先輩に退部を命じられて絶望していた僕を励ましてくれたのは、アイドル級美少女の後輩マネージャーだった 〜成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになったんだけど〜
第227話 美少女後輩マネージャーは気まずい
第227話 美少女後輩マネージャーは気まずい
「ハッハッハ、
という
巧、
これから勉強会兼巧の誕生日パーティーを行なうのだ。
プリンスリーグに参加している
途中のスーパーで直帰組と買い出し組に分かれた。
直帰組は怪我人の巧、一刻も早く勉強する必要のある誠治、彼の教育係である冬美だ。
買い出し班の舵取り役は自然と香奈になった。
誕生日パーティもそうだし、今の巧とはなるべく長く一緒にいたいため、今後数日の食材も買えるものは買ってしまう予定である。
「すみません。私の都合で結構荷物多くなっちゃうと思います」
「全然構わねえよ。俺らと巧のためなんだから」
「私も大丈夫だよ。っていうか香奈、やっぱり慣れてるね」
野菜をチラッと観察してはひょいひょいカゴに放り込んでいく香奈に、あかりが感心したように言った。
「確かに。そこら辺の主婦の人に手際負けてないもんな」
「ありがとうございます。週数回は買い物してますから、ある程度は慣れてきますね」
香奈は二人からの褒め言葉を受けて、はにかむように笑った。
コミュニケーションを取りつつも買い物ペースが落ちない彼女を見て、あかりはポツリと、
「こうしてみると、香奈って彼女というかもはや奥さんの領域まできてるよね」
「っ……!」
香奈はトマトを持ったままギシッと固まった。
あかりはニヤリと笑い、隣の優に話しかけた。
「優君。こんなところに赤いトマトがありますよ」
「本当だ。でもヘタまで赤色だから違うんじゃねえか?」
「あっ、確かに」
(こ、この二人っ〜!)
香奈は無言でズンズン歩き出した。
「香奈。待ってよ」
「ふん、だ!」
「揶揄って悪かったって。令和十九年十一月二十二日に挙げる結婚式には参加するから」
「十九年……おい、誰が熟年夫婦じゃい」
「熟年良い夫婦だよ」
「関係あらへんわ。こちとらまだ婚約すらしてないねん」
香奈はエセ関西弁でツッコミを入れた。
半分は照れ隠しだったが、あかりは「何その口調……!」とツボに入ったようだ。
釣られるように優も笑い出したため、結果として香奈がイジられる流れからの脱却には成功した。
あかりに告白されてから一週間が経過したが、彼女もこれまで抱えてきたものを吐露して気持ちの整理がついたのか、だんだんと以前のように笑い合えるようになっていた。
ここ二日ほどは今のように巧との関係を揶揄ってくるようにもなった。彼女なりに友達として接しようとしてくれている証拠だろう。
香奈としても、少しずつではあるが自然なコミュニケーションが取れるようになってきていると自覚していた。
しかしそこに優も加わってくるとなると、やはり気まずかった。
表面上は普通にしていたが、彼にもそれは伝わってしまっていたようだ。
「悪いな。居心地悪い思いをさせて」
あかりが親からの電話のためにその場を離れた際に、苦笑いを浮かべながらそう言ってきた。
「いえ。そんなことは」
「無理しなくていいぞ。
「まあ……はい」
香奈は苦笑しつつうなずいた。
「ありがとな」
「えっ?」
予想だにしていなかった感謝の言葉に、香奈はパチパチと目を
優は温かい視線をあかりに投げかけながら、
「あかりを突き放さなかったことだよ。白雪が受け入れてくれたからこそ、あかりが前を向けたと思うんだ。だからありがとう」
「いえ、私は特別なことは何もしてません。あの子が前を向けたのは
「まあ……自分では醜く足掻いているみたいでちょっとダサいかもとは思ったんだけどな」
優がポリポリと頬を掻いた。
香奈は破顔した。
「いいじゃないですか。綺麗な恋愛しようとしている人はきっと長続きしませんよ。結局、プライドを捨てて泥臭く行動できる人が好きな人を射止められるんだと思います」
「……白雪ってそういうこと言うんだな」
優が意外そうな表情を浮かべた。
「何がですか?」
「いや、お前と巧はまさにその綺麗な恋愛をしているように思ってたから」
「そんなことありませんよ、主に私のせいで。すぐに不安になっちゃうので巧先輩を困らせてばかりです」
香奈は苦笑した。
「それこそいいんじゃねえか? 不安になるくらい好きってことだし、男からしたら嬉しいと思うぞ」
「巧先輩もそう言ってくれるんですけどね。百瀬先輩もそう感じるタイプですか?」
「おう。まあ、俺はまずあかりの一番にならなくちゃいけねえんだけどな。あっ、別に今のは白雪を責めてるとかそういうのじゃねえからな?」
香奈が気まずげな表情を浮かべたことに気づいたのだろう。優は慌てたように付け足した。
香奈は「あぁ、はい」と曖昧にうなずいた。
「むしろ決意表明っつーか、いずれ白雪が気まずい思いしなくて済むくらいあかりに好きになってもらうから、もうちょっとだけ待っててくれ」
「あっ、はい。あの、それはとても素晴らしいと思います。ただ、百瀬先輩。う、後ろ……」
「後ろ? ……えっ?」
間の抜けた声を出す彼の背後には、真っ赤な顔でプルプル震えていてるあかりがいた。
先程香奈が気まずげな表情になっていたのも、優の発言に何か思うところがあったわけではなく、単純にこちらに戻ってくるあかりに気づいたからだった。優の情熱に負けて指摘できなかった。
——羞恥に染まったあかりの表情を見れば、話を聞かれていたのだということは優にも理解できた。
震える声で尋ねた。
「ど、どっから?」
あかりは耳まで真っ赤になり、わずかに潤んだ瞳を彷徨わせながら蚊の鳴くような声で、
「お、俺はまずあかりの一番にならなくちゃいけねえ、ってところからです……」
「なっ……!」
(一番聞かれたら恥ずかしいところ全部聞かれてた……!)
優は頭を抱えてしゃがみ込みそうになり、荷物を持っていることに気づいてなんとか堪えた。
彼の羞恥に染まった顔は、日光の元に晒され続けることになった。
親友とその彼氏が頬を染めあっている状況というのは、香奈にとってもなかなかに居た堪れなかった。
(というか、今日一番に気まずいんだけど……!)
香奈は場の雰囲気を変えるように元気な声で、
「よし、早く帰りましょう!」
「う、うん」
「そ、そうだなっ」
あかりと優もぎこちなく返事をして、大股で歩き出す香奈に続いた。
その後は香奈の発案で、縛りを設けたしりとりをしながら帰路についた。
無言は避けられたが、
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