第3話 : 5%ってどれくらいの数字かわかってる?

僕はそして触手を伸ばし、鏡と剣と勾玉を手に取った。


それと同時に、途端に頭の中にたくさんの情報が流れ込む


この武器が何なのか、この武器の使い方、この武器の過去、この武器は"誰の物なのか"、


この武器はどうやらアマテラスと言う神への貢ぎ物だったらしい。


鏡の名は八咫鏡、剣の名は天叢雲剣、勾玉の名は八尺瓊勾玉、聞いてわかる通り記紀神話に出てくる三種の神器のことだ。


それぞれの職業レベルに応じて強さが変わり八咫鏡は僧侶のレベルに関わり、天叢雲剣は剣士のレベルに関わり、八尺瓊勾玉は魔術師のレベルに関わる。

そしてたった今自分の能力値の正しい見方を理解した


自分の能力値、職業レベル、使える職業スキルや魔法、この戦闘においての死線や勝ち筋、この戦闘に置いて一番のアドバンテージなど。


そして僕の剣士、魔術師、僧侶の職業レベルは全てマックスだ。


大量の情報が流れ込んだためか頭が痛む


ただそんなのはハンデにすらならない、私は今ここで覚醒したのだ。




な、急に気配が変わっただと…!


あの武器を手にしてから触手から感じていたオーラが変わった


一体あの武器はなんなんだ…!?


明らかにさっきまでの弱そうなオーラが消え、感じたことも無い程の勇気に近いオーラを感じる。


『では、こちらから行かせて貰おう。』


触手はそう言うと二本の触手が裂け、燃え上がる剣を手で握るようにはめ込み、常に光を放つ鏡を持った。

勾玉は触手の周りを自転と公転のようにずっと周り続けている


『とは言ったものの、俺はどうやら剣一本で戦うタイプの剣士では無いみたいでね、ちょっと手品でもしてあけよう。』


そう言うと触手はいきなり壺ごとその場で高速回転をし始めた


今完全に隙だらけだ


これ以上待っていると、とんでもないことが起きる気がした。


直感を頼ってすぐさま走り出し魔剣を振り翳す


だがその魔剣は触手の身には届かなかった


『少しばかし、お転婆過ぎやしないかい?お嬢さん。』


魔剣は鏡によって防がれていた


『この鏡は光を反射するだけでなく、攻撃も、』


鏡が光を、溜めはじめる。


『反射する!僧侶スキル発動!カウンターシャイニング!』


鏡に光が即座に集中し広範囲に光の魔法が放たれた

魔剣ですぐさま、ギーラに向かう光の攻撃を受け止める、魔剣で受け止めることは出来たが、私の体は大きく吹き飛ばされた。


[(魔王様!!])


ギーラが焦った顔でこちらを見る


〈厄介だな〉


大きく吹き飛ばされて背中を打った


中々に痛い、だがそれより、


相手はシャイニングと言っていた。


ギーラは僧侶が使う光の魔法が大の苦手だ、そして僧侶の能力に少しの耐性がある私ですら、吹き飛ばされた。


〈ギーラ、下がれ。お前には余りにもこの相手は不利だ。〉


[(しかし!魔王様一人で戦われるのは、余りにも危険です!相手は恐らく魔王様よりも強いです!])


〈みなまで言うな、それくらい分かっている〉


[(ならば最終的に、私が盾となりみがわりとなり、魔王様の身を守れるように、ここは引くわけにはいきませ!])


〈お前のその忠誠心を疑う気はないが、この戦いに置いてお前は邪魔なのだ。〉


[(ッ…!])


〈わかったか、だから今すぐに引け、そして他の者にも知らせろ。大丈夫だ負けようが死ぬことは無いだろう〉


[(……………その言葉信じてますよ。])


〈嗚呼、信じて貰って構わない。〉


『お話は終わったかな?』


触手が話を割り込んで来た


〈行け、ギーラ〉


そう耳打ちするとギーラはすぐさま引き下がった


〈嗚呼、話はもう終わった。では戦いに戻ろうではない…か、〉


そこで相手の違和感に気づいた


さっきのカウンターシャイニングを喰らって、気が付か無かったが


剣を持っていた触手が7本に増えている


『どうだ?俺の手品は、驚いたか?』


〈……嗚呼、驚いたよさっきまで一本だった剣が、いきなり増えているのだから。〉


これはピンチだ、さっきから剣一本一本に感じるドス黒いオーラにずっと晒されているため気分がわるい。


〈さっきの剣一本よりも魔力が強まっているな?〉


『良くわかったね、さっきよりも5%程力を流し込んだ。』


〈たった5%でこれ程、化け物が。〉


さて、勝てる見込みなんてこれっぽっちもないわけだが。


ただ、なんだろう?触手から向けられる殺意が余りにも薄い。


相手は殺す気はないのか?


『わかってはいると思うが、別に俺はお嬢さんを殺そうとしてる訳ではない。』


まるで心を読んだかのような発言をする


〈…妾と戦ってどうする気だ?〉


『別に戦わなくてもいいけど、戦いを仕掛けたのはあんただろ?お嬢さん。』


そういえばそうだった


『ただ少し付き合って貰えないか?この世界に来てから知らない身体に慣れてなくてね、少し試させてよ。』


そう言うと触手は門松のように剣を周りに並べ、鏡をこちらに向け、勾玉が剣の周りを高速回転しだす。


『ちょっと痛いだろうが大丈夫、死にはしねぇから絶対。』


勾玉の回転が更に早まる


剣が更に燃え上がる


鏡が周りの光を集める


鏡の影響か周りは少しづつ夜のように暗くなっていく


剣の影響か鏡の光の色が紅くなる


勾玉の回転の影響か目にも止まらぬ速さで回転する勾玉はいつしか虹色のリングのような物になりまるでミラーボールかのようなに所々にカラフルな光を放つ


『とっておきだ、陽昇・壱反、伍円、漆飛来!』


技が放たれた。


巨大かつ膨大な魔力が籠もった真っ赤なビームが、こちらに向かってくるのを、肌でひしひしと感じるり


私は即座に横に避けたつもりだったが、


〈んな!?〉


勾玉のリングが私の周りを縛っていた


勾玉より奥に行くことが出来ない


〈チッ!〉


すぐさま上に跳んで逃げようとしたが


『無駄だよ、』


〈!!!〉


私の体は勾玉に吸い寄せられた


どうやら避けられない攻撃らしい


〈ならば!〉


今度は自分の防御魔法を展開する


魔王にだけ許された、チート防御魔法を発動する。


〈魔法攻撃無効ka..『それも無駄ァァ!!』〉


その途端、自分の中の魔力が吸われる感覚がして、魔法攻撃無効化不発に終わる。


〈何!?〉


『お前の魔力を吸ってやった、その勾玉でな!』


おいおい、いったいどれだけ能力があるのだ、この勾玉は。


ビームは私の知らない間に目の前まで来ていた


どうやらこの攻撃から避けられない運命だったらしい


その時、私は久しぶりにその感情を思い出した。


恐怖


その久しぶりの恐怖は、私の体全体に染み付くように、こみ上げるように沸き上がってくる。


この攻撃を受けて生きているのか?そんな疑問と怖い、逃げたい、苦しなどの不の感情が湧き上がる。


怖い


ただそれだけ、とても怖い。とてもとても怖いのだ。


恐怖の感情が無意識のうちに自分の口から吐露した。


〈たすけて〉


自分でも今の自分がどうかしていることはわかっている。

今ここで助けを願っても、誰も助けてくれない。

この場にいる者で私より強い者のは相手しかいないと言うのに。


生きたい、強くそう願ってしまう。


無理な願いだとわかっていても私は吐露してしまう


〈誰か、私を助けて!〉


次第にそれは叫びに近い物になった



だが、その叫びはビームの音でかき消される。


恐怖が迫る、もうおしまいだ。


私は死ぬことを覚悟し目を瞑った

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