pt2~これまでとこれから

さかのぼること9年前、弘は大学生だった。大学ではアニメサークルに所属し、女子は数名しかいなかったが、いずれもタイプではなかった。大学1年生の冬、ツイッターで交流していた違うゼミの女子にデートの誘いをするが断られてしまう。そのトラウマで大学卒業するまで誰にもアプローチをしなかった。

大学3年になるとスーパーマーケットでアルバイトを始めたが、ここにいた年上の主婦に惚れてしまう。社会人になるとホテルの客室清掃のお仕事に就いたが、ここでもまた、年上に惚れてしまった。コロナウイルスの影響で人員削減となり、弘は客室清掃の仕事を辞めざるを得なかった。そのホテルの部長には弘と同級生の娘がいて、何度か旅先で会ったことがあった。しかしながら再会は叶わず時だけが過ぎていった。

コロナが終息すると、弘は一般企業の事務員の仕事を始めた。同僚は15歳以上年上の既婚者が多く、出会いは無かった。弘はあらゆるマッチングアプリで恋人を探したが、そのほとんどがサクラや業者のアカウントであった。

28歳の夏、弘は再び転職活動をしていた。8月になってようやく採用されたのは調理補助のアルバイトであった。レストランサニーズは全国規模のファミレスで、従業員は主婦の他、学生バイトやアラサー女子も在籍していた。

2022年9月1日、弘はサニーズに初出勤した。弘より1学年下で1994年生まれの亜樹は長い茶髪と濃い目のメイクがチャームポイントだ。

「はじめまして、東江弘です」

弘は従業員全員の前で自己紹介をした。弘はバイト先のサニーズから自宅まで自転車で通勤している。亜樹は大きめの車を持っていて、趣味はドライブだ。入社して1週間経って、亜樹は弘と徐々に仲良くなっていた。調理補助では髪色は自由なので弘は金髪のツーブロックを美容院で特注していた。そのヘアスタイルはビジュアル系バンドのdear my ashのボーカルを意識したものだ。

11月のある日、弘は亜樹の車で県内を一周した。亜樹はカメラ女子で、スナップや花を写すのが好きだ。

「おはよう、待った?」と弘が尋ねる

  「いや、今来たところやで。」と亜樹は言った。

大きなミニバンは海沿いを走る。車内ではラッパーのHK-69の音楽が大音量で流れていた。

やがて富山県に到着した2人はあまはらし海岸を散策した。この海岸はアサシカのMVで登場してから知名度が上がった。

「いい天気やな。」

  「ほんまやな。ツーショット撮らん?」

などと会話し2人は楽しい時間を過ごした。


To be continued


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る