先輩に退部を命じられて絶望していた僕を励ましてくれたのは、アイドル級美少女の後輩マネージャーだった 〜成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになったんだけど〜
第81話 美少女後輩マネージャーはポジティヴシンキングです
第81話 美少女後輩マネージャーはポジティヴシンキングです
もちろん、巧に想いを伝えた報告をするためだ。
『すごい。やればできるじゃん、香奈』
「へへ〜、でしょ? もうヘタレとは呼ばせないからね!」
『そうだね。これからは
「遠くなった! そこは香奈様じゃないの⁉︎」
『いいねぇ。キレが増してる』
電話越しであかりがクスクス笑った。
『告白して吹っ切れた?』
「そんな感じかも。だってもう、こっからは付き合えるかフラれるかの二択しかないから、ガンガン行くしかないしね」
『その意気だよ。
「そ、それはダメでしょ! 先輩そういうとこしっかりしてそうだしっ」
『けど、彼だって男じゃん。今ごろ香奈とヤるとこ想像して一人でシてるかもよ?』
「へ、変なこと言わないでよっ!」
香奈は頬を真っ赤に染めて叫んだ。
『あはは、ごめんごめん。ちょっと調子乗りすぎた』
「もう……あかりがそういうこと口にしてるの聞いたら、クラスの男子たち泣くよ? 清純派で通ってるんだから」
『別にどう思われようといいよ。それに、これだけ素をさらけ出せる相手は香奈しかいないから安心して』
「キュンっ……!」
『早くも二股?』
「ちゃうわい」
『何その口調。可愛い』
あかりが珍しく声をあげて笑った。
『でも、そうだね。真面目な話、誘惑するよりは好きっていう気持ちを素直に伝えていくほうが如月先輩には効果的だと思う』
「だよね〜」
香奈も同意見だった。
だからこそ、別れ際にも大好きと伝えたのだ。
(……ヤバい。今さらめちゃくちゃ恥ずかしくなってきた)
『香奈、どうしたの?』
「な、何でもないっ」
私の親友鋭すぎるっ、と香奈は内心で叫んだ。
「でもでも、言いすぎたら逆に飽きられたり辟易されたりしないかな?」
『わざとっぽかったり、計算しすぎたりしたらそうかもね。けど、自然に出ちゃう分にはいいと思うよ。香奈が好きだなぁって思ったときに言えばいいんじゃない?』
「それだと息吸う暇ないんだけど」
『重いなぁ』
あかりが呆れたように笑った。
『じゃあ、ちょっと我慢して漏れちゃうくらいがちょうどよさそうだね』
「うんちみたいに言わないでよ」
『うん。言いながら私もちょっと思った。うんちも恋愛も、垂れ流しは禁物ってことだね』
「イチモツ?」
『……あんたのほうこそ幻滅されるよ。いや、逆に萌えるかも? こんな可愛い子が下ネタ言ってる〜、みたいな感じで。ううん、でもさすがに今のはナシか。大丈夫だよ、香奈。私はどんなあなたでも受け入れるから』
「……あっ、話終わった?」
『聞けよ』
鋭いツッコミに、香奈は声を出して笑った。
「あー、おもしろっ……それじゃ、そろそろ切ろっか。明日も早いんでしょ?」
『うん。改めてよく頑張ったねアンドこれからも頑張れ』
「ありがとう! 絶対オトしてやるから見ててっ」
『うん。付き合えたら私に特大パフェとコーヒー代を落としてね』
「うん、もちろん……って、コーヒーは約束してなっ——あっ、切れた! 言い逃げしたなあいつ〜」
香奈はひっくり返った虫のように、ベッドで足をジタバタさせた。
「ま、いいけどさっ。巧先輩と恋人になれるなら千円二千円くらいなんぼのもんじゃい!」
巧とのツーショットコレクションを開いた。毎晩の日課だ。
もちろん、今日撮った写真も厳選したものを加えてある。
「ムフフ、今日は特に豊作だぞ〜。これなんてもう恋人の中の恋人っ……恋人かぁ、はぅ〜!」
胸の内からせり上がってくる抑えようのない激情を逃がすように、布団の上でゴロゴロ寝返りを打ち続けた。
フラれたらどうしよう——。
そんなネガティヴな考えが浮かばないと言ったら嘘になるが、支配されることはなかった。
あかりの言う通り、告白して吹っ切れたというのもあるのだろうし、今日一日でかなりの手応えを感じていたからだ。
まず、
そんな彼が、まったくの予想外ではなかったはずの香奈の告白を保留にしたということは、彼の中でもはっきり恋愛対象として認識されているということだ。
それに、香奈が攻めれば攻めるだけ、彼も相応に反応していた。
(顔も赤くなってたし、動揺もしてたし、た、勃ってもいたし……!)
香奈は性に対する関心や欲は人並み以上にあったし、それは自覚していた。
しかし、だからといって男のモノ自体が好きなわけではない。むしろ、嫌いだ。
クラスで自分たちのことを陽キャだと思い込んでいる男子たちがチラチラ女子を見ながら話す下ネタは普通に嫌悪感を抱くし、AVも女性同士の作品しか見ない。
男優が少しでも出てこようものなら、他の作品に乗り移るほどだ。
しかし、巧のだけは別だった。
自分が原因で元気になっていると思うと、嫌悪を覚えるどころか興奮した。
——如月先輩のアレくらいは握っちゃってもいいと思う。
——今ごろ香奈とヤるとこ想像して一人でシてるかもよ。
あかりの言葉が脳裏に
基本的に嫌いだとはいえ、モノの形状くらいはわかる。シーンを想像することは容易かった。
「あかりが変なこと言うからっ……んっ!」
ただでさえ、今日は巧の肩に頭を乗せたり、肩を抱かれたり、胸を押しつけたり、彼が欲情しているのを見たりしていた。
そして何より、告白までしてしまったのだ。
女子高生の平均よりも普段から多くの回数をこなしている香奈が、自分を抑えられるはずもなかった。
「ん……あっ……巧先輩っ……!」
巧が自分との行為を想像しながら自らを慰めているところや、自身が巧のモノを触っているところ、そして、
——香奈、ごめん。僕もう我慢できない。
——えっ、た、巧先輩っ?
——煽った香奈が悪いんだからね。
「だ、ダメっ、先輩っ……!」
◇ ◇ ◇
——数十分後。
「おい、二号。こんなにベッドでおしっこしちゃダメでしょ」
香奈は布団にいくつものシミができてしまっている責任を、巧に取ってもらった犬のぬいぐるみに転嫁していた。
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