄り添い見下ろす密室(へや)には母と俺との二局(ふたつ)の伝記が真横に置かれて、空気(しとね)に空転(ころ)がる空気(もぬけ)の表情(かお)した旧い祝儀は、一目散にと、暗(しろ)い正義の柱に躰を馴らして滑って入(い)った。
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(暗中)「…区切りが無いのが嬉しい…」
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そうして呟く旧い幻(ゆめ)には空気(しとね)に巻かれた母性(はは)が生き抜き、人間(ひと)の正義に温味(ぬくみ)を云わない自然(あるじ)の強靭差(つよさ)を額に掲げ、俺と母性(はは)との〝伝(つた)い独歩(ある)き〟を宙(そら)の果てから仄(ぼ)んやり観て居り、何処(どこ)にも行かない旧い記憶が詳細(ちい)さく刻まれ散財して居る密室(へや)の四柱(かたち)を円らに留(と)めた。純白(しろ)い来(き)てから余程に仕上がる無憶(むおく)の絡みは遊散(ゆうさん)した儘、始まりから無い脆(よわ)い辛苦は個人を蹴破り、温(ぬく)い厚味を女性(おんな)に化(か)え行く独創(こどく)の連歌がその内活きた。母性(はは)の生歴(きおく)は空気(しとね)に産れた黄泉の郷(くに)から小さく湧き出る肢体(からだ)を保(も)ち化(か)え、母性(はは)の印象(かたち)は母の生気を素早く吸い取り母を顕し、俺の目前(まえ)から前方(まえ)へ先立つ温和の火の粉を宙(そら)に観る儘、他の女性(おんな)を皆殺しにする独気(オーラ)の燈(あかり)を大体にした。幻(ゆめ)の意識は苦痛に訴え、恐怖を掌(て)にして悲鳴を上げたが、文句(ことば)通りの〝家屋の渦中(うず)〟には俺の孤独が蔓延して居り、今日の旧巣(ふるす)が明日(あす)の古巣へ追従(ついしょう)して行く希望(ひかり)を観ていた。現代人(ひと)の意識は現行(ここ)しか咲けずに暗い宙(そら)ではその実(み)を化かして遠く散らばり自活の肴(あて)には〝郷里〟を保(も)てない孤独の主観(あるじ)を美称(びしょう)して居る。個人に産れた幻(ゆめ)の許容(うち)には他(ひと)に対したりして〝孤独〟を識(し)れない強靭(つよ)い快感(オルガ)が先行して活き、現代人(ひと)に降(お)り行く以前(むかし)の生歴(きおく)は現実(じじつ)より成り現寝(うたかた)に在る。俺の孤独は独歩するうち飛翔に飢え立ち、明日(あす)の延命(いのち)を孤独に遣りつつ、独りの在り処を敢えて選んだ。それしか現行(ここ)では、現代人(ひと)と寄り添い自然(あるじ)に対する術(すべ)の在り処が〝一(いち)〟にも〝三(さん)〟にも無かったからだ。母性(はは)の躰は低い位置から真横に空転(ころ)がり、現実(いま)に於いても敢えて失(き)えない〝俺に対する文句(ことば)〟を訴え、俺の感覚(いしき)を直(じか)に掌(て)にする、脆(よわ)い空気(しとね)に這入ったからだ。純白(しろ)い外套(マント)は密室(へや)の四隅を暫く眺めて、俺と母性(はは)との活き得る水面(みなも)を気力の彼方へ乏しく棄(な)げ出し、ぬっぺりと広い詳細(こま)かな〝密室(かたち)〟を円らの体裁(かたち)に収めていたのだ。現行(ここ)で呼吸(いき)する惨い残骸(かばね)を〝動く物〟への残像(のこり)と観た儘、空気(しとね)に素早く還れる夜気(よぎ)の目下(ふもと)は細々(ほそぼそ)切り立ち、母性(はは)と俺との試練の成就を喝采しながら活き続けていた。早い逆行(もど)りが黄泉の郷(くに)から再び還り、〝三〟の数字に裏打ちされ行く文句(ことば)の〝旧巣(ふるす)〟に順行(じゅんこう)していた。木霊の逆行(もど)らぬ奇形の瞳(め)をした事始(こと)の越(おこ)りは堂々巡りに生(せい)を活き得る個人(ひと)の生気に活気を見定め、個人(ひと)の生気に活気を見定め、個人(ひと)の共鳴(さけび)は現代人(ひと)を介さず自然(あるじ)と組んで、〝文句(ことば)の郷(くに)〟から堂々巡りの人間(ひと)の賛歌を詠って在った。
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しかし、冷静に考えて見れば、脳の手術を受けた母親が幾ら頭痛を訴えたからと言っても、ここ京都から横浜まで行っていては余りに母親へのリスクが高く、現実的ではないように考えられ、又、京都から横浜迄を往復するのに、昨夜八時から翌朝の九時迄にきちんと自宅へ帰って来て落ち着いているのも殆ど無理に思われ、何よりも、二度目の脳の手術を受けたと言うんなら、母親がそれから二十四時間も経っていない翌朝九時に自宅に居るのが非現実的であって、これからの非現実的な要素達が〝母親の急変は嘘だった〟と俺に教えてくれていたようで、俺は伝達を以て安心して居た。
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向こう岸からこちら岸まで幾つの線路が別れて在っても、母性(はは)と俺との連絡通路は苦し紛れの不問の軌跡(あと)にて、「問わず語り」の孤独の在り処を俺と母性(はは)とに揚々観ながら、〝苦労話〟に華を咲かせた「微妙(きみょう)」は空転(ころ)がり傀儡を得た。潔白(しろ)い真広(まびろ)は間広(まびろ)の蓋から空き箱を見て、狭く茂れる旧い社(やしろ)に自棄(じき)に具わる虚空を観るうち、擦った揉んだで統制取れずの古い文句を直穿きに履き、孤独の主観(あるじ)に薹(とう)の立たない気忙(きぜわ)の素顔を化粧直しに払拭した儘、弄(あそ)びに絶えない孤独の動義(どうぎ)を〝玉手〟に見立てて鎮静している。気配を知らない俺の生気(オーラ)は母性(はは)の生歴(きおく)を悩ませながらも、父の身許や男の身許を手当り次第に払拭し始め、遠(とお)に定まり落着している夜半の寝言に傾聴している。母性(はは)の身許は刹那の許容(うち)から衰退し始め、俺を宿せる端正(きれい)な寝間(やしろ)を旧着(ふるぎ)を着て生く〝孤独〟に化(か)えて、俺の旧巣(ふるす)が何処(どこ)に向くのか、徒労に終えない斬新(あらた)の用意に奔走して居る。無為の境地が無我の境地へ、弱退(じゃくたい)して行く浮遊の〝郷里〟を求めながらも何処(どこ)へ向くのか一向分らぬ無機の〝蜷局〟を量産した儘、明日(あす)への〝手詰(おうて)〟が噴散している無有(むゆう)の〝境地〟へ理解を遣った。文句(ことば)少なに徘徊している「俺を乗せ生く無有の回廊(ろうか)」は月(つき)の目下(ふもと)に一旦干上がり、陽光(ひかり)の目下(もと)では数多の修業(わざ)さえ卓越され果て、孤高の文士に薄く採られる無意(むい)の回廊(ろうか)を、底上げしたまま端正(きれい)に裂け得る美徳の成就を解(かい)してあった。憤悶して生く二本(ふたつ)の講義の先端から観て、二本(にほん)の局種(きょくしゅ)が噴散されては何処(どこ)にも向けなく行方知れずの生気が蹴上がり、俺の背中に酷く落ち込む精神患者が耄碌して生く。白紙の白下(かなた)で俺に彩(と)られた描写が浮き立ち、背面楚歌にて〝自由〟の身許も儘成らないまま結託され得る稚拙の交意(こうい)を心算(しんざん)する際、極(きょく)の輪の手に輪の掌(て)を掛け得る無駄の音頭が衰退して生き、景観(けしき)を定めぬ無感の成就が時折り飛翔(はば)たく夢想を観て居た。活きる屍(かばね)と古い屍(かばね)が身許を割らずに衰退して行く、無機に耐え行く〝身許〟の成就は、朝な夕なに独我(どくが)の人群(むれ)から推進して生く古来語(むかしがたり)の夜明けを待ち侘び、旧い〝身許〟を自活に代え得る自我の推力(ちから)を発散し始め、純白(しろ)い白角形(トリス)は幻(ゆめ)の模写から合理を誘(いざな)う脆(よわ)い集気を噴出している。母性(はは)の生歴(きおく)は漆黒(くろ)い生気に拠り所を見て、父の身許も男の〝古巣〟も「形容されない黒い模写から分散され出し、明日(あす)の湿気をその実(み)に集める神秘(ふしぎ)の気の実(み)」を経歴(きおく)より観た。密室(へや)の温度は人間(ひと)の温度に相対(そうたい)するうち柔い描写の選り好みをして、旧来(むかし)に識(し)り得ぬ人間(ひと)の経歴(きおく)を身軽(かる)く見た儘、千種の万葉(ことば)を旧い花園(その)から頭上に掲げる目的語として組み立て始め、始めから無い不意の白下(かなた)へその実(み)を示せる孤独の追加を強要して来た。桃色(ぴんくいろ)から肌色まで在る百足の走離(そうり)をカウントする儘、朗(あか)るく猛れる幻(ゆめ)の老化は発音され得る稀有の〝ろうか〟と一寸違(たが)わず、口頭記述に裏打ちされ行く懐古(レトロ)の様子に未完(みじゅく)を刈られ、「明日(あす)の老化」に果(さ)きを保(も)てない衰弱(よわ)い実体(からだ)を想起していた。無駄な四肢(てあし)が密室(へや)に散らばる百足の密室(へや)から、苦労に絶えない〝油小路(あぶらのこうじ)〟がその実(み)を育み、人間(ひと)に這入れぬ母性(はは)の経歴(きおく)は四隅(バラバラ)にも成り、俺の記述(きおく)は記録と称され〝雲母〟を識(し)った。
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俺は眠る前、時間を止めるタイムウォッチの事を考えていた。AVで出て来る、あのタイムウォッチである。足が白鱚のような娘が仕事場か何処(どこ)か見知らぬ場所で出て来て居り、俺はその娘を嫌いながらもその白銀に照り輝く前腕に魅せられる形を以てその娘に惚れて居た。タイムウォッチを使えたかどうか分らぬ内に、俺の体は自宅から最寄りの(以前に在った)ゲーム屋・アルゴへ行って居て、そこで店員と軽いトラブルを起こしていた。何でも、俺が店員に言った要求と現在言っている事が食い違い、その言った要求がそもそも無理な話で、又、その要求を俺が無理に押し通そうとするものだから、遂に、その店の店長である色黒の男が店奥から出て来たと、こういう案配(はこび)だった。
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個形に落ち着く〝無意〟の恐怖が俺の目下(ふもと)にか細く仕上がり、白銀(しろ)い掌(て)をした無憶の少女が身軽に微笑み娘と成って、俺を背に乗せ運行され行く透った〝回廊(ろうか)〟にその実(み)を顕し、始めから無い無機の長期を自己(おのれ)の独気(オーラ)に象らせていた。何処(どこ)か遠くに仰け反り外れる死人(しにん)の瞳(め)をした〝命乞い〟には、「明日(あす)」に醒め得る冷たい霊気が斬新(あらた)な姿態(すがた)を調整し始め、幻(ゆめ)に産れる〝私闘〟の文句(ことば)は幻想(ゆめ)の存続(つづき)を貫いてもいる。娘の笑顔は空気(しとね)に包まる無意の拍子でその掌(て)に射止めた旧い〝語り〟を俺の独創(こごと)に嘱託して活き、誰かの私財(たから)が誰かに在る等、自分だけ識(し)る幻(ゆめ)の〝満たし〟に抱擁され生く滑稽(おかし)な傀儡(どうぐ)にその実(み)を携え、旧い胴着は「昨日」に朽ち生く魅惑の従者とその運命(さだめ)を見た。個形(かたち)の優れぬ無為の事始(はじめ)の未完(みじゅく)の体裁(ようす)は、〝噴散〟から鳴る余程の足音(おと)にも利き聞(みみ)を立て、身軽を変じて堕落して生く現代女(げんだいおんな)へ移行した儘、前腕(うで)の輝く純白(しろ)い娘も堕落して生き朽ち果て始める無意の女性(おんな)へ変えられたのだ。幻(ゆめ)の何処(どこ)へも向いて行けない俺の背後は目線を高めて、昂り始めた密室(へや)の奇問(じじつ)を身軽(かる)く射止めて粉砕され活き、千手に届かぬ人間(ひと)の万葉(ことば)は小さく刻まれ肢体(かたち)を失くし、慌てる事無い〝密室(へや)〟の内(なか)から翔(と)ばず語りの紋章を観た。俺の精神(こころ)は暗(やみ)に紛れて母性(ぼせい)を煩い、俗世に遺棄する不動の〝女性(おんな)〟に絶望するまま〝文句(ことば)〟を投げ掛け、晴嵐(あらし)の前方(まえ)にて牙城を腐らす小人の前途を祈ってあった。暗(やみ)の成業(ノルマ)に救いを見るのは実しやかな〝金振(かなふ)り〟だけにて、俺の意識の木霊が還らぬ未知の傍受が活き活きしており、永久(とわ)に生き行く俺の生(せい)にて果(さ)きの未完(みじゅく)が不安を説いた。日に日に増し行く軌跡の余韻(おと)から生気(こだま)が還らぬ未知の砦を自分へ向け据え、八頭(おろち)の共鳴(さけび)に叫(たけ)びを投げ掛け、初めから識(し)る無垢の宴を純(うぶ)の気持ちに充分応える余裕の賛歌を自作して生き、母性(はは)を唱える身軽(かる)い女性(やから)に訣別され得る希望(のぞみ)を知った。母性(はは)の体(てい)から堕ち生く女性(おんな)が何処(どこ)で如何(どう)して過失を成すのか、生気(こだま)を採り得る俺の精神(こころ)は暗(やみ)に紛れて終に分らず、露にも識(し)られる細い酒宴(うたげ)は猿の如くに馴れる程度に、男性(おとこ)の堕落を成長させ得た。母性(はは)への生歴(きおく)が束の間活き生く無造の神秘に俺への隔離は〝父〟と相(あい)するこよなく豊かな空間(すきま)を観て居り、明日(あす)の生気(せいき)へ没頭するのに〝無駄〟を要する不屈の区切りを何処(どこ)か儚く、俗世(このよ)に置かれる無理の白壁(かべ)から捥ぎ取る腕力(ちから)で獲得した後、無意味に識(し)れ行く俺の〝共鳴(なげき)〟は八頭(おろち)を殺して安らかにいる…。
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初めに俺の要求を聞いた若手店員も店長と同様に色黒の顔をして居て、短く髪を延ばしていたようであり、両手を前で組んで、じっとこちらを見ていた。俺が「いや、~~言っただけですよ」と自分に課された情勢を軽くする為の自己弁護をしようとすると空かさずに、「先程言われた事とは違います。僕には~~と言い、それはこの店では対応し切れない事なのです」と相槌を入れ、店長にバトンタッチする形で、若い店員は、俺への後始末を店長に託していた。店長はその勢いのまま若い店員に味方し、又自分の店と信頼を護る為に俺に半ば食って掛かり、強い口調で俺の言葉を全面否定するように言葉を被(かぶ)せて来て、もう殆ど、俺に撤退せよ、と脅しているような姿勢であった。
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無駄に蔓延る現代人(ひと)の生気が活気を透して勝気を連れ添い、何処(どこ)か危ない〝押(おし)の上手〟を独裁講じて俺へと宛がい、生きる為にと、他(ひと)の正義を歪曲して行く無益の努力を言葉に化(か)えた。無意味な梯子は三段ずつから九段(くだん)に跳び越え、男性(おとこ)と現代人(ひと)との交響(ひびき)の合図は猛る程度に自信に馴らされ、白紙に宛がう未完(みじゅく)の情景(けしき)が現代人(ひと)の愚かに屈曲した儘、或いは雑魚でも軽視出来ない強靭(つよ)い余命(いのち)を燃やして在った。怜悧(つめ)たい経過に自活の限度は後退させられ、俺の生気(オーラ)に死太く操(と)られる無敵の孤独は夢想を追うのに必死と成り果て、未完(みじゅく)の防御にその眼(め)を焼き得る〝狂いの賛歌〟に飼い慣らされ活き、暗(やみ)に塗れたヒエラルキー(トーテムポール)は三面から成る口火を切った。想う水流(ことば)が飛沫(しぶき)を挙げつつ〝無駄〟を侍るが女性(おんな)の身元が絶えたのを識(し)り男性(おとこ)の孤独が黄泉へ譲渡(わた)らぬ不悶の断面(おもて)を発見した折り、男と女の身分に戯(あそ)べる無駄の労徒(ろうと)は終焉(しまい)を観て採り、併せ併せで生気を重ねる孤独の乱歩を調整して生く。獰猛(けたたま)しく鳴く大海獣(くじら)の親子が大海(うみ)にのさばり、女性(おんな)の実元(みもと)を暗(やみ)へ返せる御伽を強いれば、俺の孤独に辛勝して生く〝生(せい)〟の主張(あるじ)が放擲されて、孤独を見限る男性(おとこ)の無様を人間(ひと)の〝生(せい)〟へと循環して行き、孤高に成れない個人(ひと)の生力(ちから)を奨励して居る。
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俺は「多勢に無勢」に腹を立てて、持って居たタイムウォッチで時間を止め、店長の顔面を殴り付けてから退店し、車で近くのブロック塀にでもこの身を隠し、後のこの店の展開、店長、延いては店員の反応がどんなものか、確認したいなんて面白半分に期待しながら近場を探したが、結局好い場所と機会(タイミング)が見付けられず、俺はそのゲーム屋から離れ、男山教会が在る方角へ走り出した。その時には、もう車は何処(どこ)かへ置き捨てられていたようである。関西医大とループや喫茶店が在るビルの間道を歩いて行くと、見慣れた筈の環境の内に矢鱈と赤い煉瓦の壁が目立って、俺を歓迎してくれない様子が、俄かに、次第に伝わって来るようであって、俺は急に不安になり、哀しくなって来て、早足から全力で走る程度(ほど)に歩を速め、とにかく、男山教会がきちんと在るか否かを確認しに行った。
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俺の孤独に夜明(とばり)が来る頃、感覚(いしき)に失くした無意識から見て〝行方知らずの明暗(あかり)〟が成り立ち、未完(みじゅく)の欠片を拾い集める〝処女〟の主宴(うたげ)を華広(はなびろ)に観て、自慰(いや)し尽せぬ不貞の文句を、宙(そら)に並べて悪態吐(づ)いた。品(ぴん)から切(きり)まで、眠る情緒にふんわり跨げる暗(やみ)の安堵は落胆する儘、くるりくるりと自分に向き合う処女(おんな)の色香(いろか)はその実(み)を傾げて、孤独顔した分別顔まで、淡麗(きれい)に並べて〝情緒〟を汲み取る〝お嬢の斑気〟を折れへと遣った。精々愉しむ〝未完(みじゅく)の情緒〟は得体知れずの分別顔まで人間(ひと)の気配を黙殺(ころ)して独歩(あゆ)ませ、清閑(しずか)に読み取る内気な芽をした剛訥漢(ごうとつかん)には淡麗(あわ)い精気をその実(み)に塗(まぶ)させ、吟味の往かない儚(あわ)い〝正義〟に自己(おのれ)を燃やせる紅陽(くれない)を観て、俺の背後(うしろ)に凭れる〝情緒〟を旧い軒端に沿(そぐ)わせてもいた。孤独顔した淡い茶知(ちゃち)にはその場限りの止揚が棚引き個人(ひと)の残骸(むくろ)が屍(かばね)を掌(て)に奪(と)る黄泉の郷(くに)から、もう一つの〝掌(て)〟を古く営み、底儚(そこはかな)いまま宙(そら)へ還せる夢遊の豪華を吟味している。男性(おとこ)の姿勢(すがた)が宙(そら)の暗(やみ)へと葬られるのを、薄目で見守る〝処女〟の生き血が文句(ことば)を掌(て)に取り愛撫を重ね、徐々に朽ち往く男性(おとこ)の孤独は女性(おんな)の両眼(まなこ)に映らなかった。俗世(このよ)から退(ひ)く現代人(ひと)の生気はカウントされ往き、幼児(こども)の態(てい)した精神科医には暗(やみ)に届かぬ私事(しごと)が放られ、独断して行く暗(やみ)の豪華は白眼(しろめ)を剥きつつ白壁(かべ)へと還され、人間(ひと)の感覚(いしき)に終始していた。真白(しろ)い〝情緒〟は精気を違(たが)えぬ言動(うごき)に則り、経過(とき)の流動(けいか)に自体(おのれ)を配せぬ脆(よわ)い〝酒宴(うたげ)〟に現代人(ひと)を葬り、経過(とき)の洞(あな)から脱稿され得ぬ無機の気質を充分断り、明日(あす)に割き往く個人(こじん)の経過(けいか)を万葉(ことば)に摩り替え現(うつつ)を舐めた。幼児(こども)の頃から無為に飛翔(はば)たく俺の幻(きずな)が堂々巡りの〝輪廻〟に肖り裏打ちされ得て、俺の背後は苦境に満ち行く限度の鋼がどんどん崩れ、「明日(あす)」の明度(あかり)に小鳥の羽ばたく無為の景観(けしき)を滔々見詰める。女性(おんな)の性限(かぎり)に男性(おとこ)の活き得る歯止めが報され母性(はは)の居ぬ間(ま)に〝小鳥〟の堕ち生く景観(けしき)が映り、俺の目下(ふもと)と男女(かれら)の足元(ふもと)は〝堂々巡り〟の呼笛(あいず)が報され、写りの好くない袋小路の自活の糧にと、一言二言、通り縋りの〝木馬(もくば)〟に聴かせる。嬉しい華には汗を搔けない人間(ひと)の「情緒」の明暗(あかるみ)が観得(みえ)、〝中川翔子〟と文句(ことば)を囀る稀有の交響(ひびき)が上手に気取られ漆黒(くろ)い両眼(まなこ)に滔々流れた旧い舞踊(ダンス)は宙へ吊るされ、ウルウル鳴く間(ま)に宙(そら)から堕ち生く小さな鳥には人間(ひと)の栄華が記憶され得て、幼児(こども)の瞬間(ころ)から〝両眼(しょうめ)〟を曇らす俗世(このよ)の常識(かたち)が曇りを彩(と)った。
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関西医大とビルの間道(かんどう)は坂であり、その坂を下りれば樟葉方面へ抜けられる筈なのに、崩れたような煉瓦で埋められ先行きが見えず曖昧に在り、中々辿り着けなかった教会へ通じる坂を下って一つ目の右折路を曲がれば、矢先には、完全に土砂で埋まったかのようにして赤い煉瓦がびっしりと壁を作って路を閉ざしており、その行き止まりの前に庭のように置かれた広場の隅に小さなレストランが開設されていて、その開設地が元教会の在った場所であった。それを見た時、一瞬でこれまでの教会牧師夫妻との思い出、教会の歩み、教会での出来事、思い出などが惜しく哀しく思われ始めて、それらを抱き締めたくなった自分が居た。そのレストランの入り口の近くに在った、『木製のメニューは…☆□』等と線の細い、軽く、如何(いか)にも客の為にと女が描いたような、見辛い文字が羅列して在って、俺はせめてそのメニューに書かれた内容を一つでも多く知ろうと試みたが、結局『本日のメニューは』しか読めなかった。
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蓄積され行く精神(こころ)の〝土砂〟には雑多(おお)くの小言が連呼されども俺の向きには一層沿わずに、向きを変え行く数多の語彙には幻想(ゆめ)を束ねる筆力(ちから)が在った。女性(おんな)の背後(うしろ)を後光(ひかり)が差し生く景観(けしき)を見たが、平成生れの現代人(ひと)の人渦(うず)には「無機」の活き行く過労が見え出し、払拭されない現代人(ひと)の幻(ゆめ)には精神(こころ)を持たない微肉人種(びにくじんしゅ)が流行(はやり)を忘れて横行して居た。何に付けても遠慮し勝ちな〝微肉人種〟は卓を並べる現代人(ひと)の渦中(うず)へと散々戸惑い、宙(そら)を観ながら自活を吟味(く)うのに自身の身分(たちば)を一向気取らず、怜悧(さむ)い夜宙(よぞら)を一掃して生く端切れの余命(いのち)を散々気にした。幼児(こども)の瞬間(ころ)から宙(そら)を見上げて生育(そだ)って来たのに延命(いのち)の流動(ながれ)へ未だ気付けず、現代人(ひと)の独歩が現行(ここ)まで敷かれて自然(あるじ)に気遣う哀れの傀儡(どうぐ)へふらふら落ちた。果(さ)きの見得ない万葉(ことば)の数多(おおく)が幼児(こども)の眼(め)に見て滔々継続(つづ)かず、孤高の勇士と自分を呼ぶのは宙(そら)から堕ち生く現代人(ひと)の精神(こころ)の哀れな瞳(め)である。現代人(ひと)の精神(こころ)の夢生(むせい)の明暗(やみ)から自然(あるじ)に反抗(さから)う造語を見付け、孤高の立場に自分を置くのは純白(しろ)い景観(けしき)に斑点が付き、空気(もぬけ)の脚色(いろ)には文句(ことば)を有せぬ不精が干乾び、現代人(ひと)の幻(ゆめ)から加担するのは現行(いま)に活き得る幻想(ゆめ)の眼(め)である。幻(ゆめ)の水面(ほとり)にぽつんと置かれた稀有の景観(けしき)が俗世(このよ)の神秘(ふしぎ)を俺へと突き付け、宙(そら)の柔さを貫通するほど強靭(つよ)い火照りを魅せて来るから俺の精神(こころ)は女性(おんな)を認めぬ男性(おとこ)の頑強味(つよみ)を吟味し始め、在る事無い事〝事象(こと)〟の有無さえ気取らぬ程度に自身を温(あたた)め、俗世(このよ)の常識(わく)からすいすい発(た)ち得る小さな勇気を目の当たりにした。淋しい空気(くうき)が身寒い冷風(かぜ)から吹き抜け逝った。俺の躰は精神(こころ)と呼べ得る細(ちい)さな憂いを興味に取り添え、明日(あす)の空間(すきま)に大きく手を振る苦労の在り処を撃退し始め、独創(こごと)の活き行く孤高の牙城(とりで)をmorgue(モルグ)に従え、旅をして行く自分の主観(あるじ)に暗(やみ)に漂う神秘(ふしぎ)の自然(あるじ)を都合の好いまま引き合せて生き、誰にも識(し)れない小さな路地から、過去に見上げた自然(しぜん)の根(ルート)へ独歩(ある)いて行った。文句(ことば)限りの稚拙の努力が俗世(このよ)の常識(かたち)を片付け始めて、如何(どう)にも読めない小さな経歴(きろく)が宙(ちゅう)を漂い捕まらない儘、誰にも何にも終ぞ識(し)れない〝仕事〟の束縛(しばり)にその実(み)を託する。俺の生歴(きおく)は自信を掴めぬ空虚を知る内、如何(どう)にも付かない理解の端(すそ)から一足飛びにて事象(じしょう)を確かめ、透明色した理想の文句(もんく)をその身に宛がい暗(やみ)へと拡げ、「昨日」が見得ない遠い過去へと自足(じそく)を固めて失踪して居た。透り損ねた人間(ひと)の火照りの感覚(かたち)は現行(いま)にも、自由を求める自棄の気質に肉体(にく)を忘れて彷徨するが、自然(あるじ)の採らない自由の向きにて窒息して居り、自己(おのれ)の迷信(まよい)を掴み損ねる自在の束縛(しばり)に遊豪(ゆうごう)した儘、純白(しろ)い景観(けしき)は俺の前方(まえ)にて解体され得た。孤高の信徒を束ねながらに自由の牙城(とりで)を奪う自然(あるじ)は、俺の真横へきちんと居座り、男性(おとこ)と女性(おんな)の小さな空間(すきま)を明朗調子に描いて生くが、俺の精神(こころ)は誰にも何にも終(つい)と識(し)れない暗い宙(そら)にて煩悶して居り、止まった現行(いま)から何処(どこ)へも行けない覇気の腐りを延々見て活き、他(ひと)から離れた膨大(おお)くの集気をその身に観て取り、慌て損ねる小さな躰に陶酔(よ)いを交えた曇りを観ていた。
暗空(そら)の付け根にぽつんと落ち着く生気が窺え、硝子箱(ガラスケース)に身悶えしている人間(ひと)の独気(オーラ)は次々生き果て、やがて見得ない燻しの許容(うち)へと次々這入り、俗世(このよ)の悪(あく)から回元(かいげん)して行く未知の生気に操られて活き、二度と逆行(もど)らぬ不活の正義を暗策(あんさく)していた。端麗(きれい)な水面(みなも)に暗い呼笛(あいず)が轟き始めて水面(みなも)の表面(かお)には細小(ちい)さく轟く小波(なみ)の皺など無数の如くに分身して活き、どれを辿れば脱線し得るか、何も報さぬ病弱が在り、純白(しろ)い煙は俺の前方(まえ)からゆらと昇って、潔白(しろ)い明暗(あかり)と追悼する等、神秘(ふしぎ)の火の粉を埋葬していた。
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車を無(な)くした辺りからぽつぽつ雨が降り出していた。この入り口まで辿り着かせる石の階段だけが唯一以前の男山教会のものであるらしく、又哀しかった。そう思うと同時に、牧師夫妻を始め、他の信徒達、即ち俺の知人・友人達も皆、何処(どこ)か別の所へ引っ越して、今はそちらで以前と同じように暮らしているのかと思うと、俺も早くそちらへ行きたい、等と強く思え、同時に又懐かしがった。
*
孤独の賛歌が俺の気配を膨(おお)きく見破り、算の付かない旧い生産(きおく)を頼りにする儘、昔語りの旧い記憶にその身を任せて、ふらりふらりと他所へ独歩(ある)ける遠い神秘(ふしぎ)を目の当たりとして、自由の延命(いのち)に追従(ついしょう)して生く漆黒(くら)い快感(オルガ)を求めてあった。決勝して行く精神(こころ)の歯止めは明度(あかり)を点(つ)け出し、他(ひと)の男女(だんじょ)が死に絶え得るのをか細い常識線(ライン)に巧く取り込み、万寿(ことば)の〝巧み〟が如何(どう)して成るのか八頭(あたま)を悩ませ通算しながら、万葉(ことば)の脚色(いろ)から俗世(このよ)を荒せる強靭(つよ)さを引き出し、自己(おのれ)の朽ちから生(せい)へ転ずる私闘の後にて、細小(ちい)さく囀る絆(ボンド)の行方を追い駆けて居た。小波(なみ)の間(ま)に間(ま)に余程が朽ち往く現行(いま)の許容(うち)にて、明日(あす)の生歴(きおく)が〝妬み〟を識(し)るのは今日の懶惰の残骸(むくろ)の陰(かげ)にて、誰にも報(しら)れぬ浮世噺(うきよばなし)が遠い縁(ふち)からほろりと零れ、現行(いま)の現行(いま)にて個人の生歴(きおく)が何を識(し)るのか永久(とわ)に気取れぬ〝大喝(うわさ)〟を携え、俺の〝黄泉〟には細小(ちい)さく謳える旧い小人(こびと)の詩人が活きた。生きる時折り〝覇気〟が失くなる真摯の実(み)を保(も)ち、外界(そと)に蔓延る他(ひと)の魔の手が暗宙(そら)へ延び行く経過を観ながら、俺の背後は誰に気取れぬ旧い〝語り〟が延々続き、怖い物から斬新(あらた)の代物(もの)まで、生歴(きおく)を数える無憶の絆(ボンド)を肯定して居た。和風固めの輪舞曲(ロンド)に惹かれて〝椎名林檎〟と自明を称する吐露の〝木馬〟に駆逐され活き、旧い通りに純和(じゅんわ)を比ぶる吐息語りは延々(ながなが)問われて、俺を連れ添う彼女の両脚(あし)には雌の臭味がそのまま被(かぶ)れる拙い美味差(うまさ)が錯乱している。散乱している純白(しろ)い洞(うろ)には男性(おとこ)を安める生気が漲り、躰の内での死活の行方は外界(そと)に束ねる剣(つるぎ)の舞いへとその実(み)を捧げ、死力を尽せる努めの主情(あるじ)は美馬(みま)に蹴られてその身を灯せる〝行方知れずの彷徨〟を識(し)り、明日(あす)の初出(いろは)に脱線して生く孤狼(ころう)の体裁(からだ)をその実(み)に挙げた。〝通り縋りの詩集茎(アンソロジー)〟から俗世(このよ)に活き得る小声を認(したた)め、怜悧(つめた)い視野からその実(み)を除去する旧い伝手さえその威を見忘れ、活きる事から忘れ勝ちにて蹴上がる労力(ちから)は俺の身元を嬉しく携え、「詩集茎(アンソロジー)」からその実(み)を除去する〝駆逐語りの美醜の夢想(ゆめ)〟には、俺の記憶が生気を採れずに脱行(だっこう)して生く俗世(このよ)の生気を改めてもいた。巧い伝手から旧来飛(むかしと)ばずの和風が流行(なが)され、人間(ひと)を仕立てる経過(ながれ)の呼笛(あいず)に何処(どこ)まで経って景観(けしき)が留(と)まらず、古い詩吟(はなし)に洞を掘り生く真白(しろ)い白紙(かみ)には微妙(きみょう)が生き抜き、俺の前方(まえ)から独気(オーラ)が遠退く神秘(ふしぎ)の要所(かなめ)が噴散していた。駆け出し始める無効の企図には〝生きる意味〟さえ丈夫に忘れる人間(ひと)の生き血が遠吠えし始め、問わず語りのmonkの頭上(うえ)から俗世(このよ)に似合わぬ旧い柵(からみ)を概(おお)きく添わせ、個人(ひと)の背後についつい忍べる無力の万寿(ことば)の陰から幾多に分れる無益を気取らす黄泉についても、何も問えない旧い律儀に滔々幻見(ゆめみ)て出航して行く小舟の体裁(かたち)を暗宙(そら)へと挙げた。〝舟〟の主(あるじ)は現代人(ひと)に在らずに人間(ひと)にも在らずに人間(ひと)にも在らず、個人(ひと)に在らずに俺にも在らず、旧い瞳(め)をして人間(ひと)を束ねる神の霊にて前方(まえ)を横切り、〝我ら〟の舟から滔々流れる未知へ失(き)え往く経過(とき)の体裁(かたち)は〝人の漁師〟の人姿(ひと)の人影(かげ)から〝無為〟を余所目に活生(かっせい)して行き、舟の主(あるじ)の追想(おもい)の許容(うち)から、人間(ひと)に対して「孤独」を見破る徒労の覚悟が警醒していた。
*
その辺りで目が覚めた。
~無憶(むおく)の歯止め~(『夢時代』より) 天川裕司 @tenkawayuji
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