第10話

 小さい頃はよく、一緒に寝ていた。

暗いのが苦手っていうのもあるけど、兄さまが離れていっちゃうんじゃないかって、それが怖かったんだ。

 兄さまはよく放浪を繰り返していた。私が迷子になれば「オレの側から離れるな」って言うのに、兄さまは何処か行ってしまう。

兄さまは家が嫌いと言うけれど、私が思うにきっと大好きなんだと思う。

確かな確証がある訳ではないけれど、何故だかそう思った。

当主になるのも、本当は嫌ではないと言っていたから。

私では似合わない。


 ねぇ、兄さま。

双子でも先に生まれた方と後に生まれた方は、上と下を逆に考えていた時代もあったんだって。だから上が私かもしれないし、私の方が霊力が強かったのかもしれない。それならそれで良かったんだよ。私が当主でも、兄さまが当主でも。

 兄さまはよく私に言っていたよね、「お前は、お前の好きに生きれば良い」って、、、。


 兄さまの背負った色んなものを打ち消す薬に私はなれないけど、私は兄さまの側にいるから兄さまも私の側にいてね。

 誓いと願いを最後に浮かべて、ゆるゆると視界はぼんやりしだす。

 願わくば私と兄さまに、少しでも多く同じ朝を、この日を尊べる夜を。

独り言みたいな兄さまの声が聞こえた気がしたけど、何を言っているのか分からなかった。

だってとうにそれは夢の中で、、、。

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