俺、蘭家次男、萌菜16歳
大餅 おしるこ
第1姓 萌菜
俺はよくいる16歳の高校生になる男子だ。
姓は
そこの次男坊として生まれた。
名はまさかの
この名前のせいでどれだけ苦労しただろうか。
生まれてこの名前だったから特に疑問は抱かなかったが
すぐにそこに疑問を抱いた。
萌菜ってどう考えても
女 の 子 の 名 前 だ ろ ! !
何で!?
この際ならシワシワネームの太郎とかでも次郎でもいっそよかったよ!
よりによって萌菜!
よく役所通ったな!
手違いか!?
絶対改名してやる!
別にイジメには会わなかったけど弄られるんだよ!
ってかここ弄らない奴いるのか!?
学校が変わるたび自己紹介という名の地獄。
は? 何言ってんの? スベってるよ?
ってあの目!
嘘じゃねぇよ!
耐えられるか!
キーンコーンカーンコーン。
「えー、今日から高校生になる君たちを迎えるにあたって
自己紹介をしてもらいたい。
折角いい機会だし、一人ひとり教壇に上がってもらおうか。
紹介後に質問時間も設けよう。」
教壇に上がる上に質問タイムとか恥辱の欲張りセットかよ。
声が裏返って小さく笑いが漏れたりする奴
顔が真っ赤で俯き加減な奴
めっちゃテンション高い奴
慣れてるのかクールにこなす奴
色々いる。
「じゃあ、次の出席番号32番。」
俺の番が来た。
教壇に上がる。
「これから言うことは嘘じゃないし、ギャグでもないんで一回で終わらせてくれ。
名前は蘭 萌菜だ。」
大体の奴らの表情が変わる。
退屈そうな顔をしてたのが、何かに気付いたような表情。
「特に特技とかはないんだけど
この名前が前に出すぎて意味不明。
水泳が好きかな?
勉強はそんなに好きでもない。
そんな奴なんでよろしく。」
先生も目を丸くしている。
嘘じゃないのは名簿を見たらわかることだ。
だから信じられないんだろうな。
「はーい、しつもーん。」
「ん?」
「マジで萌菜?」
「マジで。」
「苦労したこと聞いてもいい?」
「やっぱ性別錯誤の名前じゃね。」
「だよなー。」
冷静すぎて逆に記憶に残るなこれ。
席に戻ろうとするが視線を感じる。
やめてくれっちゅーに。
キーンコーンカーンコーン。
「よー……。
ってか、何て呼んだらいい?」
「そうなるよなぁ……。
蘭あたりで言ってくれね?」
「じゃ、アラっちにしよっか。
俺は
「自分も名前凄いな。
あぁ、印象がバチバチに残ってる。」
「苦労はアラっちほどじゃないだろーけどなー。」
「何て呼んだらいい?」
「やってもねーのに”生け花”ってよく呼ばれるんでそれでいいや……。」
「きっつ。
ってかそれでいいのかよ。」
「慣れた。」
「俺は慣れねぇ。」
「ってことはお互い似た苦労を持ってるわけでさ?」
「お、そうだな。」
謎の共通点見つけたり。
こういう友は大事にしたいな。
キーンコーンカーンコーン。
「あー、席を決め…。」
「遅くなりました。」
先生が言いかかったときに突然扉が開き、女子生徒が入ってくる。
その声に教室がざわつく。
「あの人って……。」
「まさか……。」
当の俺自身は何のことかわからないんだが……。
「ギリギリですね、席の発表のところだったんですが。」
「私の席はどこです?
もう決まっているんでしょう?」
「あ、あぁ。
えー、順々でもいいですか?」
「もう。
分かりました。」
「入口の席から出席番号で言っていくぞー。」
少しずつ席が埋まっていく。
「32番、蘭ー。」
「窓際隅っこ後ろ席かよ、あいよー。」
「隣、
「誰じゃい、珍しい名字だな。」
席に着くと、さっきの途中から入ってきた女子生徒が隣に座る。
「おや。」
「パッとしない方ですね……。」
「そりゃ自分が一番よくわかってる。」
「……あなた、ひょっとして私のことをご存じない?」
「何だっけ、三羽扇さん?」
「まぁ、そうですけど。」
やり取りを見ている生徒がざわついている。
「自己紹介してなかったっけ。
めっちゃ抵抗あるんだけど、蘭萌菜ってんだ。
よろしくな。」
「は? もえな?」
つまらなそうに聞いていた女の子の表情が驚きに代わる。
「……おう。
嘘じゃねーぞ。」
「……。」
呆気に取られているように見える。
冗談じゃないんだが……。
「……冥菜。」
「ん?」
「
これが私の名前です。」
「お、可愛い名前。」
「へ?」
また目が丸くなる冥菜。
「冥菜ってなかなか思いつかない名前だよなー。
へー、いい名前。
俺なんて萌菜だぜ。
男らしさのカケラもねぇ。」
「……あなた、面白い方ですね。」
「そーかぁ?」
なんか妙に教室が騒がしいな?
見かねたのか兼光が口を挟む。
「お、おいアラっち。」
「何だい生け花。」
「その人……。」
兼光が言いかかったところで冥菜がにっこり笑う。
「余計なことを言わない方が身のためですよ?」
「あ、はい……。」
引っ込む兼光。
なんかあるのかな、冥菜ちゃん。
「そーいや、私のこと知らない?って言ってたけど
めーちゃんは有名人なの?」
「め、めーちゃん?」
表情がころころ変わって面白いな。
「ダメだった?」
「うふふ、いいえ?
で、質問の回答としましては一部界隈では有名ですね。」
「すまん、知らなくて。」
「その方が幸せかもしれませんね。」
「そうなの?」
「いずれは知られると思いますけれど……ね。」
「ふーん。」
キーンコーンカーンコーン。
下校、下校ー。
教科書持たされて制服採寸して、暇だ。
帰るぜ。
下駄箱で靴を変えていると声がする。
「も・え・な♪」
「なんじゃい。
お、めーちゃんか。」
「ふ、ふふふ……。」
「笑うなよ。
ってか信じてくれたのか?」
「流石に名簿見るまでは。」
「だよなぁ……。
めーちゃんは帰り?」
「退屈ですから、帰ります。」
「育ちがいいんかな。
崩して話してくれて構わないけど。」
「え?」
「めーちゃん表情ころころ変わって可愛いな。」
「な、ななな……!?」
「あれ?
あ、すまねぇ。
距離感バグってんな。
家がな、思ったことは言いまくる品のない育ちしてるんでな。
可愛いってのは偽りないんだけど
言う奴次第だよなぁ。」
「あなた、ほんっとーに私のことを知らないんですね。」
「マジで知らん。」
「ふ、ふふふ……。」
「何か面白いことでも言った? 俺。」
「何でも。
萌菜さんも帰りでしょう?」
「萌菜……さん?」
「あら、お気に召しませんでした?」
「新鮮!
それでいいや。
うんうん、帰り。」
「ご一緒してもよろしいです?」
「めーちゃんはどの辺住んでんの?」
「内緒!」
「なんじゃいそれ。
方向一緒かわからないじゃん。」
「多分一緒。」
「多分てなんだ、多分て。」
「歩きましょう、とりあえず。
萌菜さんがどういう風にエスコートしてくださるか興味ありますし。」
「えー。
俺に期待するなよ。
女の子兄弟いたわけでもモテたわけでもなし
扱い方なんてわかんねーぞ。」
「それがいいんじゃないですか?」
「変なのー。」
滅菜と一緒に校門を出るが……。
人が明らかにこっちを見て避けていた。
いくら鈍い自分でも気づく。
聞いてみようかな。
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