第15話

 室井と菅井は洞窟の奥深くに足を踏み入れ、不気味な空気が漂う中、探索を続けていた。そこでは、意外な発見が彼らを待ち受けていた。


「ここまで来ると、どんな謎が解けるのかな?」室井が言いながら、頭を傾げました。


 菅井は懐中電灯で周囲を照らしながら答えました。「まずはこの洞窟が何かの隠れ場所に使われていた可能性が高い。Tカードが何かの鍵となるかもしれない」


 その時、洞窟の奥深くから微かな音が聞こえてきました。二人は緊張しながら、その音の正体を確かめようと近づいていきます。


 すると、そこには驚くべき光景が広がっていました。洞窟の天井には数多くの蜘蛛の巣が張られており、その中には蝙蝠が住んでいるのが見えました。


「これは……なかなかの見世物だね」と室井が言いました。


 菅井は興味深そうに周囲を観察していました。「蜘蛛の巣はかなり古いものだ。この洞窟が長い間使われていたことが分かる」


 室井は考え込みながら、壁を撫でるように触りました。「この壁……何かの模様が彫られているように見える」


 二人はその壁に注目し、模様を調べ始めました。その模様には、チロルチョコの包み紙に似た意匠が見られ、それが新たな手がかりになるのではないかと感じました。


 菅井は興奮して言いました。「もしかしたら、これが次のカギになるかもしれない。私たちの調査が町の謎に光を当てる手助けになるかもしれない」


 室井は頷きながら、再び壁の模様をじっくりと観察しました。彼らの冒険は、新たな謎と発見が待ち受ける洞窟の深淵に向けて進んでいくのでした。

 

 数日後、室井は、久々に訪れた地元の喫茶店で、新刊の推理小説を執筆するためのヒントを探していた。彼はテーブルに座り、コーヒーを注文しながら、ノートにアイデアを書き留めていた。


 すると、隣の席に座った女性が彼の注文を間違えて持ってきたコーヒーを持ってきました。彼女は笑顔で言いました。「すみません、これは私のコーヒーです。私の名前は京本夏彦です」

 室井は少し驚きましたが、笑顔で答えました。「てっきり、男性だと思ってました」

 夏彦の本名は夏子だ。


 彼女は座席を変え、その後、しばらくして、二人は話し始めました。そして、室井は彼女が推理作家であることを発見しました。


 室井は、彼の最新の推理小説がベストセラーとなり、地元の書店でサイン会を開催することになった。その日、たくさんのファンが集まり、彼は喜びと緊張を感じながら、サインをする準備をしていた。


 すると、会場の入り口で予期せず京本夏彦が現れた。彼女は室井に挑戦し、自分の新作が室井の影に隠れていると主張した。


「室井さん、あなたの人気は理解できますが、私の本も見てもらえるべきです」京本夏彦は静かながらも決意のこもった声で言いました。


 室井は穏やかに笑って、返事をしました。「京本さん、競争が大好きですが、この町にはすでに十分な場所があります。私たちのファンが私たちに関心を持っているのが見たい」


 室井と京本夏彦は、推理作家としての才能を競い合うことになった。二人は偶然にも同じ推理小説コンテストの審査員に選ばれ、審査の最終段階にまで進んでいた。


 審査会場では、多くの著名な推理作家や出版社の代表が集まり、緊張感が漂っていた。室井と京本はそれぞれの作品を誇示し、審査員たちの厳しい目に晒されることを覚悟していた。


 室井は自信満々に自分の作品を語りました。「この小説は、深い謎解きとキャラクターの心理描写が特徴です。読者が最後まで引き込まれるストーリー展開になっています」


 一方、京本は静かに、しかし鋭い洞察力を持って自分の作品を説明しました。「私の作品は、緻密なプロットと意外性が魅力です。登場人物の複雑な心情や背景が、物語の核心を明らかにします」


 審査員たちは一つ一つの作品を厳しく評価し、議論を交わした後、最終的な決定を下すことになった。その結果、審査委員長は重要な発表を行った。


「この度、優勝作品は室井氏の作品となります。彼の作品は読者の心を捉え、推理小説としての優れた要素を兼ね備えています」


 室井は謙虚に頭を下げ、京本に感謝の意を示しました。京本も微笑みながら、次の挑戦に向けて新たなエネルギーを得たのでした。彼らの競争は知恵と才能を競い合い、新たな作品を生み出す原動力となっていったのでした。


 室井と京本は次第に意気投合し、『室井夏彦』というペンネームで2人で執筆したり、同棲したりした。

 数年後、喫茶店の静寂が、京本夏彦の意外な告白で一変した。室井は彼女の言葉に耳を疑ったが、彼女の表情は決意に満ちていた。


「実は、私はあなたを裏切るつもりなんです」

 京本夏彦は静かな口調で告げた。


 室井は驚きと共に、不安と疑念が心をかき乱した。長年の友情と競争を経て築いてきた信頼が一瞬で崩れ去り、彼はどう対応すべきか迷った。


「なぜ?なぜ今、それを言うの?」

 室井が驚きと疑問を込めて尋ねた。


 京本夏彦は深くため息をついてから、語り始めた。

「私はあなたの成功をうらやんでいました。あなたがいつも私よりも先に行くことに、焦りと嫉妬を感じていたんです」


 室井は京本夏彦の言葉に動揺しながらも、彼女の気持ちを理解しようと努力した。しかし、彼女の裏切りの理由が理解できない部分もあった。


「でも、なぜ裏切る必要があるのか。私たちは競争しているだけで、お互いに敵ではないはずだ」

 室井が言った。


 京本夏彦は少し目を伏せ、言葉を詰まらせた。

「私は、自分を証明したかったんです。あなたを超えることができるかどうかを…」


 二人の間には、友情と信頼を揺るがす深い溝ができてしまった。室井は次の一手を考えながら、自分の心の中で彼女に対する気持ちを整理しようと努めた。


 さらに、京本夏彦は言った。

「一色を殺したのは私なんです」

 一色はベストセラーであり、天才少年でもあった。

『ネットで広めてもいいですか?あなたの悪事を?』

 その瞬間、京本夏彦の中で獣が目覚めた。

   

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る