ショートショート

猫背

エキセントリック

 今日学校で先生が授業中にユウちゃんへ向かって「俺達は前世から繋がっていたんだ!」と絶叫しながら服を脱ぎだしたので、授業は中断になり生徒たちは急遽早退となった。


 僕は家路を歩く。

 すると前方から耳に安全ピンを刺しまくったいかにも頭が弱そうな金髪男が走ってきた。金髪は僕の口元が気に入らなかったのか、そのまま僕にドロップキックをぶちかます。吹っ飛ぶ僕の身体。それでも金髪は手を止めず、僕に馬乗りになるとボコボコにぶん殴る。ある程度僕を殴った後に帰ろうと背中を向けた瞬間、僕はカバンの中からナイフを取りだし立ち上がった勢いのまま金髪の背中を刺した。


「『ごめんなさい』って言えよ。そしたら僕だって殺しはしないよ」


「まじ断固拒否するんですけどー」


 僕はもう一度刺した。

 金髪は死んだ。




 両方の穴からだらだら流れる鼻血を拭いながら歩き、家に着く。


 椅子に座ると、下半身に違和感が。視線を下に落としてみると、勃起していた。きっとさっき金髪を刺した時に、思わず僕は自分のいけないスイッチを押してしまったんだ。うひー、恥ずかしい。

 羞恥心に身もだえるも、下半身はおさまらない。仕方がないので地面に行列を作っている蟻をオカズに抜くことにした。

 が、しかし。僕はエクスタシー直前になって、重大なことに気がついた。


 うわっ、どうしよう。えー、何。うわー…。ティ…、ティッシュ……、ティッシュねぇー…。これ…、ちょ、どうしよう……。あ、だ、駄目だ、もう駄目だ。うわー…。

 ……仕方ない、落ち葉を使おう。


 僕は落ち葉で受け止めた。



 因みに「家」っていうのは、俗に言う「公園」のことだ。本当の家よりも公園の方が落ち着くので「家」と言っている。僕にとって本当の家は家じゃない。

 ということで、今の自慰行為も完全に野外プレイで端からみたらただの変態行為なんだけど、僕はそんなことなどクラスメイトが事故って死ぬことぐらい気にならないのである。


 さて、すっきりしたところで小説の執筆に取り掛かろう。

 僕は携帯で携帯小説を書いている。なんともへんてこりんな小説で読んだら地面に唾を吐きつけ携帯の画面を叩き割りたくなるような内容なのだが、僕は一応一生懸命に書いている。


 下半身丸出しで真剣に書いていると、ふと、携帯のボタンを打つ手が止まった。


 物語の主な登場人物は中学生の男の子と女の子の二人で、その二人の目線で交互に進んでいる。今僕が書いてる場面では女の子の目線なのだが、どうもこの場面の彼女の気持ちがわからない。なにより僕は男なんだから、わかるはずがない。でも手は抜きたくない。


 そんな時、家(公園)の外を歩く一人の女子高生を見つけた。


 そうか。女の子の気持ちを知りたいのなら、女の子に聞けばいいじゃないか。天才だ。そうだ、そうしよう。


 僕はズボンを履かないまま家(公園)を出て、その女子高生に近寄った。


「ねぇ、ちょっと……あ。あれ?

 ユウちゃんじゃないか」


「……あっ。

 ……って、え?なっ、え?ちょっ、え?」


 ユウちゃんは暫く僕の顔と下半身を見比べ言葉を詰まらせていたが、突如全力でどこかへ走っていってしまった。

 これはマズイ。このままでは女の子の気持ちが分からず仕舞いになってしまう。ユウちゃんを逃しては駄目だ。


 僕はブリッジをして全力で彼女を追いかけた。すると顔面を電柱にぶつけた。鼻血再発。ブリッジのままあふあふと鼻血で溺れていると、後ろから「大丈夫ですか?」と女性の声が聞こえた。僕が起き上がると、そこにはうんこを顔面に塗りたくったようなブスがいた。僕はそのブスの顔面をぶん殴りスカートを引っぺがして鼻血を拭いた。



 とぼとぼと家(公園)へ帰宅(入園)。



「あぁ…、このままでは女の子の気持ちがわからない…。どうしよう…」


 椅子に座り頭を抱えうなだれていると、誰かに肩を叩かれた。振り向くと、そこには小汚いおっさんが立っていた。


「やぁ坊主、何かお悩みのようだね」


「そうなんです。女の子の目線が知りたいのに、全くわからないんです」


「わしに任せなさい。女の子の目線は知り尽くしている」


 おっさんは自分の胸をどんと叩くと得意げにそう言った。おっさんの後ろの方にダンボールとビニールシートで出来た家が見えた。


「公園でホームレスをやってるあなたにわかるんですか?」


「もちろんだよ。むしろ公園のホームレスをやってるからこそわかるんだよ」


「え?それはどういう意味ですか?」


「細かいことはいいじゃないか。さぁ教えてやろう」


 僕はホームレスから女心などを伝授してもらった。話の最後にホームレスは僕に「これを授けよう」と蝉の抜け殻を手渡し、そのままダンボールの家に戻って行った。



 僕は蝉の抜け殻を握り潰しそのカスを飲み下した後ズボンを履かないまま本当の家に帰った。

 

 

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