第17話

 目を開けると見慣れた天井。

「眠い、、、二度寝しちゃお」

『起きろ』

枕元に置いている目覚まし時計の針は八時を指していた。

このままじゃ遅刻する。

急いで制服に着替えようとすると、兄さまに止められた。

『カレンダー見てみな』

 言われた通りにカレンダーを見ると赤色で十二と書かれていた。そしてその空白欄に『私と兄さまの誕生日!!』と大きく書かれている。

「今日、休みだったんだ〜、、、」

『全く、、、』

 私が憑き物を祓えるようになってから二ヶ月が経った。今は梅雨の真っ最中である六月。

 カーテンを開けると昨日まで雨続きだったのが嘘みたいに晴れ。

「兄さま、お誕生日おめでとう!!」

『真央もな、誕生日おめでと』

(そっか、今日で私十六歳になったんだ!)

実感が湧かなくて鏡の前で自分を見つめる。

 見つめても鏡に映るのはテレビでよく見る大人っぽい顔ではなくて、幼い顔をした自分の姿。

下手をすれば小学六年生に見えてしまいそうだ。


「今日、真央さんと師匠の誕生日なんですか!?」

「うん」

 時雨くんの家に行き、誕生日であることを伝える。最も、今日来た本来の目的は週に一回、兄さまが時雨くんに祓い方などを色々教える日なのでお邪魔しているだけなんだけど、、、。

 なんて話していると、真四角の白い箱が目に止まる。

「時雨くん、これは?」

白い箱を指差して尋ねる。時雨くんは「これですか?」と、大切そうに箱の中身を取り出す。

 見せてくれたのは紫色の宝石が嵌め込まれた指輪だった。

「丁度、この町に引っ越して来た時にある男性に貰ったんです」

 この指輪からは何となく嫌な気配がする。禍々しい、何か。

「これを付けていると自然に霊力が高まって、どんな憑き物でも祓えるようになるんです!凄くないですか!?」

「指輪を付けるだけで?」

 確かに宝石や金属類は持ち主の霊力を貯めやすく、常日頃から霊力を貯めておけば、いざって時の命綱になることもある。だけど、、、

『付けているだけで霊力が高まるなんて、、、そんな美味い話、ある訳ないだろう』

その男性が自分の霊力を貯めて、それを時雨くんが使っているとなると話は別になるが、この禍々しい気配は何?

 そっと触ってみるとバチッと静電気が走った。

「いっ、、、!」

「大丈夫ですか!?もしかして水を操るから電気が通りやすいんじゃ、、、」

「んな訳あるか、アホ」

 兄さまは私が触れなかった指輪に触ろうとしたが、また静電気によって阻止された。

「おい、これはお前以外が触ると静電気が走るのか?」

「そうみたいですね、、、父さんと母さんも静電気を食らっていましたから」

「それを早く言え」

(指輪が持ち主を選んでいる考えるのが妥当だが、物に干渉するとなるとそれ相当の霊力を使う。可笑しい、、、この指輪からは霊力ではなくて、底知れない憑き物の気配がする。早く此奴から離さないとな)

「その指輪をよこせ」

「流石の師匠でもこれは駄目ですよ!真央さんに指輪をプレゼントするなら他のにして下さい!」

「、、、はぁ」

 呆気に取られ、眉間を軽く摘む。

『兄さま、人の大切な物を取ったらダメだよ?』

「はいはい、分かってる」

真央に止められたら無理に取り上げる訳にはいかないな。

まぁ、何も起こらなければそれで良いだろう。

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