~深夜の真昼~(『夢時代』より)

天川裕司

~深夜の真昼~(『夢時代』より)

~深夜の真昼~

 永い経過を浮き彫りながらに俺の背後は歴史を微動(うご)かし、幻想(ゆめ)の深夜に斬新(あらた)を託せる〝一(いち)の結果〟を見定め始めて、「永い思春(はる)…」から忘れられ生(ゆ)く自己(おのれ)の旅路を痛感していた。遥か以前(むかし)の思中(しちゅう)に揺蕩(ゆら)げる身欲(みよく)の行方(かなた)は、俺の勝気を自由に根絶やし、女性(おんな)の表情(かお)には幻想(ゆめ)に映せる浪漫の空虚が燦々跳び散り、足を早めた一春(はる)の揺らぎに捨て身を装う勇者の孤独は、一女(おんな)の目前(まえ)から脳裏へ閃く苦境の境界(はざま)を散々説いた。解(と)いても解いても夢中に蔓延る幻(ゆめ)の穂先(ほさき)は、無重(むじゅう)を許せる宙(そら)の空間(すきま)に俺の躰を堂々象り、慌て無沙汰に寝室(へや)を安(やす)める五月蠅(あわ)い態度の日常(いつも)の方(ほう)へは、幻視(ゆめ)の脚色(いろ)から真摯を疑う〝気味〟の王者を懐へと遣る。俺の白紙(こころ)に幻想(ゆめ)を擡げる両腕(かいな)が先立ち、孤高に居座る〝イスカリオーテ〟の賢者の果(さ)きへは、微睡みさえ無い自然(あるじ)の企図にて養い続ける古豪の賛歌が破滅を見出し、黄泉の理郷(くに)から空転(くうてん)して生く古来独白(むかしがたり)の思中(しちゅう)の範囲(うち)には、現世(このよ)の女性(おんな)の一人も懐けぬ孤独の勇者が誕生して居た。

「全部幻、全ては虚無だ」

 文言(ことば)の括りに白紙(はくし)を操る〝夢見上手(ゆめみじょうず)〟は変化(へんげ)を気取らせ、「玉手箱」から資金(かね)を取り出す〝X情緒〟に期待をしながら、空気(しとね)に巻かれる寂れた漢(おとこ)は、欲芽(よくめ)を抜け出し孤高に参じ、〝慌て眼(まなこ)〟に一女(おんな)を射止める身軽(かる)い真摯を詠み取りながらも、自己(おのれ)の心身(からだ)が端正(きれい)に纏まる黄泉の郷(くに)へと埋没して居た。苦し紛れの発言(ことば)の果(さ)きから苦労の所在(ありか)が詩吟に拾われ、〝在る事無い事〟、一女(おんな)の両眼(まなこ)に砕かれながらに意味を通せぬ神秘(ふしぎ)の孤独に半身(はんみ)が削(や)られて、淋しい空間(すきま)に寝屋を観るうち孤高の辛苦に下肢を遣りつつ、自己(おのれ)の分業(ノルマ)は自己(おのれ)が覚(さと)すと事始(こと)の常軌を仰いで在った。手短(みぢか)に懐ける俺の延命(いのち)の孤独は未だに、一女(おんな)の屍(かばね)を大事に葬り、俗世(このよ)の男性(おとこ)の巨体を葬る〝破壊の一術(すべ)〟など器用に改め、暗い路地から暗夜(あんや)に赴く〝私闘遊戯(しとうゆうぎ)〟の成れの果てには、純白(しろ)い毛脛(けずね)が一女(おんな)を相(あい)する女露巣(エロス)の局部(かなめ)を掘弄繰(ほじく)り出した。女性(おんな)の満中(なか)から異様に垂れ生く臭味(しゅうみ)の溜まりは無用に介せぬ安(やす)きを仕上げて、無造(むぞう)に揺蕩(たゆた)い持熱(じねつ)の温度を一定(さだめ)に従い一男(おとこ)を足らしめ、男性(おとこ)の目前(まえ)にて「腐り水」に成る無応(むおう)の〝天(てん)〟などその実(み)に挙げた。清閑(しずか)な寝息が幻想(ゆめ)の間(ま)に間(ま)に追想して居り、端正(きれい)な小口(くち)から美味を語らう古来独白(むかしがたり)の帳尻さえ在り、淡麗(きれい)に解(と)け出す孤独の諸刃(やいば)は表情(かお)の樞(しかけ)を伽藍に見忘れ、明日(あす)の行方(かなた)に心身(からだ)を培う未盲(みもう)の棲家を追走して居る。孤独の空壁(かべ)には男女(だんじょ)の蛻がひそひそ留(とど)まり俺の身欲は両親(おや)を捨て去る自然(じねん)の勝気へその実(み)を付かせて、俗世(このよ)の分野の有る事無い事総てを与(あず)ける夢想(ゆめ)の初端(はし)には、明日(あす)に旅立つ日陰(ひかげ)の勇気が一気に醒め往(ゆ)く無益を呑み込み、漆黒(くろ)い軒端へ延命(いのち)を躰を預ける無効の用途へ〝その気〟を削がれて、齢頃(よわいごろ)まで真白(しろ)く懐ける夢想(ゆめ)の憤怒を土装(どそう)に見舞われ、明日(あす)へ近付く孤高の集落地(アジト)は宙(てん)から洩れ堕(お)つ幻(ゆめ)の参議に〝夢中〟を想わせ空路を履かせる拙い賛歌の美貌を売った。人の波間に究めて名高い虚空の蔓延る滑稽(おかし)な集成(シグマ)は、孤独の傘下に微妙を這わせる〝人〟の杭まで旨を破れる総実(そうみ)を顕し、旧来独白(むかしがたり)に〝意味〟を遣り尽(き)る無謀の根(ね)の端(は)は派閥を命出(めいだ)し、齢語(よわいかた)りの経過へ赴く神秘(ふしぎ)の〝読破〟は未知を透して暗黙(やみ)を見出し、旧然独白(むかしがたり)の渡航の相手を無知に拡げて納得して居た。独り善がりの生粋(うぶ)の気迫が現代人(ひと)を跳び越え虚空へ仕上がり、やがて華咲(はなさ)く栄誉の紐解く旧然(むかし)の〝趣味〟には一向化(か)われぬ貴重が合され、現代人(ひと)が講じる拙い理性(はどめ)は緻密を象り囲いを馴らし、稚拙ばかりを宙(ちゅう)へ問い生く死太(しぶと)い馬鹿差(ばかさ)を微睡みにも観た…。現代人(ひと)の〝馬鹿差〟は具現を透して肢体(からだ)を解体(ばら)けて、自己(おのれ)の未完(みじゅく)を自然(あるじ)へ隠せる幻視(ゆめ)の音頭に祭を見出し、発見・発想あらゆる分野が未完(みじゅく)に静まり寝息を絶やせば、遥か旧然(むかし)の諸刃(かたな)の余命(いのち)が「学(がく)」を講じて脆々(もろもろ)崩れる微弱(よわ)い音頭を温度に込めた。…人間(ひと)の孤独は功徳の功(こう)から化身を顰めて、〝嵐ヶ丘(あらしがおか)〟の宙(ちゅう)の外界(そと)から見事に咲き生く四肢(てあし)を列(なら)べて、明日(あす)の孤独を揚々小刻(こきざ)む旧い功徳の労(ろう)の順序は、暗黙(やみ)の行方(かなた)へそっと巻かれる軌道の線路を充分占めた。天候から成る二局(ふたつ)の事始(こと)には終始に纏わる無答(むとう)が息衝き、現行人(ひと)の伝来(おしえ)の初端(はじめ)に観て来た夢想(ゆめ)の文言(きおく)の背後から観て、怒涛を想わす現代人(ひと)の生路(うち)には孤踏(ことう)に纏わる人途(じんと)が呟き、話し初めの〝孤島〟の記憶は旧然(むかし)・前後の村納めに在り、現行人(ひと)と現代人(ひと)とが土宙(そら)を見上げて逆差(さかさ)を識(し)る頃、暗夜(やみよ)の装飾(かざり)に巷を賑わす幽霊童女(ゆうれいどうじょ)の成れの果てには、〝荷物〟に見紛う現代人(ひと)の生気が正気(たしか)を見忘れ悶絶して在る…。――――

      *

 俺は田舎・愛媛県の何処(どこ)かに在る、学校に居た。夜の黒が冴える夜だった。俺は女性に飢えて居り、従兄弟(金男かなお)に(金男の)職場で金男と一緒に働く女性(おんな)が金男の彼女と成りそうな夜だった。俺は女性に飢えて居た事もあり、又、夜の黒がとても冴えて、誰か一緒にこれ(夜のとても奇麗なくろ)を見てくれる女(ひと:理解者)が欲しい、と思っていた所だったので、金男の事が羨ましく、夜の校舎、校舎から見える周りの校舎や運動場、遠く、等を眺めて居た。俺は金男の職場で働くその女を見て知って居り、大人しそうなキャリアウーマンといった感じで在り、しゃきしゃきして居そうで、身体は締まって在るがタイトにぎゅうぎゅう詰ってむちむちして居り(特に太腿から膝辺り)、それなりに奇麗で可愛らしく、矢張り他の男からも好かれて居そうだった。

      *

 無音の明けから極度の〝明け〟まで身軽(かる)い調子にその実(み)を這わせて、野平(のっぺ)りして来た少女の体(てい)へは俺の〝廓〟が廻転(かいてん)し始め、女性(おんな)の正気を展開して行く未刻(とき)の経過(ながれ)は盲(もう)へ失(き)え馳せ、清閑(しずか)に見送る黄泉の碇は「俺の躰」を女傑(にょけつ)へ停(と)め付け、〝盲(もう)〟の旧巣(ふるす)の集成(シグマ)の果(さ)きへは、未決(みけつ)に自慰する流行(ながれ)を識(し)った。識(し)った延長(さき)から奮える四肢(てあし)を余分に託け寝間の裾から自分を挙げ沿う未解(みかい)の自慰(しぐさ)に混在しながら、器用の寝室(ねむろ)に孤高を添え得る人間(ひと)の添え木の芯体(からだ)の麓(すそ)には、日々の常識(かたち)の〝向き〟が呈する〝醜女(しこめ)〟の体脂(あぶら)が艶(あで)に煌(ひか)った。

 一女(おんな)の体指(さき)から弓に萎え得る輪舞曲(ロンド)が空鳴(からな)り、厚手の衣服(ふく)から男性(おとこ)を這わせる〝無駄〟の遠慮を陽日(ようび)に気取らせ、白衣の内にて一女(おんな)の手先を器用に割かせる用(よう)の自主(あるじ)に夢想(ゆめ)を問う時、俺の一体(からだ)が奇妙を講じる空気(もぬけ)の辺りは一面(おもて)を袈裟懸け、旧い波調(なみ)から奇特を想わす矛盾の〝肴(さなか)〟を漁師に遣った。「人の精神(こころ)を宙(そら)に咲かせる漁師」の意である。孤独の波調(なみ)から分岐を引かせる幻想(ゆめ)の矜持に精参(せいさん)する後(のち)、明日(あす)の固地(こじ)には無論に這わせる〝弓〟の形(なり)から問いが片付き、暗夜(よる)の帳へ大きく添い足る人群(むれ)の囃しに猫背を魅せた。幻夢(ゆめ)の独語(かたり)は〝白木(しらき)〟の三宝(たから)に幻酔(げんすい)しながら〝十(とう)〟の頃より齢(よわい)を手招き、明日(あす)と現行(いま)との可弱(かよわ)き境界(はざま)に無味を列(なら)べる文言(ことば)を牛耳る…。他(ひと)の背後は黄泉の理郷(くに)から真白差(しろさ)を訴え、如実にしながら幻(ゆめ)を懐ける一人(ひと)の幇助へ感嘆した儘、俺の〝向き〟から他(ひと)の習癖(くせ)まで容易く壊せる手腕(うで)を儲けて、安らぎ顔(がお)から貌(ぼう)を散らせる夢幻(ゆめ)の小躍(おどり)に衰退する後(のち)、俺の巨躯には自然(あるじ)が還れる孤独の明朗(あかり)が斬(ざん)と坐った。他(ひと)の居間から未刻(とき)を感じる幻(ゆめ)の既視(デジャブ)は孤高を識(し)らせず、浮き世の女花(はな)からその実(み)を成らせる悪の臭気は人体(からだ)を通わせ、現代人(ひと)の派閥にその実(み)を奪(と)らせる〝無刻情緒(むこくじょうちょ)〟の我信(エゴ)を募らせ、抜刀するまま自己(おのれ)の諸刃(やいば)で女体(にょたい)を切り裂く暗黙(やみ)の審議にその個(こ)を余せて、無言の許容(うち)へと他(ひと)を這わせる〝功徳〟を興じる理想の〝水面(みなも)〟は、現行(いま)に生じる無信(むしん)の末路に男性(おとこ)を這わせて延び延びして居た。

 曲(きょく)を究める無効の極致(きわみ)は詩吟に手始め、明日(あす)の三歩(さんぽ)を五歩にも化(か)え行く〝意味〟の吟味を術無(すべな)く見納め、明日(あす)から黄泉への現行人(ひと)の深理(しんり)の不定の暗黙(やみ)には、独創(こごと)に概(おお)きく無理を重ねる不審の可能(かぎり)が棒線(せん)を引き摺る…。幻想(ゆめ)の夕日に大人(ひと)の孤独が成人(せいじん)にも成り、明日(あす)の常識(かたち)へ俺が堕(お)ち得ぬ向きの諸刃(やいば)を連達(れんたつ)しながら、自己(おのれ)の独創(こごと)に十二(じゅうに)を身構(かま)える個得(ことく)の精心(こころ)を用意に夢見て、一人(ひと)の協歩(きょうほ)に正味(あじ)を占め行く未活(みかつ)に上(のぼ)れる正気の自主(じしゅ)には、言葉を気取れぬ〝囲い〟の人種が「今日か未(いま)か…」と微塵を待ち得た幻想(ゆめ)の虚無への残骸が在る…。俺の幻(ゆめ)から一女(おんな)が蹴上がり宙(そら)へ還れる気力を呈して、人間(ひと)の孤独に未完(みじゅく)を束ねる一男(おとこ)の〝偏見(せいぎ)〟は冥利を蹴散らし、一女(おんな)の上気に女体(からだ)を観たまま女肉(にく)の仕種に軟(やわ)らを撓(しな)らせ、明日(あす)の傘下に現代人(ひと)を侍らす構舎(こうしゃ)を目立たせ文言(ことば)は皆目…、一人(ひと)の通える孤独の激務を紆余に曲げ足る〝猫背の直(なおき)は、無駄に蔓延る人間(ひと)の感情(こころ)を無信(むしん)の余りに曲進(きょくしん)して活き、一女(おんな)の文句(ことば)の〝葦〟の四肢(てあし)は陽光(あかり)を怖がり俺を見定め、〝意味〟の通らぬ孤独の道理は論理を安めて一女(おんな)に奪(と)られる緩い流行(ながれ)に暗記を識(し)った。二男(おとこ)と一女(おんな)の緩い気長(きなが)を気流(ながれ)に沿わせて体熱(ねつ)を牛耳り、俺の体裁(かたち)は道理を知らずに暗黙(やみ)へ透れる夜目(よめ)を観るうち女性(おんな)の残骸(むくろ)を気長(きなが)に見回し、明日(あす)の目下(ふもと)へ繋がる〝社(やしろ)〟を現行(いま)の許容(うち)から培う手腕(うで)には、幻想(ゆめ)の跡から孤高を脱する旧い空間(すきま)が這入って行った。慮心(りょしん)の微動(うごき)のこの眼(め)を晦まし、語句の極味(きわみ)に吟味(あじ)わいながらも、俺の感覚(いしき)は眩い自主(あるじ)に参観しながら、空虚を保(も)たない憂いの宮(みやこ)へ到達して居た。一女(おんな)の内装(うち)には涼風(かぜ)が吹くほど美潤(びじゅん)を企図して俺の精神(こころ)は絹を巻く様(よ)な故意を識(し)ったが、果ての見得ない自然(あるじ)の果(さ)きには木の葉程度の身軽が示され、俺と童女(おんな)の背中の揺らぎは揺蕩い内(なか)にも貴重が在った。貴重を掴める人間(ひと)の温度の順序の果(さ)きには一女(おんな)の感覚(いしき)が終(つい)と保(も)てない夢想(ゆめ)の可能(かぎり)が陶酔しており、現世(このよ)の自主(あるじ)に幻想(ゆめ)の全体(からだ)を揺ら揺ら空転(ころ)がし無垢の掌(て)に載る古来独白(むかしがたり)の御身の果(さ)きには、苦労性から真摯(まじめ)を引き抜く寄席を気にした問わず語りが、宙(ちゅう)を跳び越え俺まで暗転(ころ)がり、無口に寄り添い無口に競える一夢(ゆめ)の審理を傍観して居た。幻想(ゆめ)の紳士はいとも容易く無断を偽り俺の日(ひ)の粉(こ)を揚々身(み)の粉(こ)に弄(あそ)んで在ったが、俺の脳裏に纏わる懐景(けしき)は殊に揺蕩い憂いに拡がり、硝子箱(がらすケース)に微塵に空転(ころ)げる〝転(まろ)びの深夜〟を堂々巡りの心鉢(はち)に合せて、気取る文句(もんく)も少ないながらに孤踏(ことう)の順序は端正(きれい)に小波(さざ)めく〝幻(ゆめ)の盲者(もうじゃ)〟に飽き飽きしている…。苦心に溺れる〝金男(かなお)の未完(みじゅく)〟は現世(このよ)に疎まれ、幻覚(ゆめ)の正理(せいり)に矛盾を感じる自主(あるじ)の定律(おきて)は空(くう)へ転んで、幻視(ゆめ)の自主(あるじ)の堂々巡りに漆黒(くろ)い機転(てん)から一つ微睡む、後光の陽光(ひかり)を芯に取(う)け止(と)め、「未完独白(みじゅくがたり)」の覇王の牙城(しろ)へは現世(このよ)の俗人(ひと)から軽視され生(ゆ)く現行人(ひと)の〝独歩(あるき)〟が横行していた。一女(ひと)の宮(みやこ)は俺の文言(ことば)を自己(おのれ)の白紙へ軟く落せる無機の仕種に自体を晦まし、陽明(あかり)に間近い一人(ひと)の方(ほう)へは弓の張りから自動を通せる憤怒の思惑(こころ)を好(よ)く好(よ)く覚(さと)し、未完(みじゅく)の一坊(ぼう)から呼吸を気取れる旧来独語(むかしがたり)の安堵の果(さ)きには、俺と現代人(ひと)との孤独の所在(ありか)が向きを認める微かな「寝言」が散乱している。当てに成らない現世(このよ)の女性(おんな)の言動(うごき)の機微には俺にとっても無駄を配する一路(いちろ)の自主(あるじ)が文句(ことば)を列(なら)べて、明日(あす)の夜長を検覧(けんらん)して生く無機の様子は一女(おんな)の身軽に散々留(と)められ、口を封じる主観(あるじ)の生歴(きおく)は孤高に居座る旧来(むかし)の人途(じんと)に〝華〟を添えさせ見事に逝った。

      *

 俺はここ(夜の学校:高校のようだった)へ着く前に、鹿児島生れの死太(しぶと)い兄貴と軟い口調の執拗(しつこ)い弟子に姿を都合好く化(か)えて居た。〝兄貴分〟の様(よう)な男と一緒に居り、その経過(ながれ)を鑑みれば、眠る前に観た大河ドラマの恰好ばかり付ける清閑(しずか)な男の男気溢れた演技・ストーリーがそうさせていたかも知れなかった。俺は、俺以外の何人かと、その〝兄貴分〟に従う形で付き従って居り、他の従う奴等はどうか知らないが、俺は本当は、〝こんな危なそうな奴と一緒になんか居られるか〟と、一刻も早くこいつ等(兄貴分含む)から離れたかった。しかし付き合う内に、その時は「弟子」だった兄貴分の少々潔い所と男らしい(と言われるような)性格を垣間見、少し、この兄貴分こと弟子の事を好きに成り始めて居た。

      *

 幻想(ゆめ)の一路(いちろ)へ結局尽き生く諸刃(もろは)の限度を自分で見納め、結婚出来ない青空(そら)の転(てん)には希少の目立ちが優(ゆう)に勝(まさ)って、純白(しろ)い憧憬(けしき)に転倒(まろび)を含める晴嵐(あらし)の果(さ)きから「俺の感覚(いしき)」が順々仕上がり、〝如何(どう)でも好い〟まま経過(とき)が流行(なが)れる夢目(むめ)の境界(はざま)は俺より朗(あか)るく、化身に添い得る無邪気の果(さ)きには、一触だけでは「人間(ひと)」が落ちない無想の主観(あるじ)が専観(せんかん)して居た。漂白(しろ)い憧憬(けしき)が自己(おのれ)の身重を痛感するとき俺の精神(こころ)は目的(あて)から外れて、暗い湿地へ追随して生く旧い躰が思惑(こころ)を気休め、自主(あるじ)を忘れた未完(みじゅく)の気色は硝子に埋れた裸体の程度に、微(よわ)い憧憬(けしき)を煩悶して生く「これまで通り」を解体し始め、自己(じこ)の感覚(いしき)へ自主(じしゅ)を強靭(つよ)めて「明日(あす)」の未完(みじゅく)を成就(かんせい)する等、既往に追従して生く幻(ゆめ)の奥義(おうぎ)へ無産を吐いた。幻想(ゆめ)の気紛(まぐれ)を「無産」へ遣る時、旧来独語(むかしがたり)に無感を識(し)り生く傀儡(どうぐ)の併(あわせ)を身分に敷き詰め、紺(あお)い宙(そら)から囲みが解(と)け行く旧い定型(かたち)は有産(ゆうさん)とも成り、幻想(ゆめ)の限度を俗世(このよ)で観るのは〝諦念独白(あきらめがたり)〟の端正(きれい)と重なり、幻視(ゆめ)の果(さ)きから俺へ阿る未用(みよう)の一間(ひとま)の苦労の果(さ)きには、併せ鏡に強靭味(つよみ)を準(なぞ)れる気概の信途(しんと)をどっぷり浸け得た。

 純白(しろ)い坊主の股間の辺りに幻覚(ゆめ)が拡まり、無重に拡まる行李の縁(ふち)には〝問わず語り〟の信途(しんと)が拡がり、重々重ねる〝意味〟を識(し)り生き気分を害する無憶(むおく)の自主(あるじ)の空間(すきま)へ這入れば、純白(しろ)い自主(あるじ)の覚悟は底から一山(やま)を登れる〝体力(ちから)〟を身に付け、幻覚(ゆめ)の帽子を宙(ちゅう)へ放れる羅針の軌跡を辿って行く内、俺の躰に振り付く自主(あるじ)は勝手気儘を無様(むよう)に相(あい)する〝雪解け間近〟の信義(しんぎ)を保(も)った。端正(きれい)な一眼(まなこ)に自由を観ながら片眼(かため)だけには牢を牛耳り、自分の果てからその実(み)を按じる安い心機を胴に据え保(も)ち、暗夜(よる)の儀式へその実(み)を這わせる〝一つ廓〟の成れの果てには、男性(おとこ)の興味を無駄に延ばせる夜目(よめ)の審議が両肩(かた)を覗かせ、一端(はし)の方(ほう)から宙(そら)を翻(かえ)せる紆余の許容(うち)からその身を挙げては、自分に見紛う自信の所在(ありか)を身欲(よく)に任せて尖って行った。無音(おと)の擦(ず)れから日々が罅割れ、無傷の許容(うち)からその実(み)に発狂(くる)わす経過(とき)の流行(ながれ)の果てには何時(いつ)もの、古豪と成っては幻(ゆめ)に嘯く〝規定〟が剥がされ、幻視(ゆめ)の審理は無形(かたち)を窄める強力(ちから)を顕し、実白(しろ)い実体(からだ)に郷里(きょうり)を這わせる無音の進化を教討(きょうとう)して居た。俺の精神(こころ)は排水(みず)を保(たも)てる躰を挙げつつ宙(そら)の残光(ひかり)に残骸(むくろ)を気取らす清閑(しずか)な間延びに夜目(よめ)を宛がい、緻密な経過(ながれ)に勝気を這わせる孤狼(ころう)の勇者は眉間を抜かれて、しどろもどろの〝多弁〟の術(じゅつ)には〝田舎気質(いなかかたぎ)〟が散々表れ、矛盾に溺れる〝向き〟の私欲(よく)には無い物強請りの加減を見出し、熱い白衣(ころも)の勝手(かちき)の果てには自我(おのれ)の真裏(しんり)が見え隠れもして、所構わず無期を頬張る〝無縁〟の許容(うち)には〝女性(おんな)〟の身欲(みよく)に男性(おとこ)が満たれぬ強靭味(つよみ)ばかりの〝無言〟が憤(むつか)る。「明日(あす)の孤独」は自己(おのれ)の真摯に、身欲(よく)を絡めて随想した儘、俺の肢体(からだ)に悲哀を紐解く感無(オルガ)の一種を総手(そうで)で見送り、幻(ゆめ)の心機を〝身重〟に重ねる私欲(よく)の心機は追想しながら、晴天(そら)の目下(もと)での砂利の上から自己(おのれ)を転がす無様(ぶざま)を程好く続ける。―――言(こと)の進化に丘陵(おか)を見出し幻覚(ゆめ)の主観(あるじ)の梵天(そら)の目下(もと)では現代人(ひと)の進歩がちょこちょこ馴らされ、他男性(おとこ)と他女性(おんな)の両腕(かいな)の許容(うち)には矮小(ちいさ)な赤子が産声(こえ)を撓(しな)らせ、三人揃って発する一声(こえ)には晴天(そら)に繋がれ暗夜(あんや)を識(し)らない身欲(みよく)の天使が小躍りして居た。俺の前方(まえ)から几帳に見出す小声が外され、男女と子供は俺の居場所を遠く乖離(はな)れた別天(そら)の目下(した)から「自由」を見渡し、俺の周囲(まわり)へ二度と咲かない野山の百合には陽天(そら)の行方(かなた)に小さく息衝く思春(ししゅん)の謳歌がずんぐり活き抜き、実しやかに両頬(ほほ)を染め行く桃色(ピンクのいろ)した律儀な女性(おんな)は、旦那の目下(もと)にて自主(あるじ)を見付けて〝子供の為に…!〟と懸命(いのち)を捧げる…。女性(おんな)の男性(おとこ)は孤独顔(こどくがお)した身欲(みよく)を保(も)ちつつ幻想(ゆめ)の流行(ながれ)へ好(よ)く好(よ)く気遣う勝手の実(み)を識(し)り安堵を舐めるが、「思春(はる)」の奥義(おうぎ)に深味(ふかみ)を知り抜き、身欲(みよく)の一塊(たまり)を外界(そと)へ吐き出す真摯(まじめ)の頃から自失を垣間見、一女(おんな)の自主(あるじ)を自然(しぜん)に解(と)け合う未調(みちょう)と承け止(と)め、やがて真摯(しんし)に文句(ことば)を取り巻く空気(しとね)の背後霊(れい)へとその実(み)を打ち貫(ぬ)く…。こうして三者が「自主(じしゅ)」を幻見(ゆめみ)て轟く時期(ころ)には幻覚(ゆめ)の主観(あるじ)は子供を取り上げ孤高を挙げ出し、未知を定める人間(ひと)の寝室(へや)へと一色(いろ)を掲げぬ幻想(ゆめ)を持ち込み、自主(おのれ)の欲しがる現行(いま)を乖離(はな)れる無限の脚色(いろ)から遠く乖離(はな)れる、浮き世の基底(そこ)へと容易く流行(なが)れる現代人(ひと)の無体(からだ)を脚色して居た…。

      *

 …そうした奴等と俺は一緒に「飯を食いに行こう」という事になり、何処(どこ)かの中華料理店へ行った。此処(ここ)へ行く迄に俺は、その夢の中に於ける妄想の内でなのか、その夢に於ける現実でなのか知らないが、柔道かラグビーを遣る画体(がたい)のでかい二人組の男を見て居り、俺は好い加減疲れて居た事もなり、新しく出て来たその男達の相手をする事にも面倒を覚え、適当な相対(あいたい)をして妙な冗談を言うと、片方の若い方の画体のでかい男が急に嫌な表情(かお)をし、今にも喧嘩を吹っ掛けて来そうで、俺は何故(なぜ)怒ったのか皆目見当が付かない儘にて、早々草(そそくさ)とそこから去って行った。もう一人の画体のでかい男は怒って居なかった様(よう)だ。だが、何か、その若いでかい男の方に事の展開(なりゆき)を任せて在る様(よう)にも見えた。

      *

 〝蚤の勇気〟を身に付けながらも俺の孤独は留(とど)まる事無く純白(しろ)い憂いの四肢(よすみ)に自己(おのれ)を取り去り、過去に望める幻(ゆめ)の諸刃(やいば)は等しく保(たも)てる様子に飼われて、明日(あす)の独我(どくが)に埋没して生く旧い疾走(はしり)を共有して居た。文言(ことば)の身軽(かる)さを孤独の夢想(ゆめ)へと押し退(の)けながらも端正(きれい)に幻見(ゆめみ)る保守の労途(ろうと)は〝打たれ脆(よわ)さ〟をそのまま見詰めて、明日(あす)の体裁(かたち)にこの身を窄める孤高の行方は奇妙な信途(しんと)に両腕(かいな)を振り上げ、仁王立ちする昨日の〝空壁(かべ)〟には、女性(おんな)の感覚(いしき)が仄(ぼ)んやり居る内、俺の思惑(こころ)の企図の堅さは寝間を拡げて宙返りをした…。自己(おのれ)の遠くで自己(じこ)を乖離(はな)れた男・女(だんじょ)が行き交い、〝子供〟の体(てい)した軟(やわ)らの体裁(かたち)は俺の両眼(りょうめ)に斬新でも在り、人間(ひと)の温味(ぬくみ)を程好く保(たも)てる安い益(えき)から自体(からだ)を仕上げて俺の独創(こごと)の連呼の両刃(やいば)は現代人(ひと)へ目掛けて嫌悪を放る。「嫌悪」の果(さ)きから女肉(にく)を想わす懐古(レトロ)が着流(きなが)れ、明日(あす)の許容(うち)へと羽ばたく〝文句(ことば)〟を器用な手付きで並べながらも、現代人(ひと)の男・女(だんじょ)が構築して生く幻覚(ゆめ)の温味(ぬくみ)の小手の延長(さき)には、人間(ひと)の破滅が堂々紐解く幻視(ゆめ)の虚ろな破局が在った。純白(しろ)い一線(せん)から許容を磨ける障害(ハードル)が建ち、自己(おのれ)の没念(ねん)から孤独を相(あい)する無機の人影(かげ)など揚々産れて、漂白差(しろさ)に纏える自然(しぜん)の微温差(ぬるさ)は寝室(へや)から仕上がり、俺の躰が生長して生く現行(いま)の房(ぼう)から退散するのは、白紙の許容(うち)へと〝妙〟を発する無数(かず)の手先に延長していた。孤独の三位(さんみ)は空気(しとね)と仕業(しわざ)と気色に連なり、微温(ぬる)い流行(ながれ)の妙の範囲(うち)には俺の文言(ことば)が自由を気遣い朝に始まる呼吸(いき)の四肢(すみ)には昨日の行方を描写していて、没我(ぼつが)の斬新(あらた)を感想(おもい)に敷くのは、幻見心地(ゆめみごこち)で躰を生やせる一人(ひと)の用具に追随して居る。現代人(ひと)の内から多様に化(か)われる野獣(けもの)が仕上がり、野獣(けもの)欲しさにその実(み)を割かれる遊露(ゆうろ)の途上(うえ)には正義が死に絶え、現代人(ひと)の活気が正気(せいき)を宿して憤行(ふんこう)するうち幻想(ゆめ)の微睡味(まろみ)はすっかり消え失せ、厚い速水は湯水の態(てい)して宙(そら)を巡れる現代人(ひと)の決死を敗北にした。疾(やまい)の故から現代人(ひと)の男女(だんじょ)が徹走(てっそう)して活き、暗黙(やみ)の縁(ふち)にて度肝を抜かれぬ身欲(よく)の両刃(やいば)を自己(おのれ)へ保(たも)たせ、男性(おとこ)と女性(おんな)の私闘の遊戯は一理を被(かぶ)れる本能(ちから)を自主(あるじ)に、その後の自活(かて)へと〝生(せい)〟を射止める陽(よう)の身辺(あたり)を矢庭に掃いた。悪口(あっこう)から成る祝儀の幾多は幻覚(ゆめ)の破片(かけら)へその実(み)を馴らしめ、これまで観て来た道理の通らぬ独我(おのれ)の文句(もんく)に一理を据え立て、臆する暴徒を自己(おのれ)に飼わせた〝使用〟に当て活き、幻覚(ゆめ)の進化が独創(こごと)を賄う滑稽(おかし)な生歴(きおく)に〝問い〟を観る内、幻(ゆめ)の流行(ながれ)に肢体(からだ)を掴める確かな隠居をその身へ投げ掛け、俗世(このよ)の範囲(うち)から〝在る事無い事〟無言で消し去る孤高の暴徒に鬱積させ得た。

      *

 それから俺達(兄貴分と仲間達)は一緒に中華料理店(王将みたいな所)へ入り、先に来て居た〝兄貴の友人〟と言う夫婦が既に座って居たテーブルに俺達も着き、何を食べようか算段し始めて居た。その夫婦には子供が居り、その家族はまるで俺の田舎の(どんどん周りで結婚して行く)従兄弟の様(よう)にも映り、俺は少し羨ましかった。俺は適当に腹が減って居り、中華料理(王将の料理)はそれなりに魅力だった。それから、食うシーンは映らず、その仲間達と共に(冒頭に書いた)校舎に、食い疲れと満腹を癒し冷ます如く、俺は居た。その時にはもう既に、彼等はもっと若く、大学で出会ったような「彼等」の様(よう)に成って居る。

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 俺の両眼(まなこ)の遠くに蔓延る一連(むれ)の形成(なり)には生気(いのち)が零れて幻想(ゆめ)の「溺れ」へ自身を任せる「一歩(あゆみ)」の諸刃(やいば)に自信は削がれ、俺の形成(かたち)の「向きの形成(なり)」には行方知れずの豪徒(ごうと)が訴え、明日(あす)の孤独を耽溺して生く無数の生歴(きおく)は散会して居た。言葉の人陰(かげ)から〝自適〟を曇らす幻想(ゆめ)の言語は昼間から活き、意味を成せずに意味を象る無視の生歴(きおく)は〝曖昧独白(あいまいがたり)〟で、気色の冴えない幻(ゆめ)の王者は俺の残骸(むくろ)をその身に駆け出し、幻夢(ゆめ)の魅力に取り憑き始める一人(ひと)の脆弱(よわ)さは無効を跳び出し、明日(あす)の流行(ながれ)をその実(み)に観て居た。現代人(ひと)が集まる一連(ドラマ)の形成(かたち)に仄(ぼ)んやり活き得る調子に根付き、自己(おのれ)の自活(かて)から幻(ゆめ)を早める〝向き〟の調子は幻盲(ゆめ)の言語の成立から成り、明日(あす)の延命(いのち)を生き抜く〝言語〟は夜半(よわ)の範囲(うち)から自由を眼(め)に付け、自分の自然(あるじ)に伴(とも)を重ねる微弱(よわ)い倖(さち)など構想して居た…。

 幻想(ゆめ)の鳴りへと独歩を掲げる俺の生気は食事を求めて、伴(とも)の根が立つ旧い社(やしろ)へその身を染(し)ませて這入って行った。社(やしろ)の内(なか)では〝兄貴〟と称する一人(ひと)の背後(うしろ)に、陽気を掌(て)にした淋しい男・女(だんじょ)が御殿に浮くほどぽつんと在って、単座して居る真摯(まじめ)の果(さ)きには如何(どう)して斯うして不真面目など在り、自己(おのれ)の明朗(あかり)を終(つい)と絶えない陽気な羽織は上(かみ)の単(ひとえ)で、俺の傍(よこ)から空気(しとね)の許容(うち)には、〝子供見たさの暴虎(ぼうこ)の頓首〟が爆ぜも豊かに衰退して居る。共に暮らせる不可思(ふかし)の範囲(うち)での淡い老婆に、俺の行方は滔々連れられ向かう果(さ)きには純白(しろ)い人煙(けむり)が濛々(もうもう)生え出て、道標(しるし)を見付けぬ旧い安堵の小手の果(さ)きには、俺の躰が忙々(ぼうぼう)煙れる幻視(ゆめ)の人社(やしろ)がちょこんと建った。矮小(ちいさ)な擦(ず)れから日々を紐解く伽藍は遠退き、行方知れずの孤高の〝旧巣(ふるす)〟は潜(かく)れた自律を収集するべく、無適(むてき)の人途(じんと)に自己(おのれ)を馳わせて御託を列(なら)べ、孤独を吟じる労(ろう)の用途は宙(そら)の許容(うち)にて自明を賛(さん)じ、突拍子の無い他(ひと)の絶え得る苦楽の延長(さき)では、俺の孤独が暗黙(やみ)に付き添う暗夜(あんや)の側(そば)にて、旧い律儀を醸し出し生く無機の輪舞曲(ロンド)に倣って在った。純白(しろ)い形成(かたち)の御供の果(さ)きには、俺の寝室(ねむろ)が暗夜(よる)を見限る苦痛の〝二文字〟が散行(さんこう)して居り、他(ひと)の〝挙句〟がその場を凌げる夜気(よぎ)の所在(ありか)を無刻(むこく)に葬り、俺を取り巻く空気(しとね)の軟(やわ)らは寝室(むろ)を跳び越え三苦(さんく)に絞られ、文言(ことば)の辺りに器用を培う「小春見日和(はるみびより)」の仲人達には、俺の背中の寝汗の一滴(かず)など一つも詠めずに狼狽して活き、器用な行為にその名を伏すのは、幻想(ゆめ)の許容(うち)から間近を射止める旨の胸裏の惨敗だった。

      *

 内に何人か女の子も居た。そこが高校・大学のような場所だったからかも知れない。俺達は(OG大学みたいな)煉瓦造りで、階段が沢山在って死角は在るが、それでも見事な拵えの校舎の丁度階段の踊り場(通路が在って、出ようと思えば教室へも門へも出られる)に居り、両肘を体の後ろに突いて両足を前方へ投げ出して休憩して居て完全リラックスモードの姿勢を大抵の奴等が示していて、俺もその内に居た。

      *

 精神(こころ)の微動(うごき)を真に受けながらも幻視(ゆめ)の進化は像に表れ、俺の「男性(おとこ)」が一糸を纏わず一女(おんな)の棲家へ逆行(もど)って往(ゆ)く頃、一途(いちず)な気色は〝感覚(いしき)〟の分まで、幻覚(ゆめ)の餌食に漏れて仕舞った。閑古の清閑(しずか)が呆(ぼう)っと鳴る頃、俺の一身(からだ)は余生を受け継ぎ、低い眼(まなこ)に女神を認めて概(おお)きな余程(あまり)へ〝活(かつ)〟を識(し)り活き、明日(あす)の自活へ縁(えにし)を図れる美徳の〝女神〟を構築して居た。眼精疲労の程無く醒め得る未覚(みかく)の空間(すきま)に俺の自主(あるじ)は伴(とも)を並べて、余労(よろう)の知り足る無刻の自然(あるじ)は見るも見果てぬ一山(やま)を流離(さすら)い、不断に吟味(あじ)わう現実(リアル)の景色は温味(ぬくみ)に秀でて、過去(むかし)と現行(いま)から私欲(よく)に浸せる精心(こころ)の微動(うごき)に注目して居た。俺の未覚に〝背凭れ〟等在って、ゆっくり単座でその背を傾け、〝女神〟の調度に労(ろう)を惜しまぬ幻覚(ゆめ)の寝床へ自己(おのれ)を遣れば、一女(おんな)に対する淋しさばかりが膨れ上がって、日々の流行(ながれ)に如何(どう)もせぬまま幻想(ゆめ)の〝羽織〟は皮膚と破けて、見る見る絶やせる僅かな安堵の神秘(ふしぎ)の端(すそ)には、これまで観て来た女性(おんな)の軟裸(やわら)が所狭しと俺を睨んだ…。無口の過去から「囲い付き」での温味(ぬくみ)が暗転(ころ)がり、幻想(ゆめ)の用途で一女(おんな)を侍らす俺の覚悟の生く果々(さきざき)には、現行(いま)の温味(ぬくみ)に心身(からだ)を這わせる多弁の信徒が活性して生き、疲労を癒せる無力の自然(あるじ)に自体(おのれ)の深味(しんみ)を呈する頃には、無駄に這わせる余力(ちから)の果(さ)きから無重に構える断層(そう)の延長(さき)迄、旧い寝宿(ねやど)で捕まり立ちする古怪(こかい)の振りには、幻想(ゆめ)の丸味(まるみ)を再び構える「二度の揺らぎ」が羽(は)ためき始めて、俺の躰を「自由」に就け得る密かな未覚が段々膨らみ、明日(あす)に丁度の定めの奥義(おく)には文言(ことば)の進化がその実(み)を成らせた。律儀に培う日々の暮らしの真向きの逆鏡(さが)には、俺の精神(こころ)を手綱で操(と)り生く無機の信徒がその身を掲げて、上手な手綱に弓を引き得る未覚の暴途(ぼうと)はその実(み)を顕し、独創(こごと)を列(なら)べる古郷(こきょう)の脚色(いろ)から無造(むぞう)を引き連れ〝俺〟へと消えた。行方識(し)れずの「器用」の両眼(まなこ)は幾度も寝醒めぬ夜半(よわ)を貫(ぬ)け去り、無言に片付く旧い内実(なかみ)は古い土間からその実(み)を覗かせ、やがては映え生く未覚の文言(ことば)は〝希少〟の様(よう)でも、未(いま)に名高い幻(ゆめ)の賛辞は臆する事無く余談を欲する。無限の瞬間(せつな)に「自動」を欲する幻想(ゆめ)の過程(さなか)は何時々々(いついつ)迄も、夢想(ゆめ)の行方(かなた)に魅了を這い出す〝廓〟の準備が揚々女々しく、「行方知れずの過去の孤独」は俺の背中をどんと蹴破(けやぶ)り、旧来独語(むかしがたり)の寝屋の棲家へ〝一歩〟を踏み出す努力を識(し)った。純白(しろ)い毛布は俺の白衣(ころも)に抱き着きながらも、寝室(へや)の空気(しとね)にその目を休める無機の記憶に単座で居ながら、「明日(あす)」に小波(さざ)めく幻(ゆめ)の波調(なみ)には〝独自〟を知り貫(ぬ)く、文言(ことば)仕立ての五月蠅(あわ)い静寂(しじま)が、幻想(ゆめ)の大樹(みき)へと揃って入(い)った。孤独の気配をよいしょしながら俺の精神(こころ)は一女(おんな)へ近付き、無限に居座る心地を掴める思春(はる)の辛気(しんき)を寝耳に棄て置き、自己(おのれ)の〝向き〟から従順(すなお)に寄り添い呼吸(いき)を吐(つ)くのは、〝無駄〟を排して〝無機〟を手繰れる微塵の努力(つとめ)の放散でもある。自己(おのれ)の心身(からだ)を幻想(ゆめ)へ通せる至極の企図には柔軟(やわら)が飛び付き、〝一人歩き〟の歩調の速差(はやさ)を不断に早める緑(ろく)の光沢(あで)には、女神が掌(て)にして女神が曇らす〝夜半(よわ)の併鏡(かがみ)〟を上手(じょうず)に見る内、するするするする、幻(ゆめ)の解(ほつ)れが心身(からだ)を操る俺に対する動力など在る…。暗黙(やみ)の範囲(うち)から無数に拡がる事始(こと)の傍受は幻想(ゆめ)の範囲(うち)から、独創(こごと)を揃えて奇妙に羽ばたく冷たい容姿に言句(ことば)を絆され、相(あい)する暗夜(よる)には未憶(みおく)に連なる一連(ドラマ)が在った。既知の事始(こと)から古録(ころく)を想わす矛盾の火蓋は切って落され、冷めた四肢(てあし)は暗黙(やみ)の内(なか)へと無造(むぞう)を誘(いざな)い用途を確かめ、人間(ひと)の心身(からだ)を初めて安(やす)める無垢の精神(こころ)を演算して居た。俺の幻(ゆめ)には体調(リズム)に連なる験(げん)の強靭味(つよみ)がムダを掬える器用が親しみ、自己(おのれ)の両手で精神(こころ)を揺さ振る旧い相智(あいち)は凡庸から退(の)き、幻覚(ゆめ)の謳歌にその身を養う旧い手鞠を宙(そら)へ投げては、仄(ぼ)んやり灯れる滑稽(おかし)い動作へ直ぐさま還れる当たり(「当たり」は点付け)を識(し)った。暗黙(やみ)の範囲(うち)から器用を束ねる無理の文言(ことば)が事情を連ねて、安気(やすき)に宣う微動の行方をその実(み)一つで追い駆け始めて、苦労の行方に努力(ちから)を溜め得る理尽(りじん)の古さに如何(どう)する間も無く、暗黙(やみ)と豪気が対峙を計れる幻想(ゆめ)の用具を身に着け出した。

      *

 とにかく、夜の黒さが、本当に良く冴えた。俺は故に淋しく成りその踊り場から見える景色を眺めながら、「俺も女が欲しいなぁ…」等と煩わされつつ、踊り場の煉瓦床に仰向けに寝転び、真っ黒に映る夜空を背景(うしろ)にしてこの煉瓦造りの校舎の最上階を漸く見て居た。薄(うっす)らと屋上と黒(くろ)が見える。夜はその黒さから相当更けていたように見えたが実はまだ周りが起きて居る時間帯だったのか、ライトの明かりがその屋上の方に差していて、上で何かが動けば、遠目にでも判る様子になっていた。本当に遠くに見え、それでも夜の黒さとライトでくっきりしていたその屋上を俺は仄(ぼ)んやり眺めながら、〝ああ、誰かあそこに現れて飛び降りでもしてくれないかなぁ。そして俺のこの鬱憤を晴らせる程度の事件でも、起してくれないかなぁ…〟等、取り留めもなく考えていると、案の定、女の子(女子高生、或いは女子中学生程のセーラー服を着た若い女の子だった)がそんな俺に対して〝ぎょっ〟とさせる現実味(リアリティ)を以て屋上の淵へゆっくり歩いて現れ、俺は「もしや」と思いながら彼女を、仄(ぼ)んやりだったが凝視して居た。

      *

 無垢の瞳(め)をした暗黙(やみ)の範囲(うち)からぽつんと秀でる〝併鏡(かがみ)〟から出た古今(こきん)の童女は、不乱に流行(なが)れる意思の範囲(うち)にて俺へ対せる光沢(ひかり)を着ながら、〝意味〟に連れ添う夜風の許容(うち)から体躯(からだ)を示唆(しめ)せる伽藍を貫(ぬ)け尽(き)り、慌てる間も無く凡庸(ふつう)を呈する臆女(おくじょ)の姿勢(すがた)で暗黙(やみ)へ潜(くぐ)った。孤高の敗者が虚空の許容(うち)より従順(すなお)に現れ、幻(ゆめ)を保(も)たない小言の可能(かぎり)は「純白(しろ)き…」を徹した群庸(ぐんよう)から成り、幻想(ゆめ)の様子を端正(きちん)と紡げる夜風の源(もと)へと男女(だんじょ)を見送り、俺の躰に纏わる空気(しとね)は〝少女〟を葬り闇へと去った。去ろうとしながら夜雲(くも)に失(き)え行く孤高の謳(うた)には独創(こごと)を相(あい)する「産みの輪舞曲(ロンド)」が端正(きちん)と鳴らされ、地味の日々から俺を連れ出す古都の主(あるじ)は何も語れず、旧(ふる)びた文言(ことば)にその実(み)を費やす人間(ひと)の労苦は無残を報(しら)され、退屈(ひま)な流行(ながれ)に憎悪を重ねた幻想(ゆめ)の挽歌を謳って在った。

 一女(おんな)の背中は暗黙(やみ)へ対する浅墓等から幻想(ゆめ)の歪曲(まがり)へその実(み)を誘(いざな)う深夜(よる)の漆黒差(くろさ)に助長を観て採り「希少の宮(みやこ)が自分に在る」との僅かな夢見で仄かを和らげ、女体(からだ)に割かれた無理の寝床を孤高に匿い新参して居た。暗夜(よる)の範囲(うち)から私闘に紛れる情(こころ)が成り出し孤独の賛歌は一人(ひと)に終(つい)えぬ暗黙(やみ)の謳歌を端正(きちん)と見出し、漂白差(しろさ)に紛れる滑稽(おかし)な諸刃(やいば)は片方(ひとつ)を嗾け片方(ひとつ)を余らせ、一夜(よる)の範囲(うち)へと希望(あかり)を灯せる無適の日(ひ)の粉(こ)を蹂躙して居た。一女(おんな)の律儀は俺に対して愛らしくも在り、幻(ゆめ)の範囲(うち)から土像(どぞう)を象る神秘の輪を観て純白差(しろさ)を牛耳り、一人(ひと)の魅惑へ掲げた労(ろう)へは夜半(よわ)の気色が仄(ぼ)んやり訪れ、幻(ゆめ)の形成(かたち)へ初めに描(えが)ける一昔(むかし)の〝両刃(やいば)〟は無形(かたち)を冗(じょう)じて、苦労を把(つか)めぬ女性(おんな)の論理を未知へ吹かせて道理を踏んだ。矮小(ちいさ)な一灯(あかり)がぽつんと突っ立ち、旧(ふる)びた造りの無形(かたち)の屋上(うえ)からひるひる翻(かえ)せる身軽を取り添え、女性(おんな)の道理をふらりと越え生く身(からだ)の論理を自由に着飾り、明日(あす)の活路を自信の許容(うち)より概(おお)きく列(なら)べて、一男(おとこ)の胸面(むなも)へ軟く掛かれる二性(ふたつ)の両腕(かいな)を気取ってさえ居る…。独創的から〝気配〟が仕舞われ、俺の身内はほくほくほくほく、女性(おんな)が呼吸(いき)する無限の集体(シグマ)を両掌(りょうて)に据え保(も)ち、奇遇の〝両腕(かいな)〟が安堵を図れる黄泉の早朝(あさ)から私論が跳び出て、「目くるめく」から「スタンバイ…」迄、遠方(とおく)の奈落を見送り続けた。

 「早朝(あさ)」の企図には空気(もぬけ)の〝呼笛(あいず)〟が呆(ほう)けて居ながら安(やす)む間も無く一人(ひとり)を按じる一女(おんな)の首(こうべ)がその実(み)を持ち上げ、自信(おのれ)の幻夢(ゆめ)から身憶(みおく)を牛耳る一女(おんな)を任せて、幻夢(ゆめ)の厚味(あつみ)を通底(そこ)で吟味(あじ)わう「黄泉」の脚力(ちから)を実感して生く…。拙い衝動(うごき)に視覚を遣られて一女(おんな)の文句(ことば)が宙(ちゅう)へ酔うほど跳び発(た)つ間も無く、漂白(ひょうはく)され生く二性(ふたつ)の主観(あるじ)は精神(こころ)を揺られて呆(ぼう)っとして在り、苦労から成る暗黙(やみ)の渋味(しぶみ)に〝苦味(にがみ)〟を憶えて落胆する程、黄泉へ辿れる俗世(このよ)の進化は幻想(ゆめ)に絆され自活を得て居た。女性(おんな)の両眼(まなこ)に〝朽ち〟を咎める初歩(いろは)が在っても、未覚(みかく)に束ねた私用の宮(みやこ)は一(いち)にも三(さん)にも人間(ひと)から気外(きはず)れ、全ての分野で精神(こころ)を惑わす〝偏見(せいぎ)〟を識(し)った。〝偏見(せいぎ)〟の行方(かなた)に自信(じぶん)が辿れる浮世の神秘に盲目(めくら)を安らげ、〝併鏡(あわせかがみ)〟で自重を重ねる「行方知れずの恋」の行方は気性識(し)らずの自主(あるじ)に訴え、俗世(このよ)の下劣を概(おお)きく取り巻く浮世の心算(つもり)にその身をたえ生く「不可視」に纏わる男・女(だんじょ)の性(さが)には、脆くも儚く幻想(ゆめ)を壊せる〝偏見(せいぎ)〟を立たせて、「在るか無いか…」の神秘(ふしぎ)の〝偏見(せいぎ)〟に張羅を着たまま失踪して居た。失踪して行く二性(ふたち)の〝無駄〟には〝併鏡(あわせかがみ)〟の苦渋が成り立ち、〝偏見(せいぎ)〟の身許で安堵を許せる未覚(みかく)の独歩(あるき)を真摯に訴え、自明の論理と自活の摂理を殊に寄り添え融合して行く未活(みかつ)の審理の手順に従え、根気を照らせる独自の陽光(ひかり)は無知に従い無機に従う許容の自然(あるじ)に闊歩を採った。純白(しろ)い狼煙(けむり)に人間(ひと)を観るまま漆黒(くろ)い宙(そら)には遊離が飛び交い、未完(みじゅく)の童子を子供に馴らせる無価値を想わす未然の信(しん)には、これまで活き得た「或る日」に見取れた〝時限・酒場〟の独気(オーラ)に紐解く〝緩い臭味(しゅうみ)〟の「併せ」から識(し)り、能面(かお)を灯して堂々競歩(ある)ける「深夜の真昼」の矮小(ちいさ)な微動(うごき)は、心成らずも自識(じしき)を保(も)てない〝五月雨平野(さみだれへいや)〟の果てとも成った。自明の見栄から過去を巡らす禍根の日蓋(ひぶた)を根こそぎ絶やせる憂いを紐解き、自己(おのれ)の上手(じょうず)を酔いに醒ませる目暗(めくら)の主観(あるじ)が自制を見付けて、白紙に過ぎ生く寝室(ねむろ)の日蓋を枯らす迄はと、海馬(うみ)を波(わた)れる並入(なみい)る集成(シグマ)は俺の言動(うごき)を漸く仕留めた。橙色から漆黒(くろ)に成り行く以前(むかし)の行儀は人間(ひと)へと根付き、透明色した幻夢(ゆめ)の集成(シグマ)は頼りを示さぬ伴(とも)を葬り、自己(おのれ)の配する未覚の範囲(うち)にて如何(どう)にもし得ない暗黙(やみ)を避けては、現世(このよ)を囃せる寝室(ねむろ)へ込んでも、無数(かず)を頬張る現代人(ひと)の輪舞曲(ロンド)に体裁(かたち)を成せない童(わらわ)が発(た)った。

 現代人(ひと)の内実(なかみ)も体裁(かたち)も変らず、徹底したまま厭(いや)がる俺には現代人(ひと)の無数(かず)など問題ではなく、現世(このよ)の円(つぶ)らを馬鹿に出来得る幻(ゆめ)の網羅は先行して活き、俗世(このよ)の目下(ふもと)で憶えた規律は総て他(ひと)まで還る安物(もの)だと、俺の思惑(こころ)で幻想(ゆめ)に暮らせる私闘の活力(りき)には日頃の身欲が腐乱(くさ)って在った。…自己(おのれ)の小言に身欲(よく)を醸せる二性(ふたつ)の片鱗(せいぎ)は幻(ゆめ)の寡黙に撃沈したまま暗い夜路(よみち)を寸(すん)まで競歩(ある)ける往路(おうじ)の夜霧(きり)など曖昧さに観て、児童(こども)と言えども無言で貫く一身(からだ)の上気を私欲(よく)に観た儘、孤独の常軌をその場に培う初春(はる)の初歩(いろは)を脚色付(いろづ)け始めた。

      *

 …そしてふらりと又案の定体を傾けさせて、「ひゅるひゅるひゅるひゅるっ…!」と物凄い風鳴(おと)と速度を以てその子は俺達が休憩して居た丁度その踊り場へ落ちて来た。俺は落ちて来て床に叩き付けられるその子の惨劇が余りにも惨たらしいものと瞬時の内に予測しパッと目を他所へ遣って自ず観ないようにして居た。体を起して、これからその自殺…或いは自殺未遂をした女の子を迎える為の姿勢を整えようとした所、自然にその姿勢(落ちた瞬間を観ない姿勢)と成ったのである。

      *

 暗黙(やみ)も留(と)まれる無言の希望(あかり)を一女(おんな)の躰に射止めて居ながら、事始(こと)に大きく身構え始める無機の静味(しずみ)は無口に成り立ち、一娘(むすめ)に対する私情を絡めた無産(むさん)の審議は果てを識(し)れずに、一々概(おお)きな言霊(こだま)の内にて冷風(かぜ)を乗り切る持久を識(し)った。旧い規定(おきて)は暗(やみ)の内(なか)から独創(こごと)を賄う連呼を知りつつ、強引ばかりが先行して生く「赤い奮起」が悠々気取られ、俺の前方(まえ)では見知らぬ老婆が茶碗を片付け再び出で立ち、幻(ゆめ)と幻視(ゆめ)との遊離を紡いで無垢の温度に仕上げて在った。白日夢に成る未活(みかつ)に気取れる旧(ふる)びた信仰(めいろ)は、オレンジ色から夕日に染まれる「活気」を落した某所へ留(とど)まり、少年(こども)が成人(おとな)へ生長して行く真っ向勝負の丁寧さの上、明日(あす)の身元を自分に解(と)けない〝寝屋〟の楽差(らくさ)に往路を得ながら、未知の代物(もの)など未知へ返せる〝しどろもどろの造形〟から成る。事始(こと)の始末を未有(みゆう)の感覚(いしき)に留(とど)めていながら俺の小言は寝言の体(てい)して瞬く間に成る体裁(かたち)を講じ、宙(そら)の両眼(まなこ)へ内実(なかみ)を演じる得(とく)の水面(みなも)は何時(いつ)でも清閑(しずか)で、一女(おんな)の躰に一女(いちじょ)が連なる固有の浮足(あし)が延命(いのち)を保(も)った。

 開眼して生く無闇(やみ)に従う滑稽(おかし)な蜃気は、俺の寝間から仄(ぼ)んやり漂う〝伴(とも)の生気〟をその眼(め)に当て据え、「想い出噺(ばなし)」に美味を投じる旧い甘さは個人(ひと)へと張(ば)らけて、明日(あす)と現行(いま)との〝自由の往路〟は事始(こと)を暗転(ころ)がし集中力(ちから)を溜めつつ、魅惑の果てから昇(あが)る「信仰(めいろ)」を一気に見付けて呆(ぼう)っと発(た)った。女性(おんな)の主観(あるじ)が事始(こと)に手向けて自身を偽り、俺の肢体(からだ)を遠くに見詰める幻想(ゆめ)の両眼(まなこ)は男・女(だんじょ)を奏して、幻(ゆめ)の翻(かえ)りに畜算(ちくさん)して生く無数の言霊(こだま)は〝賛美〟を観た儘、真昼(ひる)にも暗夜(よる)にも生気を保(も)てない未完(みじゅく)の一女(おんな)を頻りに立てた。

      *

「バタン!」

音量は相応だが物凄い音を立てて皆のだれて居たその踊り場へ女の子は自然に落ちて来た。丁度位置的にその子が落ちる瞬間を目の当たりにした(階段に腰掛けて居た)友人が居た。「バタン」と音がして皆は先ずその音に気付き、次にその状況に気付いて、咄嗟に女の悲鳴が鳴り響いた。俺はその時、惨劇の有様よりも、その元気な女の悲鳴の方に恐怖を覚え、煩いを募らせて居た。落ちて来た女の子は、俺からは丁度見えない昇(のぼ)り階段の辺りに落ちたらしく、しかし階段の上には落ちずに平らな床上に落ちたらしく、出っ張りに頭や体を打ち付けた様子は無かった。

      *

 無理の動作が暗黙(やみ)の許容(うち)からすんなり外れて怜悧(つめ)たい発汗(あせ)には淡白(しろ)い勇気が転々(ころころ)公転(ころ)がり、俺の肢体(からだ)は死角へ逃れて見得ずに在ったが、俺の知己(とも)には「一部」が見え行く無造の発作が延長された。神話の許容(うち)から深話(しんわ)が漏れ出し、俺の煩悶(なやみ)は一世界(せかい)を牛耳る無効の四肢(てあし)を夜宙(よぞら)へ侍らせ無言を見定め、明日(あす)の八又(おろち)と四魂(しこん)を伴う稀有の晴嵐(あらし)に八頭(あたま)を置く後(のち)、幻想(ゆめ)と見紛う人見(ひとみ)の境地は「明日(あす)」に裂かれて無縁と成った。必死に漕ぎ生く奈落へ通せる不様の真意は、黄泉の「縁(ふち)」まで我流を秘め出し明日(あす)の生地(せいち)へ自己(おのれ)を宿せる逆上(のぼ)せた〝無知〟から気配を探られ、幻(ゆめ)の遠くで気色を覚(さと)らす「無機」の目をした一つの発熱(ねつ)には、幻想(ゆめ)の郷里(きょうり)にその実(み)を見紛う危うい独我(どくが)に「昨日」を観て居た。桃色(ぴんくいろ)した二双(ふたつ)の独牙(きば)には没我色(ぼつがいろ)した未覚(みかく)が連れ添い、明日(あす)の要局(かなめ)が幻覚(ゆめ)に敗れて憐れを乞うのは、苦労の末(すえ)から祝福(さかえ)を亡くせる無防(むぼう)の除算(じょさん)に散々割られて俺の呼吸(いき)する徒労の旧宮(みやこ)は死相を呈する新宮(みやこ)とも成り、感覚(いしき)を介して〝意味〟を成せ得る古記(こき)の主観(あるじ)を盲目にした。女性(おんな)の肋(あばら)に一世界(せかい)を牛耳り俺の〝宮(みやこ)〟は瞬く間に成り、初めの内から無闇(やみ)を通せる幻(ゆめ)の集成(シグマ)は無暗(むやみ)を牛耳り、煙草の芯から灰が零れる夜半(よわ)の寝床で俺の双頭(あたま)は、女体(からだ)に連れ添う汗(あくた)の交響(ひびき)を無我に堕とせる有名を観た。漆黒(くろ)い背中に春日の要局(かなめ)を単に識(し)りつつ、影響され生く俺の躰は空気(しとね)を仕留める本音を保(も)ち去り、自分の女神を翻弄して行く〝併鏡(あわせかがみ)〟の邪教の許容(うち)から、昨日と明日(あす)とを郷里へ連れ生く無想の継続(かなめ)と断呼(だんこ)して居た。時制(じかん)の継ぎ目を弛緩の弾みに空気(くうき)に観ながら、一娘(むすめ)の所在(ありか)を一女(おんな)に観るうち無用の姑息は断固を幻見(ゆめみ)て、幻覚(ゆめ)から乖離(はな)れて助走を付け生く夢想の人影(かげ)には下剋が跳び交い、〝併鏡(あわせかがみ)〟に自分を映せる余我(よが)の窮地に埋没して行く…。人影(かげ)を連れ添い人陰(かげ)を抜け出て、幻視(ゆめ)の我欲は他(ひと)を知り得ぬ無適(むてき)の長寿を黄泉に配して、「在る事・無い事」夢目(むめ)の過程(さなか)にそのまま鎮めて、明日(あす)に活き得る魔法の文句(ことば)を俺の心理に餌付けしていた…。―――――

      *

 …―――――しかしまるでビルの十階程度の高さから落ちたその子である為、致死を招く程の、相当の打撃を受けて居た事には違いなかった。俺は恐る恐るその子が落ちた現場へ近付き、女の子を見た。階段に座りその女の子の落ちる瞬間を見たのは馬男(うまおとこ)に似た男だった。その馬男に似た男は唯、驚いて居るのか、黙って見て居る。何時(いつ)もの座らせた目を以てその惨劇を呆(ぼ)んやり眺めて居た。

      *

 俺の人影(かげ)から二人の男性(おとこ)が陽気に跳び出て夢想(ゆめ)の境地で爆睡した後、俺の胸中(むね)から矮小(ちいさ)な囲いを紐解く儘にて、「葦」の坊主を丸禿げから観て驚きさえ識(し)り、幻想(ゆめ)の境地と夢想(ゆめ)の境地を四旬(しじゅん)に損なう耕地を掌(て)にして、幻覚(ゆめ)を見詰める両眼(まなこ)の裏では一女(おんな)の姿勢(すがた)が〝女神〟へ化けた。心身(からだ)の中から奇妙な耳鳴(おと)等そそくさ聴こえて、俺と馬男(おとこ)の「人の距離」から暗夜(よる)に跨げる一灯(あかり)が差し出し、明日(あす)の〝往路〟へそのまま旅立つ一女(おんな)の煩悶(なやみ)は無体を引きつつ、漆黒(くろ)に破れた煉瓦の風貌(かお)には人間(ひと)の肢体(からだ)がぽつんと活きた。俺の心身(からだ)が無暗(やみ)を贖う未活(みかつ)に隠れて「明日(あす)の往路」へ進化を伴う「視線の遊戯」にほろほろ載る頃、夢想(ゆめ)を保(も)ち出す男女(ふたつ)の呼吸(いき)には夜風の流行(ながれ)が堂々飼われて、男性(おとこ)と女性(おんな)の滑稽(おかし)な「相(あい)」には純白差(しろさ)が儚く萌え去り、男性(おとこ)と女性(おんな)の暗黙(やみ)へ紛れる痛味(いたみ)の遊離を清閑(しずか)に観て居た。

 女性(おんな)の自主(あるじ)が一男(おとこ)に対する一灯(あかり)を保(も)ち逃げ、「奇妙の両眼(まなこ)」がくっきり位置付く暗夜(よる)の果てには心中(こころ)が解(と)け出し、昨日の暗黙(やみ)から今日の暗夜(よる)まで漂白(しろ)い気体(からだ)を成長させつつ、自己(おのれ)の和みに欲を識(し)らない不可思(ふかし)の周囲(まわり)で段々拗ねた。端正(きれい)な女体(からだ)が白夜(よる)の箒(ほうき)に清閑(しずか)に居座り、無憶(むおく)の行方(かなた)に言霊(こだま)を徹する私欲(よく)の形成(なり)には白味(しろみ)が重なり、極めて名高い〝古郷(こきょう)の信徒〟は俺の背後へ突進した儘、茶色の精神(こころ)が現代人(ひと)に懐ける脆弱(よわ)い遊戯は思惑(こころ)へ留(とど)まり、安価な人生(みち)にて〝現代人(ひと)の原価〟が地中に埋れる矮小(ちいさ)な習癖(くせ)から活力(ちから)を見付けて、一人(ひと)の精神(こころ)を土足で荒らせる「礼儀知らず」が図太く活きた。〝安心〟さえ無い現代人(ひと)の頭上(うえ)での人脂(あぶら)の滑りは、既視(おおめ)に観られた死太い自主(あるじ)へ〝無教(むきょう)〟を携え、一人(ひと)の心地を随分弄(あそ)べる無機の所在(ありか)を勝手に突き止め、〝在る事無い事〟自由に火吐(ほざ)ける夢想(ゆめ)の自然(あるじ)は生活感(おくゆき)など観て、現代人(ひと)の進化を退化へ化(か)え生く「一本調子の寝首」を噛んだ。幻(ゆめ)の体裁(かたち)は内実(なかみ)を照らさず外野と連れ添い、「嫁」の一つに全身(からだ)を懸け得る小物の雄(おとこ)を量産して行き、純白(しろ)い幻夢(ゆめ)から「透視」を図れる無言の〝上手(じょうず)〟を大事と観る儘、文言(ことば)の巧みが私闘を演じる〝向きの帳場〟を解体していた。生意気盛りの「遠慮」の要局(かなめ)に胸中(うち)の小袋(ふくろ)は断水(みず)を欲しがり、一重(ひとえ)の局所(ところ)へこの実(み)が赴く文句(ことば)の巧みが暗黙夜(やみよ)を欲して、「無益」の白壁(かべ)から命綱(ロープ)を投げ得る未知の煩悩(なやみ)を一掃して居た。

      *

 自らボランティア精神を働かせてこういう時に動こうとしない、仕方の無い奴だ。その女の子はそれだけの衝撃に拘らず、ふらりとではあるが、すらりと立ち上がり、虚遁(きょとん)とした顔付きで、ふらふら歩いて来た。何の為に自殺したのか分らなかった。〝あんな所に立つのは二つに一つだ。用事が在って立つか、自殺する為に立つかだ。〟そんな事を後から考えながら俺は、歩いて来るその女の子を不思議に見て居た。

      *

 没我の杜から幻想(ゆめ)が気取られ〝併せ無沙汰の概(おお)きな集成(シグマ)〟にこの身を象(と)られて厄日を引き摺り、葛藤ばかりが宙(ちゅう)を飛び交う幻覚(ゆめ)の様子がどんどん仕上がり、俺の身欲は精神(こころ)を保(も)たない海馬(うみ)の魅力に透って入(い)った。人間(ひと)の両腕(かいな)が既視(すで)に観ていた巨躯の体内(うち)から「矢庭」を儲けて、明日(あす)の思惑(こころ)に自信を割け得る魅力(ちから)の差異には煩悩(なやみ)が先立ち、透明色した〝七つ道具〟の一頭(あたま)の果(さ)きには、俺の幻視(ゆめ)から暗黙(やみ)が差し込む微弱(よわ)い文句(ことば)が横行している。向きに頬張る幻想(ゆめ)の無機への采配等には俺の背中を一蹴して生く脆(よわ)い形成(かたち)の悪口(あっこう)さえ観(み)え、夜の静寂(しじま)に冷風(かぜ)が鈴生(すずな)る後光の所在(ありか)を確認して生く…。精神(こころ)の人陰(かげ)から他(ひと)の躰が気色を見守り、幻(ゆめ)の景色に慕情を観尽(みつく)す加護の真音(しんね)が幻(ゆめ)を這い出て、幻想(ゆめ)の意味から〝意味〟を曇らす右手の厚味(あつみ)の陰を引いては、幻覚(ゆめ)の旅途(たびじ)へ躊躇して生く個人(ひと)の堅さを丈夫に遣った。俺の孤独は暗黙(やみ)の静寂(しじま)と相対して生くうち暗夜(よる)の冷風(かぜ)から煩悩(なやみ)を匂わす人群(むれ)の呼笛(あいず)を解体して活き、明日(あす)の覚悟を昨日へ燃やせる海馬(うみ)の途次へは杞憂の間(ま)に間(ま)に、「明日(あす)の人」へと自己(おのれ)を翻(かえ)せる黄泉の人姿(すがた)を確認して居た。一女(おんな)の人姿(すがた)は俺の気持ちを確認する内、幻想(ゆめ)と夢想(ゆめ)との僅かな空間(すきま)を薹の余韻(あまり)に放擲していて、俺の肢体(からだ)が幻(ゆめ)の境地を抜け出る頃には、一女(おんな)の姿勢(すがた)も精神(こころ)の体裁(かたち)も暗黙(やみ)に気流(きなが)れ相対した儘、漆黒(くろ)い空間(すきま)に運(うん)を定める無盲(むもう)の境地を認識して居た。

 粗い弱差(じゃくさ)を夢想(ゆめ)に彩(と)られる「白衣(はくい)」の宙(そら)には、純白(しろ)い標的(まと)から人為を挙げ得る未覚(みかく)の集成(シグマ)が活歩(かつほ)を呈し、暗黙(やみ)を含めた空間(すきま)の陰にて、〝慌て無沙汰の廊下〟を独歩(ある)ける「男・女(だんじょ)の感覚(いしき)」を交換している。自白の海馬(うみ)から幻想(ゆめ)の水面(みなも)を確認するうち「自由」を見限る自然(あるじ)の寝間から〝堂々巡りの生活感(おくゆき)〟さえ見え、明日(あす)の目下(もと)へと佇む独我(われ)には未知の涼風(かぜ)から狼煙(けむり)が仕上がり、幻想(ゆめ)の温度へ体熱(ねつ)を合せる幻想(ゆめ)の一通(とおり)を好ましくもした。俺の本気を鎮められ得る未知の快感(オルガ)は幻想(ゆめ)の転味(まろみ)を通過した後(のち)、明日(あす)の生歴(きおく)を少々奏でる男・女(だんじょ)の狼煙(のろし)を遠くに観て居る。暗黙(やみ)の範囲(うち)から小さな一灯(ひかり)が少女と這い出て俺の背中にぽつんと灯せる〝緩い律儀〟を奇妙にする頃、未覚(みかく)の乱麻を頂(ちょう)に据え置く事始(こと)の遊離に徘徊して居り、一男(おとこ)の以前(むかし)に躰を這わせた漆黒(くろ)い悪魔の用(よう)の向きには、男性(おとこ)と女性(おんな)の競歩の傍(そば)へと未憶(みおく)を費やす時間を象(と)った。俺の肢体(からだ)が陽(よう)を見兼ねて真夜(よる)を識(し)る頃、一人の女性(おんな)は俺の知らない遠い各地に点在して居り、俺の識(し)らない男性(おとこ)と一緒に両手を取り合い暗黙(やみ)へと失(き)え去り、奇麗さっぱり「身許」を割らない怜悧(つめ)たい仕種に問答して居た。男性(おとこ)の肢体(からだ)も体裁(かたち)を生やせぬ酒宴(うたげ)を執りつつ、女性(おんな)の目前(まえ)では夜を待てない様悪(さも)しい順序へその実(み)を与(あず)け、漂白(しろ)い汽笛が「遠方(とおく)」を揺さ振る「本気の遊離」に陶酔している…。理由(わけ)の分らぬ現代人(ひと)の常識(かたち)は肢体(からだ)を脱ぎ捨て、暗い漆黒(くろ)さの小路(みち)の果(さ)きへと目的(あて)を見送り、悠々着流す純白(しろ)い衣(ころも)は橙色から夕日を映えさせ、人間(ひと)の未覚(みかく)を衝動(うごき)に留(と)めない幻想(ゆめ)の多さに連呼を為した。…

      *

 …何故歩けるんだろう、と疑問さえ感じて居た。しかしその子の表情は恐らく自殺(未遂?)前の表情からすれば殆ど生気を切り離された様(よう)に乏しかった様子で、自殺未遂をし終えた個人(ひと)特有の〝何かそれなりの悟りを得た顔〟をしているように見えた。

      *

 所狭しと幻(ゆめ)の生気が落胆する内、着の身着の儘、俺の思惑(こころ)は暗黙(やみ)が狭まる不思議な憂慮を撮んで置いて幻想(ゆめ)の隔地へその実(み)を呼べ得る未有(みう)の一灯(あかり)の転落(まろみ)の側(そば)では、一女(おんな)の勝気が生気を識(し)らない旧い身憶(みおく)を確認して居た。純白(しろ)い〝生気〟が転身(まろみ)の側(そば)から優(ゆう)に蹴上がり、緩い経過に孤踏(ダンス)をして生く一娘(むすめ)の揺蕩(ゆらぎ)に一理を識(し)る上、明日(あす)の我夢(がむ)から魅力を供(とも)する脆(よわ)い気色が演技を退(しりぞ)け、一女(おんな)の側(そば)から死臭を匂わす空しい可能(かぎり)が復活して来る。幻想(ゆめ)と現(うつつ)が交錯してから男性(おとこ)の友情(こころ)は女性(おんな)を湿らす空しい一灯(あかり)を仄(ぼ)んやり設けて、一男(おとこ)の言動(うごき)が如何(いか)に敏(あざと)く死太い汚物(もの)かを夢限(むげん)に呈してひっそり微笑み、漆黒(くろ)い気色を景色に観ている個々の優美(ゆうび)を密(ひそ)めき合った。夢見心地に気性を撓らせ、自分の行く手に切先(きさき)を観ながら、俺の肢体(からだ)は天へ還るを希望に認(したた)め、一女(おんな)の自主(あるじ)を何処(どこ)へと追い駆け、未完(みじゅく)の幻想(ゆめ)から孤高を逸れた。この頃〝悪夢〟に散々揺らされ「旧友(とも)」と呼べるに足りない供等(ともら)を総じて地中へ深く込ませて、孤高の自主(あるじ)へ自然と傾く自己(じこ)の主観(あるじ)を大事に観ながら、〝送り人(びと)〟から何(なん)にもされない脆(よわ)い調子に日々を煩い、自己(じこ)の調子を生気へ酔わせる愚かな行為へ疾走(はし)って入(い)った。俺の白紙は無事を煩い人性(さが)を見て取り、明日(あす)の肴を器用に相(あい)する黄泉の未完(みじゅく)に気泡(きほう)を裂かれて、まったく独りの荒野の果てまで己(おの)が延命(いのち)を費やし始めて、「未完(みじゅく)」の「兼ね」まで度量を発する無機の気力(ちから)を既視(おおめ)に観て居た。俺の周囲(まわり)に静かに蠢く、生気(いのち)を落した旧友(とも)の人群(むれ)には、自己(おのれ)の肢体(からだ)が朽ちて行くのを何とも気取れず無価値と見るのに、躊躇を想わぬ餓鬼がのさばり、俺の〝偏見(せいぎ)〟と他(ひと)の〝偏見(せいぎ)〟が何処(どこ)まで着いても一致を解(げ)せ得ぬ無界(むかい)の享受を順々余し、自己(おのれ)の自活(かて)へと自然(しぜん)を啄む未刻(みこく)の遊戯は茶番を識(し)りつつ、男性(おとこ)と女性(おんな)の存在価値等、俺の脳裏へ過らなかった。白紙の天には人間(ひと)の景色が彷徨して居り、幻夢(ゆめ)の境界(はざま)を未完(みじゅく)へ際する幻(ゆめ)の衝動(うごき)に下天を見破り、果て無き宙(そら)へと身分を偽る固陋の情(なさけ)が俺を覆って、俺の心身(からだ)は他(ほか)に気取れぬ〝見得ない気泡(あぶく)〟へ映り代わった。他(ひと)の孤独が俗世(このよ)へ失(き)え得る現代(いま)の〝無機世(むきよ)〟の賛美の果てには、他(ひと)の謳歌が参じて間近い幻想(ゆめ)の解(ほつ)れが祖父を操り、旧然(むかし)の景色に人間(ひと)を配(あや)つる滑稽(おかし)な「無駄」へとその実(み)を貶め、夢想(ゆめ)の天下を下郎に任せる腐女(ふじょ)の寡へ明らかにもする…。白夜の生地を夢想に相(あい)する古郷(こきょう)の旧差(ふるさ)は、俺と一女(おんな)の柔味(やわみ)を遠ざけ、俺の胸中(うち)から一女(おんな)を隠せる柔い風紀を俗世(このよ)へ置き去り、白体(はくたい)ばかりが無効を蹴散らす幻夢(ゆめ)の調子に行進して活き、女性(おんな)の微温差(ぬるさ)を幻(ゆめ)の許容(うち)でも粗末にした儘、現世(このよ)の男・女(だんじょ)の成れの果てなど一層粗末に葬り去った。

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 俺は急に正義感振って動き廻り、〝先ず警察と救急車へ電話しなあかん〟など即座に思い付き、思い付いたが一度に二つへ電話が掛けられないので、丁度〝女の子が落ちた瞬間を目撃していた馬男〟に病院への連絡を頼み、俺は警察へ電話をして居た。まごまごして居た。警察へ電話したのは、他殺か自殺かがはっきり分らなかったからだ。病院へは〝頭を打っている可能性があるから〟と強く豪語して居た。

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 昔気質の細寸墓地(さいすんぼち)から未刻(みこく)に至れる幻(ゆめ)の情緒は〝寸先暗黙(すんさきやみ)〟から異刻(いこく)を発せる事変(こと)の条理を器用に立たせて、「送り人(びと)」なる人種の間(あいだ)を幻(ゆめ)に寄り添い独歩(ある)いて生くなど、堂々巡りの生活(かて)の興味に、独創(こごと)を宣う先人さえ居た。固陋に徹する上位の人には俺の揺らぎが私勲(しくん)を宛がい、俺の過失に無我を興じる「故(ゆえ)」の衝動(うごき)が語訓(ごくん)に在って、無益の理性(はどめ)を利益に擁する夢想(ゆめ)の揺蕩(ゆらぎ)に未完(みじゅく)を寄せ活き、俗世(このよ)の真昼に覇気を保(も)てない一人(ひと)の条理を揺蕩(たゆたさ)を観た。俺の背中を見送る供(とも)には旧来(むかし)の芳香(におい)を全く保(も)たない残像(のこり)を排する残骸(むくろ)がのさばり、夢想(ゆめ)の背後へ一々廻れる無快(むかい)の温度に表情(かお)を顰めて、明日(あす)の脳裏を〝条理〟へ導く客人(ひと)への想起は哀しみさえ知り、幻夢(ゆめ)の奥地へその瞳(め)を安(やす)める無垢の気色が動揺している…。常時(いつも)観て来た一人(ひと)の言動(うごき)に自己(おのれ)の理性(はどめ)は礼を失せず、明日(あす)の余命(いのち))に幻想(ゆめ)を問うまで苦言(こと)の便りは文句(ことば)を象(と)らない。操り忘れた無幻(むげん)を仕留める玄人(ひと)の有利は、意味に識(し)れない無言を寄せつつ自己(おのれ)の延命(いのち)に葛藤して生く純白(しろ)い郷里に揺蕩(たゆたさ)など保(も)ち、幻想(ゆめ)の間際に「背中」を画せる事始(こと)の頼りを慧眼に観た。俺の文言(ことば)は生歴(きおく)を頼りにこそこそ這い活き俺の身近を器用に束ねる事始(こと)の契機に心算(つもり)を置きつつ、一女(おんな)の美声(こえ)から形成(なり)を問わない「大阪育ちの二女(にじょ)」を八つ裂き、明日(あす)の日(ひ)の芽(め)を一切問えない緩い定規をその掌(て)に置いた。俺の心中(こころ)は揺蕩(ゆらぎ)は自然(あるじ)の後(あと)から白紙(こころ)を拵え、無言に長じた隠し部屋から一人(ひと)の延命(いのち)の余韻(のこり)を問えずの純白(しろ)い文句(ことば)の所在(ありか)を保(も)ちつつ破棄に先(せん)じた固陋の分業(ノルマ)を夢友(とも)に返(へん)じて苦言を垂れて、明日(あす)の道義を未順(みじゅん)に識(し)らない一人(ひとり)の孤独を大事に観た儘、漂白(しろ)い小手から来てを失う旧い〝夜路(よみち)〟を行巡(こうじゅん)して居た…。

      *

 …始めは〝動かしちゃいかん〟〝動いたら駄目だ〟等、女の子と周りの奴らに安静を促して居たのに、何故かその女の子を連れ回していた俺は、その子の顔を何度かちらちらと覗き見た。〝ああ、自殺したのはこの所為か…〟等、少し黙って納得していた。その子の器量は現在に於いて一般的に見られると、一癖二癖在り〝良くない〟とされる部類に入った。円らな瞳をして居り目は少し離れていたがそれでも小さく整って女の子らしく、肌は浅黒かったが、思春期頃の少女に有り勝ちな、健康的な黒さであって舐めれば塩味が効いて美味しそうでもある。女に飢えて居た俺にはそれ故〝結構、それでも可愛い〟部類に入り、連れて回る内に、段々この子が可愛らしく思え始め、この娘と如何(どう)にか成りたい、と思ったのも事実だ。その子の体は(D大で知り合った院生の幼女のように)可細(かぼそ)く綽(しなや)かで、それで居て中学生の幼さを見せる柔さを具えて、ぎゅうっと思い切り抱き締めても未だその身に思い余る勢いだった。

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 「明日(あす)」への一通(とおり)へ俺の躰がのこのこ逝く最中(なか)、幻想(ゆめ)の孤独が独身伝いにほろほろ浮き出て、文句(ことば)の可能(かぎり)を白紙(こころ)へ書き行く無駄の長辞(ちょうじ)を延々綴る…。孤独の無音(おと)から矮小(ちいさ)く尋ねる白銀(ぎん)の空音(そらね)は弓の眼(め)をした事始(こと)の仕種で、他(ひと)と俺との〝伝い〟の裏面(うら)の新地(しんち)は世迷(よまい)を通して儘を透せぬ旧い規律(おきて)に踏ん張り続けた。俺の鼓膜が無音(むおん)を引き連れ小出しにするころ文言(ことば)の多くを鵜呑みにして生く古い規律(おきて)はこの眼(め)に連なり、葦の短い昨日の前途は暗黙(やみ)へ紛れて邁進(すす)んで逝く内、矮小(ちいさ)な檻へとその実(み)を訝る無理の白体(からだ)を葬り続けた。「書き物」等から美味を吟味(あじ)わう矮小(ちいさ)な勇者は転々(ころころ)暗転(ころ)げて、頼り無き日に身寒(みざむ)を感じる概(おお)きな安堵は黄(こ)の葉(は)を従え、人生(みち)を独歩(あゆ)める一重(ひとえ)の敏(びん)から既視(すで)に表れ、一女(おんな)の気色に悶々着せ得る放浪身分(ながれみぶん)の悪しきの既知より、黄泉と現世(このよ)の「廻る天下」を、独創(こごと)に収めて密度を保(たも)てる幻(ゆめ)の所在(ありか)を期待して居た。一女(おんな)の気色は柔い女体(からだ)を男性(おとこ)へ突き付け、軟い晴嵐(あらし)を玉璽に収める身重の体裁(かたち)をぱらぱら捲られ、〝故(ゆえ)〟の儀式に個体を束ねる深紅の内実(うち)には性器を二重(だぶ)らせ、眩暈に知れ得る孤高の煩悶(なやみ)の概(おお)きな試しは、思惑(こころ)に逆らい猛進して生く男性(おとこ)の立場を崩して行った。男性(おとこ)の正義と女性(おんな)の正義が現世(このよ)を治める一人(ひと)の偏見(せいぎ)に、自由を奪われ〝自活〟を操(と)られて危うく沈める苦悩を識(し)りつつ幻覚(ゆめ)へ入(い)る瞬間(とき)、漂白(しろ)い矛盾(かえり)が一男(おとこ)を軟(やわ)める女性(おんな)の息吹に態と仕合わせ、幻(ゆめ)の動軌(どうき)に駆逐を呼び得る空気(しとね)に揺られた多くの垢には、俗世(このよ)の規律(おきて)が朗(あか)るく咲き得ぬ未信(みしん)の大喝(さけび)を女性(おんな)へ訴え、目先にのみ活き母性(はは)の温味(ぬくみ)へ甘える一女(ひと)には男性(おとこ)の総能(すべて)が分らなかった。一男(おとこ)の脳裏へ気配を認(したた)め未覚(みかく)の遊戯へその実(み)を廻せる〝醜女(しこめ)〟に象(と)られた臭う女性(おんな)の正理(せいり)の企図には、俗世(このよ)を想わす総ての無駄から好意が剥がれる夢想(ゆめ)の胸苦(きょうく)が吊るされ続ける。孤独の随所に叫(たけ)びを挙げ尽(き)る幻(ゆめ)の王躯(おうく)に「俺」はのさばり、「俺」の昼寝を邪魔に観て生く俗世(ぞくせ)の乱気(オーラ)は空気(しとね)に与(く)まれて、俺の視野から乖離(はな)れた処でしっかり躰を他(ほか)と繋げる黒い女性(おんな)の双頭(あたま)の無数(かず)には、俺の新野(しんや)がぐつぐつ崩れる未覚の烏帽子が陶酔している…。現行(いま)の代(だい)までしっかり溢れる男・女(だんじょ)の〝正義〟は日の目を観歩(みある)き、発狂(くる)い続ける男・女(だんじょ)の集落地(アジト)は俺を迎えぬ天下を果(さ)き見て「黄泉」の腕力(ちから)を遠心(こころ)に留(と)め置く未知の偶奇にその実(み)を寄り添え、未覚の羞恥にその身を誘(いざな)う男・女(だんじょ)の術(すべ)には未動(みどう)が生き交(か)い、〝慌て文句(もんく)〟の人陰(かげ)の範囲(うち)では求心(こころ)を紐解く男女(だんじょ)の幻想(ゆめ)より「破滅」を信じる生活(かて)の成果へ、純心(こころ)を揺さ振る多くの信徒が大手を振りつつ投降して居た…。夜明けの幻想(ゆめ)には男・女(だんじょ)の成果が息絶え続ける…。

      *

 …俺はその中学生(こども)に恋をして居た。その女の子は俺が連れて行く先の何処(どこ)へでも素直にその手を引かれて付いて来た。唯、微笑のような愛想の好い表情(かお)をして虚遁(きょとん)として居る。その頼り無さが、俺には何とも可愛らしく女らしく、従順な無防備・無謀がひたすら愛らしかった。その幼い子を連れて俺は警察へ〝女の子が、屋上から落ちたんです…〟と片言に報せてから、その校舎への出入り口付近に恐らく在ったドア前の三~四段しか無い浅い階段にその子と二人で腰掛けて、〝闇雲に警察を探すより、待ってた方が良い〟と、待つ事にして居た。

      *

 夢想(ゆめ)の翻(かえ)りが一際大きく無暗矢鱈の一女(おんな)の律儀に不満を投げ掛け、純白(しろ)い吐息に生気を吸われる煩悶(なやみ)豊かな表情(かお)に気取られ、俺の精神(こころ)は暗夜(やみよ)を脱(ぬ)けつつ概(おお)きく羽ばたく寸出(すんで)に在ったが、一女(おんな)の琥珀は小口(くち)を窄めて幻想(ゆめ)を敏(あざと)く見定め続ける気力(ちから)の差を魅せ〝段〟へと腰掛け、俺の文言(ことば)を益(えき)に着かせず煩悶(なやみ)へ向かわす愚弄の言動(うごき)に徹して在った。幻(ゆめ)の端(たん)から一途(いちず)に名を保(も)つ上記(うえ)の孤独は誤読を被(こうむ)り一女(おんな)の一体(からだ)を無暗に冒(おか)せる軟い仕打ちを痛味(いたみ)に儲け、女性(おんな)の気色に仁途(じんと)を敷けない身軽(かる)い邪気へと〝偏見(せいぎ)〟を設けて、明日(あす)に跨る「昨日の意識」を幻視(ゆめ)に見究(みきわ)め急使(きゅうし)と偽り、暗黙(やみ)の間(ま)に間(ま)に固陋を取り持つ一男(おとこ)の遊戯へ黄昏(たそが)れ始めた。

 気楼(きろう)の許容(うち)には幻視(ゆめ)を積ませる愚者が戯れ、俗世(このよ)と現行(いま)との緩い流行(ながれ)を「昨日」に見紛い躰を従え、孤独の長者(ちょうじゃ)に酔遁(すいとん)させ生く閏(うるう)の日蓋(ひぶた)を人煙(けむ)に敗(ま)けさせ、明日(あす)の香味(こうみ)を陽(よう)へ問い行く斬新(あらた)な旧巣(ふるす)を構築して居る…。旧い文言(ことば)の目途の辺りで「俺の旧巣(ふるす)」は御託を蹴散らせ、窮する幻想(ゆめ)から虚無を引き裂く無論の空虚を人智に従え、明日(あす)の孤独を小声に気取るや浅学ばかりに配慮して生く、孤独の背を観て共鳴(なげき)を従え、「黄泉」への感覚(いしき)に自分を見紛う幻視(ゆめ)の体裁(かたち)に呆(ぼう)っとしたのち苦労を逆手(さかて)に魚水(ぎょすい)を戴く〝葦〟の見地へ自答を説いた。電子の怜悧へ自問を二重(かさ)ねる弓の張り目は土用を携え、「明日(あす)」の「文言(ことば)」を宙(そら)へ届ける〝幻想(ゆめ)の辛気(しんき)〟に言上(ことあ)げした儘、功徳を想わす純白(しろ)い蜃気は自活(かて)を観たまま自由に遍き、一つ空(そら)には孤高を見限る使途(しと)の詰りは現行(いま)に赴き、俺と一女(おんな)の無行(むこう)の集成(シグマ)を順々束ねる進化を観(み)せた。

 「舵を切るのは俺の文言(ことば)の転落(まろび)の所為だ」と幻想(ゆめ)の礎(もと)から血色(ちいろ)に跳び出す無想の快無(オルガ)は女性(おんな)に逝き付き、俗世(このよ)の男性(おとこ)の軟弱振りから「孤独に耐え得ぬ脆差(もろさ)」の髄まで、指を数えて嘲笑した後、一女(おんな)の軟体(からだ)へ一層跳び付く男性(おとこ)の陰には、文句(ことば)通りに躰の割かない無重の追記が円満にて在る。俺の白紙(こころ)に無業の進化が訪れ始めて一女(おんな)の体裁(かたち)が内実(なかみ)を保(も)たない美優(びゆう)の遊離を活気に観た後(のち)、古い男性(おとこ)の生気は暴擦(あばず)れ無為の感覚(いしき)に嗣業を観て活き、男性(おとこ)と女性(おんな)の律儀の理性(はどめ)は炎下(えんか)の元(もと)にて決して総醒(そうざ)め、両脚(あし)の震えを億尾へ隠して猛追したまま難儀を得たのは、一女(おんな)の人陰(かげ)へと追従(ついしょう)して居た見事な暴漢(おとこ)の幕引きでも在る。…若い男・女(だんじょ)が無信の許容(うち)にて自主(あるじ)を掲げて、しどろもどろの「行為」の許容(うち)へと難儀を見付けて無断に去る時期(ころ)、協歩(あゆみ)の範囲(うち)にて「轟々猛る」は白馬(うま)の蹄音(おと)にも屈託無い儘、無知を奏でる律儀の意欲に〝身重〟を重ねる〝新婚〟ばかりが跡へ続いた。男・女(だんじょ)の自主(あるじ)へ覇気を寄せ得る無価値の夢目(むめ)には幻覚(ゆめ)の孤独が鉢を合せる「苦労を識(し)れない孤独の固陋(ドグマ)」に、幻視(ゆめ)の主観(あるじ)が脚色(いろ)を付け生く向きの両刃(もろは)に詩吟を感じて、根も葉も無いままろくにお道化(どけ)て修行を採る魔の〝追憶〟ばかりが功(こう)を気取らせ、「明後日(あさって)までもは千里(せんり)が立たぬ…」と、幻覚(ゆめ)の呼笛(あいず)に孤高を失う〝千里(せんり)の信仰(めいろ)〟が砕かれ出した…。

 奇妙な瞳(め)をした無機の両刃(やいば)に男・女(だんじょ)の人群(むれ)から、明日(あす)の屍(かばね)が残骸(むくろ)を着て生く無理の走馬(そうま)がきちんと赴き、現代(いま)の俗世(このよ)をしっとり束ねる死界(しかい)の広差(ひろさ)は、「明日(あす)の感覚(いしき)」を決して識(し)らない六(ろく)の小躍(おどり)の古実(ふるみ)の陣地と、事始(こと)を身構え撤収して生く一人(ひと)の自然(あるじ)は落胆して活き、明日(あす)の垣間(かいま)を軽々扱う一女(おんな)の軟手(やわで)は一男(おとこ)を相(あい)して葬り棄て得た。路頭に迷える矮小(ちいさ)な禿照(あかり)が俺の未完(みじゅく)を低笑(ていしょう)しながら一女(おんな)の生気に中々寄れない煩悩(なやみ)の浮沈を遠くに見定め、暗夜(あんや)の頃から未覚(みかく)へ投げ出す「自由」を射止める白紙の許容(うち)には、意味も解(かい)せず馬鹿な俺(やから)が自然(しぜん)の猛威に操(と)られて行った。継続出来ない男・女(だんじょ)の空気(しとね)を現行(いま)の流行(ながれ)に独りで任せて、独り弄(あそ)びの上手(じょうず)を掌(て)に保(も)つ俺の清閑(しずか)は誰にも識(し)られず、純白(しろ)い現代人(ひと)から得体の知れない「奈落の交響(ひびき)」を安堵に化(か)えた。現行人(ひと)の〝上手(じょうず)〟は現行(いま)の倣いを未完(みじゅく)に然置(さてお)き、脆弱(よわ)い者から強靭(つよ)い者まで全ての生気が無機に透れる孤高の教習(ドグマ)を海馬(うみ)へ遣りつつ、無言の自覚(かくご)で自然(あるじ)を求める孤独の使者から脱退して居た。淡白(あわ)い教癖(ドグマ)を四方(よも)へ張(ば)ら撒き自守を培い、自己(おのれ)の自主(あるじ)の希薄を根に保(も)つ幻(ゆめ)の架空遊戯(ゲーム)は凡庸(ふつう)に留(とど)まり、硝子の純白差(しろさ)に企図を化かせる孤高の倫理は、人間(ひと)の孤独を鵜呑みにし得ない暗黙(やみ)の規定(ルール)に演繹して居る。漂白(しろ)い衣(ころも)が既知の許容(うち)から下方に跳び出て俺の肢体(からだ)の温度を隠せる黄泉の未完(みじゅく)を少々知らしめ、俗世(このよ)の生活(かて)へと生気を燃やせる遠い感覚(いしき)を隔てながらも、他(ひと)と一人(ひと)との矢庭の表情(かお)まで強靭(つよ)い愚行(おろか)を成長させ活き、黄(こ)の葉(は)の葉数(かず)から軟裸(やわら)を観(み)せ生く一女(おんな)の果(さ)きには、俺の自覚(かくご)が退減(のっぺ)り浮き出る微弱(よわ)い感覚(いしき)が懊悩して居た。他(ひと)へ対する笑顔の陰から私欲(よく)を忘れた慨気(がいき)が暗転(ころ)がり、明日(あす)の文言(ことば)を捜すついでに俗世(このよ)の浮夜(うきよ)を勧善するのは、女性(おんな)の感覚(いしき)を総て忘れた幻想(ゆめ)の調子の為すべき事にて、明日(あす)の迷子を探して間も無い俺の改心(こころ)は他(ひと)を外れて、幻(ゆめ)の多さに延命(いのち)を繋げる過去(かこ)の衝動(うごき)へ邁進して居た。女性(おんな)の肢体(からだ)は生気に塗れた遊女をかち上げ、一男(おとこ)の壮年(とし)まで鵜呑みに呑み干す「操(あやつ)る集体(シグマ)」を充分従え、一女(おんな)の幼体(からだ)も一男(おとこ)にとっては陥(お)ちる代物(もの)だと下卑た嘲笑(わらい)に勝気を執り持ち、幻覚(ゆめ)の呼吸(いき)までその実(み)を馴らせる過酷の心理を道理に説いた。何時(いつ)まで経っても解(と)けない心理は現行(いま)の未完(みじゅく)を丈夫に気取らせ俗世(このよ)の「迷子」を自分に仕立てる幻視(ゆめ)の奥義(おく)へと埋没させ活き、女性(おんな)の素肌(はだ)には点の黒差(くろさ)が一光(いっこう)在れども男性(おとこ)の妙味を純(じゅん)に惹き生く現(うつつ)の様子に暫く明かせて、一女(おんな)の未完(みじゅく)が華を裂かせる無力(ちから)の無き跡(あと)自明を保(たも)たせ、〝歯軋り上手(じょうず)〟に現世(このよ)を愉しむ無駄な「寵児」が永らく活きた…。無宿(むじゅく)の繁茂に俺の生理を整頓させ行き、凍えた四肢(てあし)を鷲の如くに大きく拡げて寝間の広さを懐柔して生く独創(こごと)の連呼に当て付け入(い)ったが、暗黙(やみ)に入(い)るのは幻覚(ゆめ)の信仰(まよい)に柔軟(やわみ)を報され葦の着くのに時間を掛け得る無味の連呼に腰を落ち着け、俺の周囲(まわり)で女性(おんな)と成るのは、野獣(けもの)の肢体(からだ)を交姦(こうかん)して生く夢遊の髑髏の残像だった。男性(おとこ)も女性(おんな)も孤独を向け据え暗黙(やみ)に訪ねる不動の信義(しんぎ)を強靭味(つよみ)に掲げて、俺の背後でぺちゃくちゃ遣ってる狭筵(むしろ)の如くを寝間に着せ替え、旧い自主(あるじ)の昇天(のぼり)を迎える堂々豊かな詩吟を採った。一人(ひと)の白紙(こころ)は白紙(はくし)の儘にて、散々活き抜く幻視(ゆめ)の信仰(めいろ)は身欲(よく)に駆られた私闘に寄り付き、他(ひと)と一人(ひと)とが現行(いま)の自然(あるじ)にそっと添い得る「無限」の進化を堕として在っても、俗世(このよ)を退(の)け得る価値を識(し)れない煩悩豊かな現代人(ひと)の発声(こえ)には、現世(このよ)と別世(あのよ)が到底失(き)えない暗黙(やみ)の進化に呆(ぼ)んやりする内、〝意味〟を忘れて〝偏見(せいぎ)〟を提(てい)する成り行き任せの小躍(おどり)に入(い)った。

 無重の進化を幻覚(ゆめ)の範囲(うち)にて煩悶(なやみ)へ報せる〝向きの心〟が潔白差(しろさ)に名高い幻(ゆめ)の真理に近付き入(い)っても、お道化(どけ)た〝正理(せいり)〟を一娘(むすめ)へ発する過去(かこ)の孤独は現行(いま)を棄て去り、女性(おんな)の律儀が男性(おとこ)を葬る微弱(よわ)い体裁(かたち)を射止めなかった。現行(いま)の俗世(このよ)で活気を導く双性(ふたつのさが)には、明日(あす)の小声(こえ)など稀有にも届かぬ幻想(ゆめ)の八又(おろち)が煩悩(なやみ)を見限り、人と人とが現行人(ひと)に訓(おそ)わり現代人(ひと)に成り生く戯作の日々へと精進させられ、俗世(このよ)で観て来た〝在る事無い事〟全てを組ませて「現行(いま)」を訝る保護の野手には至闘(しとう)が誘(いざな)い、「九十五年」の崩壊(こわ)れた年(とし)から、現代人(ひと)の野望(のはら)は荒野を募らす自活の愚行(おろか)へ野滅(のめ)って入(い)った。暗い理郷(くに)から未完(みじゅく)を保(も)ち得る一性(ひとつ)の男児は、俺の寝屋から暇(ひま)を借り継ぎ、小言の八想(おろち)を自分に馴らせる〝向きのすべき〟を明理(めいり)に明かせて、友(供)と呼べ得る奇怪な遊徒(ゆうと)の心理を葬り、土中(どちゅう)深くを探行(たんこう)して行く無知の集成(シグマ)を大事に採った…。

      *

 …その子は唯従う。自殺未遂をしてから俺に酷く従順に成った様(よう)だ。出入り口付近だけあって流石に人の出入りが良く在った。〝警察か…!?〟と思わせられた来訪者の内に、吉本興業の芸人のような「茶化された伝道師」とその連れが現れ、俺が女連れだったから(少しだけだが)喋り掛けて来た。俺は「何や、君の事、警察かと思たわ。君、警察に見間違えたわ」等と、それでも何時(いつ)もの愛想笑いを振り撒いて居た。その伝道師は唯浅く笑って居た。

      *

 幻(ゆめ)の背に乗り感動ばかりを欲しがる最中(さなか)に幻覚(ゆめ)を忘れた男・女(だんじょ)の背中は大きく分かれて不断に呼吸(いき)して、孤高の寝間には淡差(あわさ)が伴う純白(しろ)い優美(ゆうび)が如何(どう)でも好く成り、端正(きれい)に割かれる以前(むかし)の容姿は無言に失(け)し得る神秘の要局(かなめ)に敵対して居る…。俺の独言(こごと)が独創(こごと)を通して要(よう)に就くのは現行(いま)の衝動(うごき)に加算を観て来た淡白(しろ)い気色に揺ら揺ら燃え落ち、明日(あす)の仰臥に矛盾を重ねる報知の道標(しるべ)に幻想(ゆめ)が溺れて、初めて寝るのに無想を交わせる自然(あるじ)と俺との無駄を葬り、土中(どちゅう)に積まれる滑稽(おかし)な幻(ゆめ)には「事始(こと)」の放棄が内在している…。一女(おんな)の道化を幻覚(ゆめ)の奥義(おく)へと画して生くのは俺と他(ひと)との逸れた生気に私算(しざん)を重ねる幻(ゆめ)の謳歌に他成らない儘、疾走(はし)って波(わた)れる旧い陽気に事始(こと)の多くを参照した後(のち)、旧い宮(みやこ)を女性(おんな)へ保(も)たせて〝哀れ〟を敷く等、自己(おのれ)の夢想(ゆめ)には装飾(かざり)を付けない無言の自主(あるじ)が散会して居る。幻夢(ゆめ)の逆行(もどり)に私算(しざん)を採るうち事始(こと)の取捨には華が伴い、明日(あす)の生気へ棚引く白雲(くも)には幻(ゆめ)の流行(ながれ)が早々(そうそう)活き着き、昨日と現行(いま)の総身の相異を無我に手向けて傍賛(ぼうさん)した後(のち)、軟い白衣(ころも)に安手(やすで)を掛け行く淡白(しろ)い人影(かげ)には自重を認(みと)めず、昨日と今日とで総身を保(も)たない旧い邪魅さえ初出(いろは)を棄てた。「女性(おんな)の細工が何処(どこ)まで伸びるか知れないけれども内と外とで概(おお)きく身構(かま)える理性(はどめ)の相(あい)には人間(ひと)が揃わず、昨日と今日との淡い枕の砦の下(した)には、小言で収まる器用な〝落馬〟が走馬(そうま)を想わせ整頓され得た。」――こう言う律儀の自活(かて)から脆(よわ)い細工が労を労い、明日(あす)の要局(かなめ)を私算に牛耳る微弱(よわ)い目下(ふもと)を概(おお)きく振り分け、他(ひと)と俺との調和の様子をどれだけ越えても明日(あす)は減らない――奇妙に華咲く運起(うんき)の束ねは定めに従い悶々在る儘、そのうち女性(おんな)に「陽(よう)を観る等、無機の調子に合せて行った。葛藤ばかりを続ける毎夜に幻夢(ゆめ)の四肢(てあし)が自由に伸び尽(き)る精神(こころ)の文句を棚に据え置き、純白(しろ)い躰が男・女(だんじょ)を鈍らす俗世(このよ)の勢(せい)から脱線して活き、明日(あす)と今日との未信(みしん)の酒宴(うたげ)を「水と霊と」に対面させ得て、俺の肢体(からだ)に被(こうむ)る温度は無機の気色が機微に掲げる「無要(むよう)の麗句」に狂奔させた。自己(おのれ)の勢(せい)から活気が仕上がり無知と知憶(ちおく)を製本して生く漆黒(くろ)い凡陽(あかり)を手近へ寄せつつ明日(あす)の心機へその実(み)を掲げる脆(よわ)い一滴(しずく)に功績さえ見て、幻想(ゆめ)の寝間から独歩(ある)く一歩(あし)には身軽を培う余力(ちから)さえ乗り、孤高の孤独に身分を問わずの無碍の生歴(きおく)がそのまま活き果て、落ちるに落ちない陽(よう)の寝室(ねむろ)は男・女(だんじょ)の性(せい)から確進(かくしん)して生く…。―――既知の知識(もの)から独断ばかりを没我の幻(ゆめ)から引算(いんさん)して活き、漆黒(くろ)い宙(そら)には身軽を脚色採(いろど)る無色の構図が滅法仕上がり、虚無の範囲(うち)から虚無の果てまで「堂々巡りの私算」を被(こうむ)り、現代人(ひと)の哀れを嘲笑(わら)う信徒は邪気に触れ合い弄(あそ)びを報(しら)さず、俺の定めに悠々拡がる曖昧模糊には、嘗ての供から詩吟を賜る無理の翻(かえ)りが利益を産んだ。

 孤高の宮(みやこ)に堂々足るまま利損(りそん)を手招き、宙(そら)の果てから「自由」を想わす自尊の隔離を陽(よう)に問うても、「自尊」の〝鈍(のろ)ま〟は遅延を問いつつ人群(むれ)に酔いつつ、現行人(ひと)の進化に結ばれ始める〝知識の木の実〟にその眼(め)を奪われ、人間(ひと)の流行(ながれ)に酔いを醒ませぬ「仮(かり)の夢想(ゆめ)」から独断さえ無く、神秘(ふしぎ)と文言(ことば)の無数(かず)の多岐(おおく)が孤独の連夜に創作する内、白夜の淡白味(しろみ)に興味を定める無機の仕手から無想(むそう)を得て居た。


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~深夜の真昼~(『夢時代』より) 天川裕司 @tenkawayuji

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